「残りわずか」の表示を見ても、今夜注文しなくて構いません
夜、テレビやスマートフォンで「年齢とともに不足する成分」「今なら初回限定価格」という広告を見る。
最近疲れやすい。膝も気になる。健康診断の数値も以前とは違う。そんな時期に広告を見ると、「何もしないままで大丈夫だろうか」と考えてしまうことがあります。
商品ページには、元気に歩く同年代の人や、笑顔で趣味を楽しむ人が並んでいる。利用者の感想を読むと試してみたくなる一方、成分名は難しく、注意書きは小さい。結局、効くのか、安全なのか、よく分からないまま注文ボタンまで進んでしまいます。
健康を守りたいと思って商品を探すこと自体は、おかしなことではありません。ただし、焦って買う必要もありません。
健康食品は、買った後より、買う前の方が落ち着いて判断できます。今夜は注文を確定せず、商品が何を補うものなのか、今飲んでいる薬と一緒に使えるのか、いつまでにいくら払うのかを順番に見てください。
商品を探す前に、「何を変えたいのか」を一文にします
「健康に良さそうだから」という理由だけでは、自分に必要な商品か判断できません。
まず、広告を見る前から困っていたことを一文にします。
- 食事の量が減り、栄養が足りているか心配
- 健康診断で数値を指摘され、何か始めたくなった
- 夕方になると疲れ、仕事や家事が続かない
- 膝や腰が痛く、歩くことが減っている
- 眠りが浅く、朝に休んだ感じがしない
ここを分ける理由は、同じ「体調を整えたい」という悩みでも、先に行うことが違うからです。
たとえば、健康診断で治療や再検査を勧められているなら、サプリを飲んで様子を見ることが優先ではありません。痛みや息切れで生活に支障が出ている場合も、商品選びより原因を調べることが先になります。
反対に、病気の治療ではなく、食生活を振り返ったうえで不足しやすい栄養を補いたいのであれば、商品表示を比べる意味があります。
「この商品を飲むことで、私は何を期待しているのか」
答えが「病気を治したい」「薬を減らしたい」であれば、健康食品に任せる内容ではありません。
「健康食品」という名前だけでは、国の審査を受けた商品か分かりません
健康食品という言葉には、法律上の決まった定義がありません。健康によいことをうたって販売されている食品が、広く健康食品と呼ばれています。
その中で、一定のルールに従って健康維持に関する機能を表示できるものが「保健機能食品」です。保健機能食品には、三つの種類があります。
| 表示の種類 | どのような制度か | 誤解しやすい点 |
|---|---|---|
| 特定保健用食品(トクホ) | 製品ごとに国の審査を受け、表示の許可を得た食品 | 病気を治療する医薬品ではない |
| 栄養機能食品 | ビタミンやミネラルなどが国の定めた基準を満たす場合に、定型の栄養機能を表示できる食品 | 商品ごとに国が効果を審査している制度ではない |
| 機能性表示食品 | 事業者が安全性や機能性の根拠を消費者庁へ届け出て、事業者の責任で機能を表示する食品 | 国が個別に効果を認めた商品ではない |
| そのほかの健康食品 | 一般の食品として販売され、健康を意識した成分などを含む商品 | 「健康食品」という名称だけでは安全性や有効性の程度は分からない |
トクホや機能性表示食品であっても、病気の診断、治療、予防を目的とする医薬品とは異なります。
また、表示されている一日当たりの摂取目安量より多く飲めば、さらに高い効果が得られるわけでもありません。
パッケージの「機能性表示食品」という文字だけで判断せず、「どの成分が、どのような人の、何を助けると表示されているのか」まで読んでください。
広告の大きな文字より、商品裏面の六項目を見ます
広告では、「すっきり」「若々しく」「元気を応援」といった印象に残る言葉が大きく表示されます。
しかし、買うかどうかを判断する材料は、商品名より裏面や販売ページの細かな表示にあります。
注文前に見るのは、次の六項目です。
- 原材料名:何が含まれているか
- 成分量:一日分に目的の成分がどのくらい含まれているか
- 一日当たりの摂取目安量:何粒、何包、何本を想定しているか
- 摂取上の注意:薬との併用、過剰摂取、アレルギーなどの注意がないか
- 製造者・販売者・問い合わせ先:体調不良や商品不良が起きた際に連絡できるか
- 内容量と日数:一袋が何日分で、毎月いくつ必要になるか
成分名が書いてあっても、含有量が分からなければ、ほかの商品や普段の食事と比べにくくなります。
複数の成分をまとめた商品では、目立つ成分だけでなく、すべての原材料を見てください。すでに飲んでいる別のサプリと、ビタミンやミネラルが重複していることがあります。
機能性表示食品には届出番号が表示されています。消費者庁の届出情報検索で商品名や届出番号を調べると、表示しようとする機能、安全性や機能性の根拠、摂取上の注意などを確認できます。
体験談で見るのは「その人の変化」ではなく、広告の作り方です
「飲み始めてから毎朝が楽しみになった」「医師も驚いた」といった体験談は、商品の効果を保証するものではありません。
その人が同じ時期に食事や運動を変えたのか、薬による治療を受けていたのか、広告からは分からないことがあります。多くの利用者の中から、印象のよい感想だけが掲載されている可能性もあります。
次のような広告を見たときは、注文を止めて表示全体を読み直してください。
- 飲むだけで病気が治る、薬が不要になるように見せている
- 短期間で大幅に痩せる、筋肉が増えると断定している
- 「天然だから副作用がない」と安全性を保証している
- 医師、研究者、有名人の写真だけを根拠のように使っている
- 体験談ばかりで、成分量や摂取上の注意が見つからない
- 「今買わないと手遅れ」と健康への恐怖を強めている
「自然由来」「植物由来」という表示も、安全を意味するものではありません。食品であっても、量や体質、薬との組み合わせによって体調を崩すことがあります。
高価だから効果が高いとも限りません。広告費、容器、配送方法など、成分以外の費用も価格に含まれています。
50代以降は、サプリの袋とお薬手帳を並べて考えます
血圧、糖尿病、コレステロール、心臓、甲状腺、骨粗しょう症などの薬を飲んでいる方は、健康食品との飲み合わせを自己判断しない方が安全です。
健康食品の成分が、薬の作用を弱めたり、反対に作用を強めたりする場合があります。薬と飲む時間をずらせば必ず防げるとも限りません。
購入前に、商品のパッケージ、成分表示、販売ページの画面を医師または薬剤師へ見せます。
薬局では、次のように尋ねれば構いません。
「この健康食品を試したいのですが、今飲んでいる薬と一緒に使って問題がないか、成分を見てもらえますか」
薬を処方している病院と、健康食品について聞く病院が違う場合は、お薬手帳を持参してください。市販薬、漢方薬、別のサプリメントも含めて伝えます。
次の方は、特に購入前の確認を優先してください。
- 複数の医療機関から薬を処方されている
- 肝臓や腎臓の病気がある
- 出血を防ぐ、または血液を固まりにくくする薬を飲んでいる
- 手術や検査を受ける予定がある
- 妊娠中、授乳中である
- 高齢で食事量や体重が大きく変わっている
- 過去に食品や薬でアレルギーを起こしたことがある
健康食品を始めるために、処方薬を減らしたり中止したりしてはいけません。すでに併用している場合も、成分によっては急に中止したことが薬の働きへ影響する可能性があるため、医師や薬剤師へ伝えてから対応します。
複数の商品を重ねると、「一日の合計量」が見えなくなります
朝はマルチビタミン、昼は目の健康をうたう商品、夜は睡眠を意識したサプリ。さらに青汁や栄養ドリンクを飲んでいる。
商品ごとの目安量は守っていても、共通する成分が入っていれば、一日全体では摂取量が増えます。
錠剤やカプセルは、普通の食品と比べて、特定の成分をまとめて摂りやすい形です。「食品だから多く飲んでも平気」とは考えないでください。
新しい商品を買う前に、現在使っているものを一か所へ集めます。飲料や粉末も含め、商品名と一日の量を見てください。
同じ栄養素や植物成分が複数の商品に入っている場合は、一つに絞れるかを考えます。
「何となく体によさそう」という目的の商品が三つ以上あるなら、新しい商品を足すより、今飲んでいるものが本当に必要かを見直す方が先です。
「初回980円」ではなく、三か月で支払う総額を見ます
健康食品の広告では、初回価格が大きく表示され、二回目以降の価格や定期購入の条件が下の方に書かれていることがあります。
注文確定前の最終確認画面では、次の内容を見てください。
- 一回限りの購入か、解約するまで続く定期購入か
- 二回目以降の価格はいくらか
- 一回に何袋届くか
- 次の商品が何日後に発送されるか
- 最低購入回数が決められているか
- 三か月または最低購入期間の支払総額はいくらか
- 解約の期限、方法、連絡先
- 返品できる条件と、返送料の負担
「いつでも解約可能」と書かれていても、次回発送日の何日前までに、電話、フォーム、チャットなど、どの方法で連絡する必要があるのかを見ます。
通信販売には、原則として訪問販売のようなクーリング・オフ制度はありません。販売事業者が定める返品・解約条件が判断の基礎になるため、注文後に簡単に取り消せるとは限りません。
注文する場合は、広告画面、最終確認画面、注文完了画面を保存してください。画面が長い場合は、複数枚のスクリーンショットで構いません。
総額や解約条件をすぐ見つけられない商品は、その日は買わない。この基準だけでも、契約上の行き違いを減らせます。
試す場合は、一度に一商品だけ始めます
表示や飲み合わせを確認したうえで使うと決めた場合も、複数の商品を同じ日に始めるのは避けます。
一度に始めると、体調が変わったとき、どの商品や成分が関係したのか分からなくなるためです。
開始時には、次の内容を残します。
- 商品名とメーカー名
- 原材料と成分量が分かる写真
- 飲み始めた日
- 一日に飲んだ量と時刻
- その商品を使う目的
- 飲む前からあった症状
- 飲み始めてからの体調変化
「何となく調子がよい」だけでなく、目的にした生活上の変化を見ます。
たとえば「夕方まで買い物へ行けた」「夜中に目覚める回数は変わらない」など、具体的に記録すると、続ける意味を考えやすくなります。
効果を感じないからと、一日の目安量を超えて増やしてはいけません。何か月も続ける前に、購入当初の目的が変わっていないか、毎月の費用に見合っているかを見直してください。
体調が悪くなったら、「好転反応」と考えて飲み続けないでください
健康食品を始めた後に、発疹、かゆみ、吐き気、下痢、動悸、強いだるさなどが出たとき、「体が変わる途中だから」と説明されることがあります。
体調不良を、効果が出ている証拠だと自己判断して飲み続けるのは危険です。
まず摂取を中止し、商品名、飲んだ量、飲み始めた日、症状が出た時刻を記録します。包装や残っている商品は捨てず、医療機関へ持参できるようにしてください。
医療機関では、次のように伝えます。
「三日前からこのサプリを一日二粒飲み始め、今日の朝から全身に発疹が出ました。処方薬はこのお薬手帳にあります」
健康食品を飲んでいることを隠す必要はありません。原因を見分けるために必要な情報です。
緊急ではないものの、皮膚や白目が黄色く見える、尿が濃くなる、強いだるさが続くなどの変化がある場合も、早めに医療機関へ連絡してください。
親御さんのサプリが増えていても、勝手に捨てない方が話を進めやすくなります
離れて暮らす親御さんの家を訪れたとき、台所や寝室に健康食品の袋が何種類も並んでいることがあります。
ご家族は、飲み合わせや費用が心配になります。しかし、「こんなもの全部やめた方がいい」と取り上げると、本人は健康を気遣う気持ちまで否定されたように感じるかもしれません。
まずは、なぜ飲み始めたのかを尋ねます。
「どの商品が悪いと言いたいわけではないよ。病院の薬と一緒に飲めるかだけ、薬剤師さんに見てもらわない?」
本人の了承を得て、商品を一か所へ集め、次の内容を見ます。
- 現在飲んでいるものと、以前飲んでいたもの
- 一日に何回、どのくらい飲んでいるか
- 病院や薬局へ伝えているか
- 毎月いくら払っているか
- 定期購入が何件あるか
- 解約方法が分かる書類やメールが残っているか
薬局へ持参するのが難しければ、パッケージの表裏を撮影し、お薬手帳と一緒に見せる方法があります。
支払いに困っている、本人が注文した覚えのない商品が繰り返し届く、解約先へ連絡してもつながらない場合は、健康面とは分けて、消費者ホットライン「188」へ契約内容を伝えてください。
症状があるときは、サプリで様子を見る期限を作らないでください
健康食品を選ぶ前に、医療機関で原因を調べた方がよい状態があります。
- 急に体重が減った
- 強い疲労や息切れが続いている
- 食欲が落ち、食事を取れない
- 血便、黒い便、繰り返す嘔吐がある
- 胸の痛みや動悸がある
- 手足のしびれや力の入りにくさがある
- 健康診断で再検査や受診を勧められている
- 現在の治療をやめ、健康食品へ替えたいと考えている
受付では、サプリについて尋ねる前に、今起きている症状を伝えます。
「二か月ほど疲れが続き、階段で息切れするようになりました。健康食品を試す前に、病気が隠れていないか診てもらいたいです」
受診したからといって、健康食品の利用をすべて否定されるとは限りません。今の体調や薬に照らして、使わない方がよいもの、確認が必要なものを分けるための受診です。
今日は注文せず、商品ページで五つの答えを探してください
気になっている商品ページを一つだけ開きます。
そして、次の五つに答えられるか見てください。
- 何を目的に飲む商品か
- 一日分に、どの成分がどれだけ入っているか
- 今の薬やほかのサプリと併用できるか
- 三か月で支払う総額はいくらか
- 次回発送を止める期限と方法は何か
一つでも分からない項目があれば、注文は明日以降へ回します。
持病や薬がある方は、商品名と成分表示の画面を保存し、次に病院や薬局へ行くときに見せてください。急いで買わなくても、健康を守る機会は失われません。
買うことが健康への第一歩とは限りません。今の自分に必要かを見分け、必要がなければ買わないと決めることも、十分に健康を守る行動です。













