結果の封筒が、何日も同じ場所に置かれたままになることがあります
仕事から帰ると、健康診断の結果が届いている。
封筒を手に取ったものの、開けずに食卓の端へ置く。
翌朝も封筒はそこにあります。
「開けて悪い結果だったら、今までどおり暮らせなくなる」
「がんや重い病気だったらどうしよう」
「食べすぎや運動不足を責められそう」
「病院へ行けば、さらに怖い検査を受けることになる」
見なければ、少なくとも今夜は何も決まらない。そう思って、数日、一週間と過ぎることがあります。
すでに結果を見たものの、「要再検査」「要精密検査」という文字が怖くなり、書類を引き出しへしまった方もいるでしょう。
放置している自分を責めながら、それでも予約の電話をかけられない。
これは、健康を軽く考えているからとは限りません。
結果を知った瞬間に、仕事、家族、お金、治療など、これからの生活が一度に変わるように感じるためです。
ただ、健診結果には、「病気が確定した」という知らせだけが書かれているわけではありません。
今は経過を見ればよいのか、もう一度同じ検査をするのか、詳しい検査へ進むのかを振り分ける役割があります。
最初からすべてを理解しなくても構いません。
結果を見る作業と、病院へ行く作業を分け、今日は次の一手だけ決めます。
封筒を開けられないときは、十分間だけ誰かに付き合ってもらいます
怖さが強い方は、「落ち着いたら一人で見よう」と考えるほど、開封する日が遠くなることがあります。
家族や信頼できる人へ、次のように頼んでください。
「結果を全部説明してほしいわけではないの。横にいて、病院へ行く必要があるかだけ一緒に見てほしい」
見る時間は十分だけと決めます。
- 封筒を開ける
- 総合判定や結果一覧のページを出す
- 「再検査」「精密検査」「治療」「受診」などの言葉を探す
- 受診期限や推奨時期が書かれていないか見る
- その日は書類を一つの袋へ戻す
数値を一つずつインターネットで検索する必要はありません。
まず、「医療機関へ行く必要があるか」という行動の指示だけを読みます。
一人で開く場合は、寝る直前や出勤前を避け、電話できる時間帯に行います。分からないことがあれば、そのまま健診機関へ問い合わせられるからです。
アルファベットより、「何をしてください」と書かれた部分を読みます
健康診断の結果には、A、B、C、Dなどの記号が使われることがあります。
ただし、判定記号や名称の使い方は、健診機関や加入する健康保険などによって異なる場合があります。日本人間ドック・予防医療学会でも年度ごとの判定区分表が示されているため、手元の結果票に記載された説明を優先してください。
| 結果票にある言葉 | 一般的な受け止め方 | 次に見ること |
|---|---|---|
| 異常なし | 今回の検査範囲で、特に対応を求められていない | 次回の健診時期と、現在の症状の有無 |
| 軽度異常・経過観察 | 生活改善や一定期間後の確認を勧められている | 何か月後に、どの検査を受けるのか |
| 要再検査 | 同じ検査などをもう一度行い、変化や一時的な異常かを確かめる | 再検査の時期と受診先 |
| 要精密検査 | 異常の原因を詳しく調べる検査が必要 | 推奨される診療科、紹介状、期限 |
| 要受診・要治療 | 医療機関で診察を受け、必要な治療を検討する段階 | 早めの受診時期と、持参する書類 |
| 治療中・主治医へ相談 | 現在の治療内容と健診結果を主治医に共有する | 次回診察を待てるのか、先に連絡するのか |
同じ「C」や「D」でも、手元の結果票で意味が違う可能性があります。
記号だけを検索せず、結果票の凡例と、検査項目ごとのコメントを一緒に見てください。
結果票から抜き出すのは、数値ではなく三つの指示です
赤い数字や上向き・下向きの矢印が並んでいると、すべてが悪いように感じます。
予約前に書き出すのは、次の三点だけで構いません。
- どの検査項目で指摘されたか
- 何をするように書かれているか
- いつまで、または何か月後に受けるのか
| 書き出す項目 | 記入例 |
|---|---|
| 指摘された項目 | 血圧、血糖、胸部エックス線 |
| 判定・指示 | 血圧は要受診、血糖は再検査、胸部は精密検査 |
| 受診時期 | 血圧は早め、血糖は三か月以内、胸部は速やかに |
| 書類の有無 | 胸部検査用の紹介状が同封されている |
| 現在の症状 | 最近、階段で息切れすることがある |
一番重い判定が付いた項目から動きます。
複数の項目がある場合も、一日ですべての病院を予約しなくて構いません。
最初に健診機関へ電話し、「どの項目を優先すればよいですか」と聞く方法があります。
「要精密検査」は、病気が確定したという意味ではありません
要精密検査という文字を見ると、「重い病気が見つかった」と受け取ってしまうことがあります。
しかし、精密検査は、健診で見つかった所見の原因を詳しく調べ、本当に病気があるのか、治療が必要なのかを確かめる段階です。
たとえば、がん検診の「要精密検査」は、がんが確定したという通知ではありません。国立がん研究センターは、検診で精密検査が必要とされたあと、詳しい検査によって「がんがあるか、ないか」を診断する流れを示しています。
だからといって、「確定ではないなら行かなくてもよい」という意味でもありません。
要精密検査となった理由を確かめるには、指定された検査を受ける必要があります。
結果を見る前の不安は、「悪い病気かもしれない」という想像です。
精密検査へ進むことは、その想像を事実へ置き換えるための行動でもあります。
症状がないことは、受診を先延ばしにしてよい理由にはなりません
健診で指摘されても、痛みや苦しさがなければ、「体調は普通だから大丈夫」と考えたくなります。
一方で、高血圧、高血糖、脂質異常などは、自覚症状がないまま進む場合があります。協会けんぽも、健診で要治療とされた方には、自覚症状がなくても医療機関を早期に受診するよう案内しています。
反対に、結果票で大きな異常がなくても、現在つらい症状があるなら、次回健診まで待たないでください。
- 胸の痛みや圧迫感
- 急な息苦しさ
- 片側の手足が動かしにくい
- ろれつが回らない
- 意識が遠のく、失神する
- 突然の激しい頭痛
- 吐血や大量の血便
- 急速に悪化する強い痛み
このような急な症状がある場合は、健診結果の予約とは分け、119番など緊急性に応じた対応を優先します。
救急車を呼ぶべきか、すぐ受診すべきか迷う場合には、実施地域の救急安心センター「#7119」や、総務省消防庁の全国版救急受診アプリ「Q助」が判断の助けになります。#7119は実施していない地域もあるため、地域の案内を確かめてください。
何科へ行けばよいか分からないときは、健診機関へ一度電話します
結果を見ても、受診先が分からず止まってしまうことがあります。
結果票に診療科や医療機関の指定があれば、それを優先します。
指定がない場合は、健診を受けた施設へ次のように尋ねてください。
「健診結果で○○が要精密検査になりました。どの診療科を予約すればよいですか。紹介状や画像はありますか」
| 指摘された項目 | 受診先を探すときの目安 |
|---|---|
| 血圧、血糖、脂質、肝機能、腎機能、貧血など | かかりつけ医または内科へ、対応可能か電話で尋ねる |
| 心電図 | 内科または循環器内科。現在の胸痛や息苦しさがあれば緊急性を伝える |
| 胸部エックス線 | 結果票で指定された医療機関、呼吸器内科などへ対応可能か尋ねる |
| 胃・便潜血・腹部の所見 | 消化器内科などへ、必要な精密検査を実施できるか尋ねる |
| 乳房検査 | 乳腺を扱う診療科へ、健診後の精密検査に対応しているか尋ねる |
| 子宮頸部細胞診など | 婦人科へ、結果票の判定を伝えて予約する |
| 眼底・眼圧・視力 | 眼科へ、健診結果を持参してよいか尋ねる |
上の表は受診先を探す際の目安です。検査内容や所見によって適切な診療科が変わるため、予約前に結果票の文言を医療機関へ伝えてください。
厚生労働省の「医療情報ネット(ナビイ)」では、地域、診療科、受付時間などから全国の医療機関を検索できます。
予約の電話では、病名を説明できなくても構いません
病院へ電話するとき、「自分で結果を正しく説明できない」と考えて緊張する方がいます。
結果票を読み上げれば十分です。
次の順番で伝えます。
- 健康診断の再検査・精密検査であること
- 指摘された検査項目
- 結果票に書かれた判定
- 現在の症状の有無
- 紹介状や画像の有無
たとえば、次のように話せます。
「健康診断の結果について予約したいです。胸部エックス線が要精密検査となり、『右上肺野に陰影』と書かれています。紹介状が一通あります。今は咳や発熱はありません。こちらで受診できますか」
血液検査なら、次のように伝えられます。
「健康診断で血糖が要受診となりました。結果票を持っていますが、自分では数値の意味が分かりません。初診で相談できますか」
受付の人が詳しい医学的説明をするとは限りません。
その医療機関で対応できるか、予約枠はいつか、何を持って行くかを聞ければ、その電話の目的は達成しています。
受診日に持って行くものを、一つの袋へ入れます
| 持ち物 | 役立つ理由 |
|---|---|
| 今回の健診結果票 | 数値、所見、判定、健診日を医師へ見せられる |
| 紹介状・画像データ・検査資料 | 同じ検査の重複を避け、精密検査を進めやすくする |
| 過去の健診結果 | 一回の数値だけでなく、変化を見てもらえる |
| マイナ保険証など資格を確認できるもの | 保険診療の手続きに使う |
| お薬手帳・服薬一覧 | 薬の影響や治療中の病気を伝えられる |
| 現在の症状メモ | いつから、どんな場面で起きるかを忘れず伝えられる |
| 聞きたいこと三つ | 緊張しても必要な説明を受けやすい |
質問は多く用意しすぎず、次の三つで構いません。
- 今回の結果から、何が考えられますか
- 次にどの検査が必要ですか
- 結果が出るまで、生活で避けることはありますか
「重い病気でしょうか」と聞くこともできます。
ただ、検査前には医師も確定的な答えを出せない場合があります。そのときは、「現時点で分かっていること」と「検査しなければ分からないこと」を分けて説明してもらいます。
去年も同じ数値だったからと、自分だけで大丈夫と決めないようにします
過去の結果と同じなら、安心材料になることはあります。
しかし、同じ項目でも数値の程度、ほかの検査との組み合わせ、年齢、持病、服薬、症状によって判断は変わります。
反対に、基準値から少し外れただけで、すぐ重い病気だと決まるわけでもありません。
インターネットで検査値を検索すると、軽い原因から重い病気まで一度に表示されます。
検索するほど怖くなって受診できなくなる方は、数字を調べる代わりに、結果票を医療機関へ持って行く日を決めてください。
数値を診断へ変えるのは、検索結果ではなく、診察や必要な追加検査です。
数か月、数年放置してしまっていても、今から受診できます
結果を放置して時間が経つと、病院で叱られるのが怖くなります。
「去年の結果を今さら持って行っても意味がない」
「もし悪化していたら、放置した自分のせいだ」
そう考え、さらに先延ばしにすることがあります。
予約時には、放置した理由を立派に説明する必要はありません。
「昨年の健診で要再検査でしたが、怖くて受診できませんでした。今から検査を受けたいです」と、そのまま伝えてください。
時間が経っていれば、当時の精密検査ではなく、現在の状態を調べるところから始まる場合があります。
古い結果票も捨てずに持参します。現在の検査値と比べる材料になることがあるためです。
受診が遅れたことを責め続けても、次の検査日は決まりません。
「放置した期間」ではなく、「今日、予約先を一つ決めたこと」をこれからの出発点にします。
検査費用や仕事の休みが気になるときは、予約前に尋ねられます
結果が怖いだけでなく、費用や仕事の調整ができず、受診を止めている方もいます。
医療機関へ電話するとき、次のことを聞いて構いません。
- 初診当日に予定される検査
- おおよその滞在時間
- 食事を抜く必要があるか
- 結果説明が別日になるか
- 紹介状が必要か
- 対応可能な曜日や時間帯
費用は、検査内容や保険適用、医療機関によって変わります。受付で確定額を答えられない場合もありますが、「当日にどの検査を予定しているか」「現金以外で払えるか」などは確認できます。
職場の健康診断で異常所見があった場合は、職場の産業医、保健師、健康管理担当へ受診方法や就業上の配慮を聞ける場合があります。事業者には、異常所見がある健診結果について医師等の意見を聴き、必要な就業上の措置を検討する仕組みがあります。
職場へ病名を決めつけて報告する必要はありません。
「健診後の精密検査が必要で、平日の受診時間を確保したい」と、現時点で分かっている範囲を伝えます。
一人で結果を聞くのが怖いなら、付き添いを頼んでも構いません
検査そのものより、「結果を一人で聞くこと」が怖い場合があります。
医療機関へ、家族の同席が可能か事前に尋ねてください。
付き添う人には、次のように頼みます。
「代わりに全部決めてほしいわけではない。説明を一緒に聞いて、私が聞き逃したところをメモしてほしい」
| 付き添う人に頼めること | 本人へ任せたいこと |
|---|---|
| 予約日時を一緒に決める | 医師へ聞きたいことを選ぶ |
| 結果票や薬の準備を手伝う | 検査や治療の説明を本人も聞く |
| 診察内容をメモする | 本人の希望や不安を伝える |
| 帰宅後に次の予定を見直す | 同意が必要な判断を急がず考える |
家族が心配している方は、「早く行きなよ」と繰り返すより、具体的な一部分を手伝ってください。
「明日の昼休みに予約先を一緒に探そう」
「電話はあなたが話して、私は横で結果票を見るよ」
行動を小さくすると、本人も責められていると感じにくくなります。
家族の結果を本人より先に見ても、勝手に病名を決めないでください
夫や妻、親の健診結果を見て、家族の方が強く動揺することがあります。
赤い文字や「要精密検査」を見つけると、本人がのんびりしていることに腹が立つかもしれません。
ただ、家族がインターネットで病名を調べ、「これは重い病気に違いない」と伝えると、本人が結果を見なくなることがあります。
次のように事実だけを伝えてください。
「この項目に『要精密検査』と書かれている。病名が決まったわけではないけれど、詳しい検査が必要みたい。今週、電話だけ一緒にしない?」
本人の同意なく、家族だけで検査や治療を決めるのではなく、書類を読むこと、予約すること、付き添うことを分けて提案します。
結果への怖さで眠れない日が続くなら、その苦しさも受診時に伝えます
健診結果が届いてから、何度も重大な病気を検索する。仕事中も結果のことを考える。夜中に目が覚め、脈や体の違和感を確かめ続ける。
このような状態では、精密検査の予約を取っても、結果が出るまでの時間がつらくなります。
受診先では、検査値だけでなく、次のことも伝えて構いません。
- 結果を見るのが怖く、何日も開けられなかった
- 病気の検索をやめられない
- 眠れない、食事が取れない状態が続いている
- 不安で仕事や家事に集中できない
- 過去の病気や家族の闘病を思い出してしまう
「心配しすぎ」と片づけるのではなく、結果への不安で生活に何が起きているかを話します。
身体の検査と、不安による睡眠や生活への影響を、別々に扱ってもらうことができます。
今日することは、結果の意味を全部理解することではありません
健康診断の結果を放置していると、「次に見るときは、全部受け止めなければならない」と感じます。
けれど、今日は病気の有無を自分で判断する日ではありません。
結果票を開き、次の三か所へ印を付けてください。
- 最も重い判定が付いている項目
- 再検査・精密検査・受診などの指示
- 受診を勧められている時期
次に、結果票に書かれた健診機関の電話番号を見つけます。
電話では、この一文だけで構いません。
「健康診断の結果に要精密検査とあります。怖くてしばらく放置してしまいました。何科を受診すればよいか教えてください」
電話した日に検査を受けるわけではありません。
予約を取った瞬間に病名が決まるわけでもありません。
今日は、結果を一人で抱えている状態から、医療機関と一緒に確かめる状態へ移るだけです。
怖さがなくなってから動こうとすると、その日はなかなか来ません。
怖いままでも、封筒を開ける、指示を一つ読む、電話番号を出すという順番なら進めます。
放置してしまった時間より、今から何をするかの方が、これからの生活には役立ちます。
まず結果票の「何をしてください」という一文だけを見つけてください。それが、次に進むための入口になります。
出典・確認先メモ
- 日本人間ドック・予防医療学会「検査表の見方」「判定区分表等に関するQ&A」:健診項目と判定区分に関する確認先。
- 全国健康保険協会「健診結果を確認する」「医療機関への受診」:要治療判定後の受診に関する確認先。
- 国立がん研究センター「がん検診について」:要精密検査後の流れと、精密検査の必要性に関する確認先。
- 厚生労働省「医療情報ネット(ナビイ)」:地域、診療科、受付時間などから医療機関を探す際の確認先。
- 総務省消防庁「救急安心センター事業 #7119」「全国版救急受診アプリ Q助」:急な症状の緊急度に迷う場合の確認先。
- 判定記号、受診時期、適切な診療科、必要な検査は、健診機関、検査項目、本人の症状や既往歴によって異なります。手元の結果票を持って、健診機関または医療機関へ個別にご確認ください。













