固定資産税の封筒を開いた翌週、草刈り代の請求も届いた
使っていない実家へ行くのは、年に数回です。
春には固定資産税を払い、夏には庭の草刈りを頼みます。秋は落ち葉の清掃。台風の後には雨どいが外れ、業者から修理費を提示されました。
一つひとつは、家を持っていれば仕方がない金額に見えます。
ところが通帳を見返すと、火災保険、電気と水道の基本料金、実家までの高速料金やガソリン代も出ていました。管理代行を頼んでいるなら、その月額もあります。
年間でいくらかかっているのか、すぐには答えられません。
きょうだいから「そんなに負担なら売ればいい」と言われても、親が暮らしていた家を費用だけで処分することには抵抗があります。一方で、誰も住む予定がない家へ毎年お金を払い続けることにも、少しずつ疲れてきます。
まず必要なのは、売るか残すかの結論ではありません。
空き家へ出ていくお金を、一年分として見える状態にすることです。
月額の管理料だけでは、空き家にかかる総額は分かりません
空き家の管理費用というと、管理代行会社へ払う月額料金を思い浮かべるかもしれません。
実際には、空き家を所有している間にかかるお金は、大きく三つに分かれます。
- 毎年ほぼ必ずかかる費用:固定資産税、保険、管理委託料など
- 管理のたびにかかる費用:交通費、草刈り、清掃、除雪など
- 突然発生する費用:雨漏り、倒木、給排水、屋根や塀の補修など
月額三千円の管理サービスなら、年間三万六千円です。
しかし、その料金に草刈り、屋内清掃、台風後の臨時点検、修繕手配まで含まれているとは限りません。基本料金が安くても、追加作業が重なると支出は増えます。
反対に、自分で見に行けば管理料はかかりませんが、交通費、移動時間、草刈り道具、作業中のけがといった負担があります。
空き家の費用は、「管理会社へいくら払うか」ではなく、「その家を一年間、安全に残すために総額いくら使ったか」で見ます。
通帳と通知書から、八つの費用を年額へ直します
正確な金額は、建物の大きさ、地域、傷み具合、家までの距離によって変わります。
全国平均の数字を当てはめるより、自分の通帳、請求書、契約書から実額を拾う方が判断に役立ちます。
| 費用 | 金額を調べる資料 | 年額にする方法 |
|---|---|---|
| 固定資産税・都市計画税 | 納税通知書 | 通知書に記載された年税額 |
| 住宅ローン | 返済予定表・通帳 | 毎月返済額×12+ボーナス返済 |
| 火災・地震保険 | 保険証券・更新案内 | 長期契約なら保険料を契約年数で割る |
| 電気・水道・ガス | 検針票・口座引落し | 直近12か月分を合計する |
| 管理代行 | 管理委託契約書・請求書 | 月額×12+追加作業料 |
| 庭・敷地の管理 | 草刈り・剪定・除雪の領収書 | 1回の料金×年間回数 |
| 現地へ通う費用 | 高速料金、交通履歴、給油記録 | 1往復の費用×年間回数 |
| 点検・修繕 | 過去の工事請求書・見積書 | 実際の支出に今後の予備費を加える |
家財保管のために倉庫を借りている、町内会費を払っている、浄化槽や井戸を維持しているといった費用があれば、それも加えてください。
固定費+管理作業費+交通費+修繕費=一年間の空き家維持費
一度だけかかった片付け費用と、翌年以降も続く費用は分けます。そうすると、「今年だけ高かった」のか、「来年も同じ程度かかる」のかが見えてきます。
修繕費がゼロだった年を、今後の基準にしない方が安全です
前年に修理がなかったから、今年も修繕費はかからないとは限りません。
人が住んでいない家は、不具合に気づくまで時間がかかります。小さな雨漏りや窓の破損が、次に訪れたときには室内の傷みへ広がっていることもあります。
過去に修繕費がかかっていなくても、次の箇所の状態を見てください。
- 屋根、雨どい、外壁、軒
- 基礎、塀、擁壁、物置
- 窓、玄関、勝手口の鍵
- 給排水管、排水口、浄化槽
- 庭木、越境枝、枯れ木
- カビ、害虫、動物の侵入口
今後必要になりそうな工事について、一社からでも概算を取っておくと、修繕費を全く見込まない計算を避けられます。
業者には、
「売却するか残すかは未定です。今すぐ安全のために必要な工事と、数年以内に必要になりそうな工事を分けてください」
と伝えます。
見た目をきれいにする工事と、事故や建物の重大な劣化を防ぐ工事を一緒にしないことが、費用を判断するポイントです。
自分で通う管理は無料ではなく、移動回数に上限があります
自分で草刈りや換気をすれば、管理会社へ払う費用は抑えられます。
ただし、片道二時間の実家へ年六回通うなら、十二往復分の交通費と、移動・作業に使う時間があります。
以前は日帰りできていても、年齢や体調によっては宿泊が必要になるかもしれません。
自主管理を続けるなら、次の問いに答えられるかを見ます。
- 台風や大雪の直後にも見に行けるか
- 高所や重い物を扱わずに管理できるか
- 草刈りや剪定を何年続けられるか
- 自分が病気になったとき、代わりに行く人がいるか
- 隣家や自治体から連絡が来た日に対応できるか
自分でできなくなった後の費用まで含めて、保有できるかを考えてください。
脚立、屋根、太い枝、雪下ろしなどは、費用を節約するために無理をする作業ではありません。転落やけがの可能性がある作業は、早めに業者へ移します。
管理代行を選ぶときは、月額より「どこまで含むか」を見ます
空き家が遠方にある、仕事や介護で通えないといった場合は、管理を第三者へ委託する方法があります。
管理サービスには、建物の外から見るだけのものと、鍵を預けて室内へ入り、換気や通水まで行うものがあります。
契約前に、次の内容を書面で確かめてください。
- 訪問回数と訪問時期
- 外観だけか、室内にも入るか
- 換気、通水、郵便物整理、清掃を行うか
- 庭木や雑草の状態を見るか
- 写真付きの報告があるか
- 台風や地震後の点検は別料金か
- 草刈り、剪定、除雪、害虫対応の料金
- 異常を見つけた場合の連絡方法
- 修繕を発注する前に所有者の承諾を得るか
- 再委託先、鍵の保管方法、解約条件
管理業者へ任せても、所有者としての責任がなくなるわけではありません。
報告書を受け取ったら、破損や越境がないかを見て、修理が必要な項目を放置しないことが求められます。
問い合わせ時は、
「毎月の料金だけでなく、年間に追加される可能性がある作業と、緊急点検の料金を含めた見積もりをください」
と伝えると、実際の年間負担を比べやすくなります。
光熱費をすべて止めれば安くなるとは限りません
誰も住んでいない家の電気や水道へ基本料金を払うのは、もったいなく感じます。
ただし、何を止められるかは管理方法によって変わります。
電気を使う防犯設備、換気設備、排水ポンプなどがある家では、電気の停止が別の問題につながる場合があります。水道も、定期的な通水や清掃に使うなら、契約を残した方が管理しやすいことがあります。
寒冷地では、給水管や給湯設備の凍結対策も必要です。
ガスを閉栓する場合も、給湯器や警報設備の扱いを事業者へ聞いてください。
節約のために止める前に、管理会社や各事業者へ、
「この家は当面空き家です。現在の設備で、停止できる契約と、管理上残した方がよい契約を教えてください」
と確認します。
火災保険についても、居住中から空き家へ状態が変わったことを保険会社や代理店へ伝え、補償の対象と保険料を確かめてください。
費用を減らすなら、安全を削る前に管理の重複を減らします
空き家の年間費用を見て高いと感じても、点検そのものをやめるのは避けてください。
先に見直しやすいのは、次のような部分です。
- 家族の訪問と管理会社の訪問が同じ月に重複していないか
- 使っていない通信、定期購読、設備契約が残っていないか
- 庭木を毎年剪定するより、管理しやすい高さへ減らせないか
- 郵便物の転送や送付先変更で、回収回数を減らせないか
- 外観点検は委託し、室内作業だけ家族が行う形にできないか
- 台風後など必要な時期だけ臨時点検を追加できないか
一方、屋根材の落下、倒木、漏水、鍵の破損など、事故や被害につながる対応を削ると、後の修理費や賠償問題が大きくなる可能性があります。
「費用を減らす」と「管理をしない」は分けて考えてください。
きょうだいで費用を分ける前に、誰が所有者なのかを確かめます
実家の管理費を一人だけが払い続けていると、「なぜ自分ばかり」と感じることがあります。
離れて暮らすきょうだいは、毎月いくらかかっているのか、現地へ通う人が何をしているのかを知らないこともあります。
まず、土地と建物の名義、共有持分、住宅ローンの有無を見てください。
親御さんが存命で親御さん名義なら、子どもが支払った費用は親御さんの家を管理するための支出です。誰が負担するのか、立替えとして精算するのかを決めます。
相続後の共有名義なら、固定資産税、修繕、交通費について、誰がいくら負担したかを記録します。
家族へは、次のように伝えてください。
「売るか残すかを今日決めたいのではない。昨年は税金、草刈り、保険、交通費で合計〇円かかった。今後一年の管理方法と、誰がどこまで負担するかを決めたい」
家に近い人が作業を担当し、遠い人が費用を多めに負担するなど、金額と作業時間を分けて考える方法もあります。
名義が亡くなった親御さんのままなら、相続人と相続登記の状況も確かめてください。相続登記は、不動産を相続で取得したことを知った日から、原則として三年以内の申請が必要です。
残す理由が決まっていない家には、保有期限を置きます
「いずれ誰かが住むかもしれない」という理由だけで空き家を残すと、結論がないまま費用が続きます。
家族が使う具体的な予定があるなら、誰が、いつから、どのくらいの期間住むのかを決めます。
予定が定まっていない場合は、半年後や一年後など、方針を見直す日を置いてください。
判断には、一年分だけでなく、三年間の見込み額を使います。
年間維持費×3年+予定される修繕費=今後3年間に空き家へ使う金額
その金額と、家を残す目的を並べます。
- 一年以内に家族が住む予定がある
- 施設へ入った親御さんが戻る可能性を見ている
- 家財整理や相続手続を進めている
- 売却や賃貸の準備期間として残している
- 具体的な利用予定はなく、手放す決心がつかない
最後の状態で年間負担が続いているなら、売却、賃貸、解体、近隣への譲渡などの費用も比べる段階です。
査定を受けたからといって、すぐ売却する必要はありません。持ち続ける金額と手放す場合の手取りを同じ資料で見るための査定です。
管理不全空家への勧告を受けると、税負担が増える場合があります
空き家は私有財産ですが、屋根材の落下、倒壊、害虫、悪臭、不法侵入などで周囲へ悪影響を与えないよう、所有者等には適切な管理が求められます。
そのまま放置すれば特定空家になるおそれがある状態は、市区町村から「管理不全空家」として指導を受ける場合があります。
指導後も改善されず、勧告を受けると、敷地に適用されていた固定資産税等の住宅用地特例を受けられなくなる可能性があります。
ただし、税額がどの程度増えるかは、土地の面積、評価、自治体などによって異なります。「必ず六倍になる」と単純に決めつけず、市区町村の資産税担当へ確認してください。
自治体から通知が来た場合は、まず期限と問題箇所を見ます。
「空き家の処分方法は未定ですが、管理不全を解消するため、指摘された箇所と期限までに必要な対応を教えてください」
と伝えれば、売却を決めていない段階でも連絡できます。
屋根・塀・倒木に危険があるなら、年間費用の計算より先に動きます
草が少し伸びている、室内の換気が不足しているという状態なら、管理予定を組んで対応できます。
一方、次の状態は家族の話し合いを待たない方がよいものです。
- 屋根材や外壁が落ちそうになっている
- 塀や擁壁が道路・隣地側へ傾いている
- 枯れ木が電線や隣家へ倒れそうになっている
- 漏水、強いガス臭、焦げた臭いがある
- 不審者が現在も建物へ出入りしている
火災、ガス漏れ、崩落など、人へ差し迫った危険がある場合は119番を優先します。不法侵入や破壊が現在進行している場合は110番です。
窓口へは、目的を一つに絞って聞きます
空き家の費用について、すべてを一か所で決めてもらうことはできません。
聞きたい内容に応じて、連絡先を分けます。
- 市区町村の空き家窓口:管理方法、管理不全の指摘、地域の支援法人、売却・活用制度
- 市区町村の資産税担当:固定資産税の金額、住宅用地特例、解体後の税金
- 管理業者:点検内容、年間料金、追加作業、緊急時対応
- 不動産会社:現在の売却見込み、賃貸可能性、保有中に必要な修繕
- 保険会社・代理店:空き家になった後の補償内容、通知事項、保険料
- 司法書士:相続登記、共有名義、売却前の登記手続
自治体へ電話するときは、
「空き家の年間管理費が負担になっています。まだ売却は決めていません。適切に管理するための最低限の内容と、利用できる管理・活用の制度を教えてください」
と伝えてください。
問い合わせたからといって、売却や解体を申し込むことにはなりません。
今日は一年分の引落しから、四つの金額だけ拾います
今日は、空き家の将来を決める必要はありません。
固定資産税の納税通知書と、直近一年分の通帳やカード明細を開いてください。
そこから、固定資産税、保険料、管理・草刈り代、現地へ通った交通費の四つを拾います。
月額で払っているものは十二倍し、一年間の合計を出します。
次に、その金額の横へ「この家を残す理由」と「次に見直す月」を一つずつ書きます。
今は残したいという結論でも構いません。
毎年いくら使い、いつもう一度考えるのかが決まっていれば、理由のないままお金だけが出ていく状態から抜けられます。


















