「もう固定電話はいらないのでは」と思っても、すぐ抜いてよいかは迷います
親の家に行くたび、固定電話が鳴る。
出てみると、知らない業者の勧誘だったり、無言電話だったり、役所や銀行を名乗る怪しい電話だったりする。本人は「昔から使っている番号だから」と言うけれど、家族としては見ていて不安になります。
「スマホがあるなら、固定電話はもういらないのでは」
「でも、親戚や病院は固定電話にかけてくるかもしれない」
「解約したあとに、緊急連絡や見守り機器が使えなくなったら困る」
「親が納得しないままやめると、家族への不信感が残りそう」
高齢の親の固定電話をやめるかどうかは、料金だけで決めにくい問題です。
固定電話は、迷惑電話の入口になることがあります。一方で、長年の連絡先であり、親戚、近所、病院、介護事業所、見守り機器、緊急通報装置とつながっていることもあります。
だから、いきなり解約する前に、「残す理由」と「やめたい理由」を分けて見ます。
固定電話を残すか、使い方を変えるか、休止や解約へ進むか。親本人の生活と家族の安心の両方を見ながら、順番に決めていきましょう。
まず「固定電話が今、何の役割を持っているか」を書き出します
固定電話をやめるか迷うとき、最初に見るのは月額料金ではありません。
その電話番号が、親の生活の中で何につながっているかです。
| 確認すること | 具体例 | やめる前に必要な対応 |
|---|---|---|
| 家族・親戚との連絡 | 子ども、兄弟姉妹、親戚、近所の人 | スマホ番号へ連絡先を変えてもらう |
| 医療・介護の連絡 | 病院、薬局、ケアマネジャー、デイサービス、訪問看護 | 登録電話番号の変更を伝える |
| 公共料金・金融機関 | 電気、ガス、水道、銀行、保険、カード会社 | 契約者情報や緊急連絡先を確認する |
| 地域とのつながり | 自治会、民生委員、近所の見守り、配食サービス | 必要な相手だけ新しい連絡先を知らせる |
| 緊急通報・見守り機器 | 緊急通報装置、警備サービス、見守りセンサー、FAX | 固定電話回線が必要か事業者へ確認する |
| 本人の安心感 | スマホが苦手、固定電話なら出られる、昔の番号に愛着がある | 本人が使える代替手段を先に練習する |
「もう誰も固定電話にはかけてこない」と家族が思っていても、本人にとっては大事な連絡先が残っていることがあります。
反対に、着信履歴を見てみると、ほとんどが勧誘や不審電話で、必要な連絡はスマホに来ている場合もあります。
まず1〜2週間だけでよいので、固定電話にかかってきた相手をメモします。
- 家族・親戚からの電話
- 病院や介護関係の電話
- 自治会や近所の人からの電話
- 勧誘・営業・不審な電話
- 無言電話や番号非通知
必要な電話より迷惑電話が多いのか。固定電話でなければ困る連絡があるのか。ここが見えてから、次の判断に進みます。
解約前に、固定電話につながっている機器を確認します
固定電話は、受話器だけで使っているとは限りません。
家の中の別の機器が、固定電話回線に頼っている場合があります。ここを見落として解約すると、あとから「通報装置が使えない」「FAXが使えない」「警備会社との通信が止まった」と気づくことがあります。
| つながっている可能性があるもの | 確認すること | 問い合わせ先 |
|---|---|---|
| 緊急通報装置 | 固定電話回線が必要か、スマホや別回線で代替できるか | 自治体、設置業者、地域包括支援センター |
| 警備・見守りサービス | 通信方式、停電時の動作、解約時の手続き | 警備会社、見守りサービス会社 |
| FAX | 病院、仕事、自治会などでまだ使っていないか | 利用先、電話会社 |
| インターネット回線 | 電話とセット契約になっていないか | 通信会社、プロバイダ |
| クレジット端末・事業用機器 | 自宅で事業をしている場合、通信に使っていないか | 機器提供会社、決済会社 |
| ドアホン・ホームテレホン | 電話機と連動している設備がないか | 住宅設備会社、管理会社 |
特に、自治体の緊急通報装置や民間の見守りサービスを使っている場合は、固定電話をやめる前に必ず確認してください。
スマホだけで代替できるサービスもありますが、本人の操作、電池切れ、電波状況、停電時の対応まで見る必要があります。
「固定電話をやめるかどうか」と「見守り手段をどうするか」は、同時に考えるテーマです。
迷惑電話が理由なら、解約の前に“出ない仕組み”を試せます
固定電話をやめたい理由が、迷惑電話や詐欺への不安なら、解約だけが選択肢ではありません。
本人が固定電話を残したがっている場合は、まず「知らない相手と直接話さない仕組み」に変える方法があります。
| 対策 | できること | 向いている場合 |
|---|---|---|
| 常時留守番電話 | 知らない番号には出ず、録音を聞いてから折り返す | 親が鳴るとすぐ出てしまう場合 |
| ナンバー表示 | 誰からの電話か見てから出る | 家族や病院など必要な番号を見分けたい場合 |
| 非通知拒否・着信拒否 | 非通知や特定番号からの着信を減らす | 同じ番号や非通知が繰り返し来る場合 |
| 防犯機能付き電話 | 警告メッセージ、自動録音、迷惑電話対策機能を使える | 詐欺や勧誘への不安が強い場合 |
| 電話番号変更 | 現在の番号への迷惑電話を一度切る | 長年の番号に不審電話が集中している場合 |
| 家族への転送・共有 | 着信の状況を家族が把握しやすくする | 遠方の家族が見守りたい場合 |
警察庁は、特殊詐欺対策として、電話が鳴る前に警告メッセージを流す機能や、自動通話録音機能を備えた防犯機能付き電話を紹介しています。
また、NTT東日本・NTT西日本では、70歳以上の契約者、または70歳以上の方と同居する契約者などを対象に、条件付きでナンバー・ディスプレイやナンバー・リクエストの無償化を案内しています。対象回線や申し込み条件は契約状況によって変わるため、契約先へ確認してください。
迷惑電話への不安だけで固定電話をやめるか迷うなら、まず1か月だけ留守番電話運用に変えてみる方法もあります。
それで必要な電話がほとんど困らず、迷惑電話だけが減るなら、解約へ進む判断もしやすくなります。
スマホに切り替えるなら、本人が“毎日使えるか”を見ます
家族から見ると、固定電話をやめてスマホに一本化した方が簡単に見えることがあります。
でも、親本人にとってスマホが「持っているだけ」の状態なら、固定電話をやめたあとに困るかもしれません。
| 確認すること | 本人ができるか | できない場合の工夫 |
|---|---|---|
| 電話に出る | 着信音に気づき、画面操作で応答できるか | 音量を上げる、着信画面を練習する、簡単操作の機種にする |
| 電話をかける | 家族、病院、タクシーなどへ自分で発信できるか | よく使う番号を短縮登録する |
| 充電する | 毎日充電できるか、電池残量を見られるか | 充電場所を固定し、就寝前の習慣にする |
| 持ち歩く | 外出時に忘れず持てるか | バッグの定位置を作る、首かけストラップを使う |
| 音量・マナーモード | 気づかない設定になっていないか | 家族が設定を確認する |
| 緊急時の操作 | 110番、119番、家族への発信ができるか | 紙のメモ、ホーム画面、緊急連絡先を整える |
スマホに慣れていない親御さんの場合、最初から固定電話を解約するのではなく、数週間から1か月ほどスマホ中心の生活を試す方法があります。
その間、家族や病院からはできるだけスマホへかけてもらい、本人が問題なく出られるかを見ます。
スマホを使えるかどうかは、契約しているかではなく、日常の中で迷わず使えるかで判断してください。
残す・休止・解約の違いを、家族で同じ表にして考えます
固定電話の見直しには、いくつかの選択肢があります。
「残す」か「やめる」かの二択ではなく、使い方を変える、番号を変える、利用休止を検討する、完全に解約するなど、段階があります。
| 選択肢 | 向いている状況 | 注意点 |
|---|---|---|
| そのまま残す | 本人が主な連絡手段として使っており、必要な電話が多い | 迷惑電話対策をしないとリスクが残ります |
| 留守電中心で残す | 必要な連絡はあるが、知らない電話には出ないようにしたい | 本人が留守電を待てるよう練習が必要です |
| 防犯機能付き電話に替える | 詐欺・勧誘電話への不安が強い | 購入費、設定、本人が使えるかを確認します |
| 番号変更する | 不審電話や勧誘が現在の番号に集中している | 必要な相手への連絡変更が必要です |
| 利用休止を検討する | 将来また使う可能性があり、すぐ完全解約しにくい | 対象サービス、費用、期間、番号の扱いは電話会社へ確認します |
| 解約する | 必要な連絡がほぼなく、スマホで代替でき、機器連携もない | 番号が使えなくなる、再契約時の条件が変わる場合があります |
NTT東日本では、電話の休止・解約手続きについて公式ページで案内しています。加入電話の新規販売終了やサービス終了の案内も出ているため、利用休止や解約の扱いは最新情報を確認してください。
また、固定電話のIP網移行は完了しているとNTT東日本が案内していますが、利用者側の契約や機器、サービスの扱いは家庭ごとに異なります。
「昔の固定電話」と思っていても、実際には光回線やIP電話、ケーブルテレビ電話などの場合があります。請求書に書かれた契約先とサービス名を見てから問い合わせましょう。
親が固定電話をやめたがらないときは、理由を先に聞きます
家族は「危ないからやめよう」と思っていても、親本人は強く抵抗することがあります。
そのとき、「迷惑電話ばかりだから解約するよ」と押し切ると、親は生活の一部を奪われたように感じるかもしれません。
親が固定電話を残したがる理由には、いくつかあります。
| 親の言葉 | 背景にあるかもしれない気持ち | 家族の返し方 |
|---|---|---|
| 「昔からこの番号だから」 | 友人や親戚とのつながりを失いたくない | 「必要な人にはスマホ番号を一緒に知らせよう」 |
| 「スマホは苦手」 | 画面操作に自信がない | 「まず家族からの電話だけスマホで出る練習をしよう」 |
| 「病院からかかってくるかもしれない」 | 大事な連絡を逃すのが怖い | 「病院に登録番号を確認して、スマホにも変えられるか聞こう」 |
| 「電話がないと寂しい」 | 社会とのつながりが減る不安 | 「必要な連絡は残しつつ、知らない電話には出ない形にしよう」 |
| 「勝手に決めないで」 | 自分の生活を家族に支配される不安 | 「すぐ解約ではなく、1か月だけ留守電で試そう」 |
本人が納得していないまま解約すると、家族への不信感が残ることがあります。
安全のために急ぐ必要がある場合もありますが、まずは「やめる」より「出ない使い方に変える」ことから始めると、本人の抵抗が少ない場合があります。
解約するなら、連絡先変更と支払い確認を先に済ませます
固定電話を解約すると決めたら、手続き前にやることがあります。
先に電話を止めてしまうと、あとから連絡先変更ができていない相手に気づいたり、本人確認で固定電話番号が必要になったりすることがあります。
| 解約前にすること | 確認する内容 | メモ |
|---|---|---|
| 必要な相手へ番号変更を伝える | 家族、親戚、病院、薬局、介護事業所、自治会 | スマホ番号や家族の緊急連絡先を伝える |
| 契約先の登録電話番号を変更する | 銀行、保険、公共料金、通販、役所関係 | 本人確認に使っている番号がないか見る |
| 見守り機器や警備の通信を確認する | 固定電話回線が必要か | 解約前に事業者へ確認する |
| 請求内容を確認する | 基本料金、オプション、工事費、解約費用、機器返却 | 最終請求月も確認する |
| 電話機・周辺機器を確認する | レンタル機器、モデム、アダプタ、ルーター | 返却が必要なものを確認する |
| スマホの練習をする | 発信、着信、充電、緊急連絡 | 固定電話を止める前に数週間試す |
家族が代理で問い合わせる場合、本人確認や委任が必要になることがあります。
契約者本人が近くにいる状態で電話する、委任状が必要か事前に聞く、請求書やお客様番号を手元に置くなど、準備してから進めると出直しを減らせます。
固定電話をやめた後の「困った」を減らすためのメモを作ります
固定電話をやめると、家の中の連絡の流れが変わります。
スマホをどこに置くか。充電はいつするか。夜中の緊急時に誰へかけるか。病院や介護事業所からの電話に気づけるか。
こうした細かいことを決めておくと、解約後の不安を減らせます。
| 決めておくこと | 具体例 | 家族ができる手伝い |
|---|---|---|
| スマホの置き場所 | 食卓、枕元、玄関横など | 充電器を固定し、見やすい場所に置く |
| 緊急連絡先 | 子ども、近所の人、119、かかりつけ医 | 紙に大きく書き、スマホにも登録する |
| よく使う番号 | 病院、薬局、タクシー、ケアマネジャー | 短縮登録やお気に入り登録をする |
| 着信音 | 聞こえやすい音量、バイブ設定 | 家の中で鳴らして確認する |
| 充電の習慣 | 夜寝る前、朝食後など | カレンダーやメモで習慣にする |
| 家族への定期連絡 | 週1回の電話、到着連絡、体調確認 | 固定電話がなくてもつながる安心を作る |
固定電話をやめることは、電話機を一つ減らすだけではありません。
本人の連絡習慣を変えることです。
だから、解約日を決める前に、スマホ中心の暮らしを少し試しておくと安心です。
家族が勝手に解約したくなるときほど、一度立ち止まります
迷惑電話が続くと、家族は怖くなります。
「また詐欺電話に出るかもしれない」
「本人は危機感がない」
「固定電話さえなければ安心なのに」
そう思うと、家族が先に手続きを進めたくなることがあります。
ただ、本人にとって固定電話は、長年の生活の一部です。勝手に解約すると、本人の安心感や自尊心を傷つけることがあります。
| 家族の不安 | すぐ解約する前にできること | 急いで相談したい場合 |
|---|---|---|
| 詐欺電話が多い | 留守電、防犯機能付き電話、ナンバー表示、着信拒否を試す | 不審電話が続くなら警察相談専用電話#9110や消費生活センターへ |
| 親が個人情報を話してしまう | 電話機の横に「家族に確認します」と貼る | 現金やカードを渡す話が出ているなら110番 |
| 本人がスマホを使えない | 家族からスマホへかける練習をする | 認知機能や見守りが心配なら地域包括支援センターへ |
| 料金がもったいない | 契約内容、オプション、利用頻度を確認する | 請求内容が分からない場合は電話会社へ |
| 家族で意見が割れる | 固定電話の役割と迷惑電話の件数を表にする | 介護や見守りの問題として第三者を入れる |
安全面で急ぐ必要がある場合は、すぐに対策が必要です。
ただし、解約だけが安全対策ではありません。本人の納得、代替手段、見守り機器、連絡先変更を整えながら進める方が、後の混乱を減らせます。
今日できる一歩は、解約の電話ではなく「必要な着信の確認」です
固定電話をやめるか迷うと、気持ちは二つに揺れます。
迷惑電話や料金を考えると、もういらないように思う。けれど、親の安心や緊急時を考えると、すぐには決めきれない。
その迷いは自然です。
今日やるなら、解約の電話をかける前に、次の5つだけ確認してください。
- この1〜2週間で、必要な電話は誰から来ているか
- 病院、薬局、介護事業所、親戚の連絡先変更はできるか
- 緊急通報装置、警備、見守り機器、FAXが固定電話に依存していないか
- 本人がスマホで着信・発信・充電を毎日できるか
- 迷惑電話対策として、留守電や防犯機能付き電話を試したか
固定電話を残すことも、やめることも、どちらが正解とは限りません。
大事なのは、親本人が困らず、家族も必要な連絡を取れ、詐欺や勧誘から守れる形にすることです。
まずは、固定電話が今どんな役割を持っているのかを一枚に書き出してみてください。
そのうえで、残すなら出ない仕組みに変える。やめるなら、スマホと連絡先変更を先に整える。
急いで結論を出さなくても大丈夫です。電話機を外す前に、親の生活の中でその電話が担っていた役割を、一つずつ別の形へ移していきましょう。
出典・確認先メモ
- NTT東日本「電話の休止・解約」:加入電話の休止・解約、対象サービス、手続き確認の参考。
- NTT東日本「固定電話のIP網移行」:固定電話のIP網移行に関する公式案内の確認先。
- 警察庁・SOS47「防犯機能付き電話の導入」:特殊詐欺対策としての自動録音・警告機能付き電話の確認先。
- 消費者庁「消費者ホットライン188」:電話勧誘や契約トラブルを相談する際の確認先。
- 契約中の電話会社・警備会社・見守りサービス・自治体窓口:固定電話解約による機器や緊急連絡への影響を確認する一次情報。


















