良かれと思って渡したノートを、父は開こうともしません
知人の親が急に入院し、家族が薬の名前も保険証の場所も分からず困ったと聞きました。
自分の親も七十代です。元気に暮らしてはいますが、いつ同じことが起きてもおかしくありません。
そこで、書店で見つけたエンディングノートを実家へ持っていきます。
「時間があるときに、これを書いておいてくれない?」
父は表紙を見た途端、顔を曇らせました。
「俺に早く死ねということか」
「そんな縁起でもないものはいらない」
母からも、「財産を知りたいの?」と聞かれます。
こちらは親を急かしたいわけではありません。
救急搬送されたときに、かかりつけ医や薬が分からない。本人が話せないときに、どのような医療を望んでいるか分からない。亡くなった後に、誰へ連絡すればよいかも分からない。
家族だけで判断することになるのが怖いのです。
それでも親には、「自分が死んだ後の準備をしろと言われた」と伝わることがあります。
親が嫌がるのは、家族への思いやりがないからではありません。ノートが意味するものを、親と子で違うように受け取っているのかもしれません。
子どもが頼みたいことと、親が言われたと感じることは違います
| 子どもの気持ち | 親が受け取りやすい意味 |
|---|---|
| 急な入院で困らないようにしたい | もうすぐ病気になると思われている |
| 本人の希望どおりにしたい | 死んだ後の話を急かされている |
| 書類や契約の場所を知りたい | 財産を調べられている |
| 元気な今だから聞きたい | 高齢者として扱われている |
| 家族の負担を減らしたい | 自分が家族の迷惑になっている |
エンディングノートは、本人に何かあったときに家族が判断や手続きを進めるための情報を残すほか、これまでの人生やこれからの暮らしを考えるためにも使われています。死後の手続きだけを扱うものではありません。
ただし、説明する前から冊子を見せると、「終活」「葬儀」「相続」といった言葉だけが強く残ります。
最初にノートを勧めるのではなく、家族が困りそうな具体的な場面を伝える方が、話の目的が届きやすくなります。
最初の言葉は、「書いてほしい」より「一つ教えてほしい」です
親へ頼むときは、ノート一冊を完成させる話から始めません。
子ども側が知りたいことを一つに絞ります。
| 心配している場面 | 最初の一言 |
|---|---|
| 急な入院 | 「救急車で運ばれたとき、お薬手帳はどこにある?」 |
| 本人が電話できない | 「私たち以外で、入院したときに知らせてほしい人はいる?」 |
| 家をしばらく空ける | 「留守になったとき、家のことで先に連絡する人はいる?」 |
| 保険の手続き | 「保険の金額ではなく、書類を置いている場所だけ教えて」 |
| ペットが残る | 「急に入院したら、この子のお世話を誰に頼みたい?」 |
一問に答えてもらえたら、その日はそこで終えて構いません。
親が話し始めた場合だけ、次の質問へ進みます。
ノートを勧める前に、子ども側の困りごとを正直に伝えます
「あなたのためだから」と言われても、本人は必要性を感じないことがあります。
家族側が何に迷うのかを伝えると、頼む理由が具体的になります。
「お母さんが急に入院したとき、私が何も知らないまま決めるのが怖いんだ」
「お父さんの希望を無視したくないけれど、聞いていなければ私たちで決めることになる。それを少し減らしたい」
「財産を詳しく知りたいわけではないよ。どこへ問い合わせればいいか分かるようにしたいだけなんだ」
親を心配していることだけでなく、子ども自身が判断に迷うことを話します。
「書いてくれれば安心」ではなく、「分からないまま決めたくないから助けてほしい」と頼む形です。
先に「頼まないこと」を言うと、警戒が弱まる場合があります
親は、ノートを書き始めたら財産のすべてを見せなければならない、葬儀や墓を今すぐ決めなければならないと思っているかもしれません。
最初に、今回は求めないことを伝えます。
- 預金の正確な残高は聞かない
- 暗証番号は書かなくてよい
- 財産の分け方を決めなくてよい
- 葬儀や墓を今決めなくてよい
- 一冊を全部埋めなくてよい
- 家族全員に見せなくてよい
たとえば、次のように話せます。
「口座の金額や暗証番号は聞かないよ。取引している銀行があることと、通帳をどこへ置いているかだけ分かれば助かる」
「葬儀の形まで決めなくていい。連絡してほしい人だけ、思いついたら教えて」
「縁起でもない」と言われたら、その場で説得しません
親が強く嫌がったときに、「みんな書いている」「何かあってからでは遅い」と説得を続けると、ノートそのものを拒むようになることがあります。
いったん引きます。
「嫌な気持ちにさせてごめん。今日書いてほしいわけではないよ」
「死んだ後の話を急かしたいわけではないんだ。入院したときの薬だけ、また今度教えて」
「ノートは置いていかないよ。話せそうなときに一つずつ聞かせて」
その日は別の話に戻り、数週間から数か月空けます。
拒否された直後に、きょうだいからも同じ話をさせないようにしてください。
親の返事ごとに、次に伝える言葉を変えます
| 親の言葉 | 背景にありそうな気持ち | 返し方の例 |
|---|---|---|
| 「まだ元気だから必要ない」 | 弱った人として扱われたくない | 「元気な今の言葉で聞きたいんだ。体調が悪くなってから決めてとは言いたくない」 |
| 「財産目当てか」 | 資産を探られる警戒 | 「残高は聞かないよ。手続き先が分かるよう、銀行名と書類の場所だけ知りたい」 |
| 「死んだ後は好きにして」 | 考えることを避けたい | 「全部任せてもらってもいい。ただ、絶対にしてほしくないことはある?」 |
| 「面倒くさい」 | 書く量や作業への負担 | 「書かなくていいよ。私が聞いて、答えた言葉だけメモする」 |
| 「きょうだいに知られたくない」 | 情報が広がることへの不安 | 「誰が見てよいかもお母さんが決めていい。私だけが保管場所を知る形でもいいよ」 |
| 「今度やる」 | 優先順位が低い、始め方が分からない | 「では今日は、かかりつけ医の名前だけ書いて終わりにしよう」 |
返事の表面だけでなく、何が嫌なのかを見ます。
冊子が嫌なのか、死の話が嫌なのか、財産を見られることが嫌なのかによって、進め方は異なります。
親へ渡す前に、自分のノートを作って見せます
親だけへ書くよう求めると、「高齢だから準備させられている」と感じさせることがあります。
子ども側も、自分の緊急連絡先や契約を書いてみます。
- かかりつけ医
- 服用している薬
- 勤務先の緊急連絡先
- 保険証券の保管場所
- スマートフォンの契約先
- 災害時に連絡を取りたい人
そのうえで、次のように伝えます。
「私も事故や入院があるかもしれないから、自分の分を書いてみたよ。お互いに必要なところだけ残さない?」
「私の書類も、家族には場所が分からないと気づいたんだ。お父さんの分だけを聞きたいわけではないよ」
親子の年齢差ではなく、家族全員に必要な備えとして話せます。
最初から分厚い冊子を渡さない方が進むことがあります
項目の多いノートは、丁寧に情報を残せる一方、見ただけで負担を感じる人もいます。
最初は、A4用紙一枚や小さなカードでも十分です。
| 最初に残す項目 | 書く内容 |
|---|---|
| 医療 | かかりつけ医、お薬手帳、アレルギー |
| 緊急連絡 | 家族以外に知らせてほしい人 |
| 重要書類 | 保険証券や契約書を置いている場所 |
| 住まい | 合鍵、管理会社、修理を頼む先 |
| 日常生活 | ペット、植物、新聞など、留守時に止めること |
これらは、亡くなった後だけでなく、急な入院や災害時にも使う情報です。
一枚が埋まった後で、本人が必要だと思う項目を増やします。
書くのが苦手な親には、ノート以外の残し方があります
| 親の様子 | 残し方 |
|---|---|
| 文字を書くのが面倒 | 家族が質問し、本人の言葉を記入する |
| 手が痛い、字が書きづらい | 本人の同意を得て音声で残し、後で要点をまとめる |
| 長く話すのが苦手 | 一回に一問だけ聞く |
| 書類の場所を説明できない | 一緒に探し、引き出しやファイルの写真を撮る |
| 選択肢があると答えやすい | 「自宅・病院・施設なら、どこで過ごしたい?」など具体化する |
| 人に見られるのが嫌 | 封筒へ入れ、見る人と時期を本人が決める |
家族が代筆する場合は、本人が言っていない希望を補わないようにします。
決めていないことは、「未定」「そのとき家族と話したい」と残せます。
話しやすい日は、葬儀の後より日常の片づけの日です
知人の死や病気をきっかけに話すと、必要性は伝わりやすい一方、「次は自分だと言われている」と感じさせる場合があります。
次のような日常の場面から始める方が、重くなりにくいことがあります。
- お薬手帳や診察券を整理するとき
- 防災用品を入れ替えるとき
- 保険の更新書類が届いたとき
- スマートフォンを買い替えるとき
- 旅行や入院の準備をするとき
- 家の書類を片づけるとき
- 子ども側が自分の緊急連絡先をまとめたとき
「終活の話をしよう」と構えるより、「この書類はどこへまとめる?」という会話から入れます。
食事の途中や帰り際に、財産の話を急に始めないようにします
時間がない日に切り出すと、親が答えないまま会話を終え、次の機会まで気まずさだけが残ります。
話すときは、次の条件をそろえます。
- 親の体調が比較的よい
- テレビや来客で落ち着かない時間を避ける
- 最初は十五分程度にする
- その日のテーマを一つに絞る
- 答えたくない項目は飛ばせると伝える
- 話の後に別の楽しい予定を入れる
エンディングノートの話だけをするために実家へ行くと、親も身構えます。
食事や買い物など普段の時間の中で、短く扱う方が自然です。
父と母へ、同じ言い方が合うとは限りません
夫婦で暮らす親へ、一緒に書くよう頼んでも、考え方が違う場合があります。
| 親のタイプ | 始めやすい話 |
|---|---|
| 実務を重視する | 保険、病院、契約、鍵などの一覧 |
| 家族への思いが強い | 知らせてほしい人、残したい写真、家族への言葉 |
| 財産の話を警戒する | 残高を避け、書類の場所と連絡先だけ |
| 死の話を強く嫌う | 防災・入院・旅行中の留守管理 |
| 何でも配偶者へ任せる | 配偶者も動けないときに頼りたい人 |
| 自分で決めたい | 家族が用紙を選ばず、本人に方法を選んでもらう |
父が拒んでいるからと、母にも話せないとは限りません。
ただし、一方の親が書いた内容を、本人の許可なくもう一方へ見せないようにします。
きょうだいで勧めるなら、窓口を一人にします
長女が財産、長男が葬儀、次女が施設について別々に聞くと、親は子ども全員から死後を急かされているように感じます。
先に、きょうだい側で話を合わせます。
| 決めること | 例 |
|---|---|
| 最初に聞く内容 | 病院、薬、緊急連絡先だけ |
| 親へ話す人 | 親が最も話しやすい一人 |
| 記入を手伝う人 | 近くに住み、書類整理を手伝える人 |
| きょうだいへ共有する範囲 | 親が共有を認めた内容だけ |
| 次に聞く時期 | 親の希望を聞き、一か月後などに設定 |
「親のため」という理由でも、本人の許可なく財産一覧をきょうだいのグループへ送るのは避けます。
預金については、金額より手続きの手掛かりを聞きます
親が最も警戒しやすいのが、お金の話です。
最初から預金残高を聞く必要はありません。
| 聞いておきたいこと | 最初は聞かなくてもよいこと |
|---|---|
| 取引のある銀行・証券会社 | 一円単位の残高 |
| 通帳や契約書の保管場所 | キャッシュカードの暗証番号 |
| 住宅ローン・借入れの有無 | 家族全員への口座情報の共有 |
| 貸金庫を利用しているか | その場で財産を誰へ渡すか決めること |
| 遺言書の有無と保管場所 | 遺言書の内容を家族へ見せること |
「財産を教えて」ではなく、次のように伝えます。
「通帳を見せてほしいわけではないよ。もし入院が長引いたとき、どこへ連絡すればいいか分かるようにしたい」
「借入れや契約があるなら、金額より書類の場所だけ教えて」
暗証番号やパスワードを一冊へ集めすぎないようにします
家族が手続きをしやすいように、すべての暗証番号やログイン情報を書いてもらおうと考えることがあります。
しかし、ノートを見つけた人が金融口座やサービスへ入れる状態になるのは危険です。
エンディングノートには、次のような手掛かりまでを残します。
- 利用している金融機関やサービス名
- 契約書や認証情報を保管している場所
- スマートフォンやパソコンの中に重要情報があること
- データを残すか削除してほしいか
- 手続き時に連絡してほしい人
誰が、どの状態になったときに見るのかも、本人と決めてください。
医療の希望は、チェック欄を埋めてもらうだけでは足りません
エンディングノートには、「延命治療を希望する・しない」といった項目があります。
ただし、実際の医療では、本人の状態や治療内容によって判断する場面が異なります。
最初は、何を大事にしたい人なのかを聞きます。
- できるだけ自宅で過ごしたい
- 会話ができる状態を大事にしたい
- 苦痛をなるべく減らしてほしい
- 食べる楽しみを残したい
- 家族へ負担をかけすぎたくない
- 信頼する医師や家族と相談して決めたい
厚生労働省が案内する「人生会議」は、もしものときに望む医療やケアを前もって考え、家族や医療・ケアチームと繰り返し話し合い、共有する取り組みです。一度ノートへ書いて終わりではなく、気持ちの変化に合わせて話し直すことが前提です。
持病がある場合は、本人の希望をノートへ書くだけでなく、受診時に医師や医療職へ話せるかも検討します。
「全部家族に任せる」と言われたら、嫌なことだけ聞きます
親が細かな希望を決めたくない場合もあります。
無理に選ばせる代わりに、家族が迷うときの基準を一つ聞きます。
「全部任せてもらって大丈夫。ただ、大きな病院でできる治療を続けることと、慣れた家で過ごすことなら、どちらを大事にしたい?」
「葬儀は任せるとして、大勢を呼ぶのと家族だけで送るのなら、どちらが気楽?」
「物は私たちで片づけるけれど、勝手に捨ててほしくない物はある?」
「家族の中で意見が割れたら、誰の話を中心に聞いてほしい?」
してほしいことが決まらなくても、「してほしくないこと」は答えられる場合があります。
葬儀の話は、形式より連絡してほしい人から始めます
祭壇、費用、墓などの話は抵抗があっても、人間関係の話なら答えやすい親もいます。
| 聞く内容 | 質問例 |
|---|---|
| 連絡してほしい人 | 「入院したときや亡くなったとき、知らせたい友人はいる?」 |
| 所属している集まり | 「町内会や趣味の会で、連絡が必要なところはある?」 |
| 使ってよい写真 | 「家族が使ってよい写真を一枚選んでおく?」 |
| 避けたいこと | 「大勢を呼ぶことや、派手にすることはどう思う?」 |
| 宗教・墓 | 「連絡するお寺や、すでに決めている場所はある?」 |
葬儀社やプランをその場で決めるのではなく、家族が知らない連絡先や本人の価値観を残すことから始めます。
エンディングノートと遺言書は、同じ役割ではありません
| エンディングノートへ残しやすいこと | 正式な手続きを検討したいこと |
|---|---|
| 医療、介護、葬儀についての希望 | 財産を誰へどのように渡すか |
| 連絡先、契約先、書類の保管場所 | 遺産分割へ法的な効果を持たせたい場合 |
| 家族への言葉、思い出 | 遺言執行者など法律上の指定 |
| 遺言書の有無と保管場所 | 民法上の方式を満たす遺言書の作成 |
財産の分け方をエンディングノートへ書いても、それだけで法律上の遺言と同じ効果が生じるとは限りません。
本人が財産の渡し方を確実に残したい場合は、法律上の方式を満たす遺言書を別に検討します。
自筆証書遺言書保管制度では、本人が作成した自筆証書遺言書を法務局へ預けられます。紛失や改ざんを防ぐための制度ですが、遺言の内容について法務局職員が相談に応じたり、有効性を保証したりする制度ではありません。
エンディングノートを勧める会話と、遺言を作る話は分けた方が、親も受け止めやすくなります。
「あなたに全部任せる」と書かれても、何でも代行できるとは限りません
親がノートへ「長女へすべて任せる」と書いても、それだけで銀行口座の解約、不動産の売却、契約変更などを自由に行えるとは限りません。
必要な書類や権限は、手続きの内容、本人の状態、契約先によって異なります。
ノートには、次の内容を残すことを優先します。
- 誰を窓口にしてほしいか
- どこへ問い合わせればよいか
- 必要な書類をどこへ置いているか
- 本人が大事にしている考え
エンディングノートは、すべての手続きを可能にする委任状ではなく、家族が迷わず適切な窓口へ進むための案内として使います。
親の判断力が気になり始めても、家族の希望を書かせないようにします
物忘れが増えると、「今のうちに全部書いてもらわなければ」と焦ります。
しかし、家族が望む財産の分け方や施設入所を、親の希望として書き込むことは避けてください。
本人が話しやすい時間帯に、答えられることを一つずつ聞きます。
- 今も通っている病院
- 頼りにしている人
- 自宅で続けたい暮らし
- 嫌だと感じる介護
- 書類を置いている場所
財産処分、契約、遺言など本人の判断能力が関わる手続きは、家族だけで急いで結論を出さず、必要に応じて医療・介護・法務の各窓口へ個別に状況を伝えます。
ノートを書いてくれなくても、話した内容は残せます
何度提案しても、冊子へ書くことを拒む親はいます。
その場合は、ノートの完成を目標にしません。
本人の同意を得たうえで、会話の後に子どもがメモを残します。
| 聞けた内容 | 記録例 |
|---|---|
| 医療 | 「苦しい治療を長く続けるより、会話できる時間を大事にしたい」と話した |
| 連絡先 | 入院時には学生時代の友人Aさんへ知らせてほしい |
| 住まい | できる限り自宅で暮らしたいが、子どもとの同居は望んでいない |
| 葬儀 | 大勢を呼ばず、家族中心がよい |
| 物 | 写真アルバムは捨てず、孫へ見せてほしい |
メモには、話した日付と、その場にいた人を書きます。
本人の考えが変わったら、新しい日付で書き直します。
何も話したくない親には、家族側で分かる情報だけまとめます
本人が話さないことを選ぶ場合もあります。
子どもには不安が残りますが、強制して関係を壊すより、現在把握している事実をまとめます。
- 利用している病院と薬局
- 親族と近所の連絡先
- 家の鍵を持つ人
- 利用している介護・生活サービス
- 家族が把握している保険や契約
- 分からない情報の一覧
「書いてくれないから、もしものときは何もできない」と考えず、家族側の備えを先に進めます。
保管場所は、見つからない場所でも誰でも見られる場所でも困ります
| 決めること | 例 |
|---|---|
| 原本の場所 | 書類棚、鍵付きの引き出しなど |
| 存在を知る人 | 配偶者と長女のみ |
| 見てよい時期 | 入院時、本人が意思を伝えられないとき、死亡後 |
| 今から共有する部分 | 医療情報と緊急連絡先 |
| 封をしておく部分 | 財産、葬儀、家族への手紙 |
| 正式書類との区別 | 遺言書、保険証券、登記書類の保管場所だけ記載 |
親が書いたからといって、子どもがすぐ全部を読む必要はありません。
本人が誰に何を見せたいかを決め、その意思を尊重します。
一度書いたノートを、本人の最終決定として固定しません
医療、介護、住まい、葬儀についての気持ちは、体調や経験によって変わります。
記入日と更新日を残し、次のような機会に内容を見直します。
- 病院や薬が変わった
- 入院や手術を経験した
- 引っ越した
- 配偶者や親しい人が亡くなった
- 保険や金融機関を変更した
- 介護や医療への考えが変わった
「前にこう書いたでしょう」と、現在の希望を否定しないでください。
特に医療やケアの希望は、一度の記入で完成させるものではなく、本人と周囲の人が繰り返し話し合う過程そのものに意味があります。
今日することは、エンディングノートを買うことではありません
まず、子ども側が次の五行を書いてください。
- 親に最初に聞きたいこと:
- それが分からないと困る場面:
- 親が嫌がりそうな理由:
- 今回は聞かないこと:
- 最初に伝える一言:
たとえば、次のようになります。
「救急搬送されたときの薬が分からないのが心配。財産や葬儀は今日は聞かない。『入院したときに持っていくお薬手帳はどこにある?』と聞く」
この一問なら、人生の終わりを一度に決めてもらう必要はありません。
エンディングノートを親へ勧める目的は、空欄をすべて埋めてもらうことではありません。
本人が自分のことを自分の言葉で伝え、家族が勝手に決める場面を少し減らすことです。
親が一度断ったとしても、そこで終わりではありません。
ノートという形を外し、入院、防災、留守番、書類整理など、今の暮らしに近い話から始められます。
今日は「エンディングノートを書いて」と頼まず、「急に入院したら、私が最初に持っていく物はどこにある?」と一つだけ聞いてみてください。
出典・確認先メモ
- 法務局「エンディングノート」:本人に何かあった際、家族が判断や手続きを進めるための情報を残すとともに、これまでとこれからの人生を考えるための活用が案内されています。
- 厚生労働省「人生会議」:望む医療やケアについて本人が前もって考え、家族や医療・ケアチームと繰り返し話し合い、共有する取り組みです。
- 法務省・法務局「自筆証書遺言書保管制度」:本人が作成した自筆証書遺言書を法務局で保管し、紛失や改ざんを防ぐための制度です。遺言の作成方法や内容には別途注意が必要です。
- エンディングノートだけで可能になる手続きと、遺言、契約、代理権など正式な書類や権限を必要とする手続きは異なります。具体的な対応は、法務局、金融機関、保険会社、医療機関などへ個別にご確認ください。















