長く一緒に暮らしてきたからこそ、婚姻届一枚で何が変わるのか迷います
一緒に暮らして十年になる。互いの家族にも紹介し、周囲からは夫婦として見られている。生活費を分け、病気のときには付き添い、老後も二人で暮らすつもりでいる。
今さら結婚式をしたいわけではない。それでも、50代になると、ふと入籍の話が出てくることがあります。
友人が入院し、家族への連絡で苦労したと聞いたとき。親の相続を経験したとき。年金の通知が届いたとき。どちらかの健康診断で再検査が必要になったとき。
「このままでも夫婦と変わらないと思っていたけれど、もしものときは大丈夫なのかな」
「相手の家に住んでいるけれど、先に亡くなったら住み続けられるのだろうか」
「入籍したら、子どもに財産を取られると思われないだろうか」
「仕事で使ってきた名字を、今から変えるのは正直つらい」
若いころの結婚とは違い、50代の二人には、すでに積み上げてきた生活があります。
自分名義の家、老後資金、前の結婚で生まれた子ども、親の介護、仕事上の名前、保険、借入れ。それらがあるため、「好きだから入籍する」だけでは決めきれません。
反対に、条件をすべて整えてからでなければ入籍できないわけでもありません。
大切なのは、入籍すれば自動的に解決することと、婚姻届を出しても別に準備しなければならないことを分けることです。
最初に話すのは「入籍するか」ではなく、なぜ今入籍したいのかです
一方が「そろそろ籍を入れよう」と言ったとき、もう一方はプロポーズのように受け取るかもしれません。
しかし、言った側は、相続や入院の手続きを心配しているだけかもしれません。
同じ「入籍したい」でも、求めているものが違えば、婚姻届を出したあとに「思っていた話と違う」となります。
| 入籍を考えたきっかけ | 本当に確かめたいこと | 入籍以外の準備も必要か |
|---|---|---|
| もしものときに財産を残したい | 家、預貯金、保険を誰へ渡したいか | 遺言、受取人指定、家の名義なども見る |
| 病院で家族として扱われたい | 緊急連絡、病状説明、医療の希望を誰と共有するか | 連絡先登録や本人の意向を書面に残す |
| 老後を正式な夫婦として暮らしたい | 生活費、介護、住まいをどう支え合うか | 家計表や介護方針を別に決める |
| 相手を安心させたい | 相手が何に不安を感じているのか | 言葉だけでなく、財産や住居の準備も行う |
| 子どもや親から入籍を勧められた | 二人自身が本当に望んでいるか | 家族の意見と二人の希望を分ける |
| 名字を同じにしたい | どちらの名字を選び、仕事上どう扱うか | 名義変更する契約や資格を一覧にする |
二人の答えが違っていても、すぐに関係が悪いと決める必要はありません。
「私は相続が心配」「私は名字が変わることが心配」と言えるだけでも、何を調べれば決められるかが見えてきます。
入籍で変わることと、事実婚でも認められることは同じではありません
事実婚には法律婚と同じように扱われる制度もありますが、すべてが同じになるわけではありません。
| 項目 | 事実婚のまま | 入籍した場合 |
|---|---|---|
| 法定相続人 | パートナーは法定相続人にならない | 配偶者は常に法定相続人になる |
| 相続税の配偶者軽減 | 原則として対象外 | 要件を満たせば利用できる |
| 所得税の配偶者控除 | 対象外 | 所得などの要件を満たせば対象となる |
| 遺族年金 | 事実婚でも対象となる場合があるが、関係や生計維持の証明が必要 | 戸籍上の配偶者でも、年金加入や生計維持などの要件がある |
| 健康保険の扶養 | 制度によっては内縁の配偶者も対象となる | 収入などの認定要件を満たせば対象となる |
| 名字 | それぞれの名字を使える | 現行制度では夫または妻のどちらかの氏を選ぶ |
| 相手の子との親子関係 | 法律上の親子にはならない | 結婚だけでは法律上の親子にならず、必要なら養子縁組を別に考える |
| 婚姻前からの財産 | それぞれが所有する | 入籍しただけで共有財産へ変わるわけではない |
内縁のパートナーは法定相続人に含まれません。一方、婚姻届を出した配偶者は常に相続人となり、子どもや父母、兄弟姉妹などと一緒に相続する立場になります。
また、所得税の配偶者控除と相続税の配偶者に対する税額軽減は、婚姻届を出した法律上の配偶者を対象とする制度で、事実婚のパートナーは原則として対象になりません。
一方で、遺族年金や健康保険の扶養などは、一定の要件を満たせば事実婚のパートナーが配偶者として扱われることがあります。入籍しなければ何も保障されないわけではありませんが、事実婚関係や生計同一関係を示す書類が必要になる場合があります。
50代で最も差が出やすいのは、どちらかが亡くなったあとの相続です
日々の暮らしだけを見れば、事実婚と法律婚に大きな差を感じないこともあります。
違いがはっきり出るのは、どちらかが亡くなったときです。
たとえば、男性に前の結婚で生まれた子どもが二人いて、現在のパートナーと事実婚で暮らしているとします。
男性が遺言を残さず亡くなった場合、事実婚のパートナーは法定相続人にはならず、原則として二人の子どもが相続人になります。
二人が入籍したあとに男性が亡くなった場合は、法律上の配偶者と二人の子どもが相続人です。法定相続分の目安は配偶者が2分の1、子ども全員で2分の1となります。法定相続分は話し合いがまとまらない場合の基準であり、必ずその割合どおりに分けなければならないという意味ではありません。
| 相続前に見るもの | 二人で話す内容 |
|---|---|
| 自宅 | 誰の名義か、残された人が住み続けられるか |
| 預貯金 | 老後生活に必要な額と、子どもへ残したい額 |
| 生命保険 | 現在の受取人が誰になっているか |
| 退職金・死亡退職金 | 勤務先の規程では誰が受け取れるか |
| 有価証券・投資 | 口座の所在と評価額を互いに把握しているか |
| 借入れ・保証 | 住宅ローン、カードローン、連帯保証などがないか |
| 前の配偶者との取り決め | 養育費、財産分与、共有不動産などが残っていないか |
入籍すれば、相手にすべての財産を自動的に残せるわけではありません。
子どもなどほかの相続人がいれば、その人たちとの遺産分割が必要になることがあります。自宅を配偶者へ残したい、預貯金は子どもにも渡したいといった希望があるなら、遺言を含めて別に形にする必要があります。
反対に、事実婚を続ける場合でも、遺言によってパートナーへ財産を遺贈する方法はあります。ただし、法定相続人の遺留分、相続税の扱い、不動産の名義などが関係することがあるため、財産の大きさや家族構成に応じた確認が必要です。
入籍は二人の問題でも、成人した子どもの生活にも影響します
50代の入籍では、二人のどちらか、または双方に成人した子どもがいることがあります。
成人した子どもの許可を得なければ結婚できないわけではありません。
それでも、何も知らせず入籍すると、子どもは結婚そのものより、「財産の話を隠されていた」「親の老後を急に任された」と感じることがあります。
子どもに伝えるときは、理解や祝福をその場で求めすぎない方がよいでしょう。
自分の子どもへ伝える例
「私たちは入籍を考えています。あなたに許可を求めたいわけではないけれど、相続や将来の介護にも関係するので、決める前に伝えておきたかった。家や預貯金をどうするかは、曖昧なままにせず別に整理します」
財産を心配されたとき
「入籍したら全部を相手に渡すと決めたわけではないよ。私が暮らすためのお金、相手の生活、あなたたちに残したいものを分けて考え、必要なら遺言を作るつもりです」
相手の子どもへ伝える例
「結婚したからといって、急に親として振る舞ったり、あなたに介護を頼んだりするつもりはありません。将来困らないように、住まいやお金のことは二人で準備しておきます」
婚姻届を出しただけでは、パートナーと相手の子どもの間に法律上の親子関係は生まれません。法律上の親子関係を作る養子縁組は、婚姻とは別の手続きであり、養親と養子双方の合意などが必要です。
子どもとの関係をよくするためだけに、養子縁組まで急いで行う必要はありません。
相続させたいのか、扶養関係を作りたいのか、名字をどうしたいのか。目的を分けて考えます。
相手名義の家に住んでいるなら、入籍後も住めるとは限りません
長年一緒に住んでいる家でも、土地と建物が一方の単独名義であることがあります。
入籍前には、固定資産税の納税通知書や登記事項証明書などで、所有者を一度見ておきたいところです。
| 住まいの状態 | 確認しておきたいこと |
|---|---|
| 一方の持ち家に同居 | 所有者が先に亡くなったとき、誰が家を相続するか |
| 住宅ローンが残っている | 残高、団体信用生命保険、名義、連帯保証の有無 |
| 二人で費用を出したが単独名義 | 頭金や修繕費を誰がいくら負担したか |
| 賃貸住宅 | 契約者が亡くなった場合の契約継続、緊急連絡先 |
| 親から相続した家 | 本人の子どもなど、ほかの相続人との関係 |
| 将来どちらかが施設へ入る予定 | 自宅を維持するか売るか、費用を誰が負担するか |
入籍すれば配偶者として相続人になりますが、家を必ず単独で取得できるわけではありません。
所有者に子どもがいれば、配偶者と子どもが相続人となります。残された人がその家に住み続けるには、家を誰が取得するか、ほかの相続人へ渡す財産があるかまで考えておく必要があります。
事実婚を続けるなら、遺言だけでなく、賃貸借契約、生命保険、家を維持する費用、遺言執行者なども含めて準備します。
名字を変える側には、気持ち以上に細かな手続きがあります
現在の日本の制度では、婚姻する二人は、夫または妻のどちらか一方の氏を選び、同じ氏を名乗ります。どちらの氏にするかは二人で決められますが、法律婚をしながら戸籍上は別々の氏を選ぶ制度にはなっていません。
50代では、名前が仕事や地域で定着しています。
資格職として旧姓で活動している。顧客や取引先に長年覚えてもらった名前がある。親の介護や実家の手続きで、旧姓のままの方が説明しやすい。
そのため、「どちらの名字でもいいよ」という話だけで終えず、変える側の手続きを具体的に数えます。
- 勤務先と社会保険
- 運転免許証、マイナンバーカード、パスポート
- 銀行、証券、クレジットカード
- 不動産、住宅ローン、保険
- 携帯電話、公共料金、通信契約
- 国家資格や民間資格
- 病院、薬局、介護関係
- 仕事上のメール、名刺、ウェブサイト
- 遺言、任意代理契約など既存の書類
職場や資格によっては旧姓を通称として使えることもありますが、すべての契約や公的手続きで同じように使えるとは限りません。
名字を変えない側も、「名前が変わるだけ」と軽く考えず、手続きにかかる時間や仕事への影響を一緒に見ます。
年金は「入籍すれば得になる」と決めつけない方が安全です
年金制度には、事実婚の配偶者も対象に含める仕組みがあります。
遺族年金は、亡くなった人の加入状況、保険料の納付状況、受け取る人との生計維持関係、年齢や子どもの状況などによって決まります。事実婚の場合には、夫婦として共同生活をしていたことや、生計を同じくしていたことを示す申立書や資料を求められる場合があります。
法律婚なら戸籍で続柄を示しやすくなりますが、入籍すれば必ず遺族年金を受け取れるという意味ではありません。
また、現在、亡くなった前の配偶者に関する遺族年金を受けている場合は注意が必要です。遺族年金は、法律婚だけでなく内縁関係を含む再婚によって受給権を失うことがあります。すでに事実婚状態にある場合も含め、年金事務所へ個別に状況を伝えて確認する必要があります。
| 年金で持っていく資料 | 確認すること |
|---|---|
| 二人のねんきん定期便 | 加入期間と将来の受給見込額 |
| 現在受給している年金の通知 | 入籍や事実婚で受給権に影響がないか |
| 勤務先と健康保険の情報 | 扶養や第3号被保険者に該当する可能性 |
| 住民票や生活費の記録 | 事実婚関係・生計同一関係の証明に使えるか |
| 退職予定 | 退職後の健康保険と国民年金への切替え |
健康保険でも、収入などの認定要件を満たせば、内縁の配偶者が被扶養者となれる場合があります。入籍前後で必ず有利になるとは限らないため、加入中の健康保険へ二人の収入と生活状況を伝えて聞きます。
入籍後も、お互いの貯金や借金が自動的に一つになるわけではありません
結婚すると、すべての財産を二人で半分ずつ持つことになると思っている人もいます。
民法では、婚姻前から持っている財産や、婚姻中に自分の名で得た財産は、原則としてその人の特有財産とされています。一方、どちらに属するか明らかでない財産は共有と推定されます。
つまり、入籍しただけで、相手名義の預金や不動産の半分が自分の物になるわけではありません。
ただし、夫婦の日常生活に関する契約から生じた債務については、もう一方も責任を負う場合があります。また、配偶者が亡くなれば相続人になるため、相続では預貯金や不動産だけでなく、借入金などの債務も対象になり得ます。
入籍前に、少なくとも次の項目は「聞きにくいから」と残さない方がよいでしょう。
- 預貯金と投資のおおよその額
- 住宅ローン、カードローン、自動車ローン
- 事業の借入れと個人保証
- 税金や社会保険料の未納
- 離婚時の養育費や金銭的な取り決め
- 親族や知人の連帯保証人になっていないか
- 毎月自由に使えるお金
- 親の介護や子どもへの援助予定
借入れを聞く会話例
「信用していないから聞くのではなく、入籍すると相続や家計にも関係するから、お互いに借入れと保証だけは一覧にしたい。私の分も全部見せるね」
相手だけに開示を求めず、自分の資料も同じように出すと、身辺調査ではなく共同生活の準備として話しやすくなります。
病気や介護の場面は、入籍だけでなく本人の希望を残しておきます
「法律上の配偶者になれば、病院ですべて決められる」と考えて入籍を急ぐことがあります。
しかし、入籍後も、本人に意思を伝える力がある間は本人の意思が基本です。本人が意思を伝えられない場合も、配偶者が自動的にあらゆる医療行為を自由に決めるという単純な仕組みではありません。
厚生労働省のガイドラインでは、本人による意思決定を基本とし、本人が意思を伝えられなくなる前から、医療やケアの希望について家族等や医療・ケアチームと繰り返し話し合うことが示されています。信頼できる人には、法律上の家族だけでなく親しい友人なども含まれます。
| 事前に決めること | 残しておく内容 |
|---|---|
| 緊急連絡先 | 第一連絡先、第二連絡先、成人した子どもへの連絡順 |
| 病状の情報共有 | 誰に説明してよいかを医療機関へ伝える |
| 医療やケアの希望 | 延命治療、療養場所、介護方針について話し合う |
| 入院時の対応 | 持ち物、支払い、住まい、ペットの世話 |
| 判断を支える人 | 本人の価値観や希望を医療者へ伝えられる人 |
| 重要書類 | 保険証券、診察券、薬、連絡先の保管場所 |
事実婚を続ける場合は、パートナーを緊急連絡先として登録し、本人が情報共有を希望していることを通院先へ伝える方法があります。
入籍する場合も、「夫婦になったから分かるはず」とせず、本人が受けたい医療や介護を言葉にします。
入籍しない選択をするなら、婚姻届の代わりに何を用意するかを決めます
話し合った結果、名字を変えたくない、成人した子どもとの財産関係を変えたくない、今の距離感が二人に合っているという結論になることもあります。
入籍しない選択は、将来を考えていないという意味ではありません。
ただし、「何十年も一緒にいるから大丈夫」という信頼だけでは、相続や契約の手続きが進まない場面があります。
| 事実婚のまま準備するもの | 目的 |
|---|---|
| 遺言書 | 誰に何を残すかを形にする |
| 生命保険の受取人確認 | 死亡時の生活資金を確保する |
| 住まいの取り決め | 所有者が亡くなったあとの居住を考える |
| 財産と生活費の記録 | どちらが何を所有し、何を負担したか残す |
| 事実婚関係を示す資料 | 年金や保険などの手続きに備える |
| 緊急連絡・医療の希望 | 病気や意思表示が難しい場合に備える |
| 葬儀や納骨の希望 | 親族とパートナーの間で判断が分かれるのを防ぐ |
| デジタル情報の一覧 | 契約、端末、写真、ネット口座の扱いを決める |
日本年金機構では、事実婚関係のパートナーが未支給年金などを請求する際、戸籍、住民票、申立書に加え、別住所の場合には事実婚関係や生計同一関係を示す書類を求めることがあります。日常の生活費、住所、社会的な夫婦関係が分かる資料を残しておくことには意味があります。
ただし、こうした準備をしても、法律婚の配偶者と完全に同じ立場になるわけではありません。
何を補えて、何が補えないのかを確認したうえで選びます。
二人に合う選択は、守りたいものによって変わります
| 重視したいこと | 入籍を考えやすい状況 | 事実婚のまま準備を考えやすい状況 |
|---|---|---|
| 相続 | 配偶者として法定相続人になることを重視する | 子どもを中心に相続させつつ、遺言で一部を残したい |
| 名字 | どちらかが変更に納得し、手続きの見通しがある | 双方が現在の名字を変えたくない |
| 子どもとの関係 | 相続への影響も含めて家族へ説明できている | 再婚による相続関係の変化を避けたい事情がある |
| 住まい | 残された配偶者の相続権を確保したい | 遺言や別の住宅で生活を守る方法が整っている |
| 公的制度 | 法律上の配偶者として手続きを明確にしたい | 事実婚でも利用できる制度を個別に確認できている |
| 気持ち | 正式な夫婦になることが二人の安心につながる | 婚姻の形式より、現在の関係を維持する方が自然 |
この表の右側が多いから入籍すべき、左側が多いから事実婚のままにすべき、というものではありません。
相続は入籍で整え、名字の負担は仕事上の旧姓使用で軽くする。事実婚を続け、遺言と生命保険で生活を守る。そのように、制度と準備を組み合わせることもできます。
入籍の話が重くなるときは、婚姻届ではなく一つの生活場面から話します
相手が入籍を急いでいるとき
「私も将来を一緒に過ごしたい気持ちは同じだよ。ただ、名字と子どもの相続への影響が気になっている。反対しているのではなく、そこを調べてから決めたい」
相手が入籍を避けているとき
「籍を入れること自体が目的ではないよ。もしあなたが先に亡くなったとき、私はこの家に住めるのかが心配なんだ。入籍しないなら、別の方法でそこを準備したい」
子どもの反応が怖いとき
「二人だけで先に結論を伝えるのではなく、相続と住まいをどう考えているかを一枚にしてから話そう。子どもの許可を取るためではなく、驚かせないために伝えたい」
お金の話を嫌がられたとき
「財産を知りたいのではなく、どちらかに何かあったとき、家や借金が分からず困るのを避けたい。金額はおおよそでもいいから、お互い同じ項目を出そう」
「愛情があるなら入籍できるはず」「入籍を嫌がるなら信用していない」と結びつけると、話し合いは苦しくなります。
名字が心配な人と、相続が心配な人では、迷っている理由が違います。相手の結論ではなく、止まっている理由を聞きます。
今日作るのは婚姻届ではなく、二人の暮らしの一枚表です
入籍するか迷っているとき、今日中に答えを出す必要はありません。
紙を縦に二つへ分け、左に「入籍で守りたいもの」、右に「入籍しても変えたくないもの」と書いてください。
| 入籍で守りたいもの | 入籍しても変えたくないもの |
|---|---|
| 相手が自宅に住み続けられること | 仕事で使っている名字 |
| もしものときの生活費 | 自分の預貯金の管理 |
| 家族としての安心感 | 成人した子どもとの関係 |
| 相続や税務上の配偶者の立場 | それぞれが自由に使うお金 |
| 病気や介護を支え合う約束 | 親の介護への関わり方 |
次に、二人それぞれが次の資料を一か所へ集めます。
- ねんきん定期便と現在の年金通知
- 預貯金、不動産、保険の一覧
- 住宅ローンや借入れの残高
- 生命保険の受取人
- 双方の子どもと親を含めた家族関係図
全部の金額をその場で見せる必要はありません。
まず、「何があるか」「誰に関係するか」「分からないものは何か」を二人で見ます。
婚姻届は、二人の気持ちを公的な形にする大切な書類です。ただし、その一枚だけで、家、老後資金、子どもとの関係、介護、医療の希望まで決まるわけではありません。
入籍する選択にも、しない選択にも、それぞれ準備が必要です。
最初の一歩は、どちらが正しいかを決めることではありません。「もし相手が先に倒れたら、私は何に困るだろう」と一つだけ書き出し、その困り事が入籍で解決するのか、別の準備が必要なのかを二人で確かめることです。
出典・確認先メモ
- 法務省「婚姻届」「選択的夫婦別氏制度について」:婚姻届と婚姻後の氏を確かめる際の資料。
- 国税庁「相続人の範囲と法定相続分」:法律婚の配偶者と内縁のパートナーの相続上の違いを確かめる際の資料。
- 国税庁「配偶者控除」「配偶者の税額の軽減」:所得税と相続税における法律上の配偶者の扱いを確かめる際の資料。
- 日本年金機構「遺族年金」「年金を受けている方が亡くなったとき」:事実婚関係、生計維持関係、遺族年金の要件を確かめる際の資料。
- 日本年金機構「遺族年金を受けている方が結婚や養子縁組などをしたとき」:再婚や事実婚による受給権への影響を確かめる際の資料。
- 協会けんぽ「被扶養者の範囲」:健康保険で内縁の配偶者が被扶養者となる条件を確かめる際の資料。
- 法務省「養子縁組について知ろう」:パートナーの子との法律上の親子関係を考える際の資料。
- 厚生労働省「人生会議」「人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセス」:本人の医療・ケアの希望を共有する際の資料。
















