上着を脱いだとき、「少しにおう」と家族に言われた
帰宅してジャケットを脱いだとき、家族から「首のあたり、少しにおうかも」と言われた。
その場では「汗をかいたから」と返したものの、翌日から人との距離が気になるようになります。
電車で隣に座った人が顔を背けると、自分のせいではないかと思う。職場で窓を開ける人がいると、においに気づかれた気がする。
自分で襟元を嗅いでみても、よく分かりません。それでも、一度気になり始めると、耳の後ろを何度も洗い、強い香りのスプレーを重ねたくなります。
ただ、においの元が体ではなく、着続けている上着や枕、口元、靴に残っている場合もあります。
最初に行うのは、体を何度も洗うことではありません。どこから、どの時間帯ににおうのかを分けることです。
50代のにおいを、すべて「加齢臭」にしないでください
体から感じるにおいには、加齢に伴う皮脂由来のにおいだけでなく、汗、わき、頭皮、足、口の中など、複数の原因があります。
さらに、体は清潔でも、皮脂や汗が残った衣類、寝具、帽子などからにおうことがあります。
| 気になる場所・場面 | 考えたい発生源 | 最初に行うこと |
|---|---|---|
| 枕や寝室がにおう | 頭皮、首、耳の周り、枕カバー、寝間着 | 枕カバーと寝間着を替え、洗髪後の状態と比べる |
| ジャケットやシャツの襟がにおう | 首や背中の皮脂、洗濯で残った汚れ、上着への蓄積 | 洗いたての肌着と手入れ済みの上着を着て比べる |
| 暑い日や緊張時にわきがにおう | 汗、皮膚表面の細菌、腋臭症 | 汗を拭いて衣類を替え、必要なら制汗剤を検討する |
| 靴を脱いだときに強くにおう | 足の汗、靴や靴下、白癬などの皮膚トラブル | 足と靴を分けて手入れし、皮むけやかゆみも見る |
| 会話中やマスク内で気になる | 口臭、口の乾燥、舌苔、歯周病、入れ歯の汚れ | 歯と舌、入れ歯を見直し、続く場合は歯科で確かめる |
| 入浴後も体や衣類からにおう | 衣類への残留、皮膚の炎症、強い発汗など | 新しい衣類でも同じかを比べ、症状があれば受診する |
発生源を分けないまま、体へ強い洗浄料を使ったり、香水を増やしたりしても、原因とずれた対策になってしまいます。
「体がにおう」と感じたら、体、衣類、寝具、口、足を一度に対策せず、まず一番強く感じる場所を一つ特定します。
加齢臭は、不潔だから発生するわけではありません
中高年に特徴的な体臭の原因物質の一つとして、2-ノネナールが知られています。
年齢とともに皮脂の組成や酸化の状態が変化し、皮膚表面でノネナールが生じることで、油のような、青みのある独特のにおいが加わるとされています。
40歳以降の男女から検出されやすくなると報告されており、男性だけの問題ではありません。
発生しやすい場所としては、頭部、耳の周り、首の後ろ、胸、背中など、皮脂が付着しやすい場所が挙げられます。
つまり、毎日入浴している人にも起こり得ます。
「年齢のせいだから何をしても無駄」というものでも、「洗っていない証拠」というものでもありません。
皮脂や汗を適度に洗い流し、衣類や寝具へたまったにおいを残さないことで、周囲が感じる強さを抑えられる可能性があります。
三日間だけ、においの元を一つずつ切り分けます
自分のにおいは、同じ環境にいるうちに分かりにくくなることがあります。
そこで、何度も自分の襟元を嗅ぐより、三日間だけ条件を変えてみます。
一日目は、体と衣類を同時に新しくする
入浴後、洗いたての肌着、シャツ、寝間着を使います。ジャケットやカーディガンも、最近手入れしていない物は避けます。
それでにおいが弱くなるなら、衣類に残っていた可能性があります。
二日目は、枕と寝具を替える
枕カバー、シーツ、寝間着を交換します。
朝起きたときに枕や首元が強くにおうなら、頭皮、首、寝具の組合せから見直します。
三日目は、口元と足を分ける
入浴や着替えをした後でも気になる場合は、マスク、入れ歯、靴、靴下も確かめます。
自分だけでは分からない場合は、信頼できる人へ、曖昧に聞かない方が答えやすくなります。
「今日、洗いたての服に替えたけれど、首、口、服のうち、どこが気になるか教えてほしい」
このように、場所を限定して聞きます。
一度確認したら、その日のうちに何度も聞き直す必要はありません。においへの意識が強くなりすぎると、周囲の何気ない動作まで自分の体臭と結び付けやすくなるためです。
体は「強く洗う」のではなく、皮脂が残りやすい場所を丁寧に洗います
加齢臭が気になると、硬いタオルで皮膚をこすったり、一日に何度も洗ったりしたくなります。
しかし、洗いすぎて皮膚が乾燥し、赤みやかゆみが出れば、別の皮膚トラブルを抱えることになります。
洗浄料をよく泡立て、手や柔らかい布で次の場所を丁寧に洗います。
- 頭皮と髪の生え際
- 耳の後ろと周り
- 首の後ろ
- 胸元
- わき
- 背中
洗浄料が残らないよう、十分に流します。入浴後は、首やわきなどの水分を拭き取り、濡れたまま衣類を着ないようにします。
乾燥、赤み、かゆみが出る場合は、洗浄回数や製品が肌に合っていない可能性があります。低刺激の製品へ替える、保湿する、皮膚科で診てもらうといった調整が必要です。
耳の中へ綿棒や洗浄料を深く入れたり、目立つにおいを取ろうとして皮膚を傷つけたりしないでください。
頭皮は、香りの強いシャンプーを足す前にすすぎ方を見ます
枕のにおいが気になる場合、頭皮へシャンプーを何度も重ねたくなることがあります。
最初に見直したいのは、洗う量より流す時間です。
髪を洗う前に湯で頭皮と髪を濡らし、シャンプーは頭皮を爪で引っかかず、指の腹で洗います。その後、耳の後ろ、生え際、後頭部へ泡が残らないように流します。
洗髪後に頭皮を濡れたまま長時間放置すると、枕や帽子も湿りやすくなります。タオルとドライヤーを使い、頭皮まで乾かしてください。
フケ、強いかゆみ、赤み、かさぶた、湿った発疹がある場合は、単なる加齢臭としてシャンプーだけを替え続けず、皮膚科で状態を見てもらいます。
シャワーを増やしても、襟と枕が同じなら戻ってきます
体を洗った直後は気にならないのに、服を着るとにおう。その場合、衣類や寝具へ皮脂が残っている可能性があります。
特に見落としやすいのは、次の物です。
- シャツや肌着の襟と背中
- ジャケット、コート、作業着
- 帽子やヘルメットの内側
- 枕カバーと枕本体
- 寝間着、シーツ、布団カバー
- ソファや車のヘッドレスト
まず、衣類の洗濯表示を確かめます。
自宅で洗える衣類は、汗を含んだまま長く置かず、襟や背中など汚れが残りやすい部分を製品の表示に沿って洗います。洗濯後は、湿った状態を長く残さず、十分に乾かしてください。
家庭で洗えない上着は、着用頻度と表示に応じてクリーニングを検討します。
一度洗ってもにおいが残る衣類へ、香りの強い柔軟剤を重ねるだけでは、元のにおいと混ざることがあります。
「何を着てもにおう」と感じるときは、洗いたての無香料に近い肌着と、手入れ済みの上着を一度組み合わせて比較してください。
汗をかいた後は、拭く・替える・乾かすまでを一組にします
汗そのものだけでなく、汗や皮脂が皮膚や衣類へ残る時間が長いほど、においが強く感じられることがあります。
通勤、運動、屋外作業などで汗をかいた後は、次の順で対応します。
- 清潔なタオルやシートで、押さえるように汗を拭く
- 可能なら肌着やシャツを替える
- 濡れた衣類を袋へ密閉したまま長時間放置しない
- 帰宅後、衣類を乾かすか洗濯する
外出先で何度も全身を洗う必要はありません。
首、胸、わきなど、汗と皮脂が残りやすい場所を拭き、湿った衣類を替える方が現実的です。
デオドラントと制汗剤は、目的を分けて選びます
におい対策用品には、においを抑えたり香りで補ったりするデオドラント製品と、汗を抑える目的の制汗剤があります。
汗が多く、その後にわきや衣類がにおうなら、制汗を含む製品が合うことがあります。
一方、首や背中の皮脂由来のにおいが中心なら、わきだけに制汗剤を使っても十分な変化がない場合があります。
使用前に、塗れる場所、使用回数、傷や湿疹がある部分へ使えるかを表示で確かめてください。
赤み、ヒリヒリ感、かゆみが出た場合は使用を中止します。
香りは強いほど安心というものではありません。狭い職場や電車では、香料そのものを強く感じる人もいます。
体と衣類を整えたうえで、必要な部分へ適量使う方が、においを重ねて隠すより調整しやすくなります。
食事だけで加齢臭を消そうとしないでください
体臭には、食事、飲酒、体調など、複数の生活要因が関係すると考えられています。
ただし、「この食品を食べれば加齢臭が消える」「このサプリメントでノネナールを止められる」といった単純な話ではありません。
まずは、においが気になり始めた時期に、次の変化がなかったかを見ます。
- 飲酒量が増えた
- 夜遅い食事が続いている
- 睡眠不足が重なっている
- 外食や偏った食事が増えた
- 運動量が落ちた
- 薬やサプリメントを新しく始めた
思い当たる変化があれば、一度にすべて直すのではなく、一つ戻して様子を見ます。
たとえば、毎晩飲酒しているなら休肝日を作る。深夜の食事が続いているなら、食事時間を少し早める。
体臭のためだけに極端な食事制限をしたり、持病の薬を自分で中止したりしないでください。
口のにおいを、首や服の加齢臭だと思っていることがあります
人と話しているときに気になるにおいが、皮膚から出ているとは限りません。
口臭の多くは、舌苔や歯周病など、口の中に原因があるとされています。口の乾燥、むし歯、入れ歯の清掃状態も関係します。
歯を磨くだけでなく、舌の汚れ、歯間、入れ歯を確かめます。
ただし、舌を強く何度もこすると傷つけることがあります。専用の器具を使い、やさしく行ってください。
歯ぐきから血が出る、歯がぐらつく、口の乾燥が強い、家族から口臭を指摘される状態が続く場合は、歯科医院へ伝えます。
「体臭だと思っていましたが、会話中のにおいを指摘されました。口の中に原因がないか見てほしいです」
この伝え方で構いません。
家族から伝えるときは、「年寄りくさい」と言わない
配偶者や親御さんのにおいが気になっても、伝え方によっては本人が人に会うことを避けるようになります。
「加齢臭がひどい」「年寄りくさい」は、対策する場所が分からないうえ、年齢そのものを否定されたように聞こえます。
伝えるなら、場所と場面を具体的にします。
「帰宅後のシャツの襟に、汗と皮脂のようなにおいが残っているみたい。上着と枕も一度一緒に見直さない?」
本人が傷ついた様子なら、
「あなた自身が嫌だと言いたいのではなく、洗濯や衣類で変えられるか一緒に確かめたい」
と伝えます。
本人が対策を拒む場合も、何度も近距離で嗅いだり、家族の前で話題にしたりしないでください。
職場で指摘されたときは、その場で全部説明しなくてよい
上司や同僚から体臭について指摘されると、恥ずかしさと腹立たしさが同時に出ることがあります。
その場で原因を言い返したり、「もう会社へ来られない」と結論を出したりする必要はありません。
「教えていただきありがとうございます。体と衣類の両方を見直します。可能なら、どの時間帯や場所で感じたかだけ教えてください」
と、必要な情報だけ受け取ります。
複数人の前で繰り返しからかわれる、侮辱的な呼び方をされる場合は、においの対策とは別に、上司や人事担当者へ伝える問題です。
体臭への対応が必要なことと、傷つける伝え方を我慢しなければならないことは同じではありません。
生活を見直しても続くにおいは、皮膚科や歯科で分けます
体臭そのものは、多くの場合、清潔や衣類の管理で調整できます。
ただし、次のような状態では医療機関へ伝えてください。
- 体を洗い、清潔な衣類へ替えても強いにおいが続く
- わき、足、頭皮など一部の場所から特に強くにおう
- 赤み、かゆみ、湿疹、皮むけ、傷、膿などがある
- 季節や運動に関係なく、大量の汗が出るようになった
- 体臭や発汗が急に大きく変わった
- 薬を変更してから、汗や体臭が変化した
- 発熱、強いだるさ、体重変化、強い口渇など別の症状もある
皮膚や汗、わきのにおいが中心なら皮膚科、口臭が中心なら歯科が受診先の一つです。
全身の体調変化を伴う場合や、受診先が分からない場合は、かかりつけ医または内科へ現在の変化を伝えます。
「一か月前から体臭と汗の量が急に変わりました。入浴と衣類を替えても続き、だるさもあります。皮膚の問題か、別の原因があるかを見てほしいです」
と説明すると、必要な診察や紹介につながりやすくなります。
周囲が感じていないのに、においのことを一日中考えてしまう場合
一度体臭を指摘された後、誰かが鼻へ手を当てるたびに「自分がにおうからだ」と感じることがあります。
一日に何度も入浴する。衣類を何回も替える。人へ近づけず、電車や会議を避ける。
本人には切実な問題ですが、洗浄や消臭を増やすほど安心できなくなっているなら、においの強さだけではなく、生活への影響も見てください。
まず、信頼できる一人に、決めた条件で一度だけ確かめてもらいます。
それでも仕事や外出ができない状態が続く場合は、かかりつけ医などへ、
「体臭があると思い、人と近づけなくなっています。家族は気にならないと言いますが、一日中そのことを考えてしまいます」
と伝えて構いません。
「気にしすぎ」と片付けるのではなく、生活が狭くなっていること自体を扱います。
今日は、体より先にシャツと枕を替えます
今夜、特別な石けんや高額な消臭用品を買う必要はありません。
まず普段どおりに入浴し、耳の周り、首の後ろ、胸、背中を泡でやさしく洗います。
その後、洗いたての肌着と寝間着を着て、枕カバーも替えてください。
明日は、最近手入れしていない上着ではなく、洗濯またはクリーニング済みの物を使います。
一日の終わりに、次の三点だけ見ます。
- 首や背中の皮膚からにおうのか
- 襟や上着へ残っているのか
- 枕、口、靴など別の場所なのか
発生源が分かれば、洗う場所、洗濯する物、受診先を絞れます。
50代になったから、体全体が急に不潔になったわけではありません。年齢とともに変わった皮脂、汗、衣類の使い方を、今の生活に合わせ直す。それだけでも、何をすればよいか分からない状態からは抜け出せます。













