実家に同じ箱が三つ届いて、初めて契約に気づいた
実家の玄関に、健康食品の箱が積まれていました。
母へ聞くと、「一箱だけ安く買った」と言います。
納品書を見ると、次回発送日と、初回より高い金額が書かれています。
スマートフォンを見せてもらうと、注文完了メールのほかに、見覚えのない動画サービスや通信オプションの請求も見つかりました。
「どうして内容を読まずに押したの」
そう言いたくなります。
けれど母は、「一回だけだと思った」「無料だと書いてあった」「途中で分からなくなったけれど、戻れなかった」と繰り返します。
家族の頭には、いくつもの心配が浮かびます。
「次も届くのではないか」
「カード番号を別のサイトにも入力していないか」
「解約期限を過ぎたら、全部払わなければならないのか」
「最近、契約内容を理解できなくなっているのではないか」
この場面で急いで親のスマートフォンを取り上げても、すでに成立した契約は消えません。
先に必要なのは、何を、いつ、どの画面から、どの支払方法で申し込んだのかを残すことです。
最初の30分は、解約ボタンを探すより証拠を残します
契約画面やメールを消してしまうと、事業者へ説明するときに困ります。
次の情報を、スクリーンショットや写真で残してください。
保存するもの
- 広告や商品ページ
- 注文完了画面
- 注文確認メール・SMS
- 最終確認画面が残っていれば、その全体
- マイページの契約内容
- 解約・返品条件
- 販売事業者名、住所、電話番号
- 商品、外箱、納品書、請求書
- クレジットカードや携帯電話料金の利用明細
- 事業者とのチャット・メール・通話日時
定期購入では、最終確認画面に購入回数、総額、次回発送、解約条件などがどのように表示されていたかが重要になる場合があります。
国民生活センターも、申込み前の最終確認画面を最後まで読み、スクリーンショットで保存するよう案内しています。重要事項が表示されていない、または誤認させる表示だった場合には、申込みを取り消せる可能性があります。
商品をすぐに開封・使用・廃棄せず、外箱や同封書類も残します。ただし、開封済みだから必ず解約できないとは限りません。契約条件と事情を分けて見ます。
次に、何を契約したのかを五つに分けます
「ネット契約」と一括りにすると、使える制度を間違えやすくなります。
| 契約の種類 | よくある例 | 最初に見る場所 |
|---|---|---|
| 一回限りのネット通販 | 衣服、家電、食品、健康器具 | 返品特約、発送状況、受取日 |
| 定期購入・継続課金 | 健康食品、化粧品、動画・音楽サービス | 回数、総額、次回請求日、解約方法 |
| 通信サービス | 光回線、モバイル回線、有料オプション | 契約書面、サービス開始日、初期契約解除の記載 |
| 金融・投資・借入れ | 投資サービス、ローン、暗号資産への送金 | 送金先、金額、相手の登録・実態 |
| 詐欺サイト・不正利用 | 商品が届かない、身に覚えのない請求 | カード明細、サイト情報、送金先、入力した個人情報 |
一つの申込みに見えても、商品、通信契約、端末代、有料オプションが別契約になっていることがあります。
「スマートフォンを解約したから全部終わった」と考えず、契約ごとに事業者名と請求元を記録します。
申込みが本当に完了しているかを確かめます
画面に「登録完了」「料金が発生しました」と表示されても、本当に契約が成立しているとは限りません。
偽の警告画面や、閲覧しただけで料金を請求する表示もあります。
契約の有無を見る材料
- 注文番号や契約番号が発行されている
- 事業者から確認メールが届いている
- マイページに注文・契約履歴がある
- 商品が発送されている
- カードや携帯電話料金へ請求が出ている
- 申込者の氏名、住所、支払方法が登録されている
突然表示された警告画面にある電話番号へ連絡したり、請求された金額を慌てて支払ったりしないでください。
詐欺サイトや不正アクセスが疑われる場合、警察庁はサイバー事案の相談・通報窓口を案内しています。商品が届かない、カード情報を入力した後に不正利用されたといった相談例も掲載されています。
ネット通販には、原則としてクーリング・オフがありません
自宅からネットで注文した商品なら、何でも8日以内に無条件で取り消せると思われがちです。
しかし、インターネット通販などの通信販売には、特定商取引法上のクーリング・オフ制度は原則としてありません。
返品できるかどうかは、販売サイトに表示された返品特約に従うのが基本です。
返品特約が表示されていない場合には、商品を受け取った日を含む8日以内であれば、消費者が送料を負担して返品できる場合があります。
| 通販商品の状態 | 見ること |
|---|---|
| まだ発送されていない | 注文取消し期限とマイページの取消し機能 |
| 発送済み・未受取 | 受取拒否ではなく、事業者の返品手順を先に聞く |
| 受取済み・未開封 | 返品期間、返送料、返送先、連絡方法 |
| 開封・使用済み | 不良品か自己都合か、衛生商品等の返品制限 |
| 返品条件の表示が見当たらない | 受取日を記録し、早めに188へ相談する |
家族が勝手に受取拒否や返送をすると、解約扱いにならず、商品だけが行き違うことがあります。
事業者へ連絡し、返品先、方法、期限を記録してから動きます。
定期購入は、初回価格ではなく総額と次回発送日を見ます
「初回500円」「お試し価格」という表示から、一回限りだと思って申し込むケースがあります。
実際には、複数回の受取りが条件だったり、解約しない限り続いたりすることがあります。
契約画面で拾う項目
- 一回限りか、定期購入か
- 最低購入回数があるか
- 各回の価格
- 支払総額
- 次回発送日と請求日
- 解約申出の期限
- 電話・メール・フォームなど解約方法
- 返送が必要か
- 初回特典を使った場合の条件
通信販売の最終確認画面では、数量、販売価格、支払時期、引渡時期、解約・返品条件などを、注文確定前に容易に確認できる表示が求められています。
重要事項が表示されていない場合や、誤認させる表示によって申込みをした場合には、取消しを主張できる可能性があります。
ただし、「よく読まなかった」という理由だけで、必ず契約を取り消せるわけではありません。
表示の仕方、申込みまでの画面、契約時の本人の状態などを含めて判断するため、証拠を消さずに消費生活センターへ持ち込みます。
解約連絡は、「分からなかった」だけでなく事実を並べます
事業者へ伝える文章例
「○月○日に、本人が一回限りの商品だと思って申し込みました。○月○日に商品が届き、納品書を見て定期購入であることに気づきました」
「申込み時に表示された広告、注文メール、現在の契約画面を保存しています。次回発送の停止と、現在の契約を解約する手続きを教えてください」
「本人は支払総額、継続回数、解約条件を理解していませんでした。最終確認画面でそれらがどのように表示されていたかも提示してください」
「本日の解約申出を記録に残してください。受付番号と担当者名、今後の請求の有無を教えてください」
連絡記録
| 日時 | 連絡方法 | 相手 | 回答 |
|---|---|---|---|
| 電話・メール・フォーム | |||
| 電話・メール・フォーム |
電話がつながらない場合も、発信履歴や電話した日時を残します。
メールや問い合わせフォームは、送信前後の画面を保存してください。
光回線やスマートフォン契約は、通販商品と同じ扱いではありません
親がネット上で光回線、モバイル回線、通信オプションなどを申し込んだ場合は、契約書面を探します。
対象となる電気通信サービスには、契約書面を受け取った日などから8日以内に、事業者の合意なしで通信サービスを解除できる初期契約解除制度があります。
ただし、端末代は対象外となる場合があり、解除までの利用料、工事費、事務手数料などを請求されることがあります。また、サービスによって対象制度や条件が異なります。
契約書面で探す言葉
- 初期契約解除制度
- 確認措置
- 契約書面受領日
- サービス提供開始日
- 解除できる期限
- 解除の申出先
- 端末代・工事費・事務手数料
- 付随する有料オプション
「通信契約は解除できたが、端末の分割代は残った」「無料だと思ったサポートサービスだけ継続していた」ということもあります。
契約書面に記載された事業者へ連絡し、何が解除され、何の支払いが残るのかを一項目ずつ聞いてください。
身に覚えのないカード請求は、契約トラブルと分けて扱います
親自身が申し込んだものの内容を理解していなかった場合と、親がまったく申し込んでいない不正利用では、対応が違います。
| 状態 | 最初の行動 |
|---|---|
| 本人が申し込んだことは覚えている | 事業者へ契約内容と解約条件を照会する |
| 本人も家族も請求元を知らない | カード会社へ利用内容を照会する |
| 偽サイトへカード情報を入力した | カード会社へ連絡し、利用停止・再発行等の対応を聞く |
| 銀行口座から知らない送金がある | 金融機関へ直ちに連絡し、警察への相談も検討する |
| 暗証番号や認証コードを他人へ教えた | カード会社・金融機関へ、その事実も含めて伝える |
カード会社へ連絡するときは、メールやSMSに書かれた番号ではなく、カード裏面や公式アプリなどで確認した窓口を使います。
日本クレジットカード協会も、不審な連絡を受けた場合はカード番号や暗証番号を伝えず、保有するカード会社や警察へ相談するよう注意を促しています。
カードを止めただけでは、事業者との契約が自動的に解約されるとは限りません。
不正利用の申告と、定期購入・サービス契約の解約は、それぞれ必要になることがあります。
親へは、「なぜ押したの」より画面を一緒にたどります
親を責めると、次に同じことが起きても隠される可能性があります。
避けたい言い方
「こんな怪しい広告に、どうしてだまされるの」
「もうスマートフォンを使わないで」
「また契約したの。前にも言ったでしょう」
状況を聞きやすい言い方
「怒るためではなく、次の請求を止めるために、どの画面を見たか一緒にたどりたい」
「一回だけだと思ったのは、どこにそう書いてあったから?」
「無料というのは、商品代、送料、最初の期間のどれだったと思う?」
「電話やメッセージで、急いで押すように言われなかった?」
「ほかにも届く予定の物や、分からない請求はない?」
本人の言葉をそのままメモすると、消費生活センターへ説明しやすくなります。
家族だからといって、本人の契約を無断ですべて解約できるとは限りません
契約者が親本人である場合、事業者から本人確認や本人の意思確認を求められることがあります。
親が内容を理解して話せる状態なら、本人の隣で電話し、途中から家族へ代わってよいか事業者へ尋ねる方法があります。
家族が電話するときの言葉
「契約者本人は隣にいます。本人確認後、契約内容の説明を家族も一緒に聞くことはできますか」
「家族から先に状況を説明し、最後に本人の意思を確認してもらえますか」
「本人が電話で説明するのが難しい場合、委任状など必要な書類を教えてください」
親が契約を続けたいと理解したうえで希望している場合、家族が安い・高いという理由だけで一方的に解約するのは避けます。
親の意思を尊重しながら、支払総額と家計への影響を一緒に見ます。
「高齢だから」「認知症だから」と言うだけで、契約が自動的に無効になるわけではありません
契約時にどの程度内容を理解できていたか、どのような表示や説明があったか、成年後見制度などを利用しているかによって扱いは変わります。
法定後見制度には、本人の判断能力の程度に応じて後見・保佐・補助があり、類型や家庭裁判所が定めた範囲によって、一定の法律行為を取り消せる場合があります。一方、日用品の購入など日常生活に関する行為は、原則として取消しの対象外です。
「物忘れがあるから無効にしてほしい」と事業者へ伝えるだけでは、解決しないことがあります。
契約時の会話、画面表示、本人の生活状況、医療・介護の記録などをそろえ、消費生活センターや必要に応じて法律相談へつなげます。
同じような申込みが続くなら、契約だけでなく暮らしの変化を見ます
今回だけ操作を間違えたのか、最近ほかの場面でも理解しにくさが増えているのかを分けます。
家族が気づきたい変化
- 同じ商品を何度も注文する
- 届いた商品を誰が買ったか覚えていない
- 毎月の請求額を理解できない
- 「無料」と「初月無料」の違いが分かりにくくなった
- 知らない人へ認証コードや暗証番号を伝える
- 解約した契約へ何度も申し込む
- 請求書や督促状を隠す
- 以前できたスマートフォン操作で混乱する
これらがあるからといって、すぐ認知症と決めつけることはできません。
疲労、視力や聴力の低下、薬の影響、画面の複雑さなども関係することがあります。
日常生活でも変化が続く場合は、かかりつけ医や地域包括支援センターへ、「ネット契約を繰り返している」という具体的な出来事を伝えてください。
厚生労働省は、認知症が心配なときの相談先として、地域包括支援センター、かかりつけ医、認知症疾患医療センターなどを案内しています。地域包括支援センターでは、必要に応じて医療・介護・福祉の関係機関へつなぐ支援を行います。
再発防止は、スマートフォンを取り上げる前に購入までの道を短くします
親と合意してできること
- カード会社の利用通知を設定する
- 携帯電話のまとめ払いに上限を設定する
- 通販サイトに保存されたカード情報を減らす
- 不要な通販アプリや有料サービスを整理する
- ブラウザのブックマークに、よく使う正規サイトだけを登録する
- 購入前に「総額・回数・次回請求」を見るメモを端末のそばへ置く
- 一定額以上は、確定前に家族へ画面を見せる
- 週に一度、注文メールと利用明細を一緒に見る
購入前の三行メモ
| 見ること | 書く内容 |
|---|---|
| 今回払う金額 | 円 |
| 次にも届くか | 一回限り・定期・不明 |
| やめる方法 | 電話・フォーム・メール・不明 |
パスワードやカードを家族が無断で管理するのではなく、本人が納得できる範囲を話します。
すべてを禁止すると、親が別の端末や電話から家族に隠れて申し込むこともあります。
「一人で買わない」ではなく、「分からない画面が出たら、確定する前に止める」という約束の方が続けやすくなります。
消費生活センターへは、解約できるか決めてから電話しなくてよい
消費者ホットライン188へ電話すると、郵便番号などを基に、地域の消費生活センターや相談窓口が案内されます。相談自体は無料ですが、通話料金はかかります。
電話前にそろえるメモ
- 契約者の氏名・年齢
- 申込日と商品到着日
- 商品・サービス名
- 販売事業者名
- 初回金額と今後の総額
- 支払方法
- 次回発送・請求日
- 事業者へ連絡した日時と回答
- 本人が理解していた内容
- 広告・注文画面・メールの有無
188へ伝える言葉
「高齢の母が、一回限りだと思って健康食品をネット注文しました。実際には定期購入で、次回発送日は○月○日です」
「申込画面とメールは保存しています。解約条件と取消しの可能性を一緒に見てほしいです」
「母だけでは説明が難しいため、家族から状況を説明しました。本人同席や委任が必要かも教えてください」
解約期限や次回発送日が近い場合は、その日付を最初に伝えます。
送金済みで相手と連絡が取れないなら、契約解除だけの問題ではありません
次の状態では、消費生活相談に加えて、カード会社、金融機関、警察への連絡も考えます。
- 代金を振り込んだのに商品が届かない
- 販売事業者の住所や電話番号が実在しない
- 返金のためと言われ、さらに送金を求められた
- 遠隔操作アプリを入れさせられた
- カード番号、暗証番号、認証コードを伝えた
- 親が覚えていない送金・決済がある
- 警察や公的機関を名乗る相手から支払いを求められた
警察庁は、サイバー事案について都道府県警察へのオンライン相談・通報窓口を設けています。緊急の被害は110番、緊急ではない警察相談は#9110も案内されています。
返金を約束する相手から「手続き費用」「保証金」「税金」などを追加で求められても、すぐに支払わないでください。
今日するのは、親のスマートフォンを取り上げることではありません
今日は、届いた商品、申込メール、利用明細を一か所へ集めます。
そして、次の六つだけを書いてください。
| 今日書くこと | 内容 |
|---|---|
| 何を申し込んだか | |
| 申込日 | |
| 初回と今後の金額 | |
| 支払方法 | |
| 次回発送・請求日 | |
| 事業者の連絡先 |
次回の発送や請求が近ければ、今日中に事業者へ解約の意思を伝え、記録を残します。
表示が分かりにくい、事業者と話がかみ合わない、本人の理解状態をどう伝えればよいか迷うなら、188へ電話します。
親がネット契約を理解できなかったことは、家族に迷惑をかけようとした結果ではありません。
「一回だけ」「無料」「残りわずか」という表示と、小さな文字の契約条件を同時に読み取るのは、年齢にかかわらず難しいことがあります。
責めるより、契約を一つずつ分ける。
画面やメールを残す。
次の請求を止める期限から動く。
今日六つを書き出せれば、「何を契約したのかも分からない」という状態から、どこへ何を伝えるかが見える状態へ進めます。
出典・確認先メモ
- 消費者庁「通信販売における最終確認画面」:注文確定前に表示すべき金額、数量、支払時期、解約条件と、誤認表示による取消しの可能性に関する確認先。
- 国民生活センター「通信販売はクーリング・オフできません」:ネット通販の返品特約と、特約がない場合の返品に関する確認先。
- 国民生活センター「定期購入の最終確認画面」:購入回数、総額、解約条件、画面保存に関する確認先。
- 消費者庁「消費者ホットライン188」:地域の消費生活センター・相談窓口への案内に関する確認先。
- 東京都消費生活総合センター「初期契約解除制度・確認措置」:光回線や携帯電話等の通信サービスを一定期間内に解除する制度に関する確認先。
- 警察庁「サイバー事案に関する相談窓口」:詐欺サイト、不正利用、商品未着等の相談・通報に関する確認先。
- 法務省「法定後見制度」:後見・保佐・補助と、一定の法律行為の取消しに関する確認先。
- 厚生労働省「認知症に関する相談先」:地域包括支援センター、かかりつけ医、認知症疾患医療センター等に関する確認先。


















