査定額を知りたかっただけなのに、送信直後から電話が鳴り始めた
実家を売るか、まだ家族でも決めていない。
ただ、維持費が気になり、いくらくらいになるのか知りたくて一括査定のフォームへ住所と電話番号を入力しました。
送信して数分後、知らない番号から電話が入ります。出ないでいると、別の番号からも着信がありました。
夕方までに着信履歴は何件にも増えています。
「査定を申し込んだ以上、全部の電話に出なければ失礼なのだろうか」
「電話に出たら、そのまま訪問や契約へ話を進められないだろうか」
相場を知りたかっただけなのに、売却を迫られているように感じることがあります。
一括査定では、サービスの仕組みに応じて、入力した物件情報や連絡先が表示・選択された複数の不動産会社へ提供されます。不動産会社は、査定に必要な追加情報や売却予定を確かめるために連絡します。
そのため、申し込み後に連絡が来ること自体は不自然ではありません。
ただし、査定を依頼したことと、訪問を受け入れること、媒介契約を結ぶこと、家を売ることは別です。
申し込み前に見るのは、査定社数より「誰へ何が渡るか」です
「最大十社へ無料査定」と書かれていても、必ず十社へ依頼する必要はありません。
申し込み画面では、次の項目を送信前に見てください。
- 査定を依頼する不動産会社の社名と社数
- 自分で依頼先を外せるか
- 電話番号、メールアドレス、物件住所など、提供される情報
- 電話、メール、SMSなどの連絡方法を指定できるか
- 個人情報の利用目的と提供先
- 申し込み後のキャンセル方法
- 査定サービスと不動産会社、それぞれの問い合わせ窓口
会社名の一覧を開かず、すべて選択されたまま送信すると、想像より多くの会社から連絡を受けることがあります。
電話が苦手なら、備考欄へ次のように書きます。
「売却時期は未定です。まず査定額と根拠をメールで受け取りたいです。電話や訪問は希望していません」
ただし、備考欄へ書けば必ず電話が来なくなるとは限りません。連絡方法を指定できるサービスか、申し込み前に確かめてください。
一括査定の「無料」は、連絡が来ないという意味ではありません。依頼する会社数と連絡方法を自分で選べるかが、申し込み前の分かれ目です。
すでに電話が来ているなら、出る会社を一社ずつ選んで構いません
着信が何件もあると、すべて折り返さなければならないように感じます。
けれども、査定を依頼した会社すべてと長く話す必要はありません。
まず、一括査定サービスの申込完了メールを開き、依頼先の会社名を見ます。着信番号と社名が分からない場合は、留守番電話やSMSを待つ方法もあります。
電話へ出たら、最初に相手の会社名、担当者名、用件を聞いてください。
「一括査定を申し込んだ〇〇です。最初に、会社名と担当者名、今回のお電話の目的をお願いします」
そのうえで、現在の希望を短く伝えます。
査定結果だけを受け取りたい場合
「まだ売却するか決めていません。査定額と算出根拠をメールで送ってください。現時点では訪問査定や媒介契約は希望していません」
電話ではなくメールへ替えたい場合
「仕事中は電話へ出られません。今後の連絡はメールだけでお願いします」
査定自体を取りやめたい場合
「事情が変わり、今回は売却も査定も見送ります。今後の電話や訪問による勧誘は希望しません」
理由を詳しく説明する必要はありません。
「いつなら売りますか」「別の家族へ連絡してよいですか」と聞かれても、予定がなければ、
「売却予定は未定です。再連絡も希望しません」
と繰り返せば十分です。
電話を止めたいときは、「忙しい」ではなく勧誘を断ります
「今は忙しいです」
「また今度お願いします」
この言い方では、不動産会社から見ると、日時を変えれば連絡してよいという意味に受け取られることがあります。
電話を止めたいなら、今後の勧誘を希望しないことまで伝えてください。
「今回は売却しません。査定、訪問、媒介契約の勧誘を含め、今後の電話連絡は希望しません。社内の連絡停止記録へ残してください」
一括査定サービス側にも、次の内容を伝えます。
「〇月〇日に申し込みましたが、依頼を取りやめます。提携会社への連絡停止依頼の方法と、登録情報の利用停止・消去を求める場合の窓口を教えてください」
個人情報が必ずすぐ削除されるとは限りません。法令上や取引記録上の保存が必要な場合もあるため、削除、利用停止、勧誘停止のどこまで対応できるかを各窓口へ尋ねます。
連絡停止を伝えた後も電話が続く場合に備え、次を残してください。
- 電話が来た日時
- 電話番号
- 会社名と担当者名
- 伝えた断り文句
- 相手の返答
- SMSやメールの画面
査定額が高い会社ほど、よい条件で売れるとは限りません
複数社へ依頼すると、査定額に数百万円の差が出ることがあります。
一番高い会社へ頼みたくなりますが、査定額は売却を保証する金額ではありません。
仲介による査定では、周辺の成約事例、土地や建物の状態、市場動向などから、売却できると考える価格が示されます。
高い価格で売り出しても、購入希望者が現れなければ、値下げが必要になることがあります。
査定書では金額だけでなく、次を比べてください。
| 見る項目 | 不動産会社へ聞くこと |
|---|---|
| 査定額の根拠 | 「近隣のどの成約事例と比べましたか」 |
| 想定する売却期間 | 「この価格で、何か月程度の売却を見込んでいますか」 |
| 売り出し価格との差 | 「査定額と、最初に広告へ出す価格は同じですか」 |
| 値下げの考え方 | 「反響がない場合、いつ、どの程度下げる想定ですか」 |
| 必要な費用 | 「仲介手数料、測量、解体、残置物処分などの見込みを教えてください」 |
| 会社の得意分野 | 「この地域、この種類の物件を最近扱った事例はありますか」 |
宅地建物取引業者が売買価格について意見を述べる場合は、合理的な根拠を示すことが求められています。
「今ならこの金額です」「うちだけ高く売れます」といった言葉だけでなく、成約事例や物件条件を使った説明を受けてください。
机上査定と訪問査定では、分かることが違います
一括査定で最初に届くのは、住所、面積、築年数などの入力情報をもとにした机上査定であることが少なくありません。
室内の状態、日当たり、接道、境界、建物の傷み、リフォーム履歴などは、現地を見なければ分からないことがあります。
売却を具体的に考え始めた段階では、候補を二、三社に絞って訪問査定を依頼する方法があります。
ただし、電話を受けたその日に訪問を入れる必要はありません。
訪問を受ける場合も、先に目的を決めておきます。
「今回は現地を見た査定額と根拠を聞くための訪問です。媒介契約は当日結びません」
一人で対応することに心細さがあるなら、家族が同席できる日時へ変更してください。
鍵、権利証、実印、本人確認書類などを、査定段階で求められるまま渡さないことも必要です。書類の用途と必要性を聞き、預ける場合は受領記録を残します。
査定依頼・媒介契約・売買契約を混同しないことです
不動産売却には、名前の違う手続きが続きます。
- 査定依頼:不動産の価格について意見を求める段階
- 訪問査定:現地を見てもらい、より具体的な査定を受ける段階
- 媒介契約:不動産会社へ買主探しや売却活動を依頼する契約
- 売買契約:買主、代金、引渡し条件などを決めて売却する契約
一括査定へ申し込んだだけで、通常は媒介契約や売買契約まで成立するわけではありません。
訪問査定を受けても、必ずその会社へ売却を頼む必要はありません。
媒介契約を勧められたら、専属専任媒介、専任媒介、一般媒介のどれなのか、契約期間、報告方法、解約時の扱いを読んでから決めます。
「説明だけ聞いて、契約書は持ち帰ります」
「家族と比較するため、今日は署名や電子同意をしません」
このように伝えて構いません。
親御さんや共有名義の家を、家族だけで査定へ出すときの注意
高齢の親御さんが住む家や、きょうだいとの共有名義になっている実家について、子どもが価格を調べることがあります。
相場を調べるだけなら、国土交通省の不動産情報ライブラリなどで、近隣の取引価格を見る方法もあります。
個別の査定を依頼する場合は、次を確かめてください。
- 現在の所有者は誰か
- 共有者がいるか
- 親御さん本人は査定依頼を知っているか
- 不動産会社へ家族の連絡先を渡してよいか
- 売却を考える権限と意思が誰にあるか
家族が査定を申し込んだからといって、所有者本人の意思を飛び越えて売却を進められるわけではありません。
不動産会社には、最初に立場を伝えます。
「所有者は父です。家族として相場を調べていますが、本人はまだ売却を決めていません。本人への直接連絡や訪問はしないでください」
認知症などで親御さんの判断力が低下している場合は、家族が代わりに署名すればよいとは限りません。査定と契約を分け、実際の売却に進む前に権限や手続きの確認が必要です。
しつこい勧誘や怖い言い方をされたら、通常の比較を続けません
査定後の連絡であっても、次のような対応を我慢する必要はありません。
- 勧誘を断った後も繰り返し電話が来る
- 深夜や早朝など、迷惑な時間に連絡される
- 長時間、電話を切らせてもらえない
- 会社名や担当者名、目的を明らかにしない
- 「今日決めないと損をする」と契約を急がせる
- 断ると責める、威圧する、脅すような言い方をする
- 約束していないのに自宅へ来る
宅地建物取引業者による契約勧誘では、断った後の継続的な勧誘や、私生活・業務の平穏を害して困惑させるような方法などが禁止されています。
連絡記録を残し、会社の管理者へ勧誘停止を求めてください。それでも続く場合は、業者へ免許を与えている都道府県や国土交通省の地方整備局、消費生活センターが相談先になります。
電話では、
「〇月〇日に勧誘を断りましたが、その後も電話が続いています。会社名、担当者名、着信日時と会話内容を記録しています。こちらで扱える内容か教えてください」
と伝えます。
売買契約へ署名した後は、「査定を断る」のとは事情が変わります
査定や訪問を断る段階と、売買契約を結んだ後では対応が異なります。
特に、消費者が自宅を不動産業者へ売却する契約では、一般的な訪問販売のようにクーリング・オフできるとは限らず、国民生活センターは、自宅の売却契約はクーリング・オフできないと注意を促しています。
解約しようとすると、契約条項に基づく違約金などが問題になることがあります。
すでに署名・押印や電子契約をしたものの、説明と内容が違う、強く迫られた、解約を拒まれている場合は、自己判断で放置しないでください。
契約書、重要事項に関する説明資料、メール、録音、着信履歴を手元に置き、消費者ホットライン188などへ早めに連絡します。
今日できるのは、着信へ折り返すことではなく希望を一斉に伝えることです
電話が何件も来ているなら、一社ずつ長く説明する必要はありません。
一括査定サービスの申込完了メールから依頼先を見て、各社へ次の文面をメールまたはSMSで送ってください。
「一括査定を依頼した〇〇です。現時点では売却、訪問査定、媒介契約を決めていません。査定額と根拠はメールで送付してください。今後の電話や訪問による勧誘は希望しません」
査定も不要になったなら、文面を次のように替えます。
「事情が変わったため、今回の査定依頼を取り下げます。今後の電話、SMS、訪問による勧誘は希望しません。連絡停止の登録をお願いします」
これを送った時点で、家を売るかどうかまで決める必要はありません。
まず電話を落ち着かせる。査定書が届いたら、金額ではなく根拠を見る。訪問と契約は別の日に判断する。
この順番なら、電話の勢いではなく、自分と家族の予定で不動産売却を考えられます。


















