求人票を開いても、「年齢不問」の四文字で手が止まります
年金だけでは少し心もとない。家にいる時間が長くなり、人と話す機会も減りました。
もう一度働きたいと思って求人を見ても、並んでいるのは清掃、警備、品出し、調理補助などです。
「未経験歓迎」「シニア活躍中」と書いてはあります。
それでも、応募ボタンを押す直前になると心配になります。
「70代の自分が応募して、迷惑に思われないだろうか」
「若い人と同じ速さで動けないと断られるのではないか」
「働き始めてから、体がついていかなかったらどうしよう」
「年金が減ったり、税金が増えたりしないだろうか」
家族へ話すと、「無理をしない方がいい」「転んだら大変」と止められることもあります。
けれど、働きたい理由は収入だけとは限りません。
朝起きる理由がほしい。人と話したい。長く続けてきた経験をまだ役立てたい。自分のお金を少しでも持ちたい。
その気持ちを、年齢だけで諦める必要はありません。
ただし、若いころと同じ条件で仕事を選ぶ必要もありません。
「いくら稼ぐか」の前に、働く目的を一つ決めます
| 働きたい理由 | 優先したい条件 | 避けたい探し方 |
|---|---|---|
| 生活費を補いたい | 月の収入、勤務日数、継続性 | 収入が一定しない仕事だけに頼る |
| 人と関わりたい | 接客、受付、チーム作業 | 一人きりで長時間行う仕事 |
| 生活にリズムを作りたい | 決まった曜日と短時間勤務 | 前日まで予定が分からない働き方 |
| 経験を生かしたい | 以前の仕事に近い補助業務 | 肩書や職種名だけにこだわる |
| 体を動かしたい | 軽い作業、休憩、移動量 | 重い物や長時間立ち仕事を勢いで選ぶ |
| 家族以外の居場所がほしい | 通いやすさ、人間関係、週の回数 | 収入額だけで遠方の職場を選ぶ |
生活費を毎月5万円補いたい人と、週に二度外へ出たい人では、向いている働き方が違います。
目的を決めないまま探すと、時給が高い求人へ目が向き、通勤や体力が後回しになりがちです。
私が働きたい一番の理由は、________です。
そのために、月__日・一日__時間まで働きたいです。
できる仕事は、病名や年齢ではなく「一日の動き」で考えます
同じ70代でも、体力、持病、通院、家族の事情はそれぞれ違います。
「元気だから大丈夫」と思っていても、仕事では同じ動作を何時間も続けます。
| 応募前に見る動作 | 自分への問い |
|---|---|
| 立つ | 休憩を挟みながら何時間立てるか |
| 歩く | 職場内を一日どの程度移動できるか |
| 持つ | 何キロ程度なら繰り返し持てるか |
| かがむ | 床の物を取る動作を繰り返せるか |
| 階段 | 手すりなしで何往復できるか |
| 見る | 小さな文字、値札、端末画面を読めるか |
| 聞く | 店内放送や電話を聞き取れるか |
| 覚える | 複数の手順を同時に扱えるか |
| 通う | 雨の日や冬の朝にも無理なく通えるか |
たとえば「清掃なら簡単そう」と思っても、浴室清掃ではかがむ動作が多く、広い施設では歩く距離が長くなります。
「受付なら座れる」と思っても、電話対応、来客名の確認、パソコン入力が含まれるかもしれません。
職種名だけで決めず、実際の一日を聞くことが必要です。
70代に多い仕事も、働く場所によって負担が変わります
| 仕事の例 | 向いている人 | 応募前に聞きたいこと |
|---|---|---|
| 清掃 | 決まった手順を一人で進めたい | 床・トイレ・浴室のどこを担当するか、移動距離 |
| マンション・施設管理 | 人への対応と簡単な点検ができる | 巡回、階段、清掃、緊急対応の範囲 |
| 警備・案内 | 周囲を見ながら落ち着いて対応できる | 立ち時間、屋外勤務、夜勤、休憩場所 |
| スーパーの品出し | 商品名や売場を覚え、体を動かしたい | 箱の重さ、冷蔵場所、早朝勤務の有無 |
| 調理補助・洗い場 | 家事経験を生かし、手順どおり動ける | 熱さ、床の滑り、食器の重さ、ピーク時の速さ |
| 受付・駐輪場管理 | 人への声かけが苦にならない | 座れる時間、金銭・端末操作、屋外時間 |
| 事務補助 | 書類整理や入力の経験がある | パソコン操作、電話対応、処理件数 |
| 袋詰め・軽作業 | 同じ作業を丁寧に続けられる | 作業速度、立ち座り、照明、細かさ |
| 家事・生活支援 | 掃除や買い物、調理の経験を生かしたい | 訪問先、移動手段、作業範囲、身体介護の有無 |
| 植木・除草・屋外作業 | 外仕事に慣れ、体力がある | 暑さ、斜面、高所、道具、作業時間 |
「高齢者向け」と書かれている仕事でも、自分にとって安全とは限りません。
反対に、以前経験した業界で、受付、指導、書類整理、後輩の補助など、身体負担の少ない役割が見つかることもあります。
以前の肩書ではなく、今できる作業へ言い換えます
長く勤めた経験があっても、「元営業部長」「自営業を四十年」とだけ伝えると、採用側は現在どの仕事を任せられるか判断しにくいことがあります。
| これまでの経験 | 仕事で使える言い換え |
|---|---|
| 営業をしていた | 初対面の人へ説明できる、電話対応ができる |
| 事務職だった | 書類整理、伝票確認、入力、電話取次ぎができる |
| 製造業で働いた | 手順を守る、検品する、安全に注意できる |
| 小売店を経営した | 接客、レジ、在庫、開閉店作業の経験がある |
| 家庭を支えてきた | 調理、清掃、洗濯、買い物を段取りよく行える |
| 町内会の役員をした | 受付、連絡、名簿管理、行事準備ができる |
| 家族の介護をした | 相手の話を聞き、生活上の変化へ気づける |
以前と同じ責任や収入を求めるのではなく、経験の中から今の体力で提供できる部分を切り出します。
接客業を三十年経験し、来客対応と電話の取次ぎをしてきました。
現在は、週3日・一日4時間程度を希望しています。
長時間の立ち仕事は難しいですが、座り仕事と短時間の案内業務は対応できます。
週5日より、疲れを翌日まで残さない日数から始めます
| 働き方 | 向いている状態 | 見直したい点 |
|---|---|---|
| 週1〜2日・2〜4時間 | 久しぶりに働く、体力を試したい | 収入は限られるため目的と合うか |
| 週3日・短時間 | 生活リズムと収入を両立したい | 連勤を避けられるか |
| 週4〜5日・短時間 | 通勤と勤務へすでに慣れている | 通院、家事、回復日を確保できるか |
| フルタイム | 体力と就労経験があり、収入を優先する | 休憩、業務量、社会保険、年金への影響 |
| 単発・臨時 | 予定に合わせ、時々働きたい | 仕事量と収入が安定しない |
初日を乗り切れることより、三か月続けられることを優先します。
勤務日は元気でも、翌日に寝込むようなら、時間、日数、作業量のどれかを減らした方が長く働けます。
勤務時間は、仕事より先に通勤から決めます
早朝の品出しや清掃は、求人が見つかりやすい一方、暗い時間の移動や冬の凍結が負担になります。
- 始発や早朝のバスを使わずに通えるか
- 駅から職場まで坂や階段がないか
- 雨の日も歩ける距離か
- 帰宅時に買い物や通院を済ませられるか
- 仕事が延びても交通手段があるか
- 自家用車を使えなくなっても通えるか
時給が少し高くても、片道一時間かかる職場では、勤務時間以上に体力を使います。
最初は「自宅から30分以内」「乗換えなし」など、自分の通勤条件を決めて検索します。
求人票では、「シニア歓迎」の先を読みます
| 求人票の項目 | 見落とさないこと |
|---|---|
| 仕事内容 | 清掃・運搬・接客などを「一式」で済ませていないか |
| 雇用期間 | 更新の有無、更新上限、試用期間 |
| 勤務日 | 土日、祝日、年末年始に出勤が必要か |
| 勤務時間 | 準備・着替え・後片付けを含むか |
| 休憩 | 座れる場所と、実際に取れる時間 |
| 重量物 | 何キロの物を何回持つか |
| 必要な操作 | レジ、スマートフォン、タブレット、パソコン |
| 社会保険等 | 雇用条件に応じた加入内容 |
| 定年・年齢条件 | 応募可能年齢と雇用終了の基準 |
70歳までの就業機会を確保することは、事業主の努力義務とされています。ただし、すべての企業が70歳を超えた人を新たに採用する義務があるという意味ではありません。実際の応募年齢、契約期間、更新条件は求人ごとに確かめます。
ハローワークでは、年齢だけでなく生活条件まで伝えます
全国の主要なハローワークには、概ね60歳以上の求職者を支援する「生涯現役支援窓口」が設置されています。
これまでの経験、希望職種、年金の受給状況などを踏まえた職業相談・紹介に加え、職場見学、面接会、セミナー、職業訓練などの案内を受けられます。
窓口では「70代でもできる仕事はありますか」とだけ聞くより、条件を具体的に伝えます。
72歳で、週3日、一日4時間ほどを希望しています。
自宅から公共交通で30分以内、長時間の立ち仕事と10キロ以上の運搬は難しいです。
接客と書類整理の経験を生かせる求人を探しています。
年齢を隠すことはできませんが、年齢だけを前面に出す必要もありません。
何ができ、どの条件なら安定して通えるかを伝える方が、紹介する側も求人を絞りやすくなります。
シルバー人材センターは、短時間から試したい人の選択肢です
シルバー人材センターは、地域の家庭、企業、公共団体などから、臨時的・短期的または軽易な業務を受け、会員へ仕事を提供する仕組みです。原則として市区町村単位で設置されています。
地域によって異なりますが、清掃、除草、家事援助、施設管理、駐輪場管理、事務補助などの仕事が扱われることがあります。
| シルバー人材センターが合いやすい人 | 事前に知っておきたいこと |
|---|---|
| 短時間・少ない日数から始めたい | 希望する仕事が常にあるとは限らない |
| 地域の中で働きたい | 就業日数や収入は保証されない |
| 雇用契約以外の働き方も検討できる | 請負・委任では就業先との雇用関係がない |
| 仕事以外の地域活動にも関心がある | 会員登録や会費など地域ごとの手続きがある |
シルバー人材センターの仕事は、基本的に請負または委任の形が多く、一般のパート雇用とは権利や報酬の仕組みが異なります。一定した収入を得たい場合は、ハローワークなどの雇用求人と並行して探します。
面接では「何でもできます」と言わない方が長く働けます
採用されたい気持ちから、できないことまで「大丈夫です」と答えると、働き始めてから続かなくなります。
| 聞かれやすいこと | 答え方の例 |
|---|---|
| 体力に問題はありませんか | 4時間程度の立ち仕事は可能ですが、重量物の反復運搬は避けたいです |
| 週何日働けますか | 週3日を希望し、連続勤務は2日までなら安定して通えます |
| パソコンは使えますか | 文字入力とメールはできます。表計算の複雑な操作は教えていただきたいです |
| 長く続けられますか | 無理のない勤務条件であれば、継続して働きたいと考えています |
| なぜ働きたいのですか | 生活費の補助と、接客経験を地域で生かしたいためです |
持病の詳細をすべて話す必要があるとは限りませんが、安全に働くための配慮が必要なら、仕事へ影響する範囲を伝えます。
「腰が悪い」とだけ言うより、「床から重い物を持ち上げる作業は難しい」と、避けたい動作を具体化します。
面接へ行ったら、職場の床・休憩場所・働く人を見ます
- 床に段差や滑りやすい場所がないか
- 通路へ荷物が置かれていないか
- 休憩時に座れるか
- 照明が暗すぎないか
- 屋外作業で暑さや寒さを避ける場所があるか
- 重い物を一人で運ぶ職場ではないか
- 急いで走ることを求められないか
- 困ったときに聞ける人がいるか
高年齢労働者では、身体機能の変化も踏まえた作業環境や作業方法への配慮が必要です。厚生労働省は2026年4月から、高年齢者の特性に配慮した環境改善や作業管理などに関する指針を適用しています。
自分の体力だけを責めるのではなく、転倒しにくい床、無理のない運搬、休憩を取れる職場かも見てください。
働き始めた一か月は、収入より翌日の体調を記録します
| 記録すること | 書き方の例 |
|---|---|
| 勤務時間 | 9時から13時 |
| 主な作業 | 受付2時間、巡回1時間、清掃1時間 |
| 勤務中の痛み | 終了前に右膝が痛くなった |
| 帰宅後 | 昼寝を1時間した |
| 翌日の体調 | 疲れは残ったが家事はできた |
| 困った作業 | 階段を4往復する巡回 |
一週間で辞めるか、我慢して続けるかの二択にしません。
巡回回数、勤務時間、連勤、担当作業など、変えれば続けられる部分がないか勤務先へ伝えます。
仕事は続けたいのですが、午後まで勤務した翌日に膝の痛みが残ります。
午前の4時間勤務へ戻すか、階段を使う巡回を減らせないでしょうか。
家族の「働かない方がいい」は、心配している場面を聞きます
| 家族の言葉 | 心配しているかもしれないこと | 答え方の例 |
|---|---|---|
| もう働かなくていい | 無理をして倒れること | 週2日、3時間から試して翌日の体調も見る |
| お金に困っているの? | 家族に隠して生活が苦しくなっていること | 収入だけでなく、人と関わる目的もある |
| 事故が起きたら困る | 転倒、通勤、屋外作業 | 駅近で座れる仕事に絞り、夜勤はしない |
| 変な求人ではないの? | 詐欺や高額な契約 | ハローワークや公的機関の求人を中心に探す |
家族の許可を得なければ働けないわけではありません。
ただ、緊急連絡先や体調の変化を見てくれる人として、働く場所、曜日、勤務時間を共有しておくと安心です。
年金は「働いたら全部減る」わけではありません
厚生年金が適用される事業所で働きながら老齢厚生年金を受ける場合、賃金と老齢厚生年金の金額によっては、在職老齢年金として一部または全部が支給停止されることがあります。
2026年4月からは、老齢厚生年金の基本月額と総報酬月額相当額の合計が月65万円を超える場合に、超えた額の半分が支給停止の計算対象となります。老齢基礎年金はこの調整の対象外です。70歳以降も、厚生年金適用事業所で働く場合には在職による調整が行われることがあります。
実際の計算には、賞与や受け取っている年金の内訳も関係します。
求人の月給だけで自己判断せず、年金事務所へ年金額と予定する賃金を伝えて確認してください。
給与や配分金を受け取ると、税金の手続きが必要になることがあります
給与と公的年金の両方を受け取る場合や、シルバー人材センターなどから給与以外の収入を得る場合は、所得の種類や金額によって確定申告が必要になることがあります。
公的年金等の収入が400万円以下で、公的年金等以外の所得が20万円以下など、一定の条件では所得税の確定申告が不要となる制度があります。ただし、住民税の申告が別に必要となる場合もあります。
勤務先から受け取る源泉徴収票、年金の源泉徴収票、シルバー人材センターの配分金に関する書類は保管します。
手続きが分からないときは、税務署や市区町村へ収入の種類と金額を伝えてください。
仕事を紹介すると言われても、先にお金を払わないようにします
仕事探しの途中で、次のような話を持ちかけられることがあります。
- 登録のために高額な費用が必要
- 仕事を始める前に教材や機械を買う必要がある
- 必ず稼げるので借金して受講するよう勧められる
- 銀行口座や携帯電話を他人へ渡すよう言われる
- 荷物を受け取り、別の場所へ運ぶだけと言われる
- 仕事内容を説明せず、身分証の写真だけ求められる
働くための準備と称して、大きなお金、口座、携帯電話、本人確認書類を求められたら、その場で進めません。
会社名、所在地、仕事内容、雇用契約、賃金の支払方法を確認できない求人は避け、家族やハローワークなど第三者へ見せてください。
今日するのは、十件へ応募することではありません
今日は、紙へ次の四つを書いてください。
- 週に働きたい日数
- 一日に働ける時間
- 難しい動作を二つ
- 生かせる経験を二つ
たとえば、「週3日」「午前中4時間」「10キロ以上の運搬と長い階段は難しい」「接客と電話対応ができる」という形です。
この四つを持って、最寄りのハローワークの生涯現役支援窓口か、地域のシルバー人材センターへ問い合わせます。
70代の仕事探しでは、採用されることがゴールではありません。
働いた翌日にも食事を作り、通院し、友人と話せる生活を残すことが必要です。
年齢を若く見せようとせず、できないことばかりを数えず、「この条件なら安定して続けられる」と伝えてください。
まずは求人を一日中眺めるのではなく、自分が無理なく働ける四つの条件を一枚に書くところから始めましょう。
出典・確認先メモ
- 厚生労働省「生涯現役支援窓口事業」:概ね60歳以上を対象とする職業相談、職業紹介、職場見学、面接会などの就労支援。
- 厚生労働省「高年齢者雇用対策」:65歳までの雇用確保義務と70歳までの就業確保の努力義務。
- 全国シルバー人材センター事業協会:臨時的・短期的または軽易な業務、請負・委任を中心とする仕組みと収入の非保証。
- 厚生労働省「高年齢者の労働災害防止のための指針」:身体特性に配慮した作業環境、作業管理、安全衛生。
- 日本年金機構「在職老齢年金制度」:2026年4月以降の支給停止調整額と70歳以降の取扱い。
- 国税庁「確定申告が必要な方」:給与と年金等がある場合の申告要件、年金所得者の確定申告不要制度。


















