貯金は毎回引き出さず、「自分年金」のように定額を移します
足りなくなるたびに貯金口座から引き出すと、そのたびに罪悪感が生まれます。
年間の取り崩し予定額を決めたら、毎月決まった額を生活口座へ移す方法があります。
月の不足が4万円なら、毎月4万円を同じ日に移します。
年払いの費用は、別に月割りして積み立てます。
| 移すお金 | 月額の例 |
|---|---|
| 毎月の生活費不足 | 4万円 |
| 税・保険料の準備 | 1万円 |
| 家電・修繕などの準備 | 1万円 |
| 生活口座へ移す合計 | 6万円 |
残高を毎日見ず、生活費は月に一度、貯金全体は三か月または半年に一度見るなど、確認の時期も決めます。
予定内であれば、減っていることではなく、残りの計画が変わっていないことを見ます。
節約は、楽しみからではなく毎月自動で出るお金から見ます
貯金が減ると、旅行、外食、趣味などから削りたくなります。
しかし、退職後の楽しみをすべてなくしても、住宅費、車、保険、通信契約などが重いままなら、家計の改善は小さいことがあります。
| 先に見るもの | 考えること |
|---|---|
| 住居費 | ローン完済時期、管理費、修繕費、住み替えの必要性 |
| 車 | 維持費、使用頻度、台数、運転をやめる時期 |
| 保険 | 退職後も同じ保障額が必要か、重複していないか |
| 通信・定額サービス | 使っていない回線や契約がないか |
| 家族への援助 | 毎月続けられる額か、期限が決まっているか |
食費を一日数百円ずつ削る前に、毎月自動で出る金額を一つ見直します。
ただし、急にすべての契約を解約せず、一年間でどの程度変わるかを数字にしてから決めてください。
退職直後は、健康保険料を見積もらずに家計を作らない
会社を退職した後の健康保険には、勤務先の健康保険の任意継続、国民健康保険、家族の健康保険の被扶養者になる方法などがあります。
加入条件や保険料が異なるため、名前だけで選ばず、それぞれへ実際の負担額を尋ねて比べます。協会けんぽの任意継続には、退職前の被保険者期間や、原則として退職日の翌日から20日以内の申請などの条件があります。
退職後最初の一年は、健康保険料、住民税、年金受給前の生活費などが想像より重なることがあります。
前年の給与明細だけで家計を作らず、届いた納付書と自治体・保険者の試算を使ってください。
減るのが怖いからと、生活費まで急いで投資へ回さない
「預金のままでは減るだけ」と言われ、高い利回りをうたう商品へ動かしたくなることがあります。
しかし、投資には元本割れの可能性があり、安全性・収益性・換金のしやすさをすべて同時に満たす金融商品はありません。金融庁も、使う目的や時期に応じて金融商品を使い分ける考え方を示しています。
近いうちに使う生活費や税・医療費まで、値動きのある商品へ移す必要はありません。
運用を考える場合は、次を先に分けます。
- 一年以内に使うお金
- 数年以内に使う可能性があるお金
- 当面使う予定のないお金
- 値下がりしたときにも保有できる金額
「取り崩しをなくすために増やす」のではなく、生活設計を作ったあと、残るお金について検討します。
夫婦では、「いくら残すか」より「何に使ってよいか」を話します
一方は、元気なうちに旅行や食事を楽しみたい。
もう一方は、医療や介護に備えて一円でも多く残したい。
どちらも家族を思っているのに、価値観が違うと、お金を使うたびに相手を責める形になります。
| 話し合うこと | 決め方の例 |
|---|---|
| 毎月使ってよい生活費 | 年金と定額の取り崩しを合わせて決める |
| 各自が自由に使える額 | 用途を説明しなくてよい小遣いを持つ |
| 二人で決める支出 | 5万円を超える買い物は事前に話す |
| 将来のために残すお金 | 医療、介護、住宅修繕など目的を分ける |
| 子どもへの援助 | 一回の上限と、継続しない条件を決める |
会話は、次のように始められます。
「貯金を減らしたくない気持ちは同じだけれど、何に使ってよいか分からず、必要な物まで我慢している。まず一年に使う予定額を一緒に出したい」
成人した子どもが手伝う場合も、「もっと節約して」と決めるのではなく、通帳、年金、支出の一覧を作る作業を支えます。
現在の数字によって、次の一歩を変えます
| 現在の状態 | 次にすること |
|---|---|
| 年間の取り崩し額が予定どおり | 毎月の定額移動を続け、半年後に見直す |
| 金額は足りそうだが、使うのが怖い | 生活費・臨時費・将来費を分け、使ってよい口座を作る |
| 数年後に不足する可能性がある | 固定費、住まい、働き方、年金開始時期を比べる |
| すでに毎月大きく不足している | 家計全体を一人で抱えず、自治体の家計支援へつなぐ |
| 借入や滞納が増えている | 新しい借入で補う前に、返済と生活費をまとめて相談する |
自治体の生活困窮者自立支援制度には、生活全般の相談や、家計を見える化して立て直しを支援する家計改善支援があります。貯金が完全になくなるまで待たず、家賃や生活費の支払いが難しくなりそうな段階で利用できます。
今日するのは、老後の正解を出すことではありません
貯金がいつまで持つかを、今夜一度の計算で確定させることはできません。
今日は、紙やスマートフォンへ次の五行だけ書いてください。
- 毎月の手取り収入:
- 毎月の生活費:
- 毎月の不足額:
- 一年以内に予定している大きな支出:
- 貯金から一年に使う予定額:
たとえば、次のようになります。
「手取り収入14万円、生活費18万円、毎月4万円不足。固定資産税と家電で年間30万円。年間の取り崩し予定額は78万円」
この金額を出したら、毎月の不足分だけを生活口座へ移します。
必要な買い物をするたびに、貯金全体の残高と向き合わなくてよくなります。
退職後に貯金を使うことは、これまで積み上げた努力を失うことではありません。
働いていた時期に準備したお金を、収入が少なくなった今の暮らしへ移すことです。
もちろん、予定より早く減っているなら見直しは必要です。
それでも、数字を見ないまま我慢を続ける必要も、残高が減らないことだけを目標にする必要もありません。
まず今夜は、一年に使う金額を一つ決めてください。
「減らしてはいけない貯金」から、「この一年の生活に使ってよいお金」へ分けられたとき、通帳を見る怖さは少しずつ、扱える家計へ変わっていきます。
出典・確認先メモ
- 日本年金機構「ねんきんネットによる年金見込額試算」:今後の働き方や受給開始時期などを設定し、老齢年金の見込額を確かめる資料。
- 日本年金機構「年金からの介護保険料などの徴収」:年金から保険料・住民税などが差し引かれる条件を確かめる資料。
- 全国健康保険協会「退職後の健康保険」:任意継続、国民健康保険、家族の被扶養者という選択肢を比べる際の資料。
- 金融庁「資産形成の基本」:家計管理、生活設計、預貯金・投資商品の安全性やリスクを考える資料。
- 厚生労働省「生活困窮者自立支援制度」:生活費や家賃、家計の立て直しに不安がある場合の公的な支援を確かめる資料。


















