行ってみたい花畑や温泉のツアーを見つけた。料金も予算の範囲内で、出発場所もそれほど遠くない。
ところが、申込人数を選ぶ画面で「1名」と入れようとすると、急に手が止まります。
一人だけ浮かないだろうか。昼食の席で気まずくならないか。隣の座席には知らない人が座るのか。途中でトイレへ行きたくなったらどうしよう。
目的地より、そちらの方が気になって、予約画面を閉じてしまうことがあります。
一人参加で大事なのは、社交的に振る舞えるかではありません。知らない人と一日過ごしても疲れすぎない行程か、自分の足や体調で最後まで戻ってこられるかです。
「楽しそう」だけで決めるのでも、「一人だから無理」と諦めるのでもなく、ツアーの中身を少し細かく見ていきます。
「一人参加歓迎」は、座席を一人で使えるという意味ではありません
ツアー案内にある「お一人様歓迎」「一人参加可能」は、基本的に一人で申し込めるという意味です。
参加者全員が一人参加とは限りません。夫婦、友人同士、家族の参加者と一緒になることもあります。
また、一人で申し込んでも、バスの座席は別の一人参加者と相席になる場合があります。「一人2席利用」「相席なし」と明記された商品でなければ、隣が空席になるとは考えない方がよいでしょう。
昼食も、一人用の席ではなく、ほかの参加者と同じテーブルになることがあります。反対に、自由昼食なら、一人で店を探して食べる時間が必要です。
つまり、「一人参加できるか」と「一人でどのように過ごすか」は別の話です。
予約画面で最初に見る言葉は「一人参加歓迎」だけではありません。「バス座席」「食事の席」「自由行動の時間」の三つを見れば、当日の居心地を想像しやすくなります。
初めてなら、目的地より「一日の負担」で選びます
朝早く出発して名所を五か所巡り、夜遅く戻るツアーは、内容だけを見ればお得です。
しかし、乗り降りの回数が増えるほど、階段、坂道、集合時間への緊張も増えます。バスに乗っている時間が長ければ、腰や膝への負担、トイレの心配も出てきます。
初めて一人で参加するなら、「たくさん見られるツアー」より、疲れる前に帰れるツアーの方が次につながります。
| 見る項目 | 初参加で選びやすい内容 | 予約前に尋ねたいこと |
|---|---|---|
| 集合場所 | 自宅から乗換えが少なく、場所を知っている駅 | 駅のどの出口か、受付の目印は何か |
| 集合時刻 | 始発を使わず余裕を持って到着できる時間 | 受付開始時刻と遅れた場合の連絡先 |
| 帰着時刻 | 暗くなる前、または普段使う交通機関が十分にある時間 | 渋滞で遅れる可能性と最終到着場所 |
| 観光地の数 | 一日1〜3か所程度で、滞在に余裕がある | 乗り降りの回数と各施設の滞在時間 |
| 歩行 | 平坦な場所が中心で、自由に休憩しやすい | 最長で何分歩くか、坂道や階段があるか |
| トイレ | 定期的な休憩があり、立寄り先にもトイレがある | 休憩の間隔、トイレ付きバスかどうか |
| 食事 | 昼食付きで、店探しをしなくてよい | 相席か、アレルギーや食事制限に対応できるか |
| 案内役 | 添乗員が同行し、集合時刻や場所を案内する | 添乗員同行か、現地係員のみか |
| 自由時間 | 短めで、集合場所が分かりやすい | 一人で過ごす時間がどのくらいあるか |
目安としては、自宅を出てから帰宅するまでが長すぎず、観光地を詰め込みすぎていないものが無難です。
季節にも注意してください。同じ庭園でも、春の穏やかな日は歩けても、真夏の炎天下や真冬の凍結した道では負担が変わります。
「歩行時間30分」は、30分歩くだけとは限りません
ツアー案内に「徒歩約30分」と書かれていても、実際には駐車場から施設までの移動、見学中の歩行、バスへの戻り道が別にある場合があります。
また、歩く速さは参加者全員で同じではありません。坂道や砂利道では、普段の買い物より時間がかかります。
足腰に気がかりがある方は、「歩行距離は短めですか」ではなく、次のように具体的に聞くと伝わります。
「つえを使えば普段の買い物には行けます。駐車場から見学場所まで、坂道や階段を含めて何分くらい歩きますか。途中で座れる場所はありますか」
旅行会社が「比較的歩きます」と説明したときは、何歩までなら大丈夫かを競う必要はありません。別のツアーを選ぶ判断材料です。
一方、歩くこと自体には問題がなくても、集合時間が短いと焦る方もいます。その場合は、自由散策が多いものより、添乗員とまとまって見学する行程の方が迷いにくくなります。
トイレが心配なら、トイレ付きバスだけで決めないでください
「トイレ付きバス」と書かれていると安心しますが、すべてのツアーに採用されているわけではありません。車両変更などにより設備が変わる可能性もあるため、必要性が高い場合は予約前に確認します。
また、車内トイレがあっても、走行中に座席を立つことには転倒の危険があります。基本はサービスエリアや観光施設で済ませ、移動中はシートベルトを着用します。
尋ねたいのは次の三点です。
- 高速道路での休憩は、おおむね何時間ごとか
- 立寄り先の到着後、すぐトイレへ行けるか
- トイレ付き車両を予定しているか
頻尿、服薬、人工肛門など、トイレに関して伝えておきたい事情がある場合も、詳しい病名まで説明する必要はありません。
「長時間トイレへ行けない行程は難しいため、休憩間隔を教えてください」で用件は伝わります。
添乗員は案内をしてくれますが、付き添いの介助者ではありません
添乗員同行のツアーでは、受付、行程案内、集合時刻の連絡、旅行中の調整などをしてもらえます。
一人参加の方にとっては、困ったときに声をかける相手が分かっていることが大きな安心になります。
ただし、添乗員が一人の参加者につききりで歩行を支えたり、排せつ、服薬、食事などの介助をしたりできるとは限りません。
旅行中に特別な配慮が必要な場合、標準旅行業約款でも申込時に申し出ることとされています。旅行会社は可能な範囲で対応しますが、必要な措置に費用がかかる場合は参加者負担となることがあります。
次に当てはまる場合は、申し込んでから伝えるのではなく、予約前に対応範囲を尋ねてください。
- バスの乗り降りで人の支えが必要
- 一人で長い階段を上り下りすることが難しい
- 車いすや歩行器を持ち込む
- 決まった時間に食事や服薬が必要
- 聞こえにくく、集合案内を個別に伝えてほしい
- 慣れない場所で方向が分からなくなることがある
旅行会社から「介助者の同行が必要です」と言われても、旅行を断られたと受け止める必要はありません。そのツアーの人員や設備では、安全を確保できないという意味です。
同行者を探す、移動量の少ないツアーへ変える、個別対応の旅行を調べるなど、選び直すことができます。
予約前の電話では、五つを一度に聞けます
ツアーの説明欄を何度読んでも分からない場合は、旅行会社へ電話して構いません。
質問することを申し訳なく感じる方もいますが、体力や座席について予約後に食い違うより、先に尋ねた方が旅行会社にとっても対応しやすくなります。
次の一文をそのまま使えます。
「一人で初めて参加を考えています。座席は相席になる可能性がありますか。歩く時間と階段の有無、トイレ休憩の間隔、昼食の席、添乗員が同行するかを教えてください」
足腰について伝える場合は、普段できることを添えます。
「普段は一人で外出できますが、連続して30分以上歩くと休憩が必要です。この行程で参加できそうでしょうか」
電話をしたからといって、予約しなければならないわけではありません。
説明を聞いて難しいと感じたら、「今回は検討します。ありがとうございました」で終えて大丈夫です。
一人参加で気まずくならないために、無理に友達を作る必要はありません
一人で参加すると、バスの中で皆と会話しなければならないように感じるかもしれません。
実際には、景色を見ている人、眠っている人、イヤホンで音楽を聴いている人もいます。最初と最後に軽く挨拶をするだけでも、失礼には当たりません。
隣の方から話しかけられても、ずっと会話を続ける必要はありません。
「一人参加が初めてなので、今日はのんびり景色を楽しもうと思っています」
この程度の返しなら、会話を拒絶せず、自分の過ごし方も伝えられます。
反対に、少し話したい方は、目的地について一言尋ねるところから始められます。
「こちらには以前も来られたことがありますか」
気が合えば話せばよく、合わなければ景色へ戻ればよい。日帰りバスツアーは、友達づくりの試験ではありません。
安さだけでなく、運行するバス会社の安全情報も判断材料にできます
ツアーを選ぶときは、料金や食事だけでなく、旅行会社名と利用予定のバス会社も見てください。
貸切バス事業者については、国土交通省が安全性に関する情報を公開しています。保有車両、運転者、事故、行政処分、安全性評価認定などを事業者名から調べられます。
日本バス協会の「SAFETY BUS」マークも、安全への取組状況を確認する材料の一つです。ただし、認定は事故が起きないことを保証するものではなく、マークの有無だけで安全性のすべてが決まるわけでもありません。
ツアー募集時点で運行会社が未定の場合は、最終案内で会社名が分かるかを尋ねられます。
乗車後は、走行中に座席を移動せず、備え付けのシートベルトを着用してください。上着や荷物でベルトが見つからない場合は、出発前に乗務員や添乗員へ声をかけます。
体調不良で行けなくなる可能性があるなら、取消料を先に見ます
「具合が悪くても、キャンセル料がもったいないから参加する」という判断は避けたいところです。
体調の変化が起きやすい方ほど、予約前に取消料がいつから発生し、連絡をどの方法で行うのかを見てください。
標準旅行業約款を採用する一般的な国内の募集型企画旅行では、日帰り旅行の取消料は次の範囲が示されています。
| 参加者から取り消す時期 | 標準約款上の取消料の上限 |
|---|---|
| 旅行開始日の10日前から8日前まで | 旅行代金の20%以内 |
| 7日前から2日前まで | 旅行代金の30%以内 |
| 前日 | 旅行代金の40%以内 |
| 当日 | 旅行代金の50%以内 |
| 旅行開始後または無連絡不参加 | 旅行代金の100%以内 |
実際の取消料は、旅行会社から交付される旅行条件書や契約書面に記載された内容を優先してください。商品によって異なる条件や特約が設けられる場合もあります。
また、最少催行人員に達しないと、旅行会社側からツアーが中止されることがあります。標準旅行業約款では、その理由で日帰り旅行を中止する場合、旅行開始日の3日前に当たる日より前までに通知するルールがあります。
予定が変わると困る場合は、予約時に「催行決定済みか」「中止の場合はいつ、どの方法で連絡が来るか」も見ておきます。
家族には「許可をもらう」のではなく、行程を共有します
一人で参加すると伝えると、ご家族から「危ないからやめた方がいい」と言われることがあります。
本人は、いつまでも子ども扱いされたくない。一方、ご家族は、一人で遠くへ出かけることそのものより、何か起きたときに居場所が分からないことを心配している場合があります。
賛成してもらうために長く説得するより、事実を短く伝えます。
「〇月〇日に、〇〇旅行のバスツアーへ一人で参加します。朝8時に新宿を出て、午後7時ごろ戻る予定です。旅行会社と緊急連絡先はこの画面にあります」
帰宅後の連絡も決めておけば十分です。
「到着したらLINEを送ります。渋滞で遅れるときも連絡します」
ご家族が心配だからと、当日何度も電話をかけると、本人が集合案内を聞き逃すこともあります。連絡する時刻を一つ決め、旅行中は添乗員の案内に集中できるようにします。
最初の一回は、「また行けそう」と思える余白を残します
初めての一人参加で、豪華な食事も、五つの観光地も、長い自由時間も、すべて経験する必要はありません。
まず、候補のツアーを一つだけ開きます。そして申込みボタンを押す前に、次の三つを探してください。
- バスの座席は相席になる可能性があるか
- 一番長く歩く場所はどこか
- トイレ休憩はどの程度あるか
書いていなければ、旅行会社へ電話します。回答を聞いた後も、今日中に申し込まなくて構いません。
「これなら行けそう」と思えたら予約する。「少し厳しそう」と感じたら、出発地が近いもの、立寄り先が少ないものへ戻る。それも立派な選び方です。
一人で出かけることは、誰にも頼らず何でもこなすことではありません。分からない部分を先に聞き、自分が疲れにくい一日を選べれば、帰宅したときに「次はどこへ行こうか」と考える余裕が残ります。













