届いた封筒を、何日も同じ場所へ置いたままにしてしまいます
仕事から帰ると、健診センターから白い封筒が届いている。
差出人を見た瞬間、胸のあたりが重くなります。
開けようと思って手に取るのに、「今日は疲れているから」「明日の朝にしよう」と机へ戻す。
翌日も、その次の日も開けられない。
封筒を見ない場所へ移しても、頭の中からは消えません。
「大きな病気が見つかっていたらどうしよう」
「治療が必要なら、仕事は続けられるのか」
「家族に心配をかけるかもしれない」
「もっと早く生活を改めればよかった」
結果をまだ見ていないのに、入院、治療費、家族への説明まで想像してしまうことがあります。
周囲から「早く見た方がいい」「悪いと決まったわけではない」と言われても、その正しさがかえって苦しく感じられるかもしれません。
見られないのは、健康を軽く考えているからではありません。
結果を見た瞬間から、何かを決めなければならないと思っているからです。
けれど、封筒を開けた日に、病名も治療も生活の変更もすべて決める必要はありません。
その日にするのは、「次に何をすればよいか」を一つ見つけるところまでです。
結果を見る前に怖いのは、病気だけとは限りません
「病気が見つかるのが怖い」と思っていても、怖さの中身を分けると、別の心配が隠れていることがあります。
| 心配していること | 頭に浮かびやすいこと | 結果を見る前に決めておけること |
|---|---|---|
| 病名を知ること | 重大な病気だったら耐えられない | 結果票だけで病名を決めず、医師の説明を聞く |
| 検査を受けること | 痛い検査やつらい検査になるのでは | 予約時に検査内容や準備を聞く |
| 仕事への影響 | 休職や退職が必要になるかもしれない | まず受診日だけを決め、先の働き方は診断後に考える |
| 家族への負担 | 心配や迷惑をかけるかもしれない | 結果を見る場面だけ付き添ってもらう |
| 自分を責めること | 食生活や飲酒を注意されるのがつらい | 反省より先に、現在の数値と必要な行動を見る |
| 治療費 | 高額な費用がかかるかもしれない | 病気も治療も決まる前に費用を想像しすぎない |
何が一番怖いのか分かると、開封の仕方も変えられます。
数値を見るのが怖いなら、最初は家族に総合判定だけ読んでもらう。医療用語が怖いなら、健診機関へ電話できる時間帯に開ける。
自分を責めそうなら、「今日は生活改善の反省会をしない」と先に決めておきます。
封筒は、夜中や出勤直前に開けなくても構いません
結果を見る勇気が出た瞬間に、急いで開ける必要はありません。
一人で不安を抱え込みやすい時間を避け、開けたあとに誰かへ連絡できる環境を選びます。
| 決めておくこと | 具体例 |
|---|---|
| 開ける日時 | 平日の午前中、土曜日の昼など |
| 一緒にいる人 | 配偶者、子ども、きょうだい、信頼できる友人 |
| 見る場所 | 落ち着ける自宅、家族の家 |
| 手元に置く物 | 眼鏡、メモ、前回の結果、カレンダー |
| 開けた後の連絡先 | 健診機関、かかりつけ医、会社の保健師・産業医 |
| その後の予定 | 重要な仕事や長時間の運転を入れない |
家族へ頼むときは、詳しく説明しなくても構いません。
「健診結果が届いたけれど、一人で開けるのが怖い。隣にいて、最初に判定だけ一緒に見てほしい」
同じ部屋にいるのが難しければ、電話やビデオ通話をつないだまま開ける方法もあります。
最初からすべての数値を読まず、三回に分けて見ます
結果票には、血圧、血糖、脂質、肝機能、血球、尿検査など、多くの項目が並んでいます。
最初から一つずつ基準値と比べると、印の付いた項目へ目が止まり、全体の判断が分からなくなることがあります。
次の順番で見てください。
| 見る回 | 見る場所 | その場ですること |
|---|---|---|
| 1回目 | 総合判定、医師のコメント | 次に必要な行動があるかを見る |
| 2回目 | 要再検査・要精密検査・要治療の項目 | 対象項目と受診期限を書く |
| 3回目 | 各数値、前回値、生活上の助言 | 受診や保健指導で尋ねたいことを書く |
1回目で「異常なし」「経過観察」と分かったなら、いったんそこで休んでも構いません。
「要精密検査」の文字があった場合も、ほかの項目を全部読み切ってからでなく、先に受診先を確かめます。
結果票を完全に理解することより、必要な行動を見落とさないことを優先します。
判定記号は、病名ではなく「次に取る行動」を示しています
厚生労働省の健康情報では、健診の結果区分の一例として、AからFまでの判定が示されています。ただし、実際の記号や名称は健診機関によって異なります。
| 判定の例 | 一般的な意味 | 次の行動 |
|---|---|---|
| 異常なし | 明らかな異常所見が認められない | 次回も決められた時期に健診を受ける |
| 軽度所見・有所見 | 所見はあるが、すぐの処置が不要と判断されている | 結果票の生活上の助言や経過を見る |
| 要経過観察 | 一定期間後の変化を見る必要がある | 次の確認時期をカレンダーへ入れる |
| 要再検査 | 一時的な変動か、繰り返し異常があるかを確かめる | 指定された時期に同じ項目等を調べる |
| 要精密検査 | 詳しい検査で原因や病気の有無を確かめる必要がある | 案内された診療科や医療機関を予約する |
| 要治療・要受診 | 医師による検査や治療が必要と判断されている | 結果票を持って早めに医療機関を受診する |
| 治療中 | すでに治療を受けている項目 | 主治医へ健診結果を見せ、治療を続ける |
異常値が一つあることと、病名が確定することは同じではありません。
検査値は基準値との比較だけで判断するものではなく、年齢、性別、受診時の状態、ほかの検査値、医師の診察などを合わせて評価されます。厚生労働省も、異常値が出たからといって、ただちに病気にかかったと考えるのは早いと案内しています。
一方、「病気と決まっていないなら放置してよい」という意味でもありません。
病気かどうか分からないからこそ、再検査や精密検査で確かめます。
「要再検査」と「要精密検査」では、確かめたいことが違います
似た言葉ですが、次に行う検査の目的が異なります。
| 判定 | 確かめること | 受診時の考え方 |
|---|---|---|
| 要再検査 | 一時的な変化か、同じ異常が続いているか | 指定された時期と条件で検査を受け直す |
| 要精密検査 | 異常の原因や病気の有無 | より詳しい検査ができる医療機関を受診する |
| 要治療・要受診 | 治療開始や継続的な医学的管理が必要か | 先延ばしにせず、医師へ結果票を見せる |
| 要経過観察 | 時間がたったときの数値や状態の変化 | 次に確かめる月を忘れないようにする |
厚生労働省の指針では、健診結果を通知するだけでなく、必要な人には再検査、精密検査、治療のための受診を勧めることが示されています。
結果票に「3か月後に再検査」「早めに医療機関へ」などの記載がある場合は、その指示を優先してください。
がん検診の「要精密検査」は、がんの確定ではありません
胃、肺、大腸、乳房、子宮頸部などのがん検診で「要精密検査」と書かれていると、がんだと宣告されたように感じるかもしれません。
がん検診は、精密検査が必要な人を広く拾い上げ、その後の検査で、がんがあるか、ないかを調べる仕組みです。
そのため、「要精密検査」はがんの診断結果ではありません。実際にはがんがないのに精密検査が必要と判定される「偽陽性」もあります。
ただし、「がんと決まったわけではないから行かなくてよい」という意味ではありません。
国立がん研究センターは、要精密検査となった場合には、症状がなくても精密検査を受けるよう案内しています。精密検査を受けて初めて、がんの有無を確かめられます。
| 結果を見たときの考え | 置き換えたい言葉 |
|---|---|
| 「要精密検査だから、がんだ」 | 「今の検査だけでは決まらないため、詳しく確かめる」 |
| 「症状がないから間違いだろう」 | 「症状がない段階の異常を調べるのが検診の役割」 |
| 「もう一度同じ検診をすればよい」 | 「結果票で指定された精密検査を受ける」 |
| 「怖いから次の検診まで待つ」 | 「怖さを抱えたままでも、予約だけ先に取る」 |
がん検診では、結果票に精密検査を受けられる医療機関の一覧が同封されている場合があります。見当たらない場合は、検診機関へ受診先を尋ねられます。
数字の横に印があっても、その場で病名を検索し続けないでください
結果を開いた直後は、印の付いた数値をインターネットで検索したくなります。
「AST 高い」「白血球 少ない」「便潜血 陽性」と入力すると、重い病名が並び、結果票を見る前より怖くなることがあります。
数値一つだけでは、原因や病気の有無を判断できないことがあります。健診結果は、ほかの検査値、既往歴、症状、診察所見などと合わせて評価されるものです。
検索する前に、次の内容を結果票から拾います。
- 判定は要経過観察・要再検査・要精密検査のどれか
- 医師のコメントはあるか
- 前回と比べてどの程度変化しているか
- 受診時期の指定はあるか
- 受診する診療科が書かれているか
結果を開いた当日は、病名を決めるための検索をせず、医療機関へ尋ねたい質問を書くだけにしても構いません。
結果別に、その日にすることを一つに絞ります
| 結果 | 今日すること | 今日しなくてよいこと |
|---|---|---|
| 異常なし | 結果票を保管し、次回の健診時期を把握する | すべての病気がないと断定する |
| 要経過観察 | 次に確認する時期をカレンダーへ入れる | 毎日数値を心配し続ける |
| 要再検査 | 再検査の時期と受診先を聞く | 自己流の極端な食事制限で数値だけを変えようとする |
| 要精密検査 | 検査に対応できる医療機関へ予約する | 病名や治療を自分で確定する |
| 要治療・要受診 | 結果票を持参できる受診日を決める | 症状がないからと放置する |
| 読み方が分からない | 健診機関へ判定の意味を聞く | 分からないまま家族の経験だけで判断する |
健診で軽度の異常が見つかった場合、必ずしもすぐ薬による治療になるとは限らず、生活習慣の見直しや保健指導で改善を目指す場合があります。一方、特定の病気を調べる検診で異常があった場合には、精密検査が必要です。
どの対応に当たるかは、結果票と医師の判断で確かめてください。
医療機関へ電話するときは、結果票の言葉をそのまま読みます
「何と説明すればよいか分からない」と思い、予約を先延ばしにすることがあります。
自分で症状や病名を説明する必要はありません。
健康診断の結果について予約したいです。
○○の項目が「要再検査/要精密検査/要受診」と判定されました。
結果票には、○○科を受診するよう書かれています。
この結果に対応する検査を受けられますか。
予約日までに準備するものはありますか。
がん検診の精密検査では、検査の種類によって対応する診療科や設備が異なります。予約時に、結果票に書かれた検査項目を伝え、その医療機関で精密検査を受けられるか尋ねてください。
結果票に診療科が書かれていない場合は、健診機関へ問い合わせるか、かかりつけ医へ結果票を見せます。
受診日には、結果票と「聞きたいこと三つ」を持っていきます
診察室へ入ると緊張し、聞こうと思っていたことを忘れる場合があります。
| 持参する物 | 用途 |
|---|---|
| 今回の健診結果 | 異常項目、判定、医師コメントを見てもらう |
| 過去の健診結果 | 数値がいつから変わったかを比較する |
| お薬手帳 | 現在の治療薬や服薬状況を伝える |
| 症状のメモ | いつから、どのような症状があるか伝える |
| 質問のメモ | 検査の目的と次の流れを聞き忘れない |
質問は、次の三つ程度で構いません。
- 今回の判定では、何を確かめるための検査をしますか
- 検査までの間、日常生活で避けた方がよいことはありますか
- 検査結果はいつ、どのように分かりますか
医師へ「重大な病気でしょうか」と聞くことをためらわなくて構いません。
ただし、追加検査前には答えが決まらないこともあります。その場合は、「今分かっている範囲」と「検査で確かめること」を分けて説明してもらいます。
受診前に、食事や運動を急に極端に変えない方がよいことがあります
数値を見て怖くなり、翌日から食事をほとんど取らない、急に激しい運動を始める、飲んでいる薬をやめるといった行動へ向かうことがあります。
生活を見直すことは役立ちますが、原因や現在の状態が分からないまま、極端な変更をする必要はありません。
- 処方薬を自己判断で中止・増減しない
- 再検査の直前だけ無理な食事制限をしない
- 体調が悪い状態で激しい運動を始めない
- 健康食品やサプリメントを一度に増やさない
- 飲酒量や食事内容は隠さず医師へ伝える
健診の目的は、次の検査だけ良い数値を出すことではありません。
普段の生活を含めて、今の体にどのような対応が必要かを考えることです。
家族は結果を奪って読むのではなく、本人が止まった場所を手伝います
親や配偶者が健診結果を開けずにいると、家族は心配になり、勝手に開けたくなるかもしれません。
しかし、本人の同意なく健康情報を見ると、信頼関係を損ねることがあります。
| 避けたい言い方・行動 | 代わりにできること |
|---|---|
| 「早く見ないと手遅れになるよ」 | 「一人で見たくないなら、隣にいようか」と聞く |
| 本人に黙って封筒を開ける | どこまで手伝ってよいか本人に尋ねる |
| 「きっと大丈夫」と結果を見る前に決める | 良くても悪くても次の行動を一緒に考えると伝える |
| 異常値を責める | 判定と受診時期を一緒に読む |
| 家族だけで病名を検索する | 健診機関や医療機関へ聞く質問を作る |
| 本人に代わってすべて予約する | 本人の希望を聞き、必要なら横で電話を支える |
本人が結果を見られないときは、「総合判定だけ私が先に読み、詳しい数値はあとにする?」と選択肢を出せます。
要精密検査があった場合も、家族がその場で病気の説明をするのではなく、予約先と持ち物を一緒に探します。
仕事が心配でも、結果を見た日に退職や休職を考える必要はありません
会社の健康診断で異常を指摘されると、職場に知られることや仕事を続けられなくなることが怖くなる場合があります。
再検査や精密検査の判定だけで、直ちに働けないと決まるわけではありません。
職場の健診では、必要に応じて産業医などが、本人の健康状態、作業内容、職場環境を踏まえて就業上の配慮を検討します。再検査や精密検査が必要な労働者には、受診を勧めることも指針に示されています。
まずは検査を受け、医師から仕事上の制限が必要と言われた場合に、会社の人事・労務担当や産業医へ具体的な配慮を相談します。
職場へ伝える際も、必要以上に詳しい病歴を同僚全員へ話す必要はありません。
「再検査のため○日に受診したい」「医師から結果が出るまで夜勤を控えるよう言われた」など、仕事に必要な範囲から伝えます。
結果が「異常なし」でも、気になる症状があれば受診します
健診結果に異常がなければ、何が起きても病気ではないという意味ではありません。
健診と検診では調べる項目や対象となる病気が限られています。
厚生労働省は、健診・検診で異常がない場合でも、何らかの症状がある人は医療機関を受診するよう案内しています。
特に次のような急な症状がある場合は、健診結果を読み直したり、次の予約日を待ったりせず、緊急の医療につなげます。
- 突然の激しい胸や背中の痛み
- 急な息切れ、呼吸困難
- 顔の片側が動きにくい、口元がゆがむ
- ろれつが回らず、うまく話せない
- 片方の腕や脚へ急に力が入らない
- 突然の激しい頭痛や腹痛
- 意識がおかしい、けいれんがある
- 血を吐く、便に血が混じる
厚生労働省は、こうした症状を、迷わず救急車を呼ぶ目安として案内しています。
結果を見るのが怖い状態そのものが、生活を圧迫していることもあります
結果のことを考えて眠れない。仕事中も病気の検索をしてしまう。健診を受けるたびに何週間も食事が取れなくなる。
その場合は、今回の検査結果だけでなく、健康への不安が生活へ与えている影響も誰かへ伝えてください。
| 起きていること | 伝える相手の例 |
|---|---|
| 結果を見る前から何日も眠れない | かかりつけ医、心療内科等 |
| 病気の検索を何時間も続ける | かかりつけ医、地域の健康相談 |
| 怖くて健診や精密検査を繰り返し避ける | 健診機関、医療機関の相談窓口 |
| 家族にも結果を隠し、食事や仕事へ影響が出る | 信頼できる家族、医療機関 |
| 悪い結果なら生きていたくないと考える | 一人にならず、身近な人や緊急の相談窓口 |
「結果が良ければ落ち着くから」と考えていても、毎年同じ強い恐怖が起きる場合は、不安そのものへの支援が役立つことがあります。
医療機関では、「健診結果を開けられず、眠れないほど怖くなる」とそのまま伝えて構いません。
今日の目標は、全部受け入れることではなく一行目を見ることです
封筒を開けたら、悪い結果をすべて受け止めなければならないと思うかもしれません。
今日は、そこまで進まなくて構いません。
次の中から、一つだけ選んでください。
- 封筒を開ける日時を決める
- 一緒に見てほしい人へ連絡する
- 封筒を開けて、総合判定の一行だけ見る
- 要再検査・要精密検査の有無だけ見る
- 書かれている問い合わせ先へ電話する
- 医療機関の予約だけ取る
「要精密検査」の文字があったとしても、その場で人生の先まで決まるわけではありません。
分かるのは、今の検査だけでは判断できず、次の検査が必要だということです。
反対に「異常なし」だった場合も、怖がった自分を恥ずかしく思う必要はありません。
結果を見る前には、良いか悪いか分からなかったのですから、怖くなったのは自然なことです。
封筒を開けることは、悪い知らせを確定させる行為ではありません。
今の体について分かっていることと、まだ分からないことを分ける行為です。
まず今日は、封筒を開ける15分をカレンダーへ入れ、その時間に一人にならない方法を一つ決めてください。
出典・確認先メモ
- 厚生労働省「『健診』の基礎知識」:健診結果の判定区分例、基準値と異常値の受け止め方。
- 厚生労働省「健診と検診」:健診と検診の役割、軽度の検査値異常と保健指導、精密検査の必要性。
- 厚生労働省「健康増進事業実施者に対する健康診査の実施等に関する指針」:結果通知、再検査・精密検査・治療のための受診勧奨。
- 国立がん研究センター「がん検診について」:要精密検査の意味、がん検診後の流れ、精密検査機関の探し方。
- 厚生労働省「健康診断結果に基づき事業者が講ずべき措置に関する指針」:職場健診後の再検査・精密検査と就業上の措置。
- 厚生労働省「こんな時は迷わず119へ」:胸痛、呼吸困難、脳卒中を疑う症状など、緊急性が高い症状の目安。













