救急外来で「お薬は何を飲んでいますか」と聞かれ、誰も答えられなかった
離れて暮らす父が、自宅で転んで救急搬送された。
病院から電話を受けて駆けつけると、受付で次々に聞かれます。
「現在飲んでいる薬は分かりますか」
「かかりつけの病院はどこですか」
「緊急時に連絡できるご家族は、ほかにいますか」
けれど、分かるのは父の生年月日くらい。
保険証やお薬手帳が家のどこにあるのかも、兄が父の鍵を持っているのかも分かりません。
幸い大事には至らなかったものの、「元気なうちに聞いておかなければ」と思い、後日エンディングノートを買って実家へ持っていく。
すると父は、表紙を見ただけで顔を曇らせます。
「俺をもう死ぬ人間みたいに扱うな」
「財産がいくらあるか知りたいのか」
「そんな縁起の悪いものは書かない」
心配して用意したのに、疑われたようで悲しくなる。
「あのとき何も分からなくて困ったから」と説明しても、親は「まだ自分でできる」と譲らない。
親子の間で止まってしまうのは、ノートの書き方が難しいからだけではありません。
子どもは「困ったときに親の希望を尊重したい」と考えている一方、親には「自分の死を待たれている」「財産や生活を管理される」と聞こえることがあるからです。
最初の目的は、ノートを一冊完成させることではありません。
親が自分の暮らしについて、どこまでなら家族へ知らせてもよいかを一緒に探すことです。
親が嫌がる理由は、「死の話が怖い」だけではありません
親から拒まれると、「頑固だから」「現実を見ようとしないから」と感じることがあります。
しかし、嫌がる理由によって、かける言葉は変わります。
| 親が感じていること | 口にする言葉 | 子ども側が変えたいこと |
|---|---|---|
| 死を急かされている | 「まだ元気なのに縁起でもない」 | 死後ではなく、入院・災害・外出先での緊急時から話す |
| 財産を狙われている | 「金のことが知りたいのか」 | 金額を聞かず、取引先や書類の保管場所だけから始める |
| 生活を管理されそう | 「自分のことは自分で決める」 | 子どもが書かせるのではなく、親が共有範囲を選ぶ |
| 書く量に圧倒される | 「こんなに全部は書けない」 | 一冊を埋めず、必要な項目を一つだけ選ぶ |
| 家族の争いを心配している | 「書いたらきょうだいが揉める」 | 誰が見るか、どこへ置くかを先に決める |
| 本人にも答えがない | 「葬式や延命なんて今は決められない」 | 空欄や「その時に家族と相談」も選択肢にする |
| 過去の家族関係が引っかかる | 「あの子には何も教えたくない」 | 全員への共有を前提にせず、信頼できる人を本人が選ぶ |
「親のためだから」と説得を続けるより、「何が嫌なのか」を一度聞いた方が、話の入口を変えられます。
ノートという形が嫌なだけで、緊急時の連絡先なら教えてもよい人もいます。
財産の話はしたくなくても、飼っている犬の預け先は決めたい人もいます。
拒否されたことを、すべての話を拒まれたと受け取らなくても構いません。
話を始めやすいのは、親の誕生日より「暮らしの出来事」があったときです
節目の誕生日や敬老の日にノートを贈る方法もありますが、親によっては「高齢者扱いされた」と感じます。
終活の話をするための特別な日をつくるより、日常で起きた小さな出来事から入る方が自然です。
| 切り出しやすい場面 | 話の始め方 |
|---|---|
| 病院や薬が変わったとき | 「私が代わりに説明することになったら困るから、病院と薬だけ教えて」 |
| 保険証や通帳を探したとき | 「中身を見たいわけじゃなくて、置き場所だけ分かるようにしない?」 |
| スマートフォンを買い替えたとき | 「連絡先や写真が消えないように、使っているサービスを一緒に見よう」 |
| 災害のニュースを見たとき | 「連絡がつかないとき、誰へ聞けばいいか家族で決めておきたいね」 |
| 知人が入院したと聞いたとき | 「急な入院だと家族は何を持っていけばいいんだろうね」 |
| 親自身が物を探していたとき | 「これから探す手間を減らすために、場所だけメモしておかない?」 |
| 子どもが自分の情報をまとめたとき | 「私も緊急連絡先をまとめたから、お父さんの分も一緒に作らない?」 |
避けたいタイミングもあります
- けんかの直後
- 親が病気を告げられたばかりのとき
- 親戚が集まる場で突然話題にするとき
- きょうだいが財産について揉めている最中
- 親が疲れている、飲酒している、体調が悪いとき
- 書類へ署名を求める話と同時に切り出すとき
話を始める日は、最後まで決める日ではありません。
「今日は緊急連絡先だけ」「続きはまた今度」と短く終えた方が、次の会話を残せます。
「エンディングノートを書いて」から始めない方が話しやすくなります
エンディングノートという言葉だけで身構える親には、最初から名称を使わなくても構いません。
困った場面と、知りたい理由を短く伝えます。
入院や救急時の備えとして話す
「この前、病院で飲んでいる薬を聞かれたけれど、私には答えられなかったよ。もしまた急に入院したときのために、病院と薬の場所だけ教えてもらえる?」
親の希望を尊重したいと伝える
「私たちが勝手に決めるのが一番嫌だと思うんだ。今決めていることがあれば、分かるようにしておきたい」
子どもも一緒に書く
「私も事故や入院がないとは言えないから、自分の連絡先や保険の場所をまとめ始めたよ。お母さんも必要なところだけ一緒にやってみない?」
財産目的ではないと先に伝える
「預金がいくらあるかを聞きたいわけではないよ。何かあったときに、どの銀行や保険会社へ連絡するか分からず困らないようにしたいんだ」
書くことを嫌がる親には、話すだけにする
「書くのが面倒なら、今日は私が聞いてメモしてもいい? 残したくないことは書かないし、最後に一緒に内容を見よう」
子どもが代筆する場合も、親が言っていないことを補ったり、希望を推測して書いたりしません。
完成したメモは本人に読み上げ、「これは残す」「これは消す」を選んでもらいます。
最初に書くのは、財産や葬儀ではなく三つだけで構いません
市販のエンディングノートには、財産、保険、介護、医療、葬儀、お墓、交友関係など、多くの項目があります。
最初のページから順に埋めようとすると、親も子どもも疲れてしまいます。
まずは、急な入院や連絡不能のときに必要になりやすい三つから始めます。
| 最初の3項目 | 書く内容 | 金額や秘密まで必要か |
|---|---|---|
| 緊急連絡先 | 連絡してほしい家族・親族・近所の人 | 氏名、関係、連絡先で十分 |
| 医療に関する情報 | かかりつけ医、持病、薬、お薬手帳の場所 | 詳しい病歴を家族全員へ見せる必要はない |
| 大事な書類の場所 | 保険証、年金、保険、不動産などの書類の保管場所 | 内容や暗証番号ではなく、場所だけでもよい |
この三つが書けたら、その日は終わりにします。
「せっかくだから銀行口座も」「葬儀はどうする」と広げると、親には最初からそれが目的だったように見えることがあります。
小さく終えた経験が、「これなら続けてもよい」という安心につながります。
一冊を完成させることより、「必要な情報がどこにあるかを、信頼できる人が分かる状態」を目指します。
全部を書かなくても、「ある・ない・場所」だけで助かる項目があります
親の預金額や保険金額を、子どもが今すべて知る必要はありません。
親が抵抗を感じる場合は、詳しい内容ではなく、存在と保管場所だけを書きます。
| 項目 | 詳しく書く場合 | 最小限にする場合 |
|---|---|---|
| 預貯金 | 金融機関名、支店、口座種別 | 「取引銀行一覧は机の青いファイル」 |
| 生命保険 | 保険会社、証券番号、担当窓口 | 「保険証券は寝室の引き出し」 |
| 不動産 | 所在地、名義、登記書類の保管場所 | 「権利関係の書類は金庫」 |
| 年金 | 年金の種類、通知書の保管場所 | 「年金関係は茶色の封筒」 |
| 借入れ・ローン | 借入先、返済口座、残額の資料 | 「返済関係は銀行書類と同じ場所」 |
| 定期契約 | 携帯、新聞、動画配信などの契約先 | 「毎月の引き落としは通帳で確認」 |
口座の暗証番号、クレジットカード番号、スマートフォンの解除番号などを、誰でも見られるノートへそのまま書くのは避けます。
秘密情報をどこへ保管しているかだけを知らせる、封をした紙へ分ける、必要な人だけが分かる方法を決めるなど、情報が漏れた場合の危険も考えます。
親のノートは、子どもが自由に読む家族共有帳ではありません
エンディングノートを書いてもらったあと、子どもがすぐ中身を読みたくなることがあります。
不備がないか見たい。きょうだいへの希望が書かれているか気になる。認知症になる前に財産を把握したい。
しかし、親が「書いたらすべて見られる」と感じれば、本音を書けなくなります。
書き始める前に、三つを決めます。
- 今、家族が読んでよいページ
- 本人に何かあったときだけ開くページ
- 本人以外には見せないページ
| 共有方法 | 向いている場面 | 注意点 |
|---|---|---|
| 家族と一緒に保管する | 緊急連絡先や医療情報 | 閲覧できる家族を決める |
| 本人が保管し、場所だけ伝える | 財産や葬儀など私的な希望 | 場所を変更したら伝え直す |
| 封筒へ入れ、開封条件を書く | 生前には見せたくない情報 | 存在と保管者を知らせておく |
| 項目ごとに保管場所を分ける | 暗証情報などを含む場合 | 一枚の案内表で所在だけ分かるようにする |
親がノートを見せないことを、「隠し事がある」と責める必要はありません。
必要なときに存在が分かり、本人が決めた人へ届く仕組みがあれば、すべてを今共有しなくてもよいのです。
スマートフォンの中は、パスワードより「何を使っているか」を残します
銀行、証券、写真、連絡先、買い物、動画配信などが、スマートフォンの中だけにある親も増えています。
国民生活センターは、本人が亡くなった後に家族がスマートフォンのロックを解除できない、有料サービスの契約状況を把握できない、ネット上の資産を見つけられないといった「デジタル遺品」の問題を紹介しています。
ただし、親へ最初から「スマホのパスワードを教えて」と言えば、監視されるように感じることがあります。
まずは利用しているサービスの種類を一緒に見ます。
最初にまとめたいデジタル情報
- 普段使うスマートフォンやパソコンの台数
- 主に利用しているメールアドレス
- ネット銀行やネット証券を利用しているか
- 毎月料金が発生するサービスがあるか
- 残したい写真やデータがどこにあるか
- SNSやブログをどうしてほしいか
- 機器や契約について詳しい人、購入した店舗
解除番号やパスワードをノートへ直接書く場合は、盗難や不正利用の危険があります。
秘密情報を別に保管し、エンディングノートには「保管方法を知っている人」や「保管場所の手がかり」だけを書く方法もあります。
家族が本人のアカウントへ無断でログインしてよいとは限りません。利用規約や相続手続が関係するため、実際の対応時には各事業者へ手続きを確認します。
医療や介護の希望は、丸をつけて終わる答えではありません
エンディングノートには、延命治療や介護施設について選ぶ欄があることがあります。
親へ突然、「延命治療はする?」「施設へ入りたい?」と聞くと、重すぎて答えられないことがあります。
最初は、治療方法の選択ではなく、親が日々の暮らしで何を大切にしているかを聞きます。
| 答えにくい聞き方 | 話しやすくする聞き方 |
|---|---|
| 延命治療は希望する? | 「体が弱ったときも、自宅で過ごしたい? 病院の方が安心?」 |
| 介護施設へ入る? | 「一人でお風呂や食事が難しくなったら、何を一番大事にしたい?」 |
| 誰に判断してほしい? | 「自分で話せないとき、気持ちを一番分かってくれそうなのは誰?」 |
| どこで最期を迎えたい? | 「体調が悪くなったとき、どんな環境なら落ち着けそう?」 |
| 救命処置はどうする? | 「医師の説明を聞くとき、家族には何を優先して考えてほしい?」 |
厚生労働省は、本人が大切にしていることや望む生き方、もしものときの医療・ケアについて、家族や信頼できる人、医療・ケアチームと前もって考え、話し合う取組を「人生会議」として案内しています。これは一度決めた答えを固定するものではなく、本人の状況や気持ちに応じて話し合いを重ねる過程です。
ノートへ書いた希望も、年月や病状によって変わることがあります。
「現時点の希望」「迷っている」「医師の説明を家族と聞いて決めたい」など、決めきれない状態もそのまま残して構いません。
エンディングノートと遺言書は、同じ役割ではありません
エンディングノートへ財産の分け方を書けば、それで相続の準備が終わると思われることがあります。
しかし、家族へ情報や希望を伝えるノートと、財産の承継について法的な効果を持たせる遺言書は分けて考える必要があります。
| 項目 | エンディングノート | 遺言書 |
|---|---|---|
| 主な役割 | 本人の情報、希望、家族へのメッセージを残す | 財産を誰へどのように残すかなどを定める |
| 書き方 | 形式は自由で、書き直しや一部記入もしやすい | 法律で定められた方式を守る必要がある |
| 財産分配の効力 | 希望を伝える参考にはなるが、遺言書と同じ扱いを前提にしない | 有効に作成されていれば、相続手続に反映できる |
| 向いている内容 | 連絡先、医療・介護、葬儀、ペット、デジタル情報 | 財産の承継、遺贈、遺言執行者の指定など |
遺言書には自筆証書遺言や公正証書遺言などがあり、自筆証書遺言には本文・日付・氏名の自書や押印など、法律上の要件があります。不備があると無効になる可能性があるため、財産の分け方へ確実に意思を反映したい場合は、エンディングノートだけで済ませず、遺言書の作成方法を確認します。
自筆証書遺言書は、法務局で保管してもらえる制度があります。紛失や改ざんを防ぎ、保管された遺言書については家庭裁判所の検認が不要になるなどの特徴があります。ただし、法務局の形式確認は遺言内容の有効性を保証するものではありません。
不動産が複数ある、家族関係が複雑、相続人以外へ財産を残したい、相続で揉める可能性がある場合は、司法書士、弁護士、公証役場などへ早めに確認する方法があります。
葬儀やお墓は、「決めて」ではなく「嫌なことはある?」から聞きます
親に葬儀の希望を聞くと、「そんなことは家族で好きにすればいい」と返されることがあります。
本当に任せたい場合もありますが、形式を細かく決めることに抵抗があるだけかもしれません。
希望がないかではなく、「避けたいこと」から聞くと答えやすくなります。
- 大人数へ知らせるのは避けたいか
- 呼んでほしい人、知らせなくてよい人はいるか
- 宗教や菩提寺との関係があるか
- 家族へ高額な費用をかけてほしくないか
- お墓、納骨、散骨などについて決めていることがあるか
- 写真として使ってほしいものがあるか
「全部任せる」と言われた場合も、その言葉を記録します。
ただし、実際の葬儀や埋葬には、墓地、寺院、親族、契約などが関係します。ノートへ書いた希望をそのまま実現できるとは限らないため、強い希望がある部分は、家族と関係先で実現可能性も確かめます。
きょうだいがいる場合は、ノートの中身より管理方法を先に共有します
一人の子どもだけが親と話を進めると、後からきょうだいに「勝手に財産を聞き出した」「自分に都合よく書かせた」と疑われることがあります。
親が望む場合は、ノートの中身を見せる前に、作成している事実と管理方法だけを共有します。
| 家族で決めたいこと | 決め方の例 |
|---|---|
| 親と話す窓口 | 全員で一度に迫らず、親が話しやすい一人が聞く |
| 代筆する人 | 内容を補わず、記入後に親へ読み上げる |
| 保管する人・場所 | 親本人が選び、家族には場所だけ知らせる |
| 生前に読める範囲 | 緊急情報だけ共有し、財産や手紙は封をする |
| 更新を手伝う人 | 年に一度、本人へ変更の有無だけ聞く |
| 意見が割れた場合 | 子どもの希望ではなく、親本人の意思を中心にする |
きょうだい全員が同じ役割を担う必要はありません。
近くに住む人は病院情報、事務手続が得意な人は保険や契約、親が心を開きやすい人は希望を聞く役割というように分けられます。
ただし、親の了承なくノートをコピーして配ったり、財産情報を家族のグループへ流したりしないようにします。
親が拒否した日は、ノートを置いて帰らない選択もあります
せっかく買ったノートだからと、「読むだけでも」と実家へ置いて帰りたくなるかもしれません。
しかし、親が強く拒んでいるときは、ノート自体が子どもからの圧力として残ることがあります。
その日は引き下がって構いません。
「分かった。今日はやめよう。ただ、病院から連絡が来たときに困ったから、薬の場所だけ、また教えてもらえるとうれしい」
拒否されたあとにできることはあります。
子ども側だけで準備できること
- 親の住所、生年月日、連絡先など既に知っている情報をまとめる
- 緊急時に連絡するきょうだいの順番を決める
- 実家の鍵を誰が預かっているか確かめる
- 親が利用する病院や介護サービスを、本人から聞ける範囲で控える
- 自分自身のエンディングノートを作り、親へ見せる
- 次に同じ話をするまで時間を置く
親が留守の間に通帳や保険証券を探したり、郵便物を撮影したりするのは避けます。
緊急性がない段階では、本人の私物と秘密を守ることも、今後の話し合いを続けるために必要です。
物忘れが増えているときは、書類へ署名させることを急ぎません
親が同じ話を何度もする、支払いを忘れる、契約内容を理解できていないように見える場合、「今のうちに全部書いてもらわなければ」と焦ることがあります。
しかし、判断力への心配がある状態で、財産の処分や契約に関わる書類へ急いで署名を求めると、後から本人の意思をめぐって問題になることがあります。
エンディングノートを完成させるより先に、日常生活で起きている変化を記録します。
- 同じ支払いを何度もしている
- 公共料金や家賃を滞納するようになった
- 不要な契約や高額な買い物が増えた
- 薬を重ねて飲む、飲み忘れる
- 以前できていた家事や手続が難しくなった
- 人柄や金銭感覚が急に変わった
地域包括支援センターは、市町村が設置する高齢者の総合相談窓口で、保健医療、介護、権利擁護などの相談を受け、必要な機関や制度へつなぐ役割があります。認知機能の低下が心配な段階でも、家族から相談できます。
「認知症に違いない」と本人を責めるのではなく、「最近、支払いと薬の管理が難しそうで心配」と、具体的な生活場面を伝えます。
有料の終活サービスは、ノートを書いた勢いで契約しません
エンディングノートを書き始めると、身元保証、入院時支援、財産管理、死後事務、葬儀などをまとめて請け負うサービスが目に入ることがあります。
一人暮らしの親や、近くに頼れる家族がいない場合には、必要な支援になることもあります。
一方で、契約期間が長く、預託金や解約条件、亡くなった後に行う業務の範囲などを慎重に見る必要があります。
消費者庁は、高齢者等終身サポート事業を利用する際、提供されるサービスの内容、支払能力、契約・解約条件などを確かめ、不安があれば消費生活センターや地域包括支援センターへ相談するよう案内しています。
契約前に家族で見たいこと
- 何をしてもらえ、何は含まれないか
- 初期費用、月額費用、追加費用の総額
- 預けたお金を誰がどのように管理するか
- 途中で解約した場合、いくら戻るか
- 事業者が廃業した場合の対応
- 本人の希望が変わった場合に変更できるか
- 葬儀社、介護施設、法律家などとの関係
家族だけで対応できること、自治体や既存の制度で補えること、有料サービスへ頼みたいことを分けてから比較します。
エンディングノートは、一度完成させるより日付を残す方が役立ちます
親の連絡先、薬、保険、医療への希望は、年月とともに変わります。
何年も前の情報が残っていると、家族はどれが現在の希望か判断できません。
各ページへ記入日または見直した日を書きます。
| 見直すきっかけ | 見直したい項目 |
|---|---|
| 病院や薬が変わった | かかりつけ医、持病、薬、お薬手帳 |
| 引っ越した | 住所、緊急連絡先、書類の保管場所 |
| 配偶者や親族が亡くなった | 連絡先、遺言、保険、葬儀の希望 |
| スマートフォンを替えた | 機器、メール、契約サービス、写真の保存場所 |
| 介護サービスを利用し始めた | 担当者、事業所、介護への希望 |
| 本人の考えが変わった | 医療、介護、葬儀、情報を共有する人 |
毎年すべてを書き直す必要はありません。
誕生日や年末などに、「病院、連絡先、保管場所に変わりはない?」と三つだけ聞く方法でも続けられます。
今日の一歩は、ノートを渡すことではなく一つ質問することです
親にエンディングノートを書いてもらえるかどうかを、今日決めなくても構いません。
まず、自分が一番困った場面を一つ思い出してください。
病院から電話が来たとき。実家の鍵が見つからなかったとき。保険証を探したとき。親と連絡が取れなかったとき。
その場面を理由に、一つだけ聞きます。
「急に入院したときのために、いつもの病院とお薬手帳の場所だけ教えてもらえる?」
あるいは、こうでも構いません。
「私たちが勝手に決めないために、何か一つだけ希望を教えてほしい」
答えてくれたら、その場で話を広げず、親の言葉を短く書き、内容を見てもらいます。
断られたら、「分かった。また必要になったときに聞かせて」と終えます。
親のためを思うほど、早く全部決めたくなります。
けれど、親自身が選んだ言葉で、親自身が見せる範囲を決めることも、エンディングノートを残す目的の一つです。
一冊を埋められなくても、緊急連絡先が一つ分かった。薬の場所を教えてもらえた。家族に勝手にしてほしくないことを一つ聞けた。
その一項目が、いざというときに親の希望を守る手がかりになります。
出典・確認先メモ
- 法務省・日本司法書士会連合会「エンディングノート~あなたに届け、わたしの想い~」:エンディングノートの項目、相続・遺言・後見に関する基礎情報。
- 厚生労働省「人生会議」:本人が大切にすること、望む医療やケアを家族・医療ケアチームと話し合う取組。
- 政府広報オンライン・法務省「自筆証書遺言書保管制度」:遺言書の種類、方式、保管制度、作成上の注意点。
- 国民生活センター「デジタル終活」:スマートフォン、ネット上の資産、有料サービスなど、デジタル遺品への備え。
- 消費者庁「高齢者等終身サポート事業の利用に関する注意点」:身元保証、日常生活支援、死後事務などの契約時に見る項目。
- 厚生労働省「地域包括支援センター」「認知症に関する相談」:高齢者の生活、介護、権利擁護、認知機能に関する家族からの相談先。















