画面の広さに、かえって固まってしまった人へ
ガラケーが使えなくなると案内が来て、お店で勧められるまま、あるいは家族に「これからはこれだよ」と渡されたスマホ。いざ持ってみると、画面は広いのに、どこを触ればいいのか分からない。間違えて変な画面になり、慌てて子どもに電話する——。
あるいは、教える側で読んでいる人もいると思います。親にスマホを持たせたのはいいけれど、毎日のように「これどうやるの」と電話がかかってくる。つい「さっき教えたでしょ」と言ってしまって、あとで自己嫌悪になる。
どちらの側にも、言葉にしにくい気持ちがあります。
持ち始めた本人は、「こんなことも覚えられないなんて、情けない」「家族に迷惑をかけたくない」「時代に置いていかれる気がする」。
教える家族は、「なんでできないの、とイライラしてしまう自分が嫌だ」。
先に、いちばん大事なことを。スマホは、全部を覚える必要はありません。最初にやることを、ぐっと絞っていいのです。そして、少しくらい間違えて触っても、壊れません。肩の力を抜いて、一つずつ見ていきましょう。
最初は「全部」を目指さない。まず3つだけ
スマホには、数えきれないほどの機能があります。でも、最初から全部を使う人なんて、いません。まずは、この3つだけで十分です。
- 電話:かける、出る
- LINE:家族との連絡、写真のやり取り
- カメラ:写真を撮る
この3つができれば、日々の生活はちゃんと回ります。地図も、検索も、支払いも、必要になったそのときに、一つずつ足していけば大丈夫。「使いこなす」を目標にすると苦しくなります。「今日必要な一つ」だけを覚える、で十分です。
「これだけできれば十分」を、段階で見る
とはいえ、この先どこまで広げられるのか見えると、安心できます。焦らず、上から順で構いません。
| 段階 | できること | 目安 |
|---|---|---|
| まず、ここから | 電話に出る/かける、LINEで返事、写真を撮る | 最初の数日〜数週間 |
| 慣れてきたら | LINEで写真を送る、ビデオ通話、調べもの(検索) | 電話とLINEに慣れてから |
| さらに広げたければ | 地図、天気、アプリの追加、キャッシュレス決済 | 必要を感じたときで十分 |
下の段は、一生使わなくてもかまいません。「やらなきゃ」ではなく、「やりたくなったら」で選んでください。
つまずきやすい所と、その正体
初めての人がつまずくポイントは、だいたい決まっています。正体が分かれば、こわくありません。
| つまずき | 正体とコツ |
|---|---|
| 画面を触っても反応しない | 指が乾いていることが多い。強く押さず、軽く触れる。「長押し」との違いも慣れれば分かる |
| 間違えて変な画面になった | 下の「ホーム」や「戻る」で、たいてい元に戻れる。慌てなくて大丈夫 |
| アプリが消えた気がする | ほとんどの場合、消えていない。画面をめくれば見つかる |
| 文字が小さくて読めない | 設定で大きくできる(後述) |
| 通知がたくさん来て怖い | 基本は無視してOK。あとで整理できる |
土台になる考え方は一つ。「少しくらい触っても、壊れない」。この安心があるだけで、指が動きやすくなります。
最初にやると、一気に楽になる初期設定
使い始める前に、次を整えておくと、見違えるほど使いやすくなります。本人には難しければ、家族が最初にやってあげるのがおすすめです。
- 文字のサイズを大きくする
- 画面の明るさと、着信音・通知音の大きさを調整する
- よく使うアプリ(電話・LINE・カメラ・家族)だけを、最初の画面に大きく並べる
- 機種にあれば「簡単モード」「かんたんホーム」を使う
- 緊急連絡先を登録しておく
- 迷惑電話・迷惑メッセージの対策を入れておく
- 指紋や顔での認証を設定し、パスワード入力を減らす
アプリをずらりと並べたままだと、それだけで迷子になります。「最初の画面は4つだけ」くらい思いきって減らすと、ぐっと迷わなくなります。
家族が教えるときの、5つの心得
実は、いちばん難しいのが「親子で教える」ことかもしれません。近い間柄ほど、つい感情が出てしまうからです。次の5つを意識するだけで、だいぶ変わります。
- 一度に、一つだけ教える(詰め込まない)
- 自分で操作させる(横から手を出して代わりにやらない)
- 専門用語を使わず、ふだんの言葉で言い換える
- 同じことを何度聞かれても、怒らない
- 「手順メモ」を紙で作って、渡しておく
| 言いがちな一言 | 言い換え |
|---|---|
| さっき教えたでしょ | 大丈夫、もう一回一緒にやろう |
| なんでできないの | ここ分かりにくいよね。ゆっくりでいいよ |
| 貸して、やってあげる | 自分でやってみて。見てるから |
それでもイライラしてしまうなら、無理に家族だけで抱えないでください。次に紹介する教室のほうが、うまくいくこともよくあります。
無理に家族だけで抱えない。無料で学べる場所
「教える・教わる」を、家庭の外に頼ってもいいのです。無料で学べる場所が、思ったよりたくさんあります。
| 場所 | 特徴 |
|---|---|
| 携帯各社のスマホ教室 | ドコモ・au・ソフトバンク・楽天などが実施。無料で、他社の利用者でも参加できることが多い。自分のスマホで習える |
| 自治体・公民館の講座 | 総務省の「デジタル活用支援」を使った講習会。同世代の講師がマンツーマンで教える教室もあり「安心して聞けた」と好評 |
| 警察のスマホ防犯教室 | 詐欺の手口を疑似体験できる。安全な使い方を学べる |
これらの多くは、何度でも通えます。「ショップだと専門用語で分かりにくかったけれど、教室は丁寧で楽しかった」という声も多く、家族に聞きづらいことも、気兼ねなく質問できます。開催情報は、自治体の広報やデジタル庁のサイト、各社の「スマホ教室」で調べられます。
安全に使うために、最初に知っておきたい最低限
細かいセキュリティの話は、後回しで大丈夫です。ただ、これだけは最初に頭に入れておくと安心です。
- 知らない番号やメッセージの中のリンク(青い文字)は、むやみに押さない
- 「当選しました」「未払いです」など、急かす・不安をあおる連絡は、まず詐欺を疑う
- 身に覚えのない請求に気づいたら、放置せず家族に見せる
- 困ったら、一人で判断せず、家族や消費者ホットライン188に相談する
覚えることは、たった一つでかまいません。「怪しいと思ったら、触らずに、人に聞く」。これさえ守れば、大きな失敗はたいてい防げます。
立場によって、まず動きやすいことは違います
あなたがどの立場かで、最初の一歩は変わります。
| あなたの立場 | まず動きやすいこと |
|---|---|
| これから始める本人 | 電話とLINEだけ覚える。文字を大きくする。近くの無料教室を一つ調べる |
| 教える子ども世代 | 初期設定を代わりにやり、手順メモを紙で渡す。教えるのは一度に一つ |
| 離れて暮らす子 | LINEのビデオ通話を設定。困ったとき用に教室や電話サポートを共有 |
| 配偶者(二人で覚える) | 一緒に教室へ。分かる人が先生役にならず、二人で習うと気楽 |
今日は、電話が1回かけられれば十分です
ここまで読んで、「やることが多そう」と感じたかもしれません。今日、全部やる必要はありません。
今日できるのは、これだけです。
- 電話を1回、自分でかけてみる
- 文字のサイズを大きくしてみる
- 家族のLINEに、ひとことだけ送ってみる
- 近くの無料スマホ教室を、一つ調べておく
すぐに覚えられなくても、それは歳のせいでも、頭のせいでもありません。使い慣れた道具が変わったときに戸惑うのは、若い人でも同じです。最初はみんな、同じところでつまずきます。
焦らなくて大丈夫です。今日の一歩は、たった一つの操作をやってみること。それを一つずつ積み重ねれば、スマホは「こわいもの」から「便利な相棒」に変わっていきます。
出典・確認先メモ
- 総務省「デジタル活用支援推進事業」による無料のスマホ講習会が、全国の携帯ショップや公民館等で開かれています。開催情報はデジタル庁「地域で開催される講座等の情報」で確認できます。
- ドコモ・au・ソフトバンク・楽天モバイルの「スマホ教室」は、多くが無料で、他社の利用者でも参加できます。各社の公式サイトで「スマホ教室」を検索してください。
- 詐欺対策を学びたいときは、お住まいの地域の警察が行う「スマホ防犯教室」もあります。
- 身に覚えのない請求やトラブルは、消費者ホットライン188(消費生活センター)へ。
- 教室の内容・開催時期・対象は変わることがあります。参加前に各窓口で最新の情報をご確認ください。


















