勤務中の着信を見るたび、胸がざわつくようになった
朝、親の家へ寄って薬と朝食を用意し、急いで職場へ向かう。
仕事を始めて間もなく、今度は親から「財布がない」「今日は病院の日だったか」と電話がかかってきます。
昼休みにはケアマネジャーへ折り返し、午後は病院からの連絡に備えてスマートフォンを机の上に置いたままです。
定時で帰るつもりでも、仕事が終わらない。親の夕食も心配で、周囲へ頭を下げながら先に退社する。
家へ着く頃には、自分の夕食や入浴をする力が残っていません。
「職場にこれ以上迷惑をかけられない」
「親を一人にして事故が起きたら、自分を許せない」
「きょうだいは遠方で、結局私がするしかない」
「もう仕事を辞めた方が、みんな楽になるのではないか」
そう思いながらも、退職すれば収入がなくなります。
介護が何年続くか分からない中で、自分の生活費や老後資金まで減らしてよいのか。答えが出ないまま、翌日も同じ生活が続きます。
今の状態が苦しいのは、介護への思いやりが足りないからでも、仕事の能力が落ちたからでもありません。
家族一人が、親の世話、緊急対応、家族間の連絡、職場との調整をすべて引き受ける形になっていることが問題です。
「介護が大変」を、仕事を崩している六つの用事に分けます
介護という言葉だけでは、職場にも支援者にも、何を減らせば働き続けられるのか伝わりません。
| 今していること | 仕事への影響 | 見直す方向 |
|---|---|---|
| 食事、入浴、排泄、着替えなどの介助 | 毎日の出勤前後に時間が取られる | 訪問介護、通所サービス、家族分担を検討する |
| 通院の付き添い | 半日・一日単位で休みが必要になる | 介護休暇、受診日集約、付き添い方法を見直す |
| 買い物、掃除、洗濯、食事作り | 休日が家事だけで終わる | 生活援助、配食、宅配などへ任せられる部分を探す |
| 夜間の見守りや呼び出し | 睡眠不足で仕事中に集中できない | ショートステイ、夜間対応、住環境の見直しを考える |
| ケアマネジャー、病院、役所との連絡 | 勤務中の電話や手続きが増える | 連絡時間、連絡担当、共有方法を決める |
| 親の不安や拒否への対応 | 仕事中も親のことが頭から離れない | 家族だけで説得せず、支援者を交えて関わり方を考える |
毎日必要な介助と、月に一度の通院と、突然起きる緊急対応を同じものとして扱うと、すべてに自分が備え続けることになります。
まず、介護の用事を「毎日」「決まった日」「突然」の三つに分けてください。
三日間だけ、介護に使った時間と仕事への影響を書きます
家族の介護は、数分の電話や買い物の積み重ねが多く、本人も総量を把握できていないことがあります。
| 時刻 | したこと | かかった時間 | 仕事への影響 |
|---|---|---|---|
| 午前7時 | 親へ朝食と薬を用意 | 30分 | いつもより早く起床 |
| 午前10時 | 親からの電話に対応 | 10分 | 作業を中断 |
| 午後1時 | 病院へ予約変更の電話 | 15分 | 昼休みに休めなかった |
| 午後5時 | 親の転倒連絡を受けて早退 | 3時間 | 同僚へ仕事を引き継いだ |
| 午後9時 | 洗濯と翌日の食事を準備 | 1時間 | 自宅の家事ができなかった |
三日分を見ると、親のそばにいる時間だけでなく、電話、移動、手続き、気持ちを落ち着かせる対応にも時間を使っていることが分かります。
この表は、自分がどれほど頑張っているかを証明するためではありません。
ケアマネジャーには任せたい用事を、職場には勤務へ影響する時間を具体的に伝えるために使います。
家族が続けることと、家族でなくてもできることを分けます
親のことをよく知っている家族にしかできないことはあります。
一方、家族がしているという理由だけで、家族しかできないと思い込んでいる用事もあります。
| 用事 | 家族が担う意味がある部分 | ほかへ任せられる可能性 |
|---|---|---|
| 食事 | 好みや体調を支援者へ伝える | 調理、配膳、配食、買い物 |
| 服薬 | 薬の変更や副作用を共有する | 薬局への相談、訪問支援、服薬しやすい仕組み |
| 通院 | 治療方針を一緒に考える | 毎回の移動や受付を別の方法にできないか検討する |
| 入浴 | 本人の希望を聞く | 訪問介護や通所サービスでの支援 |
| 掃除・洗濯 | 残してほしい物を伝える | 介護サービスや自費サービスの対象を検討する |
| 見守り | 重要な判断や緊急連絡を受ける | 通所、訪問、見守り機器、地域サービス |
| 家族間の連絡 | 重要な方針を話し合う | 共有ノートや連絡グループで一斉に伝える |
介護保険では、相談とケアプラン作成のほか、訪問介護、デイサービス、ショートステイ、訪問・通い・宿泊を組み合わせるサービス、福祉用具など、複数の支援があります。利用できる内容は、要支援・要介護の区分、本人の状態、地域、事業所の空きなどによって異なります。
家族がすべての介護をやめるという話ではありません。
家族は本人の希望や変化を支援者へ伝え、日常の介助はサービスと分け合う。その形へ変えることが、仕事を続ける土台になります。
最初の電話は、親が住む地域の地域包括支援センターへ
まだ要介護認定を受けていない、ケアマネジャーがいない、何のサービスが必要かも分からない場合は、親が住む地域を担当する地域包括支援センターが入口になります。
地域包括支援センターは、市町村が設置する高齢者の総合相談窓口で、保健・医療・福祉や介護予防、権利擁護などについて支援します。市区町村の案内や介護サービス情報公表システムから担当先を探せます。
電話では、次のように伝えてください。
「母が一人暮らしで、食事と服薬に手助けが必要です。私は平日フルタイムで働いており、週に三回、出勤前と退勤後に通っています。遅刻と早退が増え、仕事を続けるのが難しくなっています。認定や利用できる支援を含めて、家族が毎日通わなくても暮らせる方法を相談したいです」
親の状態だけでなく、自分の勤務時間やできない時間帯も伝えます。
- 親が一人でできること
- 家族が現在代わっていること
- 特に危ない、または心配な時間帯
- 家族が対応できない曜日と時刻
- 遅刻・早退・欠勤がどの程度起きているか
- 親がサービスを嫌がっているか
- 別居家族や近隣の協力状況
「仕事があるので介護できません」と言うことを、冷たいと感じる必要はありません。
仕事を続けられる範囲を支援者が知らなければ、家族がいつでも対応できる前提で介護計画が作られてしまいます。
すでにケアマネジャーがいるなら、「限界です」だけで終わらせない
介護サービスを利用していても、家族の負担が減らないことがあります。
サービスのない朝晩を家族が埋めている。通所日は増えたが、送り出しの準備で遅刻する。親からの電話が勤務中に何度も来る。
ケアマネジャーには、次の表を見せながら再調整を頼みます。
| 現在困っていること | 具体的な伝え方 |
|---|---|
| 朝の準備で遅刻する | 「午前7時から8時の着替えと食事を、一人では続けられません」 |
| 夜間対応で眠れない | 「週に三回呼ばれ、翌日の仕事に集中できません」 |
| 通所のない日に一人にできない | 「火曜日と木曜日の午前9時から午後6時に支援が必要です」 |
| 親がサービスを断る | 「家族が勧めると怒るため、支援者から目的を説明してほしいです」 |
| 出張や繁忙期に対応できない | 「来月の第2週は毎日帰宅が遅くなるため、短期的な支援を増やしたいです」 |
| 家族自身が限界に近い | 「退職を考えるほど負担が増えています。現在の計画を作り直したいです」 |
ショートステイには、本人への支援だけでなく、家族の介護負担を軽くする目的もあります。家族の出張、休養、冠婚葬祭などを含め、どのような場合に利用できるかをケアマネジャーへ聞いてください。
希望する日程に空きがない場合もあります。限界になった当日に探すのではなく、利用登録や候補先を先に聞いておくと、緊急時の選択肢が増えます。
親がサービスを嫌がるときは、「私が大変だから」だけで説得しない
親から「他人を家へ入れたくない」「デイサービスは年寄りが行く所だ」と断られることがあります。
家族が困っていることを強く伝えると、親は責められた、見放されたと感じるかもしれません。
| ぶつかりやすい言い方 | 試しやすい言い方 |
|---|---|
| 「私も仕事があるから無理」 | 「この暮らしを続けるために、朝だけ手伝ってもらう方法を試したい」 |
| 「もう一人では生活できない」 | 「一人でできていることは残して、重い所だけ頼もう」 |
| 「デイサービスへ行って」 | 「お風呂や昼食を手伝ってもらえる場所を一度見てみない?」 |
| 「みんな利用しているよ」 | 「合わなければ、担当者に別の方法を聞こう」 |
| 「私が倒れたらどうするの」 | 「私が仕事の日にも困らない方法を、一緒に決めたい」 |
家族だけで何度説得しても進まない場合は、地域包括支援センターやケアマネジャーへ、本人への説明を手伝ってほしいと頼みます。
最初から週に何日も利用するのではなく、見学、短時間、訪問での顔合わせなど、小さい入口を作れるか聞いてください。
職場へは、介護の詳しい事情より「勤務へ影響する事実」を伝えます
介護をしていると話したら、責任のある仕事から外されるのではないか。昇進や評価に影響するのではないか。
そう考え、遅刻や早退の理由を「家庭の事情」とだけ伝えている方もいます。
しかし、職場が介護に直面したことを知らなければ、利用できる制度の説明や勤務調整の話も始まりません。
上司または人事へ、次の順番で話します。
- 家族の介護が始まったこと
- 勤務へ出ている具体的な影響
- 今後も続く可能性
- 当面希望する働き方
- 利用できる制度を知りたいこと
会話例は次のとおりです。
「別居する母の介護が必要になり、現在は週に二回ほど通院や手続きへ同行しています。先月から早退が三回あり、このまま個別対応を続けるのは難しいと感じています。退職ではなく両立する方法を考えたいので、介護休暇、介護休業、残業免除、勤務時間の制度について説明を受けたいです」
2025年4月から、労働者が家族の介護に直面したと申し出た場合、事業主には介護休業や両立支援制度、申出先、介護休業給付金について個別に周知し、制度利用の意向を確認することが義務付けられています。利用を控えさせるような周知は認められていません。
介護休暇と介護休業は、同じ「休み」ではありません
| 制度 | 使う場面 | 主な内容 |
|---|---|---|
| 介護休暇 | 通院の付き添い、手続き、ケアマネジャーとの短い打ち合わせ | 対象家族1人なら年5日、2人以上なら年10日まで。原則として一日または時間単位 |
| 介護休業 | 退院後の支援体制、サービス、家族分担などをまとめて整える | 対象家族1人につき通算93日、3回まで |
| 短時間勤務等 | 毎日の朝夕に継続的な対応が必要 | 会社が短時間勤務、フレックス、時差出勤、介護費用助成などから制度を設ける |
| 残業・深夜業等の制限 | 終業後や夜間の介護時間を確保したい | 要件を満たして請求した場合に利用できる制度がある |
介護休暇は、年次有給休暇とは別の制度です。ただし、休暇中を有給とするか無給とするかは会社の規定によります。通院の付き添いや介護サービスの手続き、ケアマネジャーとの打ち合わせにも利用できます。
介護休業は、対象家族一人につき通算93日までを3回に分けて取得できます。厚生労働省は、休業中に家族が介護をすべて行うのではなく、地域の窓口への相談、サービスの手配、家族分担など、仕事と介護を両立できる体制を整える期間として使うことを示しています。
短時間勤務等については、会社が対象家族一人につき連続する3年以上の期間で、2回以上利用できる制度を設ける必要があります。会社によって短時間勤務、フレックス、時差出勤、介護サービス費用の助成など、設けられている方法が異なります。
パート・契約社員を含め、対象条件や労使協定による除外、申出期限などが制度ごとに異なります。自分は使えないと決めず、就業規則と勤務先の担当部署へ確認してください。
介護休業は、親につきっきりになるためだけに使わない
まとまった休みが取れると、「その間は自分が全部介護しよう」と考えがちです。
それでは、職場へ戻った日に元の状態へ戻ってしまいます。
介護休業を取る場合は、休業の終わりまでに次の状態を目指します。
- 地域包括支援センターまたはケアマネジャーへつながっている
- 平日の食事、入浴、見守りを誰が担うか決まっている
- 通院日と付き添う人が決まっている
- 緊急時の連絡順が決まっている
- きょうだいができる役割を引き受けている
- 職場復帰後に利用する勤務制度が決まっている
- サービスが合わない場合の再相談先が分かっている
雇用保険の被保険者で一定の要件を満たす場合、介護休業中は休業開始時賃金日額の67%相当額の介護休業給付金が支給されます。実際の対象や申請手続きは勤務先とハローワークへ確認してください。
「急に休む日」と「毎日少し早く帰る日」を同じ制度で補わない
介護による勤務への影響は、制度との組み合わせを変えた方がよい場合があります。
| 起きていること | 組み合わせの例 |
|---|---|
| 月に一度の通院付き添い | 介護休暇を時間または一日単位で使う |
| 退院直後に体制を作る必要がある | 介護休業中に認定、サービス、家族分担を整える |
| 毎朝の送り出しで始業に間に合わない | 時差出勤や短時間勤務と訪問サービスを組み合わせる |
| 残業すると夕食や服薬に間に合わない | 残業免除の制度と夕方の支援を検討する |
| 夜間の呼び出しで翌日働けない | 深夜業の制限、ショートステイ、夜間の支援を検討する |
| 突発的な呼び出しが頻繁にある | 緊急連絡の基準と、家族以外の連絡先をケアプランへ入れる |
会社には「何日休みたいか」だけでなく、「どの時間帯を変えれば通常勤務を続けられるか」を伝えます。
きょうだいには、平等な介護ではなく具体的な役割を頼みます
遠方のきょうだいへ「私ばかり介護している」と言っても、何をすればよいか伝わらず、言い争いになることがあります。
毎日の身体介助を平等に分けることが難しくても、別の役割は分けられます。
| 役割 | 頼み方の例 |
|---|---|
| 定期連絡 | 「火曜と木曜の夜は、親へ電話して様子を聞いてほしい」 |
| 病院・役所への問い合わせ | 「次回受診までに必要書類を病院へ聞いてほしい」 |
| 支払い管理 | 「介護費用の一覧を月に一度まとめてほしい」 |
| 休日の交代 | 「月に一度、土曜日の午後を担当してほしい」 |
| 緊急時の代替 | 「私が出張中に入院した場合の連絡役をお願いしたい」 |
| ケア会議への参加 | 「オンラインでもよいので、次の話し合いに出てほしい」 |
きょうだいが金銭支援も実務もできない場合、そのことを明確にします。
家族内で埋められない部分が分かれば、ケアマネジャーへ追加の支援が必要だと伝えられます。
遠距離介護では、毎回駆けつける基準を作ります
親から電話があるたび、新幹線や車で駆けつけていると、仕事も家計も続きません。
親、近隣の支援者、ケアマネジャーと、連絡の基準を決めてください。
| 連絡内容 | 最初の対応例 |
|---|---|
| 話し相手がほしい、寂しい | 決めた時刻の電話や別居家族の担当で対応する |
| 買い物や日用品が足りない | 宅配、支援者、次回訪問で対応できるか考える |
| 予定や物の場所が分からない | 掲示、共有ノート、支援者への連絡で解決できるか見る |
| 転倒したがけがの有無が分からない | 近隣の連絡先、訪問支援、医療・救急の判断につなぐ |
| 本人や周囲の安全を保てない | 家族の到着を待つだけでなく、地域の緊急機関へ連絡する |
「子どもなのだから、何があっても自分が行く」と決めるより、現地で先に動ける人を増やす方が、親の安全にもつながります。
仕事を辞める前に、介護が長引いた場合の生活費を出します
退職すれば、平日の介護はしやすくなります。
一方、収入、健康保険、年金、今後の再就職など、新しい問題も生じます。
| 退職前に見ること | 記入欄 |
|---|---|
| 現在の手取り収入 | 月 円 |
| 現在の介護費用 | 月 円 |
| 自分の最低生活費 | 月 円 |
| 退職後に増える保険・税など | 月 円 |
| すぐ使える預貯金 | 円 |
| 介護が続くと想定する期間 | 期間を決められない/目安 年 |
| 介護後に再就職する場合の希望 | 勤務時間・勤務地・職種 |
介護がいつ終わるかは決められません。
だからこそ、退職時点だけでなく、一年後も無収入だった場合に自分の生活が続くかを見ます。
勤務時間を減らして収入を残す方法と、退職して介護を担う方法を、家族全体の収支で比べてください。
それでも仕事を続けられない場合、退職は失敗ではありません
介護サービスを増やし、職場にも話した。それでも夜間の対応が続き、自分の体調も崩れている。
職場に利用できる働き方がない。親の状態が変化し、当面は家族の対応が必要になった。
その場合、退職や転職を選ぶこともあります。
ただし、「もう迷惑をかけられない」という罪悪感だけで決めず、次の状態を確かめます。
- 職場へ介護に直面したことを伝えたか
- 利用できる制度の説明を受けたか
- 地域包括支援センターやケアマネジャーへ仕事の限界を伝えたか
- 介護サービスや家族分担を見直したか
- 自分の睡眠や健康が保てているか
- 退職後の生活費を具体的に出したか
- 再び働く場合に必要な条件が分かっているか
すべてを試さなければ辞めてはいけないわけではありません。
体や心の安全を保てない場合は、休むことを先にして構いません。
退職を決めるとしても、「自分が介護を全部するため」ではなく、サービスを使いながら自分の生活も立て直すという視点を残してください。
制度を申し出たことで不利益を受けたら、社内だけで抱えない
介護休業や介護休暇などを申し出たことで、退職を迫られた、降格された、嫌がらせを受けたと感じる場合があります。
介護休業等の申出・取得を理由とする解雇、雇止め、降格などの不利益な取扱いは禁止されており、事業主には制度利用に関するハラスメントを防止する措置も求められています。育児・介護休業法や両立支援制度については、都道府県労働局の雇用環境・均等部(室)へ相談できます。
相談するときは、次のものを残しておきます。
- 介護に直面したことを伝えた日
- 申し出た制度や勤務調整
- 会社から受けた説明
- メール、面談記録、就業規則
- 不利益だと感じた扱いと日付
相談したから、すぐ会社と争わなければならないわけではありません。
自分が使える制度と、会社へどう伝え直せばよいかを聞く段階でも利用できます。
家族が限界に近いときは、介護者本人の状態も伝えます
親の状態ばかりを説明し、自分のことは「何とかしています」と答えてしまう方がいます。
けれど、眠れない、仕事中に涙が出る、食事が取れない、親へ強い言葉をぶつけてしまう状態なら、介護の計画を急いで見直す必要があります。
地域包括支援センターやケアマネジャーには、次のように伝えてください。
「親の介護だけでなく、私自身が仕事を休む日が増え、夜も眠れていません。今の介護を家族だけで続けることは難しいです」
休養のためのショートステイ、訪問回数、通所日、緊急時の受入れなど、利用できる選択肢を聞きます。
家族の休養は、介護を投げ出すことではありません。
本人への介護を継続するために、介護する側が倒れない形へ組み替えることです。
今日するのは、退職届を書くことではありません
仕事と介護の両方が限界になると、何か一つを手放さなければならないと感じます。
今日は、紙やスマートフォンへ次の三列を作ってください。
| 私がしなければならないこと | 家族以外でもできること | 仕事へ影響していること |
|---|---|---|
| 治療方針の話を聞く | 買い物、掃除、昼食の準備 | 週2回の早退 |
| 本人の希望を支援者へ伝える | 入浴介助、日中の見守り | 勤務中の電話対応 |
| 緊急時の判断に関わる | 通所日の送迎、薬の準備 | 夜間対応による睡眠不足 |
書けたら、明日は二本だけ連絡します。
一本目は、親の地域包括支援センターまたは担当ケアマネジャーです。
「仕事を辞めることを考えるほど、家族の負担が増えています。家族が毎日しなくてよい介護を増やしたい」と伝えます。
二本目は、勤務先の人事または上司です。
「家族の介護に直面しています。退職を決める前に、介護休暇、介護休業、勤務時間など利用できる制度の説明を受けたい」と伝えます。
介護の問題を職場だけで解決することはできません。
介護サービスだけで、勤務時間の問題を解決することもできません。
親の暮らしを支える側と、自分の仕事を支える側の両方へ同時に話すことで、初めて両立の形が見えてきます。
今日まで一人で埋めてきた時間を、家族、介護サービス、職場の制度へ少しずつ返していく。
その一歩は、親を見捨てることでも、仕事へ甘えることでもありません。
親の暮らしと自分の生活を、どちらも長く続けるための組み直しです。
出典・確認先メモ
- 厚生労働省「介護休業制度特設サイト」:介護休業、介護休暇、短時間勤務、残業・深夜業の制限など、仕事と介護の両立制度を確かめる際の資料。
- 厚生労働省「法改正のポイント」:2025年4月からの個別周知・意向確認、相談体制など、事業主の義務を確認する資料。
- 厚生労働省「地域包括ケアシステム」:地域包括支援センターの役割を確認する資料。
- 介護サービス情報公表システム:訪問介護、デイサービス、ショートステイなどの内容や地域の事業所を探す際の確認先。
- 厚生労働省「その他・相談窓口」:制度利用を理由とする不利益な取扱いや、育児・介護休業法に関する相談先を確認する資料。


















