結果を開いた瞬間、数値より先に「大きな病気かも」が浮かぶことがあります
仕事から帰って、何気なく健康診断の封筒を開けたら、赤い文字で「要精密検査」と書かれていた。
去年まで見なかった印がついている。基準値を外れた数字がいくつも並んでいる。詳しい意味は分からないのに、「入院になったらどうしよう」「家族に迷惑をかけるかもしれない」と、頭の中だけが先へ進んでしまいます。
スマートフォンで検査項目を検索すると、深刻な病名まで出てくる。怖くなって画面を閉じても、今度は結果票を何度も見返してしまう。受診した方がよいと分かっているのに、病気を告げられるのが怖くて電話できないこともあります。
反対に、「体調は悪くないから、来年まで様子を見てもいいのでは」と考えたくなる方もいるでしょう。
どちらの反応も珍しいものではありません。ただ、結果票だけを見ながら最悪の結論を出す必要も、怖さを打ち消すために放置する必要もありません。
今することは、病名を予想することではなく、結果票に書かれた次の行動を読み取ることです。
最初に見るのは数値の赤さではなく「判定・項目・期限」の3か所です
結果票を開くと、基準値、前回値、判定記号、コメントなど、多くの情報が並んでいます。
一度に全部を理解しようとすると不安が強くなるため、最初は次の3か所だけを見ます。
- 判定:要経過観察、要再検査、要精密検査、要治療など、どの行動が求められているか
- 項目:血圧、血糖、肝機能、心電図、胸部画像、便潜血など、何を指摘されたか
- 期限:すぐに受診、1か月以内、3か月後、次回健診時など、時期の指定があるか
健診機関によって、A・B・C・Dなどの記号や判定名の使い方は異なる場合があります。記号だけで判断せず、結果票に載っている判定区分の説明と医師のコメントを読みます。
| 結果票でよく見る表現 | 一般的に示していること | 次にすること |
|---|---|---|
| 異常なし・正常範囲 | 今回の検査では大きな異常を指摘されていない | 結果を保管し、次回の結果と比べられるようにする |
| 要経過観察 | 今すぐ治療とは限らないが、一定期間後の再確認が必要 | 結果票に書かれた時期と生活上の指示を読む |
| 要再検査 | 同じ検査や関連する検査を、改めて受ける必要がある | 指定された期間内に健診機関または医療機関へ連絡する |
| 要精密検査 | 異常の有無や原因を詳しく調べる必要がある | 結果票を持って、案内された診療科を受診する |
| 要治療・医療機関受診 | 医師による診察や治療の検討が必要 | 先延ばしにせず、かかりつけ医などへ予約を入れる |
| 治療中・主治医に相談 | 現在の治療内容と健診結果を合わせて判断する必要がある | 次の診察時または指定された時期に結果票を見せる |
この表は一般的な目安です。実際の優先順位は、結果票に記載された期限や健診機関からの連絡を優先してください。
日本人間ドック・予防医療学会は、健診の判定区分を「初回受診時の拠り所」と位置づけています。要精密検査・治療と判定されても、詳しく調べた結果、異常の原因が確認されなかったり、以前から変化のない所見だと分かったりする場合があります。つまり、要精密検査は病名の確定ではありませんが、確かめるための受診は必要です。
「数値が悪い=重い病気」とは限りませんが、自己判断で消してもいけません
基準値から少し外れた数字を見ると、その大きさだけで重症度を判断したくなります。
しかし、医師は一つの数字だけではなく、年齢、性別、過去からの変化、採血時の条件、現在の症状、既往歴、服薬状況、ほかの検査結果などを合わせて見ます。
たとえば同じ「基準値外」でも、前年からほとんど変わっていない場合と、短期間に大きく変化した場合では、医師が見るポイントが異なります。
そのため、インターネット上の基準値と自分の数字を見比べて、次のように結論を出すのは避けたいところです。
- 少ししか超えていないから受診しなくてよい
- 大幅に超えているから重い病気に違いない
- 自覚症状がないから問題ない
- 去年は正常だったから、今回は測定ミスだろう
- 家族も同じ体質だから治療の必要はない
協会けんぽも、医療機関への受診を勧められた場合は医師に相談し、毎年の健診結果を保存して経年的な変化を見るよう案内しています。
結果票を読んでいて怖くなったら、「病気が決まった紙」ではなく、「医師に確かめてもらう項目が書かれた紙」と置き換えてみてください。
受診を先延ばしにしないため、今日決めるのは病院ではなく「最初の電話先」です
要精密検査と書かれていても、どこへ行けばよいのか分からないことがあります。
大きな病院へ行くべきか、近所の内科でよいのか。紹介状は必要なのか。予約時に何と伝えればよいのか。ここで止まってしまう方は少なくありません。
最初から最適な病院を一人で選び切る必要はありません。次の順番で、一か所へ電話します。
- 結果票に「受診先」「予約方法」「紹介状」の案内がないかを見る
- 案内があれば、その医療機関または健診機関へ連絡する
- 案内がなければ、普段通っているかかりつけ医へ結果票を見せられるか聞く
- かかりつけ医がいなければ、健診を受けた施設へ適した診療科を問い合わせる
予約の電話では、難しい説明をしなくても構いません。
「健康診断で血糖の項目が要精密検査になりました。結果票を持って受診したいのですが、こちらで診てもらえますか」
これだけで、受付から必要な案内を受けられます。
結果票に診療科の指定がないときは、次の表を最初の目安にできます。ただし、健診機関から指定がある場合は、そちらを優先してください。
| 主に指摘された項目 | 最初の受診先の目安 | 予約時に伝えること |
|---|---|---|
| 血圧・血糖・脂質・肝機能・腎機能 | 内科、かかりつけ医 | 判定名、数値、治療中の病気や服薬 |
| 心電図・脈の異常 | 内科、循環器内科 | 動悸、胸痛、息切れなどの有無 |
| 胸部エックス線 | 内科、呼吸器内科 | 結果票の所見、過去の画像の有無 |
| 胃の検査・便潜血 | 消化器内科 | 腹痛、便の変化、過去の内視鏡歴 |
| 尿の異常 | 内科、泌尿器科 | 排尿時の症状、血尿、治療歴 |
| 乳房の検査 | 乳腺外科など | 画像や結果票、しこりなどの自覚症状 |
| 子宮頸部など婦人科の検査 | 婦人科 | 検査結果、生理や出血の状況 |
| 眼底・眼圧・視力 | 眼科 | 見え方の変化、眼鏡やコンタクトの使用 |
近くの医療機関が分からない場合は、厚生労働省と都道府県が運営する「医療情報ネット」で、地域や診療科、診療日などから医療機関を探せます。
予約時には「受診できますか」以外に、三つだけ聞いておきます
受診日が決まったあとで、「食事をして行ってよいのか」「その日に検査をするのか」と迷うことがあります。
予約の段階で、次の三つを聞いておくと当日のやり直しを減らせます。
- 健康診断の再検査・精密検査として受診できるか
- 当日の食事や水分、服薬について指示があるか
- 結果票以外に必要な書類や過去の画像があるか
「血液検査があるかもしれないから」と、自分の判断で長時間絶食したり、水分まで控えたりする必要はありません。検査内容によって準備が異なるため、医療機関から受けた説明に従います。
普段飲んでいる薬も、自己判断で中止しないでください。予約時または診察時に薬の名前を伝え、当日の服用方法を確認します。
受診当日は、結果票と「前回までの変化」が分かるものを持って行きます
診察室に入ると、緊張して聞きたかったことを忘れてしまうことがあります。
持ち物を前日に一つの袋へまとめ、質問を短く書いておくと、受診そのものへの負担を減らせます。
持って行くもの
- 今回の健康診断結果票
- 前年以前の結果票があれば、その中から直近2〜3回分
- 紹介状や画像データなど、健診機関から渡されたもの
- お薬手帳または服用中の薬が分かるもの
- 治療中の病気や過去の手術をまとめたメモ
- 最近気になる症状と、始まった時期のメモ
- 医療機関から案内された資格確認書類や診察券
医師に聞きたいこと
- 今回の結果から、何を確かめる必要がありますか
- 今日受ける検査で、何が分かりますか
- 検査結果はいつ、どのように聞きますか
- 結果が出るまで、生活で控えることはありますか
- 今飲んでいる薬やサプリメントは続けてよいですか
- 仕事や運動に制限は必要ですか
質問を全部聞く必要はありません。自分が最も怖いことを一つ、最も知りたいことを一つ選んでおくだけでも十分です。
診察室で頭が真っ白になりやすい方は、結果票の気になる場所へ付箋を貼り、「この判定は何を調べるためですか」と、そのまま尋ねて構いません。
受診までの数日で、急に食事や薬を変えすぎないようにします
健診結果を見た夜から、慌てて食事を極端に減らしたり、飲んでいる薬をやめたり、健康食品をいくつも注文したりする方がいます。
何かをしなければ落ち着かない気持ちは自然です。しかし、数日の無理な生活変更で健診結果を帳消しにしようとすると、体調を崩したり、普段の状態が医師へ伝わりにくくなったりします。
受診までに行うなら、まずは次の範囲に留めます。
| 受診までにしてよいこと | 自己判断でしない方がよいこと |
|---|---|
| 普段の食事や睡眠の様子を簡単にメモする | 極端な断食や特定の食品だけを食べる生活 |
| 処方薬を指示どおりに飲む | 処方薬を減らす、中止する、飲み方を変える |
| 飲酒量や喫煙本数を記録する | 検査値を下げる目的で未確認の薬やサプリを始める |
| 無理のない範囲で普段どおり過ごす | 医師の指示なく急に激しい運動を始める |
| 症状が出た時間や続いた長さを記録する | 症状を健診結果のせいだと決めつける |
生活習慣を見直すことが必要な場合でも、続けられる内容は検査結果や体の状態によって異なります。医師や、対象となった場合の保健指導で、自分に合う方法を決めていきます。
特定保健指導は、生活習慣の改善が必要な人に対し、保健師や管理栄養士などが目標や行動計画づくりを支援する仕組みです。一方、「要精密検査」「要治療」と書かれている場合は、保健指導だけで済ませず、結果票の指示に沿って医療機関を受診します。
体調に急な変化があるときは、健診結果の予約日を待ちません
健康診断は、検査を受けた時点の状態を調べたものです。
結果票に「3か月後に再検査」と書かれていても、その後に強い症状が出た場合まで3か月待つという意味ではありません。
次のような急な症状があるときは、通常の再検査予約より、現在の症状への対応を優先します。
- 突然の強い胸の痛みや圧迫感がある
- 息が苦しく、普通に話すことも難しい
- 意識がもうろうとしている、呼びかけへの反応がおかしい
- 突然ろれつが回らない、顔や手足の片側が動かしにくい
- 経験したことのない激しい頭痛が突然起きた
- 吐血、大量の出血、真っ黒な便などがある
緊急性が高いと感じる場合は119番へ連絡します。救急車を呼ぶべきか、すぐ病院へ行くべきか判断に迷う場合は、実施地域であれば救急安心センター「#7119」で、医師・看護師・救急救命士などから助言を受けられます。
「健診で指摘されたから怖い」のと、「今、強い症状が起きている」のは分けて考えます。後者なら、結果票を読み直している場合ではありません。
仕事が忙しいときは、受診日を完璧に決める前に一本だけ電話します
平日は休めない。月末で仕事が詰まっている。家族の介護や子どもの予定もある。受診が必要でも、すぐには動けない事情があります。
ただ、「まとまった休みが取れたら」と考えていると、数週間、数か月と過ぎてしまうことがあります。
今日できるのは、受診を終えることではありません。まず医療機関へ電話し、どのくらいの時間が必要かを聞くことです。
- 平日の夕方や土曜日に診療しているか
- 初診と検査を同じ日にできるか
- 結果を別日に聞く必要があるか
- 勤務先へ提出する受診証明が必要か
- 紹介状がなくても受診できるか
会社の健康診断で異常所見があった場合、事業者には、医師などの意見を踏まえて必要な就業上の措置を検討する仕組みがあります。仕事への配慮が必要かもしれないときは、健診結果のすべてを職場の人へ詳しく話すのではなく、産業医、保健師、人事・労務の所定窓口へ相談する方法があります。
勤務中の通院方法や休暇の扱いは会社によって異なるため、就業規則や担当窓口で確かめます。
家族へは「悪い結果だった」だけでなく、次の予定まで伝えます
配偶者や家族に伝えると心配をかけそうで、結果票を隠したくなることがあります。
一方で、「精密検査になった」とだけ伝えると、家族も最悪の状況を想像し、必要以上に動揺する場合があります。
家族へ話すなら、判定と一緒に次の行動まで伝えます。
| 場面 | 伝え方の例 |
|---|---|
| まだ予約前 | 「健診で肝機能が要再検査だった。病気が決まったわけではないけれど、明日、受診先を聞いてみる」 |
| 予約が決まった | 「来週の火曜日に内科へ行くことになった。結果票を見せて、必要な検査を聞いてくる」 |
| 付き添ってほしい | 「緊張すると説明を忘れそうだから、可能なら一緒に来てもらえる?」 |
| 今は詳しく話したくない | 「まだ何も決まっていないから、診察を受けてから詳しく話したい。予約は取るつもりだよ」 |
家族が本人の代わりに調べている場合は、「すぐ大きな病院へ行こう」「もっと早く生活を変えるべきだった」と責めるより、次のように尋ねます。
「結果票のどこが一番怖かった?」
「予約の電話と病院探し、どちらを手伝えば楽?」
「一緒に行く方がいい? それとも受診後に話を聞く方がいい?」
成人本人の診療内容は、家族だから無条件に詳しく聞けるとは限りません。付き添いや結果説明を希望する場合は、本人の同意や医療機関の案内に従います。
怖くて結果票を閉じたままなら、今夜は4行だけ書いて終わりにします
結果が届いたのが夜や休日なら、その場で医療機関へ電話できないこともあります。
そんなときに病名を何時間も検索しても、今夜できる医療判断は増えません。不安だけが大きくなり、眠れなくなることがあります。
紙やスマートフォンのメモに、次の4行だけを書いてください。
- 指摘された項目:
- 書かれている判定:
- 指定された期限:
- 次に電話する場所:
たとえば、次の程度で十分です。
「血糖。要精密検査。早めに受診。明日、健診センターへ電話する」
これで今夜の作業は終わりです。
検索する場合も、「この数値なら何の病気か」ではなく、「要精密検査はどこへ予約するか」「健診センターの電話受付時間」のように、次の行動に必要なことだけを調べます。
今日の一歩は、結果を受け入れ切ることではなく予約へつながる行動です
健康診断の結果が悪いと、不安が消えてから受診しようと思うかもしれません。
けれども、多くの場合、不安は受診前に完全には消えません。何が起きているか分からないからこそ、怖いのです。
今日は次のうち、一つだけ進めてください。
- 判定欄と受診期限へ丸をつける
- 前年の結果票を一枚探す
- 健診機関またはかかりつけ医の電話番号を調べる
- 予約の電話で話す一文をメモする
- 一人で行くのが不安なら、家族へ付き添いを頼む
再検査や精密検査を受けた結果、治療が必要だと分かることもあれば、継続して見ていけばよいと分かることもあります。どちらになるかは、結果票の前で考え続けても決まりません。
今は、将来のすべてを決める段階ではありません。結果票を一枚持って、次の扉を一つ開ける段階です。
怖さを抱えたままでも、電話はできます。受診日が決まれば、少なくとも「何もしていない」という不安からは一歩離れられます。
出典・確認先メモ
- 日本人間ドック・予防医療学会「2026年度判定区分表」「判定区分表等に関するQ&A」:健診判定の位置づけや精密検査後の判断に関する確認先。
- 全国健康保険協会「健診結果の見方」:医療機関への受診、特定保健指導、過去の結果との比較に関する確認先。
- 厚生労働省「特定健診・特定保健指導について」:特定健診と保健指導の位置づけに関する確認先。
- 厚生労働省・都道府県「医療情報ネット」:診療科や地域などから医療機関を探す際の確認先。
- 総務省消防庁「救急安心センター事業(#7119)」「救急受診ガイド」:急な症状で受診の緊急度に迷った場合の確認先。













