「今すぐ葬儀社を決めてください」と言われても、頭はすぐに切り替わりません
病院や施設から連絡を受け、駆けつけたばかりなのに、「お迎えを頼む葬儀社は決まっていますか」と聞かれる。
スマートフォンで検索すると、「家族葬○万円」「追加料金なし」「地域最安値」といった言葉が並びます。しかし、どこまで含まれた金額なのか分からない。ご家族へ電話しても、「任せるよ」「近いところでいいんじゃない」と言われ、結局一人で画面を見続けることもあります。
早く故人を落ち着けられる場所へお連れしたい。その気持ちは当然です。
一方で、急いで依頼した後に100万円を超える見積書を見せられ、「もう搬送してもらったのだから、ここで断れない」と感じてしまうことがあります。
国民生活センターは2026年6月、葬儀サービスに関する相談が年間900件前後で推移し、高価格・料金に関する相談の割合が増加傾向にあると公表しました。広告の金額と実際の見積額が大きく異なった事例も報告されています。
葬儀社選びで最初にすることは、最安値を探し続けることではありません。
同じ条件を伝え、最終的にいくらになりそうかを2〜3社へ聞くことです。
見積もりは「3社が正解」ではなく、時間に応じて数を変えます
葬儀社の見積もりを取る会社数に、法律で決められた正解はありません。多く取りすぎると、説明を聞くだけで疲れ、かえって判断できなくなります。
現実的には、次のように考えるとよいでしょう。
| 置かれている状況 | 見積もりの目安 | 進め方 |
|---|---|---|
| 親御さんがご健在で、事前に準備している | 3社程度 | 対面またはオンラインで内容を聞き、会館、対応、費用を比較する |
| 入院中などで、近いうちに必要になる可能性がある | 2〜3社 | 搬送先、安置場所、希望する葬儀形式を伝え、概算見積書を受け取る |
| 亡くなった直後で、すぐ搬送が必要 | 最低2社を目安 | 電話で同じ質問をし、搬送・安置・葬儀総額の見込みを短時間で比べる |
| 精神的・身体的に比較が難しい | 1社でも可 | 一人で決めず、別のご家族に見積書と説明を確認してもらう |
3社目、4社目へ電話することで搬送が大きく遅れたり、ご家族が動けなくなったりするなら、会社数を増やすことが目的になっています。
2社から聞いた内容に大きな差がなく、説明にも納得できているなら、その時点で決めても構いません。
反対に、1社目の説明で分からない項目が多い、見積書が「一式」ばかり、契約を急かされているという場合は、もう1社へ連絡する意味があります。
見積もりを比べる目的は、最安値を当てることではありません。「何が含まれ、どんな場合に、いくら増えるのか」を把握し、納得して依頼できる会社を選ぶことです。
会社へ電話する前に、同じ条件を七つだけ決めます
A社には10人の家族葬、B社には30人の一般葬として見積もりを頼めば、金額を並べても比較になりません。
まず、分かる範囲で次の七つをメモします。決まっていない項目は「未定」と伝えて大丈夫です。
- 故人が現在いる場所と、搬送を希望する地域
- 自宅、葬儀社の安置施設など、希望する安置場所
- 家族葬、一日葬、直葬など、考えている形式
- 家族・親族と一般参列者のおおよその人数
- 通夜や告別式で読経などの宗教儀礼を行うか
- 利用したい斎場や火葬場が決まっているか
- 総額として考えている予算
「家族葬でお願いします」だけでは、家族だけで5人なのか、親族を含めて30人なのか分かりません。
また、家族葬、一日葬、直葬という名称が同じでも、含まれるサービスは葬儀社によって異なります。国民生活センターも、言葉のイメージだけで判断せず、参列人数、実施日数、料金などの具体的な内容を確認するよう呼びかけています。
そのまま使える見積もり依頼の第一声
電話では、次のように伝えると条件をそろえやすくなります。
「母が○○病院で亡くなり、今日中の搬送が必要です。親族10人ほどの一日葬を考えています。葬儀全体で必要になりそうな税込総額と、後から増える可能性がある費用を教えてください。ほかの葬儀社にも同じ条件で確認しています」
比較していることを隠す必要はありません。
「ほかにも聞いています」と伝えただけで態度が大きく変わったり、今すぐ契約しなければ困ると強く迫られたりする場合は、いったん立ち止まる材料になります。
広告の「○万円」ではなく、支払う可能性がある総額を比べます
プラン価格だけを横に並べると、A社30万円、B社45万円ならA社が安く見えます。
しかし、A社では搬送、安置、火葬場使用料、ドライアイス、会食などが別料金で、B社には一部が含まれているかもしれません。
葬儀費用は、人数、安置日数、搬送距離、火葬までの日数、選ぶ品物によって変わります。最初の見積額と最終請求額が異なること自体が、すべて不当というわけではありません。
問題は、何が増える可能性があるのか、契約前に分からないまま進むことです。
| 費用の種類 | 主な項目 | 聞いておきたいこと |
|---|---|---|
| 搬送・安置 | 寝台車、深夜早朝料金、距離加算、安置室、付き添い、ドライアイス | 搬送距離と安置日数が増えた場合、1日・1回いくら加算されるか |
| 葬儀の基本部分 | 祭壇、棺、骨壺、遺影、受付用品、司会、運営スタッフ | プランに含まれる品物と、最低限必要なのに含まれない項目は何か |
| 人数で変わる費用 | 料理、飲み物、返礼品、会葬礼状、配膳スタッフ | 何人分で計算され、追加・余り・返品はどう扱われるか |
| 場所に関する費用 | 式場使用料、控室、火葬場使用料、待合室 | 見積書に含まれているか、自治体や施設へ別途支払うか |
| 宗教者に関する費用 | 読経、戒名、御車代、御膳料 | 葬儀社の見積もり外か、寺院を紹介してもらう場合の条件は何か |
| 変更・中止に関する費用 | キャンセル料、発注済み商品の代金、搬送費、再搬送費 | どの時点から、何を頼むと費用が確定するか |
国民生活センターは、料理や香典返しなど参列者数で増減する費用や、棺、骨壺、生花などの変更によって、最終的な請求額が上がる場合があると説明しています。契約に含まれるものと、別料金になるものの確認が欠かせません。
見積書を受け取ったら、金額より先に八つの欄を見ます
合計金額を見て「高い」「安い」と判断する前に、次の八項目を確認してください。
- 税込総額になっているか
- 人数は何人で計算されているか
- 搬送距離と搬送回数は何回分か
- 安置料とドライアイスは何日分か
- 火葬場や式場の費用が含まれているか
- 料理・返礼品など数量で変わる費用はいくらか
- 見積もりに含まれていない費用は何か
- キャンセルや変更時に費用が発生する時点はいつか
「葬儀一式 80万円」とだけ記載されていたら、その一式に何が入っているのか分かりません。
「一式の内訳を、品目と数量が分かる形で出していただけますか」
これで構いません。
東京都の消費生活情報でも、パッケージ外のオプション料金や説明されていない費用をめぐる相談が紹介され、希望内容、金額、支払時期を確認すること、打ち合わせを複数人で受けることが勧められています。
「追加料金はありませんか」だけでは足りません
追加料金について尋ねるときは、もう一段具体的に聞きます。
- 火葬日が2日延びた場合、いくら増えますか
- 参列者が10人から20人になった場合、どの費用が増えますか
- 深夜に搬送する場合、いくら加算されますか
- この見積もりに入っていない必須費用はありますか
- 現在の条件で、総額が最も高くなるといくらくらいですか
正確な最終額がまだ決まらなくても、「どの条件で、いくらずつ増えるか」は確認できます。
搬送を頼む前に、葬儀全体の契約範囲を確かめます
亡くなった直後は、葬儀の日程より先に搬送を求められることがあります。
このとき注意したいのは、搬送の依頼と、葬儀一式の依頼がどこで分かれているのかです。
葬儀社によって契約や料金の扱いは異なります。電話の段階で次の三つを尋ねてください。
- 今日は搬送と安置だけを依頼できますか
- 葬儀の見積もりを見た後に依頼しない場合、何の費用がかかりますか
- 別の葬儀社へ変更する場合、再搬送や安置の費用はいくらですか
搬送後に葬儀社を変更できる場合でも、すでに行われた搬送や安置、使用した物品などの費用が発生する可能性があります。
「搬送してもらったから、葬儀も必ず同じ会社へ頼まなければならない」と思い込まず、何を依頼し、どこまで費用が発生しているのかを契約書や申込書で確かめます。
病院や施設から葬儀社を紹介された場合も、紹介された会社へ何をどこまで依頼するのかは、曖昧なまま進めない方が安全です。
安さだけではなく、説明の仕方も見積もりの一部です
最安値の葬儀社が悪いわけではありません。簡素な設備や小規模な会館、広告費を抑えた運営によって、費用を低くできる会社もあります。
反対に、金額が高ければ安心とも限りません。
比較するときは、次の対応も見てください。
- 質問に対して、具体的な金額や条件で答えるか
- 希望していない上位プランばかり勧めないか
- 不要な項目を外した場合の金額を出してくれるか
- 見積書をメールや書面で渡してくれるか
- 「今日中」「今だけ」と契約を急かさないか
- 分からない項目を質問したとき、嫌な態度を取らないか
- 担当者が変わっても話が引き継がれるか
葬儀では、日程調整、参列人数の変更、宗教者や火葬場との連絡など、契約後にも何度か相談することになります。
見積もり段階で説明を聞くことが苦痛な相手なら、葬儀当日の変更や確認も頼みにくくなる可能性があります。
喪主一人で見積もりを抱えないために、役割を二つに分けます
ご家族が集まると、「親戚へ連絡する人」「遺影写真を探す人」「役所のことを調べる人」が同時に話しかけてきます。
その中で葬儀社の説明を一人で聞き、全部覚えるのは難しいものです。
可能なら、打ち合わせの役割を二つに分けます。
- 話す人:故人やご家族の希望、予算、参列人数を伝える
- 記録する人:追加料金、未確定項目、支払期限、担当者名をメモする
遠方のきょうだいには、見積書の写真を送るだけでなく、判断してほしい項目を絞って送ります。
「A社とB社の見積もりを送りました。今日19時までに、①総額、②安置日数、③料理の人数、④追加料金の説明を見て、気になる点を返信してください」
「どう思う?」だけでは、返事が「任せるよ」になりやすいためです。
断るときは、長い理由を説明しなくて構いません
丁寧に説明してもらった葬儀社を断ることに、申し訳なさを感じる方もいます。
しかし、見積もりを依頼したからといって、必ず契約しなければならないわけではありません。ただし、搬送、安置、物品の発注など、すでに依頼した業務の費用は別に確認します。
断る場合は、次の一文で十分です。
「家族で検討した結果、今回は別の葬儀社へお願いすることになりました。すでに発生している費用がある場合は、内訳を書面でお知らせください」
まだ決めていない場合は、次のように時間を区切ります。
「今は契約せず、家族と見積書を確認します。○時までにこちらから連絡します」
その場で答えを出さないことと、連絡を放置することは別です。返答する時刻を伝えれば、葬儀社側も予定を立てやすくなります。
契約後や請求後に金額がおかしいと感じたら、証拠を一か所へ集めます
すでに契約した後で、広告と見積額が違う、説明のない料金が入っている、断ろうとしたら高額な費用を求められたという場合は、感情的な電話の応酬になる前に資料をそろえます。
- 広告やウェブページのスクリーンショット
- 見積書、契約書、申込書、請求書
- 追加を頼んだ品物やサービスの記録
- 担当者とのメール、メッセージ、通話日時
- 説明を一緒に聞いたご家族のメモ
- 葬儀社へ確認したい項目の一覧
葬儀社には、次のように書面で説明を求めます。
「当初の見積額から増えた項目について、追加した日時、依頼した人、金額、契約上の根拠が分かる内訳をお願いします」
話し合っても納得できない場合や、契約前から強く急かされて困っている場合は、消費者ホットライン188へ電話すると、地域の消費生活センターなどにつながります。相談は契約後だけでなく、契約前に不安がある段階でも利用できます。
出典・確認先メモ
- 国民生活センター「依然として多い葬儀サービスの料金トラブル―『家族葬だから安い』と思っていませんか?―」
- 国民生活センター「葬儀は事前に契約していた金額よりも高額になることがあるの?」
- 東京都消費生活総合センター「葬儀サービスの利用にあたっては料金や内容をよく確認しましょう!」
- 消費者庁「消費者ホットライン」
今日行うことは、何社も会館を回ることではありません。スマートフォンのメモへ「人数・形式・安置場所・宗教儀礼・予算」を入力し、その同じ条件を2社へ伝えてください。見積書が届いたら、合計金額より先に「含まれないもの」と「増える条件」へ印を付けます。















