申込書の「連帯保証人」欄で、手が止まった
長く住んだアパートの建て替えが決まり、半年後までに退去することになりました。
不動産会社で申込書を渡され、「連帯保証人のお名前をお願いします」と言われます。
頼めるきょうだいはすでに亡くなり、子どもはいません。親戚とは何年も連絡を取っておらず、知人に家賃の責任を負ってほしいとは言えません。
年金は毎月入ります。家賃を滞納したこともありません。
それでも、保証人がいないというだけで、新しい部屋を借りられないのではないか。退去日が近づくほど、その心配が大きくなります。
連帯保証人を頼める人がいないことと、家賃を払えないことは同じではありません。
ただし、貸主や管理会社が心配しているのは、家賃だけではない場合があります。緊急時に誰へ連絡するのか、入居者が亡くなった後に家財をどうするのか。高齢の一人暮らしでは、複数の問題が「保証人」という一つの言葉にまとめられやすいのです。
「保証人がいない」を四つの役割に分けます
不動産会社から保証人を求められたときは、誰か一人にすべてを引き受けてもらう前提で考えなくて構いません。
求められている役割を分けると、それぞれ別の方法で補える可能性があります。
| 貸主側が心配していること | 考えられる対応 |
|---|---|
| 家賃や原状回復費を払ってもらえない | 家賃債務保証会社を利用する |
| 急病や事故のときに連絡する相手がいない | 緊急連絡先、見守りサービス、居住支援法人を検討する |
| 入居者が亡くなった後、家財が残る | 残置物処理に関する契約や死後事務の支援を検討する |
| 生活状態が悪化しても気づけない | 見守り付き住宅、居住サポート住宅、福祉との連携を検討する |
連帯保証人、家賃債務保証会社、緊急連絡先は同じものではありません。
連帯保証人は、契約内容に基づき、借主が支払わない家賃などを負担する立場です。家賃債務保証会社は、保証契約の範囲で貸主へ支払い、その後、借主へ返済を求めます。
一方、緊急連絡先は、急病や事故などの際に連絡を受ける人として扱われるのが一般的です。緊急連絡先として名前を書いただけで、当然に家賃を負担する連帯保証人になるわけではありません。
ただし、書面に「連帯保証人」「保証委託契約」などと記載されていれば、責任が生じます。署名する欄の名称と契約内容を読む必要があります。
不動産会社へは「保証人がいません」だけで終わらせず、「家賃保証・緊急連絡・死後の対応のうち、何が入居条件ですか」と尋ねると、代替方法を探しやすくなります。
物件を見に行く前に、三つの条件を聞いてください
気に入った部屋を内覧した後で「親族の保証人が必要です」と分かると、時間も気力も使ってしまいます。
問い合わせの段階で、次のように伝えてください。
「年金収入で一人暮らしを予定しています。親族の連帯保証人はいません。家賃保証会社だけで申し込めるか、親族以外の緊急連絡先でもよいか、居住支援法人を利用できるかを先に教えてください」
あわせて、次の三点を尋ねます。
- 連帯保証人と保証会社の両方が必要か
- 緊急連絡先は親族に限られるか
- 高齢者向けの見守りや居住支援を利用した入居が可能か
「保証会社利用可」と書かれた物件でも、緊急連絡先を別に求められる場合があります。
反対に、親族の保証人がいなくても、保証会社と見守りサービスを組み合わせれば申し込める物件もあります。
同じ不動産会社でも、物件ごとに貸主や保証会社の条件は異なります。一件断られたことを、地域のすべての賃貸住宅で断られるという意味に受け取らないでください。
家賃債務保証会社を使えば、必ず入居できるわけではありません
家賃債務保証会社は、借主が家賃などを支払えない場合に、契約範囲内で貸主へ立替払いをする事業者です。
親族へ連帯保証人を頼まなくても申し込めるため、高齢者の賃貸でも利用されています。
ただし、保証会社にも審査があります。
年金など継続した収入、家賃との釣り合い、過去の滞納、本人確認、緊急連絡先などが見られることがあります。審査基準は会社によって異なり、審査内容のすべてが開示されるとは限りません。
契約前には、次の費用と範囲を見てください。
- 契約時の初回保証料
- 毎年または毎月の更新・継続保証料
- 口座振替などの事務手数料
- 保証対象となる家賃、共益費、原状回復費などの範囲
- 家賃を遅れて支払った場合の手数料や連絡方法
- 退去時まで保証契約を解約できるか
保証会社が家賃を立て替えても、借主の支払いが免除されるわけではありません。後日、保証会社へ支払う必要があります。
国土交通省には、一定の要件を満たす事業者を公表する家賃債務保証業者の登録制度があります。ただし、この登録は任意であり、登録会社なら必ず審査へ通る、すべての契約条件が同じという意味ではありません。
緊急連絡先を頼める人がいない場合も、先に正直に伝えます
家賃保証会社を利用できても、「緊急連絡先だけは書いてください」と言われることがあります。
遠い親戚の名前を無断で書いたり、何年も連絡していない知人を記載したりするのは避けてください。実際に急病や事故が起きたとき、連絡がつかない可能性があります。
頼めそうな知人がいる場合は、責任の範囲を説明してから聞きます。
「家賃の保証人ではなく、急病などのときに連絡を受ける緊急連絡先を頼めないか。不動産会社から連絡があった場合の役割を、契約前に一緒に確かめたい」
親族以外を認めるかどうかは、貸主や管理会社によって異なります。
頼める相手が一人もいない場合は、そのことを隠さず、居住支援法人や見守りサービスを利用した代替が可能か尋ねてください。
居住支援法人は、保証人を紹介するだけの窓口ではありません
居住支援法人は、高齢者や低額所得者など、賃貸住宅を確保しにくい人の支援を行う法人として、都道府県から指定を受けた団体です。
法人によって、次のような支援を扱っています。
- 本人の収入や身体状態に合う賃貸住宅の情報提供
- 不動産会社への同行や入居条件の調整
- 家賃債務保証
- 緊急連絡先や見守りに関する支援
- 福祉サービスや生活支援へのつなぎ
- 死亡後の残置物処理に関する支援
すべての居住支援法人が、すべての業務を行っているわけではありません。対応地域、対象者、費用、家賃保証の有無も異なります。
連絡するときは、次のように現在の条件を伝えてください。
「72歳で一人暮らしです。年金は月〇円、家賃の上限は〇円です。連帯保証人と緊急連絡先を頼める親族がおらず、〇月までに転居する必要があります。物件探しと、保証・見守りについて利用できる支援を教えてください」
まだ転居を決めていなくても構いません。
どのような支援が利用できるか尋ねたからといって、その場で物件や有料サービスを契約することにはなりません。
セーフティネット住宅は「無条件で入れる住宅」ではありません
高齢者は、住宅セーフティネット制度で「住宅確保要配慮者」に含まれます。
セーフティネット登録住宅は、高齢者や低額所得者などの入居を拒まない住宅として登録された賃貸住宅です。
ただし、登録住宅であっても、家賃を継続して支払えるか、保証会社の条件を満たすか、空室があるかといった個別の審査はあります。
「高齢者を受け入れる物件として登録されている」ことと、「申し込めば誰でも必ず入居できる」ことは別です。
地域や所得などの条件によっては、家賃や家賃債務保証料、住み替えに関する補助を実施している自治体もあります。全国一律ではないため、物件がある自治体へ制度の有無を尋ねてください。
見守りも必要なら、居住サポート住宅を探す方法があります
一人で暮らせるものの、倒れたときに誰にも気づかれないことや、体調が悪化した後の生活が心配な方もいます。
2025年10月から始まった居住サポート住宅は、大家と居住支援法人などが連携し、次の支援を行う住宅です。
- 日常的な安否確認
- 訪問などによる見守り
- 生活や心身の状態が不安定になったときの福祉サービスへのつなぎ
見守りがあることは、家族がいない人にとって一つの安心材料になります。
一方で、介護施設と同じように常時職員がいるとは限りません。夜間対応、緊急通報、訪問頻度、生活支援の料金は住宅ごとに確かめる必要があります。
UR賃貸住宅は保証人不要ですが、収入などの条件があります
UR賃貸住宅は、連帯保証人や家賃保証会社を必要としません。保証人を頼める人がいない方にとって、具体的な候補になります。
ただし、申込者には一定の収入基準があります。年金も、継続性があり証明できる収入として扱われる場合があります。
収入が基準に届かないときでも、家賃などの一時払い制度、一定額以上の貯蓄を使う基準、親族による家賃補給などを利用できる場合があります。
物件がある地域は限られ、希望地域に空室がないこともあります。保証人が不要という一点だけで決めず、家賃、階段、病院や買い物への距離も見てください。
公営住宅は、保証人の取扱いと募集時期が自治体ごとに違います
都道府県営住宅や市区町村営住宅などの公営住宅も、所得などの条件を満たす方にとって選択肢になります。
保証人を不要としている自治体、一定の事情がある場合に保証人なしで申し込める自治体、緊急連絡先を求める自治体など、取扱いは一律ではありません。
募集時期、入居資格、抽選、優先入居の扱いも地域によって異なります。
自治体へは、
「高齢の単身世帯で、連帯保証人と緊急連絡先を頼める親族がいません。保証人がいない場合の申込方法と、次回の募集時期を教えてください」
と尋ねてください。
公営住宅は、申し込んですぐ入居できるとは限りません。退去期限が迫っている場合は、公営住宅だけに絞らず、民間賃貸や居住支援法人への依頼も並行して進めます。
身元保証サービスは、賃貸保証に必要な部分だけを見ます
保証人がいない高齢者向けに、身元保証、日常生活支援、死後事務などをまとめて提供する民間サービスがあります。
役立つ場合はありますが、賃貸住宅の緊急連絡先が必要なだけなのに、入院保証、買い物支援、葬儀、財産管理まで含む長期契約を結ぶ必要があるとは限りません。
契約前には、次の点を見てください。
- 賃貸住宅の保証や緊急連絡先として、実際に利用できるか
- 契約時、毎月、利用時にかかる費用
- 預けたお金を誰が、どのように管理するか
- 提供されない支援は何か
- 解約方法と返金条件
- 事業者が廃業した場合の引継ぎ
- 死後事務の範囲と追加費用
「身寄りがないなら今すぐ必要です」と急がされても、その場で署名や送金をしないでください。
契約書を持ち帰り、賃貸契約に必要な支援と、それ以外の将来支援を分けます。内容や料金に迷うときは、消費生活センターや地域包括支援センターへ契約書を見せて確かめる方法があります。
入居審査の前に、家賃を払える根拠をそろえます
保証人がいない場合、入居後も家賃を支払えることを、書類で伝えられるようにします。
- 年金額改定通知書や年金振込通知書
- 所得や預貯金を証明できる書類
- 本人確認書類
- 現在の賃貸住宅で家賃を支払ってきた記録
- 毎月無理なく払える家賃の上限
- 利用中の見守りや介護サービス
- 入居を希望する日と現在の退去期限
家賃の上限は、募集家賃だけで決めません。
共益費、保証料、火災保険、見守り料金、更新費用、引っ越し後の通院交通費まで含めて考えます。
高い家賃の物件へ申し込み続けて審査に落ちる場合は、年齢だけが理由とは限りません。毎月の収入に対して家賃が高すぎないか、必要な支援費を払っても生活費が残るかを見直してください。
退去日や住まいを失う危険が迫っている場合は、物件探しだけにしません
現在の住まいから退去する期限が近い、家賃滞納で契約解除の話が出ている、泊まる場所がなくなる可能性がある。
このような状態では、空室情報を一人で探し続けるだけでは間に合わないことがあります。
退去通知、家賃の請求書、収入が分かる物を持ち、市区町村の住宅担当、福祉担当、生活困窮者自立相談支援機関へ、期限を具体的に伝えてください。
「〇月〇日までに退去する必要があります。保証人がおらず、年金は月〇円です。このままでは住まいを失う可能性があります。利用できる住宅支援と、今日から行う手続きを教えてください」
収入や資産などの条件によっては、住居に関する給付や生活支援の対象になる場合があります。
窓口へ連絡したからといって、直ちに施設入所や生活保護が決まるわけではありません。現在の期限と生活状況を伝え、使える方法を確かめるための連絡です。
今日は物件を探す前に、「保証人なしで使える条件」を一度だけ聞きます
検索画面で「高齢者可」の物件を何十件見ても、保証条件が分からなければ申込みへ進めません。
今日は、希望地域の不動産会社か居住支援法人へ、次の一文を伝えてください。
「高齢の単身者で、親族の連帯保証人と緊急連絡先がいません。家賃債務保証会社、居住支援法人、見守りサービスを利用して申し込める住宅を探しています。必要な費用と書類を先に教えてください」
この電話で、住む部屋を決める必要はありません。
保証会社だけでよいのか。緊急連絡先の代替がいるのか。見守りまで必要なのか。
求められる役割が分かれば、「保証人がいないから借りられない」という大きな壁を、探せる条件へ変えられます。


















