午前3時17分。
目を開けると、まだ外は暗い。時計を見ない方がよいと思いながら、ついスマートフォンへ手を伸ばしてしまいます。
そこから眠れたのか、浅くうとうとしていただけなのか分からないまま朝になる。布団には長く入っていたはずなのに、体は重く、頭には薄い霧がかかったようです。
昼間は何とか動けるため、「年齢のせいだろう」と仕事や家事を続ける。でも、夕方には集中が切れ、休日は何時間も寝床で過ごしてしまう。
50代の睡眠は、若い頃と同じ形ではなくなります。ただし、疲れが抜けない状態まで、すべて年齢で片付ける必要はありません。
「何回起きたか」より、朝と昼間に何が起きているかを見ます
夜中に一度や二度目が覚めても、再び眠れて昼間に支障がなければ、直ちに病気とは限りません。
一方、七時間横になっていても、朝から休んだ感じがなく、仕事中に眠る、運転が怖い、気力が出ないという場合は、睡眠の質や別の体調変化を見た方がよいでしょう。
「眠りが浅い」という言葉を、次のように分けます。
| 夜と朝の状態 | 考えるポイント | 最初に行うこと |
|---|---|---|
| 寝つくまで長くかかる | 就寝時刻が早すぎないか、考え事、カフェイン、スマートフォン | 眠気が来てから寝床へ入り、起床時刻を固定する |
| 夜中に何度も起きる | 飲酒、いびき、頻尿、暑さ、痛み、寝室の音 | 目が覚めた時刻と理由を一週間記録する |
| 朝早く目覚めて戻れない | 就寝時刻、気分の落ち込み、更年期、生活リズム | 早く寝床へ入りすぎていないかを見る |
| 十分寝たつもりでも重い | 睡眠時無呼吸、薬、飲酒、過度の長寝、体の病気 | いびきや日中の眠気を含めて医師へ伝える |
| 昼間に耐え難い眠気がある | 睡眠不足や睡眠障害の可能性 | 運転や危険作業を控え、早めに受診する |
厚生労働省の睡眠ガイドでは、成人は6時間以上を一つの目安として、本人に必要な睡眠時間を確保することが示されています。
ただし、全員が同じ時間眠ればよいという意味ではありません。朝に休養を感じられるか、昼間の生活を保てるかも判断材料になります。
睡眠時間の数字だけを増やそうとせず、「朝に休めた感じがあるか」「昼間の眠気や疲れで何ができなくなっているか」を見ます。
50代の浅い眠りは、一つの原因だけで起きるとは限りません
50代では、仕事上の責任、親御さんの介護、子どもの独立、家計の問題、自分の体調変化が同じ時期に重なることがあります。
夜は疲れ切っているのに、頭だけが仕事や家族のことを考え続ける。ようやく眠っても、トイレ、寝汗、肩や腰の痛みで目が覚める。寝つくために飲んだお酒が、夜の後半の眠りをさらに細切れにする。
次の要因が重なっていないかを見てください。
- 以前より就寝時刻を早め、必要以上に長く寝床にいる
- 休日に平日より二時間以上遅く起きている
- 夕方以降もコーヒー、緑茶、エナジードリンクを飲む
- 寝つくために晩酌や寝酒をしている
- 夕方以降に長い昼寝をする
- 寝室が暑い、寒い、明るい、音が気になる
- 夜間の頻尿、痛み、かゆみ、咳などで起こされる
- 薬を追加・変更してから眠りや日中の調子が変わった
- いびき、呼吸停止、寝汗、朝の頭痛がある
- のぼせ、発汗、動悸など更年期の症状がある
すべてを一晩で直そうとする必要はありません。自分の睡眠を最も強く邪魔しているものを一つ見つける方が、改善につながりやすくなります。
最初の一週間は、就寝時刻より起床時刻をそろえます
前夜に眠れなかった日は、早く布団へ入って取り戻したくなります。
しかし、眠気がないうちから寝床で長く過ごすと、寝つくまでの時間や途中で目覚める時間が増え、「布団に入ると眠れない」という感覚が強くなることがあります。
最初の一週間は、次の順番で生活を整えます。
朝は同じ時刻に起きる
平日と休日で起床時刻を大きく変えないようにします。
目覚めたらカーテンを開け、屋外や窓際で朝の光を浴びます。朝の光は体内時計を整え、夜の眠気が現れる時刻を安定させる助けになります。
昼間は体を横にしたまま過ごさない
眠れなかった翌日に一日中休んでいると、夜に必要な眠気がたまりにくくなります。
体調に問題がなければ、午前中の家事、買い物、散歩など、普段の活動をできる範囲で続けます。
昼寝が必要なら、午後3時より前に30分以内を目安とし、夕方まで眠り続けないようにします。昼寝が苦手な方は、無理にする必要はありません。
夜は「時刻」ではなく「眠気」で寝床へ入る
いつもの時間になっても目がさえているなら、照明を落とした部屋で静かに過ごします。
読書、穏やかな音楽、簡単なストレッチなどを行い、眠気が出てから寝床へ入ってください。
布団の中で長く眠れないときは、いったん出て、暗めの場所で刺激の少ないことをします。時計を何度も見て、残り時間を計算し続けないことも大切です。
コーヒーは朝だけでなく、夕方の一杯まで数えます
カフェインはコーヒーだけに含まれるものではありません。
緑茶、紅茶、エナジードリンク、コーラ、一部の栄養ドリンクなどにも含まれます。
カフェインの影響が残る時間には個人差があります。夕方のコーヒーを飲んでも寝つける方でも、深い睡眠が減ったり、中途覚醒が増えたりする可能性があります。
一週間だけ、夕方以降のカフェインを麦茶、白湯、カフェインを含まない飲み物へ替えてみてください。
急にすべてやめると頭痛やだるさが出る方もいるため、日中に何杯も飲んでいる場合は、量を徐々に減らします。
寝酒は「眠れたように感じる」一方で、後半の眠りを崩します
お酒を飲むと、寝つきは早くなることがあります。
しかし、時間がたつと眠りが浅くなり、早朝に目が覚める、トイレへ行く、いびきや呼吸の問題が強まるといったことがあります。
眠るために毎晩飲んでいるなら、まず量を増やさず、寝酒としての使用をやめる方向で考えます。
習慣的に多く飲んでいる方が、自己判断で急に断酒すると体調を崩す場合があります。手の震え、発汗、動悸などが出る方や、減らせない状態がある方は、かかりつけ医へ飲酒量をそのまま伝えてください。
スマートフォンより「画面を見て何をしているか」が眠りへ影響します
夜の画面の明るさは、眠る準備を妨げることがあります。
それに加えて、仕事のメール、家計、病気の検索、家族の連絡など、緊張する内容を見続けると、画面を閉じても頭が働き続けます。
寝る一時間ほど前から、重要な返信や調べ物を始めないようにします。
スマートフォンを完全に別室へ置くのが難しければ、次の方法でも構いません。
- 充電場所を枕元から手の届かない位置へ移す
- 夜間は通知を止める
- 画面を暗くする
- 夜中に目覚めても時刻以外を見ない
- 心配事の検索は翌日の時間を決めて行う
眠れないことを検索し続けるほど、「今夜も眠れない」という緊張が強くなる場合があります。
寝具を買い替える前に、暑さ・音・痛みを分けます
疲れが取れないと、枕やマットレスが原因ではないかと考えやすくなります。
寝具が合っていない場合もありますが、高額な商品を買う前に、どの場面で目が覚めるかを見てください。
- 寝汗やほてりで起きるなら、室温、寝間着、寝具の厚さ
- 肩や腰が痛むなら、寝姿勢、日中の痛み、整形外科的な問題
- 物音で起きるなら、窓、家電、家族の生活音
- 明け方に光で起きるなら、カーテンや照明
- 口の渇きで起きるなら、鼻づまり、いびき、室内の乾燥
寝室の環境を一つずつ変え、数日後の朝の状態を見ます。
枕、マットレス、健康器具を同時に買い替えても、原因が別にあれば疲労感は残ります。
50代女性は、更年期の症状が睡眠を途切れさせることがあります
50歳前後は、閉経を挟んで女性ホルモンが大きく変動する時期です。
のぼせ、寝汗、動悸、気分の変化などで夜中に起き、そこから眠れなくなることがあります。更年期以降は、女性でも睡眠時無呼吸が起こりやすくなるとされています。
次のような状態なら、婦人科やかかりつけ医へ伝えてください。
- 寝汗やほてりで寝具を替えるほど目が覚める
- 動悸や気分の落ち込みを伴う
- 月経の変化と睡眠の悪化が重なっている
- 以前よりいびきが強くなった
- 日中の仕事や家事に支障が出ている
受診時には、「眠れません」だけでなく、寝汗、月経の変化、いびき、気分、目覚める時刻を伝えます。
大きないびきと朝の疲れは、睡眠時間だけでは解決しません
早く寝ても、休日に長く寝ても、疲れが取れない。
そこに大きないびきや呼吸停止が重なる場合は、睡眠時無呼吸症候群も考えます。
睡眠中に呼吸が止まると、本人が覚えていなくても何度も覚醒反応が起こり、深い睡眠が妨げられます。
次のようなサインがあれば、呼吸器内科、耳鼻咽喉科、睡眠外来、かかりつけ医などへ伝えてください。
- 家族から呼吸が止まると言われた
- いびきの後に、むせるように息を吸う
- 朝に頭痛や口の渇きがある
- 夜中に何度もトイレへ行く
- 日中に会議中や運転中まで眠くなる
- 血圧が高い、または治療中でも下がりにくい
「いびきをかくから睡眠時無呼吸」とは限りませんが、呼吸停止や強い日中の眠気がある場合は、生活習慣だけで様子を見続けない方が安全です。
夜間頻尿・痛み・薬の影響は、眠り方より原因を扱います
目が覚めるたびにトイレへ行く場合、尿意で起きたのか、別の理由で起きてからトイレへ行ったのかで考え方が変わります。
夜間頻尿には、飲水や飲酒の時間だけでなく、前立腺、膀胱、糖尿病、心臓や腎臓の病気、睡眠時無呼吸などが関係する場合があります。
また、腰痛、肩の痛み、皮膚のかゆみ、咳、胸焼けが眠りを途切れさせることもあります。
眠りだけを薬で抑える前に、夜中に起きる直接の症状を医師へ伝えてください。
処方薬や市販薬を追加してから眠れない、昼間にぼんやりするようになった場合は、お薬手帳を持って医師や薬剤師へ聞きます。
自分の判断で処方薬を中止したり、服用時刻を大きく変えたりしないでください。
市販の睡眠改善薬を、毎晩の対策にしないでください
薬局で購入できる睡眠改善薬は、一時的な不眠を対象とするものです。
長く続く不眠の治療薬として、漫然と使用するものではありません。翌朝の眠気、口の渇き、排尿しにくさなどが出ることもあり、ほかの薬との組み合わせに注意が必要です。
現在治療中の病気がある、複数の薬を飲んでいる、飲酒している場合は、購入前に薬剤師へ伝えます。
すでに医師から睡眠薬を処方されている方は、効かないからと量を増やしたり、急にやめたりしないでください。
「夜中に三回目が覚め、朝に薬が残る感じがあります。今の薬の目的と飲む時刻を見直したいです」
このように、効果だけでなく翌日の状態も伝えます。
受診を考える目安は「続いた日数」と「生活への影響」です
旅行、仕事の締切、家族の心配事などで、一時的に眠れなくなることはあります。
数日で戻り、昼間の生活を保てるなら、生活リズムを整えながら様子を見ることもできます。
次の状態では、かかりつけ医へ早めに話してください。
- 睡眠の不調が数週間続き、改善する様子がない
- 仕事、家事、介護、対人関係に支障が出ている
- いびき、呼吸停止、足の強いむずむず感がある
- 頻尿、痛み、咳、動悸、寝汗などで繰り返し起きる
- 薬を変更してから睡眠や日中の状態が悪くなった
- 気分の落ち込み、意欲低下、何をしても楽しめない状態が続く
- 強い眠気で運転や仕事に危険を感じる
受診先が分からない場合は、まず内科や普段のかかりつけ医で構いません。
症状に応じて、睡眠外来、呼吸器内科、耳鼻咽喉科、婦人科、泌尿器科、精神科・心療内科などへつないでもらえます。
診察では「眠りが浅い」だけでなく、一晩の流れを伝えます
受診前の一週間、スマートフォンのメモやカレンダーへ次の項目を残します。
- 寝床へ入った時刻
- おおよそ眠った時刻
- 夜中に起きた回数と理由
- 最後に目覚めた時刻と起床時刻
- 昼寝の時刻と長さ
- 夕方以降のカフェインと飲酒
- 朝の疲労感を0から10で表した数字
- 日中に困ったこと
分単位で正確に記録する必要はありません。睡眠を計測することが新たな負担にならない範囲で続けます。
腕時計型の機器や睡眠アプリの数値は、生活の傾向を見る参考にはなりますが、それだけで睡眠障害を診断することはできません。
診察では、次のように伝えられます。
「一か月ほど、午前2時から4時の間に二、三回起きます。布団には七時間いますが、朝の疲労感は10段階で8程度です。妻からいびきと呼吸停止を指摘されています」
ここまで具体的であれば、医師も検査や治療の必要性を考えやすくなります。
今夜は、明日の起床時刻だけを決めます
眠りを改善しようとして、今夜から早寝、禁酒、運動、入浴、寝具交換をすべて始める必要はありません。
まず、明日の起床時刻を普段どおりに決め、アラームを一つだけ設定してください。
朝になったら、次の二つをスマートフォンへ残します。
- 夜中に目が覚めた回数
- 朝の疲労感を0から10で表した数字
一週間続けると、「お酒を飲んだ日」「夕方に寝た日」「寝汗があった日」など、浅い眠りと重なる出来事が見え始めます。
原因が一つ見えれば、全部を変えなくても次の手を選べます。自分で整えられる部分なのか、医療機関へ渡すべき問題なのかも、そこで分けられます。













