玄関を開けるたび、「この家をなくしてよいのか」と立ち止まります
親が亡くなった後、誰も住まなくなった実家。
久しぶりに中へ入ると、柱についた子どもの背丈の印、家族で囲んだ食卓、母が使っていた茶わんが、そのまま残っています。
一方で、天井には雨染みが広がり、庭木は隣家の敷地へ伸び始めている。台風が来るたび、屋根瓦が飛ばないか気になります。
解体業者からは「古いので早めがよい」と言われ、不動産会社からは「建物がない方が売りやすいかもしれない」と言われる。
けれども、きょうだいへ話すと反応が分かれます。
「誰も住まないなら壊した方がいい」
「お父さんが建てた家を、そんなに簡単になくせない」
「子どもが将来使うかもしれない」
「近くに住んでいる人が管理すればいい」
実家を残すか壊すかという話には、建物の価値だけでなく、親への気持ち、きょうだい関係、相続した責任、これから支払うお金が重なっています。
そのため、「解体費はいくらか」だけを調べても結論は出ません。
まずは、今すぐ安全のために動く必要があるのか、それとも数か月かけて比較できる状態なのかを分けます。
最初に決めるのは「壊すか」ではなく、今すぐ危険を止める必要があるかです
家族の話し合いが終わるまで、実家の状態が変わらず待ってくれるとは限りません。
国土交通省は、空き家を長く放置すると老朽化や損傷が進み、売却・賃貸が難しくなるだけでなく、害虫や倒壊などで周囲へ影響するおそれがあると案内しています。
次の状態が見られる場合は、解体するかどうかの結論とは別に、自治体や建築の専門家へ早めに状態を見てもらいます。
- 屋根材、外壁、雨どいなどが落ちそうになっている
- 塀や門柱が道路・隣地側へ傾いている
- 雨漏りが続き、柱や床まで傷んでいる
- 窓や扉が壊れ、誰でも中へ入れる
- 庭木や枝が道路、電線、隣家へ伸びている
- 害虫、動物、悪臭、ごみの問題が起きている
- 台風、積雪、地震の後から急に状態が変わった
- 近隣や自治体から修繕・管理について連絡が来ている
| 建物の状態 | 優先すること | 解体判断の進め方 |
|---|---|---|
| 倒壊や部材落下の危険が迫っている | 立入り防止、危険部分の応急処置、自治体への連絡 | 安全確保と並行して、除却費用と所有者の合意を急ぐ |
| 傷みはあるが、すぐ周囲へ危険が及ぶ状態ではない | 劣化箇所と必要な修繕費を把握する | 売却・活用・解体を数か月かけて比較する |
| 状態は比較的よく、定期的に管理できている | 通風、清掃、庭木、雨漏りなどの管理を続ける | 使う予定と保有期限を決めて判断する |
空家法では、放置すれば危険な「特定空家等」になるおそれがある建物を「管理不全空家等」とし、市区町村が指導や勧告を行える仕組みが設けられています。勧告を受けた敷地は、固定資産税等の住宅用地特例から外れる場合があります。
ただし、自治体から連絡が来たからといって、家族だけで直ちに解体契約を結ぶ必要はありません。
通知に書かれた危険箇所、求められている対応、期限を聞き、部分的な修繕や立入り防止で時間を確保できるのかも確かめます。
「残す」には、何もしない以外の選択肢があります
実家を残すというと、現在の姿のまま何年も維持することを想像しがちです。
しかし、残し方はいくつかあります。
| 選択肢 | 向いている状況 | 先に決めたいこと |
|---|---|---|
| 期限を決めて管理する | 家族の気持ちや今後の用途がまだ決まっていない | 保有期間、管理担当、費用、再検討日 |
| 現状のまま売却する | 解体費を先に負担せず、土地建物を手放したい | 古家付きでの査定、家財、境界、契約条件 |
| 最低限修繕して売る・貸す | 建物を活用できる可能性がある | 修繕費、需要、耐震性、貸主としての負担 |
| 家族が住む・使う | 具体的な利用者と開始時期が決まっている | 改修費、名義、使用料、他の相続人の合意 |
| 建物の一部や品物を残して解体する | 家全体の維持は難しいが、思い出は残したい | 保存する物、取外し費、保管場所 |
| 解体して土地を売る・使う | 建物の危険性が高い、または建物利用の見込みがない | 解体費、税額、土地需要、解体後の管理 |
「残す」と言う人がいるなら、誰が何のために残したいのかを具体化します。
年に一度集まるためなのか。将来、子や孫が住む可能性があるのか。親の荷物を処分できないためなのか。それとも、解体を決めたことへの後悔が怖いのか。
目的が違えば、家全体を残さなくても叶えられる場合があります。
使う人がいるかは、「いつか」ではなく年月で聞きます
家族会議では、「いつか誰かが住むかもしれない」という言葉が出やすくなります。
可能性を否定する必要はありませんが、その間にも税金、管理、劣化は続きます。
次の質問へ置き換えてみてください。
- 誰が使う予定なのか
- 何年何月ごろから使うのか
- 住宅、仕事場、物置など、何に使うのか
- 改修費を誰が負担するのか
- 使用開始まで、誰が管理するのか
- 予定が実現しなかった場合、いつ売却や解体へ切り替えるのか
| 家族の言葉 | 聞き返す言葉の例 |
|---|---|
| 「子どもが将来使うかもしれない」 | 「本人に住む意思を聞いて、いつまでに答えを出すか決めよう」 |
| 「別荘のように残したい」 | 「年に何回使い、管理費を誰が払う形なら続けられる?」 |
| 「売るにはまだ早い」 | 「何が決まれば売却を検討できる?半年後にもう一度話す?」 |
| 「近くに住む人が見ればいい」 | 「見回り、草刈り、修理、費用のどこまでを誰が担うか分けよう」 |
| 「親が残してほしいと言っていた」 | 「その希望を何年間、どの費用までなら守れるか考えよう」 |
使う人と時期が決まらない場合は、「とりあえず残す」ではなく、「半年間は管理し、その間に査定と建物調査を行う」と期限を付けます。
1年間残した場合の費用を出すと、話し合いが現実に戻ります
解体費はまとまった金額なので目立ちます。
一方、家を残す費用は少額ずつ発生するため、家族が全体を把握していないことがあります。
| 残すための費用 | 見る内容 |
|---|---|
| 固定資産税・都市計画税 | 土地分と家屋分を分ける |
| 火災・地震保険 | 空き家になった後も補償される契約か |
| 電気・水道等 | 管理のために残す契約と基本料金 |
| 草刈り・庭木剪定 | 定期作業と台風後などの臨時対応 |
| 見回り・清掃 | 管理業者の費用、家族の交通費と時間 |
| 修繕 | 雨漏り、外壁、屋根、窓、塀、給排水 |
| 家財保管 | 片付け費、倉庫代、害虫・湿気対策 |
| 近隣対応 | 越境した枝、落下物、苦情への対応 |
過去1年間に実際に払った金額を合計し、次の一年に必要となりそうな修繕費を加えます。
解体費100万円と年間管理費20万円なら、単純に「解体の方が高い」とは言い切れません。5年間保有すれば管理費だけで同程度になる可能性があり、その間に建物の傷みが進むこともあるからです。
反対に、半年後に利用する人が決まっているなら、解体より応急修繕と管理を選ぶ方が合う場合があります。
解体費は建物の広さだけでなく、敷地と残置物で変わります
「木造住宅なら坪いくら」という目安だけで予算を決めると、契約後の追加費用に驚くことがあります。
解体見積もりには、建物本体以外の作業が含まれているかを見ます。
| 見積もり項目 | 具体的に見ること |
|---|---|
| 建物本体 | 母屋、離れ、増築部分、物置、車庫が含まれるか |
| 基礎・地中部分 | 基礎、浄化槽、井戸、古い配管、地中埋設物の扱い |
| 外構 | 塀、門、フェンス、庭石、樹木、カーポート |
| 家財・残置物 | 家具、家電、布団、衣類を誰が処分するか |
| アスベスト | 事前調査、分析、除去、処分の費用 |
| 重機・運搬 | 前面道路が狭い、重機が入れない場合の追加作業 |
| 養生・近隣対策 | 防音、防じん、散水、交通誘導、隣家への対応 |
| 廃棄物処理 | 分別、運搬、処分先、追加費用が出る条件 |
| 整地 | どの高さ・状態まで土地を整えるか |
| 届出・登記 | 誰が何の手続きを行い、費用に含まれるか |
見積書に「解体工事一式」とだけ書かれている場合は、追加費用の条件が分かりません。
少なくとも次の言葉で聞き返します。
「基礎、塀、庭木、井戸、浄化槽まで含まれていますか」
「地中から廃材などが出た場合、作業前に金額を提示してもらえますか」
「家財を残した場合と、家族が片付けた場合の差額を出してください」
「工事後は、土地をどの状態で引き渡しますか」
古い家では、アスベストの調査費も最初から聞いておきます
建築物を解体するときは、工事前に石綿(アスベスト)が使われているかを調査する必要があります。2023年10月からは、建築物の解体・改修工事における事前調査を、一定の資格を持つ者が行うことが義務付けられています。一定規模以上の工事では、調査結果の報告も必要です。
アスベストは、屋根材や外壁材、天井材、断熱材などに含まれている場合があります。見た目や建築年だけで、家族が「入っていない」と判断しないでください。
業者へは次を聞きます。
- 事前調査を行う人の資格
- 書面・目視調査の費用
- 分析調査が必要になった場合の費用
- アスベストが見つかった場合の追加見積もり
- 届出や調査結果報告を誰が行うか
- 近隣への説明や飛散防止対策
最初の見積もりが安くても、アスベスト調査や除去が別料金であれば、最終的な負担は変わります。
所有名義が決まっていなければ、解体契約を先に進めません
親名義の実家を、長男や近くに住む子どもが「自分が窓口になって壊そう」と考えることがあります。
しかし、解体は建物そのものを失わせる行為です。
相続人が複数いる、共有名義になっている、遺産分割が終わっていない場合は、誰が所有者で、誰の合意が必要かを契約前に明らかにします。
| 名義の状態 | 先に行うこと |
|---|---|
| 親名義のままで相続人が複数いる | 戸籍と登記を確認し、遺産分割と解体への合意を整える |
| きょうだいの共有名義 | 工事内容、費用負担、土地の使い道を共有者全員で決める |
| 取得する相続人が決まっている | 相続登記を進め、正式な所有者として契約する |
| 相続人の一部と連絡が取れない | 契約を急がず、司法書士・弁護士等へ進め方を聞く |
| 建物と土地の所有者が異なる | 双方の権利と解体後の土地利用を確かめる |
相続登記は2024年4月1日から義務化され、不動産を相続で取得したことを知った日から3年以内の申請が必要です。制度開始前に発生した相続も対象となります。
一人が解体費を出す場合も、「払った人が土地を取得する」と自動的に決まるわけではありません。
誰がいくら負担し、売却代金から精算するのか。解体後の土地を誰が取得するのか。家族の合意を記録に残してください。
家族会議では、思い出と費用を同じ言葉で争わないようにします
「維持費がもったいない」と「親の家をなくしたくない」をぶつけても、どちらが正しいかは決まりません。
家族会議では、話を三つに分けます。
- 建物の安全と期限
- お金と管理の役割
- 思い出として残したいもの
| 家族の意見 | 話を進める返し方 |
|---|---|
| 「親の家を壊したくない」 | 「その気持ちは残したい。家全体でなくても、残したい場所や物を選べないかな」 |
| 「維持費が無駄だ」 | 「年間いくらかかっているか出して、あと何年なら持てるかを決めよう」 |
| 「将来使うかもしれない」 | 「使う人と時期を半年以内に決め、決まらなければ売却も比べよう」 |
| 「解体は近くに住む人に任せる」 | 「現地対応はできても、契約と費用は全員で確認してほしい」 |
| 「一番安い業者でいい」 | 「同じ工事範囲で比べ、追加費用と廃棄物処理まで見よう」 |
一度の会議で結論を出せなければ、次回までの宿題を一人ずつ分けます。
- 一人は登記と相続人を確かめる
- 一人は現状売却と更地売却の査定を取る
- 一人は解体見積もりと自治体の制度を調べる
- 一人は家財と残したい物を一覧にする
近くに住む人だけが、草刈り、近隣対応、業者立会い、費用立替えをすべて担う形は長く続きません。
解体しても、実家の思い出まで捨てる必要はありません
解体へ気持ちが向かない理由が、「家を壊したら親との時間までなくなる気がする」というものであれば、思い出を別の形に移せます。
工事日が決まってから慌てて探すのではなく、家族で一度、家の中を歩いてください。
- 外観と各部屋を写真・動画に残す
- 柱の背丈の印や、ふすまの落書きを撮影する
- 家の間取りを簡単な図にする
- 表札、欄間、建具、照明、取っ手など、残したい部材を選ぶ
- 庭木の種や挿し木を残せるか聞く
- 食器、手紙、写真、賞状などを家族別に分ける
- 親戚へ、家にまつわる思い出を聞いて記録する
- 解体前に家族で集まる日を設ける
部材を取り外して残したい場合は、家族が工事直前に勝手に外すのではなく、解体業者へ範囲と時期を伝えます。安全に外せない物や、追加費用がかかる物もあります。
写真を残すことは家を残すことと同じではありません。
それでも、「何も残さず壊してしまった」という後悔を減らす助けにはなります。
解体前に、古家付きと更地の両方で売却査定を取ります
「更地の方が売りやすい」という言葉だけで解体を決めるのは避けます。
地域や建物の状態によっては、買主が改修したい、解体費を含めて購入条件を調整したいという場合があります。
反対に、建物の状態が悪く、土地としてでなければ検討されにくい場合もあります。
| 査定で聞くこと | 理由 |
|---|---|
| 古家付きのまま売る場合の価格帯 | 解体費を先に負担しない選択肢を見るため |
| 解体後に土地として売る場合の価格帯 | 解体費を回収できる可能性を見るため |
| 想定される買主 | 居住、建替え、事業など需要の中身を知るため |
| 売却までの想定期間 | 保有中の税金・管理費を見込むため |
| 再建築や接道などの条件 | 解体後も新しい建物を建てられるとは限らないため |
| 境界・測量の必要性 | 売却前に別の費用や時間がかかる可能性を見るため |
査定額は、必ずその金額で売れるという約束ではありません。
複数の事業者へ同じ条件で聞き、価格だけでなく、解体前後でどのような買主を想定しているかも比べます。
解体後の固定資産税と土地利用を、工事前に決めます
住宅が建っている土地には、一定の住宅用地特例が適用されている場合があります。
建物を取り壊し、翌年1月1日時点で住宅の敷地でなくなれば、その後は特例を受けられず、土地分の固定資産税等が増える可能性があります。家屋分の税額はなくなるため、現在の総額が必ずそのまま「6倍」になるわけではありません。
自治体の固定資産税担当へ、納税通知書を手元に置いて聞きます。
- 現在の土地へ住宅用地特例が適用されているか
- 年内に全棟を解体した場合、翌年度の土地税額はいくらになりそうか
- 現在の家屋分の税額はいくらか
- 建替え予定がある場合、地域独自の取扱いがあるか
- 解体後に必要な税務上の届出があるか
解体後の土地にも、草刈り、柵、排水、近隣対応などの管理が残ります。
売却予定がないまま更地にする場合は、誰が何年間管理するのかまで決めてください。
空き家売却の税制は、壊す時期や売り方で条件が変わります
相続した実家を売る場合、一定の要件を満たすと、譲渡所得から最高3,000万円を控除できる「被相続人の居住用財産に係る特別控除」を利用できる可能性があります。
対象期間は2027年12月31日までで、建築時期、親の居住状況、相続後の利用、売却期限、売却価格、耐震改修・取壊しなど、複数の要件があります。相続人が3人以上の場合は、1人当たりの控除上限が2,000万円です。
この特例は、相続した実家を売れば誰でも受けられるものではありません。
売却の前後に解体する場合も適用条件があるため、次の資料をそろえて税務署や税理士へ聞きます。
- 親が亡くなった日
- 建物の建築年月日
- 親が施設へ入っていた場合の時期と家の利用状況
- 相続人の人数
- 相続後に家を貸した・使った事実
- 売却と解体を予定する時期
- 売却予定価格
税制を知る前に解体契約や賃貸を進めると、選べたはずの方法へ影響する場合があります。
補助金は、解体契約の前に自治体へ聞きます
自治体によっては、危険な空き家の除却、家財整理、改修、空き家バンク活用などに補助制度を設けている場合があります。国土交通省も、解体・改修で自治体の補助制度を利用できる場合があるため、空き家の所在する市区町村へ問い合わせるよう案内しています。
対象となる建物、所有者、所得、工事業者、申請時期などは自治体ごとに異なります。
次の点を契約前に聞いてください。
- 実家が補助対象となる空き家か
- 現地調査や危険度判定が必要か
- 相続登記が終わっている必要があるか
- 市内事業者を使う条件があるか
- 解体契約・着工の前に申請が必要か
- 家財処分、塀、庭木、アスベスト費用も対象になるか
- 解体後の土地利用に条件があるか
「補助金が出ると聞いた」という情報だけで業者を決めず、制度名と申請窓口を自治体へ直接確かめます。
契約書では、安さより「どこまで壊して、どこへ運ぶか」を見ます
解体見積もりは、同じ建物でも工事範囲が違えば金額を比べられません。
複数の業者へ、同じ条件で現地見積もりを依頼します。
| 契約前に見ること | 書面へ入れたい内容 |
|---|---|
| 解体する物 | 母屋、離れ、物置、塀、樹木、基礎などを個別に記載 |
| 残す物 | 井戸、石垣、庭木、門、配管などの扱い |
| 廃棄物 | 分別、運搬、処分を誰が行うか |
| 追加料金 | 地中埋設物、アスベスト、家財追加などの計算方法 |
| 近隣対応 | 工事前挨拶、騒音・粉じん、苦情窓口 |
| 工期 | 開始・終了予定日、遅延時の連絡 |
| 支払い | 前金、中間金、完了金の金額と時期 |
| 工事後 | 整地状態、写真、廃棄物処理や完了の報告書 |
「今日契約すれば安くする」「今すぐ壊さないと危険」と不安を強くあおり、その場で契約を迫る業者には注意が必要です。消費者庁も、住宅工事について複数業者から見積もりを取り、見積書の内容を確かめるよう注意を促しています。
訪問や電話勧誘による契約などではクーリング・オフの対象になる場合があります。契約内容に疑問があるときは、工事を進める前に消費者ホットライン188などへ確認します。
工事に必要な届出を、すべて業者任せにしないようにします
特定の建設資材が使われた建築物で、床面積の合計が80平方メートル以上の解体工事は、建設リサイクル法の対象となり、原則として工事着手の7日前までに分別解体等の計画を届け出る必要があります。発注者にも届出上の役割があるため、誰が書類を作り、誰の名義で提出するかを業者へ聞いてください。
解体後には、登記されている建物の滅失登記も必要です。不動産登記法では、建物が滅失した日から1か月以内に申請することとされています。
工事後に受け取る書類や進める手続きを一覧にしておきます。
- 工事完了を示す書類や写真
- 建物滅失登記に使う取壊し証明書など
- 廃棄物やリサイクルに関する完了報告
- 電気・ガス・水道等の契約変更
- 火災保険等の解約・変更
- 固定資産税担当への必要な届出
- 解体後の土地の管理方法
「登記も全部やります」という業者の言葉だけでなく、誰が申請者となり、別料金がかかるのかを書面で確かめます。
半年だけ残す場合も、管理する人と点検日を決めます
どうしても結論が出ないときは、無期限に先送りせず、判断期間を設けます。
| 判断期間中に行うこと | 期限の例 |
|---|---|
| 建物の危険箇所を見てもらう | 1か月以内 |
| 年間維持費を全員へ共有する | 次の家族会議まで |
| 古家付き・更地の売却査定を取る | 2か月以内 |
| 解体見積もりを同じ条件で比べる | 2か月以内 |
| 相続登記と共有者を確かめる | 3か月以内 |
| 利用を希望する家族が計画を出す | 3か月以内 |
| 残す物・写真を家族で選ぶ | 最終判断の前 |
| 残す・売る・解体を決め直す | 半年後 |
その間も、通風、雨漏り、屋根・外壁、庭木、郵便物、防犯などの管理は続けます。自分たちで管理できない場合は、空き家管理事業者などを利用する方法もあります。
「半年残す」と決めた人がいるなら、その半年分の費用と役割も同時に決めます。
今日することは、実家を四つの視点で一枚にすることです
実家を壊したら後悔するかもしれない。残せば負担が続くかもしれない。
どちらにも不安があるときは、今日中に結論を出さなくて構いません。
まず、紙へ次の四つを書いてください。
- 危険な場所:屋根の一部、傾いた塀、雨漏り
- 今後使う人と時期:現時点では具体的な予定なし
- 1年間にかかる費用:税金、保険、草刈り、交通費
- 次に確かめること:名義、現状査定、解体見積もり、解体後の税額
次に、家族へ「壊すか残すか決めよう」と連絡するのではなく、こう伝えます。
「実家について感情だけで決めたくないので、半年だけ調べる期間を取りたいです。残す場合の費用、売却査定、解体費を出し、残したい物も選んでから決めませんか」
危険が迫っているなら、安全対策だけ先に動く。
使う予定があるなら、誰がいつから使い、改修費をどうするかを決める。
予定がないなら、現状売却と解体後の売却を同じ条件で比べる。
思い出が決断を止めているなら、写真や部材、家族の記憶を別の形へ移す。
実家を解体することは、親との時間をなかったことにする行為ではありません。
残すことも、必ずしも親を大切にする唯一の方法ではありません。
これから誰がどの負担を引き受けられるのかを見ながら、家族が後から説明できる順番で決めること。その過程そのものが、実家と家族に対する誠実な向き合い方です。
出典・確認先メモ
- 国土交通省「空き家対策特設サイト」:空き家の管理、活用、除却、自治体の補助制度や相談窓口に関する確認先。
- 国土交通省「空家等対策の推進に関する特別措置法関連情報」:管理不全空家等・特定空家等への措置と、住宅用地特例に関する確認先。
- 法務省・法務局「相続登記の義務化」「建物を取り壊した場合の登記」:相続登記、建物滅失登記に関する確認先。
- 環境省「建物を壊すときにはどうしたら良いの?」:解体前のアスベスト事前調査、報告・届出、飛散防止に関する確認先。
- 国土交通省「建設リサイクル法の対象となる建設工事」:床面積80平方メートル以上の解体工事の届出と分別解体に関する確認先。
- 国税庁「被相続人の居住用財産を売ったときの特例」:相続した空き家の譲渡所得に関する特別控除の確認先。
- 自治体の固定資産税担当窓口:住宅を取り壊した後の住宅用地特例と税額変化に関する確認先。


















