昼休みは食事より、誰にも見られない場所で横になりたい
朝、職場へ着いた時点で、すでに一日の半分を終えたように疲れている。
午前中は何とか動けても、午後になると脚が重くなり、集中力が続きません。周囲と同じ速さで仕事をするために無理を重ね、帰宅すると玄関に荷物を置いたまま動けなくなります。
夕食を作れず、入浴も翌朝へ回す。休日は横になって終わり、月曜日になると、また同じ一週間が始まります。
「このまま定年まで続けられる気がしない」
「倒れてからでは遅いのではないか」
「でも50代で辞めたら、次の仕事が見つからないかもしれない」
「自分だけ楽な仕事に変えてほしいとは言いにくい」
退職したい気持ちと、収入を失う怖さの間で、毎日考えが揺れます。
体力が続かないことは、気合いや根性だけの問題ではありません。
今の働き方が体に合わなくなっている場合もあれば、治療や休養が必要な体調変化が隠れている場合もあります。
「辞めるか、我慢するか」の二択へ進む前に、仕事のどこで体力を使い切っているのかを分けてみます。
「この仕事はもう無理」の中身を六つに分けます
同じ職場でも、疲れの原因は人によって違います。
| 特につらいこと | 起きている場面 | 退職前に試せること |
|---|---|---|
| 通勤 | 満員電車、乗り換え、駅の階段で始業前に消耗する | 時差出勤、通勤経路、勤務日数、在宅勤務の可否を聞く |
| 勤務時間 | 夕方になると集中できず、ミスが増える | 残業を減らす、短時間勤務や勤務時間変更の制度を調べる |
| 身体作業 | 立ち仕事、重量物、階段移動が続かない | 座り作業との交代、作業分担、配置変更を申し出る |
| 勤務の不規則さ | 夜勤や連続勤務のあと、何日も回復しない | シフト間隔、夜勤回数、連続勤務を見直せないか相談する |
| 人間関係と緊張 | 対人対応や叱責で消耗し、体まで動かなくなる | 担当変更、相談経路、職場トラブルの記録を考える |
| 体調そのもの | 十分休んでも疲れ、息切れや動悸などもある | 年齢だけと決めず、医療機関で仕事への影響を伝える |
たとえば、仕事内容は嫌いではなくても、往復二時間の通勤で体力を使い切っていることがあります。
この場合、退職だけでなく、勤務時間や出勤日、勤務地を変えられないかという余地があります。
反対に、近い職場でも立ち作業や夜勤で体調を崩しているなら、通勤だけを変えても解決しません。
退職の結論は、一番疲れた日の夜に出さない
帰宅直後は、「明日からもう行けない」と感じます。
その感覚は軽く扱えません。ただ、心身が消耗した状態では、続ける方法も辞めた後の生活も考えにくくなります。
退職届を書く前に、一週間だけ次の内容を残してください。
| 記録すること | 書き方の例 |
|---|---|
| 出勤前の体力 | 10点満点で5点 |
| 体力が切れた時刻 | 午後2時頃 |
| 直前の作業 | 二時間続けて立ち、荷物を運んだ |
| 出た症状 | 脚の重さ、動悸、集中力低下 |
| 休憩後の変化 | 15分座ると少し戻った |
| 帰宅後にできなかったこと | 夕食、入浴、翌日の準備 |
| 翌朝まで残ったか | 眠っても疲れが残った |
一週間並べると、「忙しい曜日だけ限界になる」「夜勤後に回復しない」「上司と話す日の疲れが強い」など、退職以外に手を入れられる場所が見えることがあります。
毎日同じようにつらい場合も、その事実を医師や職場へ具体的に伝える材料になります。
短期間で体力が落ちたなら、退職の前に体の状態を見ます
年齢とともに回復へ時間がかかることはあります。
一方で、数か月の間に急に仕事が続かなくなった、休日に休んでも戻らないという場合は、すべてを50代だからと考えない方がよいでしょう。
受診時には「疲れます」だけでなく、次の内容を伝えます。
- いつ頃から仕事が続かなくなったか
- 何時間働くと動けなくなるか
- 息切れ、動悸、めまい、痛みがあるか
- 睡眠時間と途中で目が覚める回数
- 食欲や体重に変化があるか
- 休日に休めば回復するか
- 現在の仕事内容と勤務時間
- 健診で指摘された項目
- 服用している薬やサプリメント
貧血では、動悸、息切れ、顔色の変化、疲労感などが現れる場合があります。健診結果に血色素量の指摘があれば、放置せず医療機関へ伝えてください。
女性の場合、一般的に45~55歳頃の更年期には、疲れやすさ、眠りの浅さ、発汗、動悸、気分の変化などが現れ、仕事の能率や継続へ影響することがあります。仕事を辞めると決める前に、婦人科などで症状を伝える方法があります。
ただし、更年期に当たる年齢でも、すべての症状が更年期によるものとは限りません。
突然の強い胸の痛みや呼吸の苦しさ、意識がおかしいといった急な症状がある場合は、通常の予約日を待つことだけにこだわらず、緊急の対応を考えてください。胸の痛みや呼吸の苦しさは、心筋梗塞などでも現れる症状として公的機関から案内されています。
職場には「体力がない」ではなく、続けられない作業を伝えます
上司へ相談しても、「年齢はみんな同じ」「運動した方がいい」と言われそうで、黙っている方もいるでしょう。
話すときは、体力の評価ではなく、作業への影響と希望を伝えます。
| 伝わりにくい言い方 | 具体的な伝え方 |
|---|---|
| 「もう体力がありません」 | 「午後に三時間立ち作業が続くと、脚が重くなり作業速度が落ちます」 |
| 「通勤だけで疲れます」 | 「朝の混雑で一時間立つと、始業時から息切れが残ります」 |
| 「残業は無理です」 | 「午後7時を過ぎると、翌朝まで疲れが残り欠勤につながりそうです」 |
| 「楽な仕事にしてください」 | 「重量物を運ぶ作業を減らし、座ってできる業務を一部増やせないでしょうか」 |
| 「休ませてください」 | 「午前と午後に5分ずつ座れると、終業まで作業を続けやすくなります」 |
最初から配置転換を求めることが難しければ、まず二週間だけ作業を変え、体調がどう変わるかを見る提案もできます。
「二週間、午後の重量物作業を外していただき、疲労の変化を記録したいです」
「受診するまでの間、残業を控えられないでしょうか」
職場でどのような調整ができるかは、仕事内容、就業規則、人員体制によって異なります。それでも、退職の意思を伝える前に、利用できる制度と変更可能な作業を人事・総務へ聞くことはできます。
社内で見るのは、休職制度だけではありません
会社の制度は、長期の休職だけとは限りません。
- 有給休暇を使った短期間の休養
- 会社独自の病気休暇
- 勤務時間の変更
- 短時間勤務
- 在宅勤務
- 残業や夜勤の制限
- 業務内容や勤務地の変更
- 休職制度
- 産業医や保健師との面談
すべての職場に同じ制度があるわけではありません。
就業規則を見ても分からなければ、人事には次のように尋ねます。
「体調のため、今の勤務をこのまま続けることが難しくなっています。退職を決める前に、勤務時間、配置、休職など利用できる制度を一覧で教えてください」
持病や治療が関係している場合、厚生労働省の治療と仕事の両立支援では、医療機関、産業保健総合支援センターなどが、本人、医療側、職場の間で必要な配慮を考える支援を行っています。
医師へは、診断名だけでなく、立ち作業、夜勤、重量物、長時間通勤など、実際の仕事内容を伝えます。
「仕事を続けてよいですか」だけでなく、「どの作業や勤務時間なら続けられそうか」を相談すると、職場へ伝える内容が具体的になります。
休む必要があるなら、傷病手当金を退職前に確かめます
体調が悪くても、収入がなくなることが怖くて休めない方がいます。
会社員などで健康保険の被保険者になっている場合、業務外の病気やけがの療養で仕事ができず、連続する3日間を含め4日以上休み、十分な給与が支払われないなどの条件を満たすと、傷病手当金を受けられる可能性があります。
仕事ができない状態かどうかは、医師の意見と実際の仕事内容などを踏まえて判断されます。単に疲れているというだけで自動的に支給される制度ではありません。
| 退職前に聞くこと | 問い合わせ先 |
|---|---|
| 自分が傷病手当金の対象になり得るか | 協会けんぽ、健康保険組合など加入先 |
| 会社の休職期間と給与の扱い | 人事・総務 |
| 現在の仕事ができない状態か | 主治医・医療機関 |
| 申請書と提出の流れ | 加入先と勤務先 |
| 退職後も支給が続く条件 | 加入先の健康保険 |
一定の条件を満たせば退職後も傷病手当金の継続給付を受けられる場合がありますが、被保険者期間や退職日時点の状態などに条件があります。体調が悪いまま先に退職し、あとから制度を知るのではなく、在職中に加入先へ確認してください。
休職すれば必ず復職できる、傷病手当金が必ず支給されると決めつけず、会社の制度、医師の判断、保険者の要件をそれぞれ確かめます。
続ける・配置を変える・休む・辞めるを同じ表で比べます
| 選択肢 | 向いている状態 | 先に見ること |
|---|---|---|
| 現在の仕事を調整して続ける | 特定の作業や残業を減らせば働けそう | 職場が対応できる範囲、収入の変化 |
| 配置・勤務形態を変える | 通勤、夜勤、立ち仕事など負担箇所が明確 | 異動時期、仕事内容、評価や賃金への影響 |
| 休職して治療・回復を優先する | 医師から休養が必要と言われ、回復の見通しを見たい | 休職期間、傷病手当金、社会保険料、復職条件 |
| 在職中に次の仕事を探す | 現在の職種が体に合わず、働く力は残っている | 次の職場で避けたい条件、転職活動の体力 |
| 退職してから立て直す | 調整しても継続が難しく、生活資金を用意できる | 退職後の収入、保険、税、求職できる体調か |
「辞めないこと」が必ず正解ではありません。
職場の調整が難しく、体調を崩し続けているなら、退職が自分を守る選択になる場合もあります。
ただし、退職後に休めばすぐ元気になるとは限りません。収入の不安が新たな負担になることもあります。
現在の体調で転職活動ができるのか、まず休養が必要なのかを分けてください。
退職を選ぶなら、「辞めた翌月」の家計を先に作ります
退職後の不安を減らすには、老後までの資金を一度に計算するより、最初の三か月を出します。
| 退職後に必要なもの | 月額・金額 |
|---|---|
| 家賃・住宅ローン | 円 |
| 食費・光熱費・通信費 | 円 |
| 医療費・薬代 | 円 |
| 退職後の健康保険料 | 円 |
| 年金保険料 | 円 |
| 住民税など | 円 |
| ローン・カード返済 | 円 |
| 最低限必要な月額 | 円 |
| すぐ使える預貯金 | 円 |
退職前には、会社へ次の内容を聞きます。
- 最終給与の支払日と金額の見込み
- 退職金の有無と支給時期
- 未使用の有給休暇の扱い
- 健康保険の資格喪失日
- 離職票などの書類が届く時期
- 会社から返却を求められる物
失業等給付の基本手当は、原則として働く意思と能力があり、求職活動をしている方を対象とします。病気やけがで働けない状態では、すぐ基本手当を受けるのではなく、傷病手当や受給期間延長の手続きが関係する場合があります。
正当な理由のない自己都合退職では、7日間の待期後に給付制限があります。2025年4月1日以降の退職は原則1か月ですが、過去の離職状況などによって3か月になる場合もあります。実際の受給開始日は、本人の加入期間や認定日などでも変わるため、退職前にハローワークへ見込みを聞いてください。
体力や病気を理由に辞めるなら、受診記録や相談記録を残します
雇用保険では、体力不足、心身の障害、疾病、負傷など、正当な理由がある自己都合離職が「特定理由離職者」に当たる場合があります。
ただし、自分で体力不足と書けば自動的に認められるわけではありません。
離職理由は、本人の説明、証拠書類、会社側の説明などを確認したうえで、ハローワークが判断します。
退職理由に体調が関係するなら、次の記録を残しておきます。
- 医療機関の受診日と診断・指導内容
- 仕事内容と体調への影響
- 欠勤、早退、残業の記録
- 上司や人事へ業務調整を求めた日
- 会社から受けた回答
- 退職へ至った経緯
- 離職票に記載された離職理由
離職票の記載が実際の経緯と異なると感じる場合は、受給手続きの際にハローワークへその旨を伝え、手元の資料を示します。
どの区分になるかを会社との会話だけで決めつけないでください。
職場へ話しても取り合ってもらえないときは、外から聞く方法があります
負担軽減を申し出ても、「辞めるか続けるか自分で決めて」と言われることがあります。
また、体調を伝えたあとに嫌がらせを受けた、配置や賃金について説明のない扱いをされたなど、職場との問題が重なる場合もあります。
総合労働相談コーナーは、解雇、配置転換、賃金、いじめ・嫌がらせなど、幅広い労働問題について、電話や面談で無料相談を受け付けています。必要に応じて助言・指導やあっせんなどの制度も案内しています。
相談時には、次のように事実を伝えます。
「体調のため重量物作業を減らせないか申し出ましたが、退職するよう言われました。医師の受診記録と、上司とのやり取りがあります。今後の伝え方と利用できる相談制度を知りたいです」
相談したから会社を訴えなければならないわけではありません。
自分の状況で何を確認すればよいか、退職を伝える前に情報を得るためにも使えます。
心が先に限界になっているときは、退職手続きより休める状態を作ります
体力が続かない背景に、長時間労働、人間関係、強い緊張が重なっていることがあります。
次のような状態が続いているなら、働き方だけでなく心身の状態にも目を向けてください。
- 仕事のことを考えると眠れない
- 朝になると吐き気や動悸がする
- 涙が出て出勤準備ができない
- 休日も仕事のことが頭から離れない
- 食欲が落ちた、または食べ続けてしまう
- ミスが増え、自分を強く責めている
- 消えてしまいたいと感じることがある
働く人とその家族は、厚生労働省の「こころの耳」で、仕事や人間関係、過重労働による心身の不調について、電話・SNS・メールで無料相談を利用できます。
相談窓口は退職すべきかを代わりに決める場所ではありません。
今の状態を言葉にし、受診や職場への伝え方など、次の行動を一緒に考える場所として利用できます。
家族は「すぐ辞めなよ」と「もう少し頑張って」の間を作ります
本人が毎日疲れ切っていると、配偶者や家族も心配になります。
「体を壊す前に辞めた方がいい」と言いたくなる一方、収入がなくなることも怖いでしょう。
| 避けたい言い方 | 代わりに聞くこと |
|---|---|
| 「そんな会社、すぐ辞めなよ」 | 「一番つらい作業は何?減らせる余地はありそう?」 |
| 「次が決まるまで我慢して」 | 「今のままあと一か月続けると、体はどうなりそう?」 |
| 「運動不足じゃない?」 | 「眠っても戻らない疲れや、息切れはある?」 |
| 「私の収入で何とかする」 | 「三か月分の生活費を一緒に出してみよう」 |
| 「結局どうしたいの?」 | 「今日は受診、職場への相談、お金のうちどれを一緒に進める?」 |
家族が退職の可否を決めるのではなく、本人が休んで判断できる状態を作ります。
受診に同行する、就業規則を一緒に見る、毎月の生活費を出すなど、一つの作業を手伝う方が、本人は動きやすくなります。
今の状態によって、明日の行動を一つに絞ります
| 今の状態 | 明日の行動 |
|---|---|
| 特定の作業だけがつらい | 上司へ作業変更を相談する日時を決める |
| 勤務時間や通勤で消耗する | 人事へ勤務制度と配置変更の有無を聞く |
| 休んでも疲れが戻らない | 医療機関を予約し、仕事内容と症状をメモする |
| 医師から休養が必要と言われた | 休職制度と傷病手当金を会社・保険者へ聞く |
| 会社が話を聞かず、対応にも疑問がある | 総合労働相談コーナーへ事実関係を伝える |
| 退職の意思が変わらない | 三か月分の生活費と、退職後の働ける条件を書く |
退職しないために、すべての方法を試し切らなければならないわけではありません。
受診や職場への相談を一度したうえで、「ここでは続けられない」と判断することもあります。
必要なのは、限界まで働いた末に動けなくなることではなく、自分が何を試し、何が難しかったかを分かったうえで次へ進むことです。
今日することは、退職届を書くことではありません
職場で体力が続かない日が重なると、退職の二文字が頭から離れなくなります。
今日は、紙やスマートフォンへ次の四行だけ書いてください。
- 一番体力を使い切る作業:
- 疲れが戻らなくなった時期:
- 職場へ減らしてほしいこと:
- 退職した場合の一か月の最低生活費:
たとえば、次のようになります。
「午後の荷物運びで体力を使い切る。三か月前から休日も回復しない。二週間だけ重量物作業を減らしてほしい。退職後の最低生活費は月18万円」
この四行があれば、受診、職場への相談、家族との話し合いのどこから始めるかが見えてきます。
50代で仕事の続け方が変わることは、これまでの働き方がすべて間違っていたという意味ではありません。
今の体に合わなくなった仕事を減らす。治療や休養が必要なら、収入をつなぐ制度を調べる。それでも難しければ、次の職場で避けたい条件を明確にして退職する。
辞めることも、続けることも、体を壊すまで証明する必要はありません。
まず明日は、「体力がありません」ではなく、「この作業を続けると、午後には動けなくなります」と一度伝えてみてください。
その返答と自分の体調を見てからでも、退職の結論は遅くありません。
出典・確認先メモ
- 厚生労働省「治療と仕事の両立支援ナビ」:病気を抱えながら働く場合の相談機関、職場との調整支援を探す際の確認先。
- 全国健康保険協会「傷病手当金」:労務不能、待期期間、給与との調整、申請条件を確認する際の資料。
- ハローワークインターネットサービス「特定受給資格者及び特定理由離職者の範囲」:体力不足や疾病などを理由に離職した場合の扱いを確認する資料。
- 厚生労働省「雇用保険の基本手当Q&A」:自己都合退職の給付制限や、病気で求職できない場合の手続きを確認する資料。
- 厚生労働省「総合労働相談コーナー」:配置転換、解雇、賃金、嫌がらせなど職場の問題を相談する際の確認先。
- 厚生労働省「こころの耳」:働く人と家族が仕事や心身の不調について、電話・SNS・メールで相談する際の確認先。


















