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老後資金・投資

退職後に貯金が減るのが怖いとき|使ってよい金額と資金が持つ年数の出し方

2026.07.27 更新 なやみ晴れ編集部
#お金・生活費#老後資金・投資
この記事の結論

退職後に貯金が減ること自体は、家計の失敗ではありません。年金などで足りない分を補うために蓄えたお金だからです。毎年の不足額と大きな予定支出を出し、使ってよい生活費を決めます。食事・受診・冷暖房まで削っている場合は、節約より家計の立て直しを優先してください。

スーパーで肉を手に取り、値段を見て棚へ戻す。

買えないわけではありません。通帳には、退職金を含めた貯金が残っています。

それでも、給与が入らなくなった口座からお金が出ていくたび、「もう元には戻らない」という感覚が強くなる。外食を断り、古くなった靴も買い替えず、歯の治療まで先延ばしにしてしまう。

家族からは「そのために貯めたお金でしょう」と言われます。

理屈では分かっているのです。けれど、何歳まで生きるか、病気や介護にいくら必要になるかが分からない以上、今日使った千円が将来の自分を困らせるように感じます。

怖いのは、残高が減ることだけではありません。

どこまで減っても暮らせるのか、その線が見えないことが、毎日の支出を難しくしています。

退職後に貯金が減るのは、すぐに危険という意味ではありません

現役時代は、給与から生活費を払い、残った分を貯金します。

退職後は、年金やその他の収入だけでは足りない生活費を、これまでの貯金で補うことがあります。お金の流れが「貯める時期」から「使う時期」へ変わるため、残高が減ること自体は不自然ではありません。

見るべきなのは、減っているかどうかではなく、次の三点です。

たとえば、年金だけでは毎月5万円足りず、その不足を補うために貯金から5万円を移しているなら、計画どおりの取り崩しかもしれません。

一方、毎月いくら使っているか分からず、カード請求が増え、年に一度の税金や修繕費も貯金から無計画に出しているなら、減り方を一度見直す必要があります。

ポイント

残高が減らない生活を目指すのではなく、「この使い方なら次の見直し時期まで暮らせる」と分かる状態を作ります。

通帳残高ではなく、一年間にいくら減ったかを見ます

退職後の家計は、一か月だけでは判断しにくいものです。

固定資産税、自動車税、家電の買い替え、冠婚葬祭、旅行、医療費など、毎月ではない支払いがあるからです。

まず、過去一年間の数字から次の式を作ります。

一年間の支出 - 一年間の手取り収入 = 一年間の取り崩し額

収入には、実際に口座へ入った年金、給与、企業年金、家賃収入などを入れます。

支出は、生活費だけでなく、税金、保険料、医療、住宅修繕、車、家族への援助なども含めます。

たとえば、一年間の手取り収入が240万円、支出が300万円なら、年間の取り崩し額は60万円です。

生活に使える金融資産が1,200万円なら、単純計算では次のようになります。

1,200万円 ÷ 60万円 = 約20年

これは将来を保証する数字ではありません。物価、病気、介護、住まいの修繕などで支出は変わります。

それでも、「何となく減っている」という状態から、「今の支出が続けば、おおよそ何年分か」という判断材料へ変えられます。

退職してまだ一年たっていない場合は、直近三か月の通常支出を月額へ直し、今後一年以内の大きな支払いを加えます。

計算に入れるもの 見る資料
年金の手取り額 年金振込通知書、実際の入金額
日常生活費 通帳、カード明細、現金の引き出し額
税金・社会保険料 納付書、年金からの天引き額
医療・介護費 領収書、医療費通知、介護サービスの明細
年払い・臨時費用 前年の通帳、税金・保険・車検の通知
今後の大きな予定 住宅修繕、車、家電、家族への援助予定

年金は通知書の年額ではなく、実際の振込額を使います

老後の家計を計算するとき、年金額改定通知書などに書かれた年額を、そのまま生活費へ使える金額として入れないようにします。

年金からは、条件に応じて介護保険料、国民健康保険料・後期高齢者医療保険料、所得税、住民税などが差し引かれる場合があります。

年金振込通知書には、控除前の年金支払額だけでなく、各種控除額と控除後の振込額が記載されています。

家計表には、原則として控除後振込額を使います。

年金は通常、二か月分ずつ振り込まれます。家計上の月額を出す場合は、実際の一回の振込額を二で割ります。

まだ年金を受け取り始めていない方は、「ねんきんネット」で、働き方や受給開始年齢などの条件を変えた見込額を試算できます。

ただし、見込額は将来の額であり、そのまま手取り額を保証するものではありません。税金や保険料も含めた生活設計を考える場合は、金融庁のライフプランシミュレーターなどを補助的に使えます。

貯金を三つに分けると、生活費を使うたびに悩まずに済みます

貯金を一つの口座で管理していると、食品を買っただけでも「老後資金全体が減った」と感じます。

そこで、お金を目的別に三つへ分けます。

毎月の生活に使うお金

食費、水道光熱費、日用品、医療費、交際費など、普段の暮らしに使う分です。

年金の入る口座とは別に生活口座を用意し、一か月分または二か月分を移しておく方法があります。

数年以内に使う予定のお金

車検、固定資産税、住宅修繕、家電の買い替え、旅行、冠婚葬祭などです。

「何かあったときのため」とまとめず、用途と予定時期を付けます。

すぐには使わない予備のお金

大きな病気、介護、住み替え、収入減など、時期や金額を予測しにくい支出へ備える分です。

三つの金額に、全国共通の正解はありません。

持ち家か賃貸か、車を使うか、家族を援助しているか、持病があるかによって違います。

大切なのは、すべてを「使ってはいけない老後資金」にしないことです。

生活口座へ移した分は、決めた目的の範囲で使ってよいお金とします。買い物のたびに資産総額を見るのではなく、生活口座の中で今月を調整します。

楽しみに使うお金も、残ったら使うのではなく先に枠を作ります

食費や医療費は必要経費として納得できても、旅行、外食、趣味、孫への贈り物には罪悪感が出ることがあります。

「なくても生きていける」と考えれば、楽しみの支出はすべて削れてしまうからです。

しかし、退職後の年月は、ただ残高を守るための待ち時間ではありません。

使った後に不安になる方は、毎回判断するのではなく、年間の枠を先に決めます。

たとえば、年間12万円なら月平均1万円です。ただし、毎月使い切る必要はありません。旅行の月にまとめて使うこともできます。

決め方は次の順番です。

使う日には、「本当に必要か」を毎回問い直すのではなく、年間枠の残りを見ます。

「旅行に行っても大丈夫か」ではなく、「今年の楽しみ費の範囲に収まるか」へ質問を変えるのです。

食事・冷暖房・受診を削っているなら、節約しすぎです

貯金を守ろうとして、健康や住まいの安全まで削ると、後から大きな支出につながることがあります。

次のような状態は、通常の節約ではありません。

この場合、家計表の数字が黒字でも、生活は安全とはいえません。

食事、医療、冷暖房、住まいの安全に使うお金は、楽しみ費より先に確保します。

医療費が怖い場合は、必要な治療をやめる前に、加入している医療保険の高額療養費制度を確認してください。医療機関や薬局で支払う保険診療の自己負担には、年齢や所得に応じた上限制度があります。

介護サービスの自己負担にも、高額介護サービス費などの仕組みがあります。対象となる費用や上限は所得、世帯、サービス内容などで異なるため、加入先や市区町村へ具体的に尋ねます。

「今後の医療・介護費が怖く、必要な生活費まで使えません。自分の所得区分で使える上限制度と、対象外になる費用を教えてください」

大きな買い物は、買うか我慢するかではなく三段階で決めます

車、住宅修繕、家電、旅行など大きな支出は、日常生活費とは別に判断します。

買う前に、次の三段階へ分けてください。

危険や生活維持に関わるものは、貯金が減るからと先延ばしにしない方がよい場合があります。

時期を選べるものは、年間予算と資金が持つ年数を見て決めます。

購入後の残高だけでなく、維持費も含めてください。車なら保険、税金、車検、駐車場、燃料費が続きます。

家族へ高額な援助を頼まれた場合は、その場で引き出さず、次のように返します。

「助けたい気持ちはありますが、退職後の生活資金から出すため、金額と返済の有無を確認してから返事をします」

減り方が予定より速いときは、食費より固定費から見ます

計算してみると、想定より早く貯金が減っていることもあります。

その場合、毎日の食事を数十円ずつ削る前に、金額の大きい支出を見ます。

ただし、保険や住まいは、解約・売却すると元へ戻しにくいものです。

「今月苦しいから」と急いで処分せず、解約後に失う保障、売却費用、次の住居費まで比べます。

支出を減らしても不足が大きい場合は、週に数日の仕事、住まいの見直し、公的給付の対象なども検討します。

所得などの要件を満たす年金受給者には、年金生活者支援給付金が支給される場合があります。自動的に全員へ支給される制度ではなく、請求が必要となることがあるため、日本年金機構から届いた書類を放置しないでください。

貯金を増やし直そうとして、急な投資を始めないでください

貯金が減る恐怖が強いと、「運用して減らないようにしなければ」と考えることがあります。

投資には値下がりの可能性があり、近いうちに生活費として使うお金を増やせる保証はありません。

特に、次のような勧誘には立ち止まってください。

生活費として数年以内に使う予定のお金と、値動きを受け入れられるお金は分けます。

すでに投資商品を持っている場合も、相場が下がった日に恐怖だけで全部売るのではなく、当面の生活費が現金で確保できているかを先に見ます。

金融商品の購入や売却を勧められたときは、その担当者以外の中立的な窓口へ説明を持ち込む方法があります。

家族には残高より「毎年いくら使う予定か」を共有します

夫婦の一方は「使わなければ生活がつまらない」と考え、もう一方は「先が分からないから使えない」と考えることがあります。

どちらかを浪費家、心配性と決めつけると、お金の話ができなくなります。

話すときは、総貯金額だけでなく、年間の計画を見せます。

「去年は年金などの手取りが240万円、支出が288万円で、48万円を貯金から使いました。今年も同じなら月4万円の取り崩しです。旅行費はその中で年間10万円までにしたいです」

数字を見ても意見が違う場合は、すべてを決めようとせず、次の半年だけの予算にします。

「半年間は生活口座へ毎月18万円を移し、三か月後に残り方を見直したいです」

期間を区切れば、使いすぎる怖さと、何も使えない苦しさの両方を減らせます。

自分で計算しても怖さが消えないときは、商品を売らない窓口を使います

資金が何年持つかは、寿命、物価、医療、住まい、資産の種類によって変わります。

一人で計算すると、最悪の場合ばかりを重ねてしまうこともあります。

金融経済教育推進機構のJ-FLECでは、家計管理や生活設計について、個別相談の無料体験や電話相談を提供しています。個別の金融商品の提案や推奨は行わない窓口です。

相談時には、次の資料があると話しやすくなります。

最初の一言は、次の程度で構いません。

「退職後、貯金が減るのが怖くて必要な支出もできません。今の取り崩し額が大きすぎるのか、毎月使える金額を一緒に見てほしいです」

一方、家賃、食事、電気、薬などを払えず、すでに生活の維持が難しい場合は、資産運用の話より先に、自治体の自立相談支援機関へ状況を伝えてください。

生活困窮者自立支援制度では、状況に応じて家計改善、仕事、住まいなどの支援につながる場合があります。窓口へ話しただけで、財産処分や特定の手続きが自動的に決まるわけではありません。

食事、住居、電気、医療を維持できない状態は、「もう少し節約すればよい」という段階ではありません。支払期限を過ぎる前に、自治体や請求先へ事情を伝えてください。

次の年金振込日までに使う生活費だけ、別口座へ移します

今夜、何歳まで資金が持つかを完全に決める必要はありません。

まず、次の年金振込日までに必要な食費、水道光熱費、日用品、医療費を合計します。

その金額を生活用の口座へ移し、この期間の暮らしに使ってよいお金と決めてください。

旅行や大きな買い物は、まだ含めなくて構いません。

次の振込日に、生活口座にいくら残ったかを見ます。使い切っていれば予算が少なすぎたのか、支出が多かったのかを分けます。残りすぎて食事や受診を我慢していたなら、次回は少し増やします。

老後資金は、ただ長く残すための数字ではありません。

暮らしを保ち、必要なときに身体を守り、時には楽しむためのお金です。総残高を毎日見張るのではなく、次の二か月を安心して過ごせる金額から使い方を決めていけます。

出典・確認先メモ

よくある質問

Q. 退職後は貯金が毎月減っていても大丈夫ですか?

年金などで足りない生活費を補うための計画的な取り崩しなら、減ること自体は異常ではありません。年間の取り崩し額を出し、使える資産で何年程度補えるかを定期的に見直してください。

Q. 老後資金は何歳まで持つように計算すればよいですか?

寿命を一つに決めるのではなく、複数の年齢まで資金が持つかを試算します。物価や医療・介護費は変わるため、一度決めて終わりにせず、半年から一年ごとに実際の収支で更新してください。

Q. 年金だけで生活費が足りない場合、毎月いくら貯金を使ってよいですか?

年間支出から年金などの年間手取り収入を引いた額が、現在の年間取り崩しの目安です。さらに住宅修繕や医療など近い将来の予定費を分け、生活口座へ移す月額を決めます。

Q. 貯金が減るのが怖くて、病院や歯科へ行けません。どうすればよいですか?

必要な受診をやめる前に、加入している医療保険へ高額療養費制度や自己負担の扱いを確認してください。受診費を払うと食事や家賃が維持できない状態なら、市区町村の自立相談支援機関へ支払期限前に伝えます。

Q. 退職金を投資して、減る分を補った方がよいですか?

近いうちに生活費として使うお金まで投資すると、値下がり時に売却せざるを得ないことがあります。まず当面の生活費と予定支出を現金で分け、残りを運用するかは、リスクと使う時期を踏まえて判断してください。

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