三度目の食事でも、お金の話だけは切り出せないことがあります
会話は楽しく、次も会いたいと思える相手。
仕事について聞くと、「会社員です」「もう長く勤めています」と答えてくれます。住んでいる地域や休日の過ごし方も分かってきました。
それでも、年収の話だけはできません。
「お金目当てだと思われないだろうか」
「年収を聞いたら、こちらの収入や貯金も言わなければならないのか」
「好きになってから生活できないと分かったら、もっとつらいのでは」
結婚相談所のプロフィールには年収欄があるものの、その金額が現在も同じなのか、賞与を含むのか、証明済みなのかは分からない。
マッチングアプリで知り合った場合は、プロフィールに職業しか書かれていないこともあります。
50代の結婚では、「二人で働き続ければ何とかなる」とは限りません。
退職までの年数、住宅ローン、親の介護、成人した子どもへの援助、自分たちの年金など、すでに抱えている生活があります。
だからといって、出会ってすぐ通帳や源泉徴収票を見せ合う必要はありません。
関係の深まりに合わせて、生活の輪郭から具体的な金額へ進めていけばよいのです。
知りたいのは「年収」ではなく、二人で生活を続けられるかです
年収を聞く目的を自分の中で言葉にできないと、尋ね方が面接のようになってしまいます。
本当に知りたいことは、次のどれでしょうか。
| 知りたいこと | 年収だけで分かるか | 一緒に聞きたいこと |
|---|---|---|
| 結婚後の生活費を払えるか | 分かりにくい | 手取り、住居費、毎月の固定支出 |
| 退職後も暮らせるか | 現在の年収だけでは分からない | 退職時期、再雇用、年金見込額 |
| 借金を抱えていないか | 分からない | 住宅ローン、カードローン、その他の返済 |
| 金銭感覚が近いか | 分からない | 毎月の使い方、貯蓄、趣味、旅行への考え |
| 親や子どもへの援助があるか | 分からない | 介護費、仕送り、養育費、学費援助 |
| 相手に養ってもらえるか | 年収だけでは判断できない | 結婚後の家計分担についての意思 |
年収が高くても、多額の住宅ローンや家族への援助があれば、自由に使えるお金は多くないかもしれません。
反対に、年収が希望より低くても、住居費が少なく、借入れがなく、退職後の収入も見込める人なら、安定した生活を作れる場合があります。
金融庁も、生活設計では現在の収入だけでなく、家計管理、預貯金、保険、ローンなどを含めて考える必要があると案内しています。
聞く時期は、関係の深さに合わせて四段階にします
「何回目のデートなら聞いてよい」という絶対的な回数はありません。
会う頻度や婚活サービスの仕組みによっても違うため、二人がどこまで将来を考えているかで判断します。
| 関係の段階 | この時期に聞きやすいこと | まだ急がなくてよいこと |
|---|---|---|
| 初対面・最初の数回 | 仕事の内容、働き方、休日、生活の雰囲気 | 正確な年収、預貯金額、資産の内訳 |
| また会いたいと思った段階 | 退職予定、住みたい地域、共働きへの考え | 証明書の提示、財産の詳細 |
| 交際を続け、結婚を意識した段階 | 年収の目安、手取り、住宅ローン、家族への援助 | 口座番号や金融資産の明細 |
| 同居・婚約・入籍を具体化する前 | 正確な収入、借入れ、年金、住居費、毎月の家計分担 | 隠したまま契約や資金移動を進めること |
相手と結婚する可能性をまだ考えていない段階で、正確な年収だけを聞くと、条件で選別されているように受け取られることがあります。
一方、同居先や入籍時期を話しているのに、お金の話を一度もしていない状態も避けたいところです。
目安としては、「この人と生活を作る可能性を考え始めた」ときが、年収を含む家計の話を始める時期です。
年収を聞く前に、自分が話せる範囲を決めます
相手の収入だけを尋ね、自分のことは伏せたままでは、相手も警戒します。
先に、自分が伝えられる内容を一枚にしてみてください。
- 現在の働き方と、いつまで働く予定か
- 年収または手取りの大まかな範囲
- 持ち家・賃貸と毎月の住居費
- 住宅ローンやその他の借入れ
- 子どもや親へ継続して出しているお金
- 結婚後も自分で負担したい費用
- 相手と分担したい生活費
すべての預貯金額を早い段階で話す必要はありません。
まずは、結婚後の生活へ直接影響する毎月の収入と支出から伝えます。
自分の収入を知られたくないのに、相手の年収だけは正確に知りたいという状態なら、なぜ聞きたいのかをもう一度考えた方がよいかもしれません。
いきなり金額を尋ねず、働き方と退職時期から入ります
年収の数字から始めると、会話が止まりやすくなります。
50代では、現在の給与より、今後何年同じ働き方を続けるのかが生活へ大きく関わります。
| 知りたいこと | 自然な聞き方の例 |
|---|---|
| 働き続ける予定 | 「今のお仕事は、何歳くらいまで続けたいと思っていますか?」 |
| 再雇用後の働き方 | 「定年後も今の会社で働く予定ですか?」 |
| 収入の安定性 | 「お仕事は月によって収入が変わるタイプですか?」 |
| 結婚後の家計分担 | 「一緒に暮らすなら、生活費はどんな分け方が自然だと思いますか?」 |
| 住居費 | 「今のお住まいは、結婚後も住める家ですか?」 |
| 老後の見通し | 「退職後は、今と同じ地域で暮らしたいですか?」 |
相手が自然に話してくれるようなら、その流れで金額へ進めます。
「私はあと7年ほど働く予定で、今の手取りは月に○万円くらいです。二人で暮らす可能性を考えるなら、お互いの収入も大まかに知っておきたいのですが、今はどれくらいですか」
自分の情報を先に出すことで、相手を審査する質問ではなく、二人で生活を考える話になります。
「年収はいくらですか」より、聞く理由を先に伝えます
| 聞き方 | 相手が受け取りやすい形への言い換え |
|---|---|
| 「年収はいくらですか?」 | 「結婚後の生活を現実的に考えたいので、お互いの収入の目安を話しませんか」 |
| 「貯金はどのくらいありますか?」 | 「老後資金はそれぞれで用意する考えか、二人で考えるかを聞きたいです」 |
| 「借金はありませんよね?」 | 「私は住宅ローンがあと○年あります。お互いに返済中のものがあれば、先に共有しておきたいです」 |
| 「退職金はいくらもらえますか?」 | 「退職後の生活費をどう考えているか、年金や退職金も含めて話したいです」 |
| 「親へいくら仕送りしていますか?」 | 「親や子どもへ続けている援助があれば、結婚後の家計にも関わるので互いに話しませんか」 |
年収を尋ねるときは、次の三つを入れると話しやすくなります。
- なぜ知りたいのか
- 自分も同じ内容を伝えること
- 今すぐ証明書まで求めているわけではないこと
「条件で判断したいというより、退職後も含めて無理のない生活を作れるか知りたいんです。まずは、お互いの年収と毎月の大きな支出を大まかに話しませんか」
プロフィールに年収があっても、生活設計に使える数字とは限りません
結婚相談所や婚活サービスで年収が表示されていても、その数字だけで判断しないようにします。
運営会社へ、次の点を聞いてみてください。
- 掲載年収は自己申告か、証明書で確認しているか
- どの年の収入か
- 給与以外の所得を含むか
- 賞与や歩合給を含むか
- 転職や退職後に更新する仕組みがあるか
本人にも、責めるように尋ねる必要はありません。
「プロフィールでは年収○万円となっていますが、今も同じくらいですか」
「賞与や歩合で年によって変わりますか」
「退職後は収入が変わる予定ですか」
年収欄の数字を信用するかしないかではなく、今後の暮らしに使える数字へ置き換えます。
50代では、年収より先に見落としたくないお金があります
| 話す項目 | 生活へ与える影響 | 聞き方の例 |
|---|---|---|
| 退職する年齢 | 現在の給与が続く期間 | 「何歳ごろまで今の働き方を続ける予定ですか?」 |
| 年金見込額 | 退職後の毎月の収入 | 「年金の見込額を調べたことはありますか?」 |
| 住宅ローン | 退職後も続く固定費 | 「住居費やローンは、あと何年ほど続きますか?」 |
| その他の借入れ | 返済額と信用上の問題 | 「住宅以外に毎月返しているものはありますか?」 |
| 子どもへの援助 | 学費、結婚、住宅、孫への支援 | 「お子さんへ今後も続ける予定の援助はありますか?」 |
| 親の介護・仕送り | 費用と介護時間 | 「ご両親のことで、今後必要になりそうな支援はありますか?」 |
| 離婚後の支払い | 養育費や合意した継続支出 | 「前のご家庭に関して、今も続いている支払いはありますか?」 |
| 持ち家の維持費 | 税金、管理費、修繕費 | 「家を持ち続ける場合、毎年どのくらい維持費がかかりますか?」 |
年金については、推測で話すより、二人とも自分の見込額を調べて持ち寄る方が公平です。
日本年金機構の「ねんきんネット」では、今後の働き方や受給開始年齢などの条件を設定し、将来の老齢年金見込額を試算できます。
婚活中に相手の年金記録を見せてもらう必要はありません。
結婚や同居を具体化する段階で、お互いが自分の見込額を確認し、二人の生活費へ当てはめます。
額面年収と、毎月使えるお金を混同しないようにします
年収を話し合うときは、何を年収としているかをそろえます。
- 税金や社会保険料が引かれる前の額面か
- 手取り額か
- 賞与を含むか
- 副業や家賃収入を含むか
- 今年だけの臨時収入を含むか
額面年収が分かったら、次は毎月の手取りと固定支出を見ます。
| 月の手取りから出るもの | 二人で話す内容 |
|---|---|
| 住居費 | 家賃、住宅ローン、管理費、固定資産税 |
| 生活費 | 食費、光熱費、通信費、車 |
| 個人の支出 | 保険、趣味、交際費、医療費 |
| 家族への支出 | 子ども、親、前の家庭への支払い |
| 将来への備え | 老後資金、住み替え、介護、修繕 |
金融庁のライフプランシミュレーターでも、収入だけでなく、生活費、住居費、将来の予定などを入力して家計収支を試算する仕組みが採られています。実際の金額は個人ごとに異なりますが、「年収だけでなく、将来の支出と一緒に見る」という考え方の参考になります。
相手が答えを濁したときは、すぐ嘘と決めず理由を見ます
年収を尋ねたときに、相手がすぐ答えないこともあります。
お金目当ての交際を警戒している。過去に収入を理由に傷つけられた。自営業で年ごとの差が大きい。まだ関係が浅いと感じている。
答えないことだけで、問題のある人とは限りません。
| 相手の反応 | 考えられること | 次にできること |
|---|---|---|
| 「今はまだ話しにくい」と理由を言う | 関係の段階を慎重に見ている | いつなら話せるか、必要な範囲を決める |
| 正確な額は伏せ、範囲や生活状況を話す | 個人情報を守りながら応じている | 関係が深まった段階で詳細を話す |
| 質問すると怒り、人格を責める | お金の話し合い自体が難しい可能性 | 別の話題でも対話できる相手かを見る |
| 聞くたびに職業や収入が変わる | 説明の不一致がある | 同居・結婚を急がず、事実を確かめる |
| 自分は答えず、こちらの資産だけ詳しく聞く | 対等な情報交換になっていない | 資産情報を渡さず、関係を見直す |
「今は話したくない」という境界は尊重できます。
ただし、結婚や同居を求めながら、収入、借入れ、生活費について一切話さない場合は、結論を急がない方がよいでしょう。
希望より年収が低くても、その場で交際を終える必要はありません
聞いた金額が想像より低いと、反応に困ることがあります。
その場で「無理です」と判断する前に、次の点を見ます。
- 二人とも働いた場合の手取り
- 現在の住居費と、結婚後の住居費
- 借入れや継続的な支払い
- 退職後の収入
- 求める生活水準
- 家事や介護を含む負担の分け方
反対に、高収入だと分かっても、それだけで安心しないようにします。
収入を理由に生活上の決定権を独占する、家計を一切明かさない、多額の借入れや浪費があるという場合は、二人の暮らしを安定させにくくなります。
見るべきなのは、年収の高低だけではなく、お金の話を対等にできる相手かどうかです。
正確な数字を確かめるのは、二人とも結婚を考えてからです
同居、婚約、入籍、共同での住宅購入などを具体化する前には、概算だけでなく、実際の数字をそろえます。
| 確かめるもの | 見る目的 |
|---|---|
| 現在の収入 | 毎月の家計分担を決める |
| 住宅ローン・その他の借入れ | 返済額と完済時期を知る |
| 年金の見込額 | 退職後の生活費を試算する |
| 親・子ども・前の家庭への支出 | 結婚後も続く固定負担を知る |
| 住まいの名義と費用 | 同居後の権利と負担を曖昧にしない |
| 保険と緊急時の備え | 病気・介護時の支払い方法を考える |
資料を見せ合う場合も、口座番号、マイナンバー、勤務先の細かな個人情報など、生活設計に不要な部分は隠して構いません。
画像をメッセージで送り合うより、対面で一緒に確認し、その後の保管方法も決めます。
「証明書を見せてくれないなら信用できない」と一方的に迫るのではなく、双方が同じ範囲を提示することが基本です。
お金の話から投資や送金へ誘導されたら、婚活の確認を中断します
年収や老後資金の話をしたところ、相手から投資、副業、暗号資産を勧められることがあります。
「二人の結婚資金を増やそう」
「親戚に投資の専門家がいる」
「私と同じ取引をすれば必ず利益が出る」
このような話が出た場合は、相手の年収を確かめる段階ではありません。
- 一度も会っていないのに、お金を振り込むよう求める
- 結婚費用、旅費、治療費などの立替えを頼む
- 相手が指定する投資アプリやサイトを使わせる
- 個人名義の口座へ投資資金を振り込ませる
- 免許証、銀行口座、暗証情報の画像を求める
- 断ると愛情や信頼を疑う言葉を使う
国民生活センターは、マッチングアプリなどで知り合った相手から「二人の結婚資金のため」と投資を勧められ、送金後に連絡が取れなくなるトラブルへ注意を呼びかけています。相手の指示による投資は断り、送金しないよう案内しています。
すでに送金した、本人確認書類を渡した、不審な口座を作った場合は、やり取りを保存し、警察や消費生活センターなどへ早めに状況を伝えてください。
聞いた後の反応も、結婚相手を知る材料になります
年収を聞くことそのものより、答えを聞いた後の態度で関係が変わることがあります。
相手の年収が低かったときに露骨に落胆する。
自分の方が高いと分かり、相手を頼りない人として扱う。
高収入と分かった途端に、住居や旅行への希望を大きくする。
こうした反応は、お互いの信頼を損ねます。
聞いた後は、まずこう返せます。
「話してくれてありがとう。金額だけで決めたいわけではないので、毎月の暮らしや退職後も一緒に考えたいです」
反対に、自分の年収を伝えたときに相手の態度が変わった場合も、急いで結婚へ進まず、その人がお金と力関係をどう考えているかを見てください。
家計の話し合いは、一度で終わらせず三回に分けます
| 話し合い | 扱う内容 |
|---|---|
| 1回目:暮らしの希望 | 働き方、住む地域、生活水準、共働きへの考え |
| 2回目:毎月のお金 | 年収、手取り、住居費、借入れ、家族への援助 |
| 3回目:退職後と緊急時 | 年金、住み替え、介護、病気、一人になった後 |
最初の一回で、収入、資産、相続、介護まで全部を聞こうとすると、尋問のようになります。
一つの話し合いを30分程度に区切り、分からない数字は次回までに各自が調べます。
意見が違った場合も、その場で勝ち負けを決めません。
「月の生活費はどの程度なら二人とも無理がないか」と、数字を一つずつ合わせていきます。
今日することは、自分のお金を四行で書くことです
相手へ何と聞くかを考える前に、自分の生活を説明できるようにします。
紙へ次の四つを書いてください。
- 現在の手取りと、働く予定の年齢:
- 毎月の住居費・返済・家族への援助:
- 結婚後も自分で払いたい費用:
- 相手と一緒に考えたい費用:
そのうえで、相手へ一つだけ尋ねます。
「私たちが今後も会っていくなら、生活のことも少しずつ話したいと思っています。まず、お互いに何歳くらいまで働く予定か話しませんか」
その会話ができたら、次に収入の目安へ進みます。
年収を聞くことは、相手の価値を金額で決めることではありません。
自分の老後を相手へ任せきりにせず、相手にも無理な期待を背負わせないための話です。
正確な金額を聞くことよりも、二人が同じ範囲を開示し、分からないことを一緒に調べられるかを見てください。
それができる相手なら、年収の数字が想像と違っても、暮らし方を話し合う余地があります。
出典・確認先メモ
- 金融庁「お金と暮らし」:家計管理、生活設計、預貯金、保険、ローンなどを合わせて考える際の確認先。
- 金融庁「ライフプランシミュレーター」:収入、生活費、住居費、将来計画を基に家計収支を試算する際の参考。
- 日本年金機構「ねんきんネットによる年金見込額試算」:働き方や受給開始年齢等を設定した老齢年金見込額の確認先。
- 国民生活センター「マッチングアプリ等で知り合った人に騙されないためのチェックリスト」:婚活相手から投資や送金を求められた場合の注意点。
















