「月3,000円と聞いたのに、どうして9,000円なの」と尋ねても答えが返ってこない
実家で郵便物を片付けていたら、親のスマホ料金が思ったより高いことに気づいた。
本人に聞くと、「店の人に勧められた」「安くなると言っていた」「細かいことは覚えていない」と話すものの、何にいくら払っているのかは分からない。箱の中には、スマホ本体のほかにタブレットや充電器があり、契約書らしい紙も何枚も入っている。
家族としては、「なぜ分からないまま契約したの」「使っていないものは全部解約しよう」と言いたくなるでしょう。
ただ、スマホの請求は、通信料金だけではありません。端末の分割代金、保証、セキュリティー、動画や音楽のサービス、操作サポート、光回線や電気とのセット契約などが重なっていることがあります。
契約した本人が一度で説明できないからといって、直ちに契約能力がないとは限りません。まずは「親が分かっていない」という評価をいったん横に置き、現在結ばれている契約を一つずつ見えるようにします。
紙の束を、五つの支払いに分けてみる
最初に探すのは、難しい利用規約ではありません。毎月または一度だけ、何にお金がかかっているかが分かる資料です。
- 契約時に受け取った契約書面や説明書
- 直近2〜3か月分の請求明細
- 銀行口座やクレジットカードの利用明細
- 端末や付属品の領収書・分割支払明細
- 契約先のマイページや会員ページ
紙が見つからない場合は、契約先へ再発行や現在の契約内容の書面化ができるか尋ねます。スマホの画面だけで見ようとすると、親も家族も全体を把握しにくいため、可能であれば印刷した明細を用意します。
| 支払いの種類 | よくある内容 | 見るところ |
|---|---|---|
| 通信料金 | 通話、データ通信、基本料金 | プラン名、データ容量、通話オプション |
| 端末代金 | スマホ、タブレット、ルーターの分割払い | 残りの回数、残額、返却条件 |
| 付加サービス | 端末保証、セキュリティー、遠隔操作サポート | 月額、利用実績、解約後に困ること |
| 外部サービス | 動画、音楽、電子書籍、クラウド保存 | 提供会社、無料期間の終了日、解約窓口 |
| 関連契約 | 光回線、ホームルーター、電気、別回線 | スマホと別契約か、割引が連動しているか |
ここで注意したいのは、請求書に載っている名前と、親が店頭で聞いた名前が一致しない場合があることです。
「安心パック」「おすすめセット」と説明されたものが、実際には複数の有料サービスに分かれていることもあります。料金が発生している項目は、月額が小さくても一つずつ書き出してください。
月額料金だけでなく、端末の残りと割引終了後を見る
親から「スマホは1円だった」「端末代は無料だった」と聞いていたのに、明細には毎月の端末代が載っていることがあります。
店頭で示された金額が、端末本体の一部、一定期間だけの割引、端末返却を前提とした負担額だった可能性もあります。
現在の請求額を見るときは、次の四つを分けます。
- 毎月続く通信料金とオプション料金
- 支払回数が決まっている端末・付属品の分割代金
- 初月だけの事務手数料など
- 数か月後や一定期間後に終わる割引
総務省の消費者保護ルールに関するガイドラインでは、利用者の知識、経験、契約目的に応じて理解に必要な方法と程度で説明することや、料金プランを比べる際に月額と総支払額の目安を示すことが求められています。高齢者への説明では、専用資料の使用や、本人の意思に応じた親族の同席なども望ましい例として挙げられています。
一枚の表にすると、不要な契約を見つけやすくなります
| 項目 | 毎月の金額 | いつまで | 本人は使っているか | やめると何が変わるか |
|---|---|---|---|---|
| 通信プラン | 円 | 継続 | 通話・通信に使用 | 容量や通話条件が変わる |
| 端末分割代 | 円 | 残り 回 | 端末を使用 | 通信を解約しても支払いが残る場合がある |
| 端末保証 | 円 | 継続 | 修理歴の有無 | 故障・紛失時の負担が変わる |
| 操作サポート | 円 | 継続 | 利用したことがある・ない | 電話や遠隔サポートを使えなくなる |
| 動画サービス | 円 | 継続 | 見ている・見ていない | 視聴できなくなる |
「使っていないから不要」と思えても、すぐに解約しない方がよいものもあります。たとえば端末保証は、親が端末をよく落とす場合には残す判断もあります。
一方、契約したこと自体を本人が知らず、一度も使っていない有料サービスは、なぜ付いたのかを契約先へ尋ねる材料になります。
親に契約内容を問い詰めるより、「何をしたくて店へ行ったか」を聞く
「このオプションは何?」と質問を続けても、親が答えられないと話が止まります。
店で長時間説明を受け、いくつものプラン名を聞いた後では、契約した直後でも内容を正確に話せないことがあります。親の記憶を試すのではなく、店へ行った目的からたどります。
- 壊れた携帯電話を買い替えたかった
- 家族と写真やメッセージをやり取りしたかった
- 料金を安くしたかった
- 電話だけ使えればよかった
- 店から機種変更を勧める連絡が来た
- 無料のスマホ教室へ行ったつもりだった
当初の目的が分かると、現在の契約がそれに合っているかを考えられます。
家族:「どうしてこんな契約をしたの、と責めたいわけじゃないよ。店には何をしに行ったの?」
親:「前の電話が古いと言われて、安く替えられると思ったんだ」
家族:「電話と写真が使えればよかったのかな。タブレットや動画も欲しいと思っていた?」
親:「タブレットは、おまけだと思っていた」
家族:「分かった。おまけだったのか、別料金の契約だったのかを一緒に聞こう」
国民生活センターには、スマホを契約したところ不要なタブレットや付属サービスも契約していた、今後払う料金や解約時の負担を正しく認識していなかった、といった高齢者の相談が寄せられています。
契約したばかりなら、内容を調べ終わるまで待たない
契約から日が浅く、本人の希望と違う内容が含まれている場合は、書類を完璧に読み終えてから動こうとしないでください。
携帯電話などの電気通信サービスには、対象となる通信契約について「初期契約解除制度」や「確認措置」が設けられている場合があります。
初期契約解除は通信サービスを対象とする制度で、購入した端末や付属品が同じ扱いになるとは限りません。認定された確認措置では、条件を満たしたときに端末を含めて解除できる場合もあります。適用される制度、期間の数え方、端末や事務手数料の扱いは、契約書面にある「初期契約解除」「確認措置」の欄と契約先の案内で確かめます。
契約直後に先に見る四つの項目
- 契約した日と、契約書面を受け取った日
- 店頭、電話、訪問、インターネットのどこで申し込んだか
- 契約書面に初期契約解除・確認措置の記載があるか
- 端末、付属品、通信サービスがそれぞれ別の契約になっていないか
期限が近いときは、まず契約先へ「契約内容に疑問があり、解除制度の対象と期限を知りたい」と連絡し、日時、担当者名、説明内容を記録します。
通常のクーリング・オフと同じだと思い込まず、今回の契約に利用できる制度を尋ねてください。
期限を過ぎていても、「本人が分からない」で話を終わらせない
契約から時間がたっていても、次のような事情があれば、契約先や消費生活センターへ具体的に伝えます。
- 親が希望していない商品や回線まで契約していた
- 無料と聞いたものに継続的な料金がかかっていた
- 月額だけ説明され、端末を含む総額を認識していなかった
- 断ったサービスが契約に含まれていた
- 家族へ相談したいと言ったのに、契約を急かされた
- 使い方や契約内容を理解していない様子があったのに、高額・複雑な契約を勧められた
「高齢だから取り消せる」「理解していなかったから契約は無効」と一律には判断できません。一方、事実と異なる説明、不利益な事実を伝えない勧誘、強い引き止めなどがあった場合には、消費者契約法による取消しを検討できることがあります。個別の事情によって扱いが異なるため、記憶が薄れる前に経緯を書き、消費生活センターへ伝えます。
親から聞き取っておきたい店頭での会話
- 「無料」「おまけ」「今だけ」と言われたものはあるか
- 不要だと断った商品やサービスはあるか
- 毎月の料金をいくらと説明されたか
- 端末を返却する条件を聞いたか
- 解約時の料金について説明を受けたか
- 家族へ相談する時間を取りたいと伝えたか
親が細部を覚えていなくても、家族が推測で話を完成させないようにします。「覚えていない」という回答も、そのままメモに残してください。
店舗へ行く前に、「今日は新しい契約をしない」と決めておく
契約内容を聞きに行ったはずが、その場で別の料金プランや新しい端末を勧められ、さらに契約が増えることがあります。
来店の目的を紙に書き、最初に担当者へ渡します。
今日お願いしたいこと
- 現在契約している回線・端末・オプションをすべて一覧にしてください
- 今月の請求額と、通常月の請求額を分けてください
- 端末と付属品の残額を教えてください
- 割引が終わる日と、その後の料金を教えてください
- 各サービスをやめた場合の費用と影響を書いてください
- 今日は新しい端末・回線・有料サービスの契約はしません
説明を受けたら、担当者の言葉を親が自分の言葉で言い直せるかを見ます。
「分かりましたか」と聞かれると、よく分からなくても「はい」と答えてしまう人がいます。「来月はいくら払うことになる?」「このタブレットは無料?」「保証をやめるとどうなる?」と、一つずつ聞く方が理解した範囲をつかみやすくなります。
家族だけでは解約できないこともあるので、来店前に手続きを聞く
契約名義が親本人なら、家族だからという理由だけですべての変更や解約を行えるとは限りません。
本人の来店や電話確認、本人確認書類、委任状など、必要な手続きは契約先や手続き内容によって異なります。親が一緒に出かけられない場合は、家族だけで店舗へ行く前に、契約先へ次の点を聞きます。
- 契約内容の一覧を家族が受け取る方法
- 代理で相談・変更・解約するときに必要な書類
- 本人への電話確認で手続きできるか
- 親が入院中、施設入所中、身体的に来店できない場合の方法
- 本人が意思を伝えることが難しい場合の相談窓口
親が判断できる状態なら、本人を抜きにしてプランを決めたり、スマホを取り上げたりしないようにします。
料金の負担を減らすことだけでなく、誰へ電話したいのか、写真やメッセージを使いたいのか、災害時の連絡手段として必要なのかを残すことも重要です。
親が解約を嫌がるときは、料金ではなく「失うもの」を聞く
家族には不要に見えるサービスでも、親は「解約したら電話が使えなくなる」「写真が消える」「店に迷惑をかける」と思っていることがあります。
「使っていないからやめるよ」と進める前に、何を心配しているのかを聞きます。
| 親の言葉 | 隠れている心配 | 家族が調べること |
|---|---|---|
| 店の人が必要だと言っていた | 自分では必要性を判断できない | どの機能のための契約かを書面で説明してもらう |
| やめたらスマホが壊れそう | 保証と通信契約を混同している | 解約後に使えなくなるものを一項目ずつ分ける |
| せっかく契約したのにもったいない | これまで払ったお金を無駄にしたくない | 今後払い続ける総額で比べる |
| 店へ行くのが恥ずかしい | 分からなかったことを責められたくない | 家族が説明を聞く役を引き受ける |
| 全部そのままでいい | 変更後の操作に自信がない | 電話や写真など残したい機能を先に決める |
料金プランを小さくしても、操作画面が大きく変わるとは限りません。一方、回線の変更、端末の変更、データ移行まで一度に行うと、親が使い方を覚え直す負担が増えます。
まず不要な月額サービスだけを外し、端末や回線の変更は別の日に考える方法もあります。
同じことが繰り返されるなら、契約だけでなく生活の変化を見る
今回だけ説明を覚えていなかったのか、最近ほかの場面でも契約や支払いの混乱が増えているのかで、家族の対応は変わります。
- 同じ内容の回線や商品を何度も申し込んでいる
- 請求書を開けずにためるようになった
- 暗証番号や通帳の保管場所が分からなくなることが増えた
- 訪問販売や電話勧誘の契約が続いている
- 契約したこと自体を短期間で忘れている
- 日付、場所、金額の混乱が日常生活でも見られる
こうした変化がある場合も、「認知症だからもう契約させない」と家族だけで決めるのではなく、日常生活で起きていることを記録します。
必要に応じて、かかりつけ医や地域包括支援センターへ、スマホ契約だけでなく、最近の買い物、支払い、服薬、外出などの変化を伝えます。
一方、日常生活には特に変化がなく、スマホ契約だけ説明できないのであれば、契約が複雑だった、説明を一度に受けすぎたという可能性もあります。年齢だけを理由に判断力の低下と決めつけないことも、親の尊厳を守るうえで欠かせません。
次の契約では、帰宅後も読める「一枚の契約メモ」を残す
今回の内容が分かったら、契約書を箱へ戻す前に、親が読める一枚のメモを作ります。
- 契約している携帯電話会社
- 月々のおおよその総額
- 通信料金と端末代の内訳
- 有料オプションの名前と用途
- 端末代の支払いが終わる時期
- 割引が終わる時期
- 困ったときに電話する窓口
- 契約変更の前に連絡する家族
「今後は一人で契約しないで」と禁止するより、次の約束を決める方が続けやすくなります。
「店で新しい商品を勧められたら、その日は説明書だけもらう。契約は持ち帰ってから決める」
店舗で説明を受けるときは、「毎月払う合計」「端末を含めた総額」「割引終了後の金額」「やめるときの条件」の四つを紙へ書いてもらいます。
国民生活センターも、料金が発生する契約、解約時の負担、割引条件を確かめ、契約後にキャンセルや解約を考えた場合は早めに携帯電話会社へ申し出るよう案内しています。
今日することは、親を説得することではなく請求書を一枚開くことです
契約内容が分からないと、家族は「だまされたのでは」「また契約するかもしれない」と先のことまで心配になります。
今日は、直近の請求明細を一枚だけ用意し、通信料金、端末代、オプションの三つに印を付けてください。
契約してから日が浅い、本人の希望と違う、無料と聞いたものに料金がかかっているという場合は、同じ日に契約先へ連絡します。説明が食い違う、強く勧められた、家族だけでは交渉しにくいときは、消費者ホットライン「188」から最寄りの消費生活相談窓口につながります。相談は無料ですが、接続後の通話料がかかる場合があります。
親が分からないまま署名したことを責めても、支払いは軽くなりません。契約名、金額、期限を一つずつ分ければ、残すものとやめるものを話し合えるようになります。
まずは「どうして契約したの」ではなく、「今、何に払っているのか一緒に見よう」と声をかける。その一言が、親の暮らしを守りながら契約を立て直す最初の一歩になります。
出典・確認先メモ
- 総務省「電気通信事業法の消費者保護ルールに関するガイドライン」
- 国民生活センター「セット契約やスマートフォンの使い方などの携帯電話のトラブル」
- 消費者庁「消費者ホットライン188」
- 政府広報オンライン「契約トラブルから身を守るために、知っておきたい消費者契約法」


















