条件は悪くないのに、「この仕事でよいです」と返事ができない
派遣会社から紹介された職場を見た帰り、担当者から「先方も前向きです。働けそうですか」と連絡が届く。
仕事はできそうだった。時給も、以前応募したパートより高い。通勤時間も許容範囲です。
それでも、すぐに返事ができません。
「契約を更新してもらえなかったらどうしよう」
「職場で自分だけ年上にならないだろうか」
「派遣先が変わるたび、また一から覚えるのだろうか」
「今から派遣を選んだら、正社員には戻れないのではないか」
50代の仕事探しでは、採用されるかどうかだけでなく、その先の生活まで考えてしまいます。住宅費、親御さんの介護、子どもの独立、自分の老後。仕事を短期間で失えば、若い頃より立て直しに時間がかかるかもしれません。
だからこそ、派遣を「正社員になれなかった人の働き方」と決めつける必要も、「時給がよいから」と勢いで始める必要もありません。
見るべきなのは、派遣という名称ではなく、契約の中身と、仕事が終わった後の道筋です。
派遣先で働いても、雇用契約を結ぶ相手は派遣会社です
派遣では、通常、派遣会社が「派遣元」、実際に働く会社が「派遣先」になります。
給与を支払い、雇用契約を結ぶのは派遣元です。一方、日々の仕事について指示を出すのは派遣先です。
二つの会社が関わるため、困ったときに誰へ伝えるのか分かりにくくなることがあります。
| 内容 | 主に確かめる相手 |
|---|---|
| 給与、雇用契約、社会保険、有給休暇 | 派遣元の担当者 |
| 当日の仕事の進め方、職場設備、安全上の指示 | 派遣先の責任者や指揮命令者 |
| 契約と違う業務、残業、職場での嫌がらせ | まず派遣元へ連絡し、必要に応じて派遣先とも連携してもらう |
| 次の仕事、契約更新、今後の働き方 | 派遣元の担当者 |
派遣先の上司から指示を受けていても、雇用についての話を派遣先だけで決めるわけではありません。
更新、給与、退職などの話は、派遣元との契約に戻って確かめます。
「派遣社員」だけでは分からない三つの働き方があります
求人に「派遣」と書かれていても、雇用の続き方は同じではありません。
| 主な形 | 基本的な仕組み | 確かめたいこと |
|---|---|---|
| 登録型・有期雇用派遣 | 派遣先で働く期間に合わせ、派遣元と期間の定めがある雇用契約を結ぶ形が一般的です | 派遣先の仕事が終了したとき、雇用契約も終了するのか |
| 無期雇用派遣 | 派遣元と期間の定めがない雇用契約を結び、派遣先で働きます | 派遣先が決まっていない期間の扱い、勤務地の範囲、異動や待機時の条件 |
| 紹介予定派遣 | 一定期間を派遣として働いた後、本人と派遣先の双方が希望すれば、直接雇用へ進むことを予定した仕組みです | 直接雇用後の雇用形態、給与、雇用されなかった場合の扱い |
無期雇用派遣だから、希望する派遣先でずっと働けるとは限りません。派遣元との雇用期間に定めがないという意味であり、勤務先や業務が変わる可能性があります。
紹介予定派遣も、必ず正社員になれる制度ではありません。直接雇用後が契約社員やパートの場合もあるため、「直接雇用」という言葉だけで判断しないようにします。
登録時に最初に聞きたいのは、「これは有期雇用、無期雇用、紹介予定派遣のどれですか」「派遣の仕事が終わったら、派遣元との雇用はどうなりますか」の二点です。
一番に見るのは時給ではなく、契約終了後に収入がどうなるかです
派遣の求人は、同じような仕事内容のパートより時給が高く見えることがあります。
ただし、契約と契約の間に仕事がない期間が生じれば、年間の収入は想定より少なくなる可能性があります。
例えば、時給が高くても三か月ごとの更新で、次の仕事が決まるまで一か月空くなら、その期間を含めて家計を考える必要があります。
求人を受ける前に、次の点を派遣元へ聞きます。
- 派遣先での就業予定期間はいつまでか
- 契約更新の有無は、いつ頃分かるのか
- 過去に同じ職場で働いた人は、どのくらい更新されたか
- 更新されない場合、次の仕事はいつから紹介してもらえるか
- 次の派遣先が決まらない期間の雇用と賃金はどうなるか
- 派遣元との雇用契約の開始日と終了日はいつか
「長期予定です」という説明だけでは不十分です。
長期とは何か月を想定しているのか、更新が約束されているのか、それとも可能性があるだけなのかを分けます。
派遣の「3年ルール」は、3年たったら必ず解雇されるという意味ではありません
派遣には、同じ派遣労働者が同じ派遣先の同じ組織単位で働ける期間を、原則3年とする仕組みがあります。
ただし、無期雇用の派遣労働者や60歳以上の派遣労働者など、一定の場合は期間制限の対象外です。また、期間制限に達することと、派遣元との雇用が必ず終了することも同じではありません。
有期雇用で同じ組織単位に長く派遣され、継続して働くことを希望する人には、条件に応じて、派遣元が派遣先へ直接雇用を依頼する、新しい派遣先を提供する、派遣元で無期雇用にするなどの雇用安定措置を講じる義務や努力義務があります。
自分の場合にどうなるかは、契約年数が近づいてからではなく、仕事を受ける段階で聞いて構いません。
「この職場で三年に達した場合、私にはどのような選択肢がありますか」
「同じ派遣先の別部署へ移る可能性と、別の派遣先を紹介してもらう場合の流れを教えてください」
担当者が制度を曖昧にしか説明できない場合は、回答を文書やメールでもらうよう頼みます。
50代で見られるのは年齢だけでなく、「任せた仕事を安定して続けられるか」です
募集・採用で年齢を理由に制限を設けることは、法律上、原則として禁止されています。
それでも、50代で仕事を探していると、年齢を意識せずにはいられない場面があります。
ここで、若い応募者と同じ速さや体力を証明しようとする必要はありません。
派遣会社へ登録するときは、これまでの肩書きを並べるだけでなく、派遣先で使える行動へ言い換えます。
- 電話を受け、要件を聞き取って担当者へつなげられる
- 決められた手順を守って作業できる
- 顧客からの苦情に、感情的にならず対応できる
- 請求書、在庫、金銭などを正確に扱ってきた
- 年下の上司や同僚とも役割を分けて働ける
- 新しいシステムを、手順書を見ながら覚えられる
「部長をしていました」だけでは、派遣先で何を任せられるか分かりません。
「営業部で部下の管理をしていました。今回の仕事では、顧客対応、進捗表の更新、社内調整の経験を生かせます」と伝えると、業務とのつながりが見えます。
担当者へ遠慮せず伝えたい「できない条件」があります
仕事を紹介してもらいたい一心で、残業、通勤、体力面の希望を曖昧にすると、働き始めてから続かなくなることがあります。
派遣会社には、できることだけでなく、難しい条件も伝えます。
- 通勤は片道何分までか
- 週に何日、何時までなら働けるか
- 残業は月にどの程度まで可能か
- 電話対応、パソコン操作、荷物運びなどの対応範囲
- 立ち仕事、夜勤、暑い場所など避けたい環境
- 通院や家族の介護で外せない曜日
- 最低限必要な月収
「何でもできます」と答えるより、「事務経験はありますが、電話を受けながら複数の入力を同時に行う業務は経験がありません」と伝える方が、合わない配属を減らせます。
年齢や病名を詳しく話したくない場合でも、仕事に必要な配慮は具体的に伝えてください。
「腰に負担がかかるため、10キロ以上の荷物を繰り返し運ぶ仕事は難しいです」
「月に一度通院があるため、その日は事前に休みを相談したいです」
仕事を受ける前に、就業条件明示書で見る場所があります
口頭で聞いた条件だけで働き始めず、雇用契約や就業条件が分かる書面を見ます。
特に確かめたいのは次の項目です。
- 派遣元との雇用契約期間
- 派遣先の名称、就業場所、所属部署
- 具体的な仕事内容と責任の程度
- 就業日、始業・終業時刻、休憩
- 時間外勤務と休日勤務の範囲
- 賃金、交通費、締日、支払日
- 社会保険と雇用保険の加入
- 派遣先・派遣元それぞれの責任者
- 苦情の申出先と処理方法
- 派遣契約が途中で解除された場合の措置
求人では「一般事務」と書かれていても、実際には営業電話、重量物の移動、車の運転などが含まれる場合があります。
仕事内容が広すぎるときは、次のように聞きます。
「一日の業務を、時間の流れに沿って教えてください」
「電話対応は受電だけですか。営業の発信も含まれますか」
「契約書にない仕事を頼まれた場合、どなたへ連絡すればよいですか」
派遣会社は、求人数より「仕事が始まった後の対応」で選びます
多くの仕事を紹介する派遣会社でも、就業後に連絡が取れなければ、問題を一人で抱えることになります。
登録時には、担当者の愛想だけでなく、次の点を見てください。
- 厚生労働大臣の許可を受けた派遣事業者か
- 求人の不利な条件も説明するか
- 質問への回答を文書やメールで残してくれるか
- 就業後の担当者と連絡方法が決まっているか
- 契約更新をいつ確認するか説明があるか
- 教育訓練やキャリア相談を利用できるか
- 派遣先で問題が起きた際の申出先が明確か
- 次の派遣先を探すときの支援内容が分かるか
派遣会社の許可情報や事業所情報は、厚生労働省の人材サービス総合サイトで調べられます。
派遣会社が公開しているマージン率も参考になりますが、低ければ必ず良い会社というものではありません。マージンには、会社の利益だけでなく、社会保険料や教育訓練費なども含まれます。
賃金、教育訓練、担当者の対応、福利厚生を合わせて見ます。
派遣先で仕事が増えても、最初から我慢し続けないでください
働き始めると、「契約にない仕事ですが、少しだけお願いします」と頼まれることがあります。
一度手伝うだけで済む場合もあれば、その後も当然の仕事として増えていく場合があります。
まず、依頼された日、相手、内容、かかった時間を記録します。
そのうえで、派遣元へ連絡してください。
「就業条件ではデータ入力と書類整理と聞いていましたが、今週から営業電話を毎日担当するよう指示されています。契約上の業務に含まれるか確認してください」
派遣先の担当者へ直接強く抗議するより、雇用主である派遣元を通して条件を確かめた方がよい場面があります。
残業代が支払われない、休憩を取れない、嫌がらせを受けているなどの問題も、日時と出来事を残します。
派遣元へ伝えても対応されない場合は、都道府県労働局や総合労働相談コーナーなど、公的な労働相談窓口で相談できます。
更新時期の直前まで待たず、次の働き方を聞いておきます
契約更新について、自分から聞くと「続けたがっていると思われる」「更新しないと言われそう」と感じることがあります。
しかし、返事が遅いまま契約終了日を迎える方が、生活への影響は大きくなります。
契約書や派遣会社の案内に沿い、更新確認の時期を先に聞いてください。
「契約終了の何週間前に、更新の有無を教えてもらえますか」
「更新されない可能性がある場合、いつから次の仕事を探せますか」
「次の仕事は、現在の契約期間中にも紹介してもらえますか」
更新を希望しない場合も、黙って期限を待つのではなく、契約上必要な申出時期を確かめます。
次の派遣先へ望むことも、働いているうちにメモしておくと役立ちます。
- 続けたい仕事内容
- 負担が大きかった作業
- 必要な時給と勤務時間
- 通勤できる範囲
- 次に身につけたい技能
登録や仕事紹介のために、高額な支払いを求められたら止まります
派遣会社や求人サイトを装い、「登録後すぐ仕事を紹介できる」「資格を取れば高収入になる」と連絡してくる相手もいます。
次のような場合は、その場で契約や送金をしないでください。
- 仕事紹介の前に高額な登録料や講座代を求める
- 仕事に必要だとして、相手指定の商品を購入させる
- 銀行の暗証番号やネットバンキングのパスワードを聞く
- 個人名義の口座へ振り込ませる
- 会社の所在地、許可番号、仕事内容が分からない
- 外部の通信アプリだけで連絡し、契約書を出さない
実在する会社名を名乗っている場合も、公式サイトに掲載された電話番号から事実を確かめます。
すでに支払ってしまったときは、求人画面、メッセージ、振込記録、契約書を削除せず保存してください。
今日は応募せず、気になる求人へ七つの質問を送ります
今の時点で、派遣として働くかどうかを決めなくても構いません。
気になる求人を一件だけ選び、派遣会社へ次の内容を問い合わせます。
- 派遣元との雇用契約は有期ですか、無期ですか
- 派遣先での就業予定期間と、更新の判断時期はいつですか
- 一日の具体的な業務内容を教えてください
- 残業、休日出勤、追加業務はどの程度ありますか
- 社会保険と雇用保険の加入対象になりますか
- この派遣が終了した場合、次の仕事はどのように紹介されますか
- 就業後に困った場合の担当者と連絡方法を教えてください
次の一文を添えれば、質問しやすくなります。
「長く安定して働けるかを判断したいため、応募前に契約と仕事の内容を確認したいです」
回答の早さだけでなく、都合の悪い点も具体的に説明してくれるかを見ます。
質問したことで紹介を渋る会社なら、その反応も派遣会社を選ぶ材料です。
仕事を受けるかどうかは、回答を読んでから決められます。まず、何となく感じていた不安を、契約書で確かめられる質問へ変えるところから始めてください。


















