引き出しから会員証が出てきても、すぐ捨てたり解約したりしないでください
親御さんが施設へ入居し、ご実家を片づけていたら、「冠婚葬祭互助会」と書かれた会員証が出てきた。
通帳を見ると、毎月数千円ずつ長い間引き落とされています。親御さんへ聞いても、「昔、近所の人に勧められた気がする」「もう払い終わったはず」と、はっきりしません。
葬儀を頼む会社は別に決めている。家族葬の予定なので、昔の大きな祭壇も必要なさそう。それなら解約して、現金を返してもらった方がよいのではないか。
そう考えるのは自然です。
ただし、互助会の契約は銀行の積立預金とは違います。掛金は、将来の結婚式や葬儀などで、契約に定められたサービスを受けるために前払いするものです。預金のように、支払総額がそのまま残高として戻る仕組みではありません。解約すると、約款に定められた手数料などを差し引いた返戻金が支払われるのが一般的です。
そのため、会員証を見つけた直後にすることは「解約してください」と電話することではありません。
いくら払ったか、解約するといくら戻るか、使うと何が受けられるかを同じ紙面に並べます。
互助会は「満期になれば掛金が全額現金で戻る積立」とは限りません。完納後も、サービスを利用する権利として契約が残っている場合があります。
最初の電話では、解約を申し込まず六つの数字を聞きます
互助会へ電話すると、「解約するより葬儀で利用した方がお得です」「ご家族へ名義を移せます」と案内されることがあります。
その説明が間違っているとは限りません。実際に利用した方が有利な契約もあります。
しかし、「お得です」だけでは判断できません。最初の電話では、解約を確定させず、次の六つを書面で出してもらえるか聞いてください。
- 契約したコースの総額
- 現在までに支払った掛金の合計
- 未払いの掛金と残りの支払回数
- 現時点で解約した場合の返戻金
- 差し引かれる解約手数料等の金額と計算根拠
- 葬儀で利用した場合に含まれる役務・物品と、別料金になるもの
電話では、次のように伝えれば十分です。
「解約するか、家族が引き継ぐかを検討しています。現在の支払総額、解約返戻金、手数料の内訳、葬儀で利用できる内容を、書面かメールでいただけますか」
解約返戻金は、支払った回数、契約時期、コース、約款などによって異なります。インターネットで見つけた別の互助会の計算例を、そのまま自分の契約へ当てはめることはできません。
契約書が見つからない場合は、会員番号、契約者名、旧住所、生年月日、引落口座の名義などを伝え、契約を調べてもらいます。
掛金を払い終えた「完納」と、現金を受け取れる「満期」は同じとは限りません
互助会の契約で誤解されやすいのが、「もう満期だから全額返ってくるだろう」という考え方です。
毎月の掛金をすべて払い終えた状態は、一般に完納と呼ばれます。完納した後も、葬儀などのサービスを受けるまで契約上の権利が残る仕組みがあります。
一方、定期預金や積立保険のように、一定期間後に現金を受け取ることを目的とした契約とは異なります。
| 確認する言葉 | 意味 | 注意すること |
|---|---|---|
| 掛金総額 | 契約上、全回数を支払った場合の合計額 | 葬儀費用全体の上限額ではない |
| 支払済額 | これまで互助会へ実際に支払った合計 | 解約時に全額戻るとは限らない |
| 完納 | 契約した掛金を払い終えた状態 | 完納後も葬儀まで自動的に現金化されない場合がある |
| 解約返戻金 | 解約時に、手数料等を差し引いて返される金額 | 契約時期や約款、支払回数で異なる |
| 役務内容 | 互助会を使った際に提供されるサービスや物品 | 葬儀に必要なすべてが含まれるとは限らない |
「30万円を積み立てたので、30万円の葬儀ができる」とも限りません。
互助会の契約には、祭壇、棺、骨壺などが含まれることがありますが、式場使用料、搬送、安置、ドライアイス、料理、返礼品などが別料金になる場合があります。契約当時には一般的でなかったサービスが含まれていないこともあります。
利用するか解約するかは、掛金だけでなく、現在希望する葬儀の総額で比べてください。
解約・利用・名義変更・移籍を、同じ条件で比べます
互助会を今後使わないと思っても、選択肢は解約だけではありません。
| 選択肢 | 考えやすいケース | 確かめたいこと |
|---|---|---|
| 解約する | 利用する予定がなく、返戻金を受け取りたい | 返戻金、手数料、必要書類、返金日 |
| 契約どおり利用する | 希望する葬儀内容と契約の役務が合っている | 互助会適用後の葬儀総額、追加費用、利用できる会館 |
| 家族へ名義変更する | 契約者本人は使わないが、配偶者や子どもが利用する可能性がある | 変更できる人の範囲、手数料、必要書類 |
| 転居先の互助会へ移籍する | 契約地域を離れたが、転居先で互助会を利用したい | 移籍可能な会社、引き継がれる掛金、役務の変更 |
| いったん保留する | 葬儀の方針や家族の意見が決まっていない | 引落停止の可否、未払い時の扱い、契約維持条件 |
全日本冠婚葬祭互助協会は、加盟互助会間では、転居先近くの互助会へ移籍でき、積立金等を引き継げる場合があると案内しています。すべての会社・地域・契約で同じ条件とは限らないため、元の互助会と移籍先の双方へ役務内容を確かめてください。
移籍後に、元の契約とまったく同じ祭壇や会館が使えるとは限りません。
「積立金はいくら引き継がれ、移籍先ではどのコースとして扱われますか。追加で支払う金額はありますか」
ここまで聞いてから判断します。
「互助会を使うと得」と言われたら、互助会適用後の総額を出してもらいます
解約返戻金が少ないと、「それなら使った方がよい」と思うかもしれません。
ただし、解約返戻金と掛金総額だけで利用を決めるのは早い場合があります。
互助会を使う場合も、希望する葬儀条件を伝え、追加費用を含めた見積書を受け取ります。
- 家族葬、一日葬、直葬のどれを希望するか
- 参列者は何人か
- 安置日数は何日を想定しているか
- 希望する会館や火葬場があるか
- 料理、返礼品、供花をどこまで用意するか
- 互助会の掛金が、見積書のどの項目へ充当されるか
- 互助会を利用しても別途支払う総額はいくらか
比較する数字は、次の二つです。
解約する場合:受け取れる返戻金
利用する場合:互助会適用後に家族が追加で支払う葬儀総額
ほかの葬儀社の見積もりも取る場合は、人数、日数、葬儀形式を同じにします。互助会の会館だけ豪華な祭壇、ほかの会社は最低限の直葬という条件では、比較になりません。
口座振替を止めただけでは、解約手続きが終わったことになりません
今後の引き落としを止めたいからと、銀行へ連絡して口座振替だけを停止する方もいます。
しかし、引き落としが止まったことと、互助会契約が正式に解約されたことは別です。
未払いの状態が続くだけになったり、後日連絡が来たりする可能性があります。解約する場合は、互助会所定の手続きを行い、受付日と返戻金を書面で残してください。
手続きに必要なものは会社や契約者の状況によって異なりますが、一般には次のような書類の提示を求められる場合があります。
- 会員証や加入者証
- 契約者本人の本人確認書類
- 印鑑
- 返戻金の振込先が分かる通帳や口座情報
- 所定の解約申請書
- 代理人が手続きする場合の委任状や本人確認書類
電話をかける前に、すべて用意できなくても構いません。
「解約手続きに必要な書類の一覧と、申請書の提出方法を送ってください」
と伝えます。
解約申請書を郵送する場合は、コピーを残し、事業者が受け取った日を確認できる方法を検討してください。ウェブフォームなら、送信後の受付画面や受付番号を保存します。
返金日を「後日」とだけ言われたら、申請受理日と予定日を聞きます
解約申請書を送った後、いつ返金されるのか分からないまま待つのは落ち着きません。
近畿経済産業局は、平成13年4月以降の契約について、解約申請書類を互助会側が受理してから45日以内の返金が義務づけられていると案内しています。契約時期や約款による扱いもあるため、自分の契約について具体的な返金予定日を聞いてください。
確認するのは、次の四点です。
- 解約申請書が互助会へ到着した日
- 書類不備がなく、正式に受理された日
- 最終的な返戻金額
- 振込予定日と振込先口座
書類に不足があると、提出日と受理日がずれる可能性があります。
「書類はすべてそろっていますか。正式な受理日と、返金予定日を教えてください」
と確認します。
契約して間もない場合は、通常の解約より先にクーリング・オフを確かめます
訪問販売や電話勧誘販売など、特定商取引法の対象となる方法で加入し、法律で定められた書面を受け取ってから8日以内であれば、クーリング・オフができる可能性があります。
クーリング・オフが適用されれば、通常の中途解約とは異なり、原則として違約金や損害賠償を負担せずに契約を解除できます。通知は書面のほか、電子メールなどの電磁的記録でも行えますが、送付記録や画面を保存することが勧められています。
ただし、営業所へ自分から出向いて通常どおり申し込んだ場合や、契約方法・時期によっては、同じ扱いにならないことがあります。
契約日から日が浅い場合は、次を見てください。
- どこで契約したか
- 誰から、どのように勧誘されたか
- 契約書面を受け取った日
- 書面にクーリング・オフの説明があるか
- 通知期限がいつになるか
期限が近いときは、事業者との話し合いだけで日数を使わず、消費者ホットライン188へ連絡し、通知方法を確かめてください。
親御さんの契約を子どもが勝手に解約しない方がよい理由
親御さんが高齢になり、契約内容を覚えていない場合でも、ご家族が自分の判断だけで解約できるとは限りません。
契約者本人が意思を示せるなら、本人に支払総額、返戻金、今後の利用方法を説明し、希望を確かめます。
親御さんは「自分の葬儀で子どもに迷惑をかけたくない」と考えて加入していたかもしれません。一方、ご家族は「今希望している小規模な葬儀には合わない」と考えていることがあります。
どちらかを一方的に正解にせず、数字へ戻します。
「今解約すると○円戻ります。利用すると祭壇などは含まれますが、会館と料理で別に○円ほど必要です。家族葬にするなら、どちらがよいと思いますか」
本人が手続きできず、ご家族が代理で行う場合は、委任状などを求められることがあります。
認知症などにより契約内容を理解して判断することが難しい場合は、家族であるという理由だけで署名を代わらず、互助会へ代理手続きに必要な書類を聞いてください。成年後見人等がいる場合は、その権限や必要書類も確認します。
契約者が亡くなっている場合は、解約より先に相続手続きの扱いを聞きます
ご実家の片づけ中に見つけた会員証が、すでに亡くなった親御さん名義ということもあります。
互助会契約上の権利も、相続手続きの対象になる可能性があります。相続人の一人が、ほかの相続人へ知らせずに解約返戻金を受け取ると、後から説明を求められることがあります。
全日本冠婚葬祭互助協会は、契約者が亡くなった場合、相続による名義変更により契約を引き継げると案内しています。その際、相続人を確認する戸籍類や、誰が引き継ぐかを示す遺言書、遺産分割協議書、相続人全員の同意書などを求められる場合があります。
互助会へは、次のように聞きます。
「契約者の母が亡くなっています。契約を引き継ぐ場合と解約する場合で、それぞれ誰の同意とどの書類が必要ですか」
返戻金を受け取る場合は、受取人、金額、振込日を相続人間で共有してください。
解約を引き止められても、その場で利用や名義変更を決める必要はありません
解約の電話をしたところ、何度も別部署へ回された。「せっかくここまで払ったのにもったいない」「今なら上位コースへ変更できる」と言われ、話が終わらないことがあります。
互助会側が利用方法を説明すること自体は、不適切とは限りません。
ただし、説明を聞くことと、その場で新しい契約や変更へ同意することは別です。
「今日は解約した場合の金額と手続きだけを確認しています。利用や変更については、資料を受け取って家族と検討します」
と区切ります。
次のような場合は、やり取りの日時、担当者名、発言内容を残してください。
- 解約できないと言われた
- 返戻金や手数料の内訳を示してもらえない
- 申請書を送ってもらえない
- 何度連絡しても手続きが進まない
- 契約書と異なる説明を受けた
- 新しい契約へ変更しなければ解約できないと言われた
経済産業省の研究会報告では、互助会契約は加入者の申出によって解約でき、解約手数料は個々の契約内容に沿って判断されるものと整理されています。解約手数料の適否には複数の裁判例もあるため、「手数料があること」だけで直ちに不当とは言えませんが、金額と根拠の説明を求めることはできます。
解約手続きが進まないときは、資料を持って窓口へ連絡します
互助会へ確認しても説明が分からない場合や、返戻金の計算に納得できない場合は、まず契約書とやり取りの記録をそろえます。
- 会員証、契約書、約款、入会案内
- 掛金の支払履歴が分かる通帳や明細
- 互助会から提示された返戻金計算書
- 電話した日、担当部署、担当者名
- 送付した解約申請書のコピー
- 書類の配達記録、メール、受付番号
消費者ホットライン188へ電話すると、地域の消費生活センターなどへ案内されます。
最初の一言は、次のような内容で構いません。
「冠婚葬祭互助会を解約したいのですが、支払総額に対して返戻金が少なく、手数料の内訳も説明してもらえません。契約書と計算書があります。どこを確認すればよいか教えてください」
全日本冠婚葬祭互助協会にも、加盟互助会の契約内容に関する相談窓口があります。ただし、個別の法的紛争を最終判断する窓口とは限りません。まず事業者へ書面で説明を求め、解決しない部分を具体的にしてから連絡すると伝わりやすくなります。
出典・確認先メモ
- 経済産業省「前払式取引」
- 近畿経済産業局「消費者相談事例・互助会の解約について」
- 消費者庁「特定商取引法ガイド・訪問販売」
- 全日本冠婚葬祭互助協会「全互協Q&A」
- 全日本冠婚葬祭互助協会「苦情・相談窓口のご案内」
- 消費者庁「消費者ホットライン」
今日行うことは、解約の電話をかけることではありません。会員証か通帳から互助会名と会員番号を見つけ、メモへ「支払総額・解約返戻金・手数料・利用時の追加費用」の四項目を作ってください。互助会へは、その四項目を書面でもらう連絡から始めます。















