最後の給料が思ったより少なく、さらに納付書まで届きました
長く勤めた会社を退職し、ようやく少し休めると思っていました。
ところが、最後の給与明細を見ると、住民税がまとめて引かれています。
その後、自宅には健康保険や年金の案内が届き、数か月たつと市区町村から新しい住民税の納付書まで送られてきました。
「退職時に住民税を払ったのに、なぜまた請求されるの?」
「収入がなくなったのに、国民健康保険料が高いのはなぜ?」
「任意継続と国保は、どちらを選べば安い?」
「退職金を生活費に使ってしまって大丈夫だろうか」
在職中は、税金や保険料の多くが給与から自動的に差し引かれていました。
退職後は、それまで一つに見えていた負担が、住民税、健康保険、国民年金、介護保険などに分かれ、それぞれ違う時期に請求されます。
突然負担が増えたように感じますが、まずは「何の請求か」「何年の所得に対する負担か」を分けてみます。
退職後に出ていくお金は、四つの封筒へ分けます
| 負担するもの | 決まり方の主な基準 | 最初に聞く場所 |
|---|---|---|
| 住民税 | 原則として前年の所得 | 会社の給与担当、市区町村の税担当 |
| 健康保険料 | 選ぶ制度、退職前の報酬、前年所得、世帯構成など | 協会けんぽ・健康保険組合、市区町村、家族の勤務先 |
| 国民年金保険料 | 年度ごとに定められる月額 | 市区町村の年金窓口、年金事務所 |
| 介護保険料 | 年齢、所得、自治体の保険料段階など | 市区町村の介護保険担当 |
住民税が高いから健康保険料も同額になるわけではなく、健康保険を任意継続にしたから国民年金の手続きも不要になるわけではありません。
四つを別々に書くと、何をどこへ問い合わせればよいかが見えてきます。
住民税は「今の収入」ではなく、前年の所得を後から払います
会社員の住民税は、前年1月から12月までの所得を基に計算され、通常は翌年6月からさらに翌年5月まで、12回に分けて給与から差し引かれます。
たとえば、2026年3月に退職した場合、その時点で給与から引かれている住民税は、主に2024年中の所得を基にした2025年度分です。
一方、2025年中にも給与収入があれば、その所得に対する2026年度分の住民税が、退職後の2026年6月ごろに改めて課税されます。
退職時に払った住民税と、翌年6月から払う住民税は、対象となる所得の年が異なります。二重に同じ税金を請求されているとは限りません。
| 届いたもの | 何に対する住民税か |
|---|---|
| 退職時に給与からまとめて引かれた税額 | その時点で給与天引き中だった年度の残額 |
| 退職後に届いた納付書 | 給与から引けなくなった年度の残額の場合がある |
| 翌年6月ごろに届く納付書 | 退職した年に得た給与等を基にした新年度分 |
納付書が届いたら、「退職時に払ったのになぜ」と考える前に、表紙の年度と、課税の基になった所得年を見ます。
退職する月によって、住民税の残額の払われ方が変わります
| 退職する時期 | 現在天引き中の住民税の扱い |
|---|---|
| 6月1日〜12月31日 | 残額を自分で納める普通徴収へ切り替えるか、希望して最後の給与等から一括徴収する |
| 1月1日〜4月30日 | 原則として、5月分までの残額を最後の給与・退職手当等から一括徴収する |
| 5月 | 通常はその年度の給与天引きの最終月。会社の処理状況を確認する |
| すぐ再就職する | 新しい勤務先で特別徴収を続けられる場合がある |
1月から4月に退職する場合は、原則として残りの税額を一括して給与等から徴収する扱いです。6月から12月の退職では、自分で納付する方法へ切り替えるか、本人の希望により一括徴収する扱いがあります。
最後の給与が大きく減って見えるのは、住民税の残額がまとめて差し引かれたためかもしれません。
退職前に会社の給与担当へ、次の三点を聞いておくと、受取額を見積もりやすくなります。
退職時に住民税はいくら一括徴収されますか。
普通徴収へ切り替わる金額はありますか。
退職した年の所得に対する住民税は、翌年いつごろから納めますか。
退職金にかかる税金と、毎月の給与にかかる住民税は分けます
退職時に給与明細や源泉徴収票を見ると、複数の税額が記載されていることがあります。
| 税金 | 扱い |
|---|---|
| 給与所得に対する住民税 | 前年の所得を基に、翌年6月から翌々年5月に納める |
| 退職所得に対する住民税 | 退職金が支払われる際に、原則としてほかの所得と分けて計算・徴収される |
| 給与に対する所得税 | 給与から源泉徴収され、年末調整や確定申告で精算する |
| 退職所得に対する所得税 | 退職所得控除等を用いて計算される |
退職金から税金が引かれているからといって、翌年度の住民税まで全額払ったことにはなりません。
退職所得に対する住民税は、通常の給与所得に対する住民税とは別に、退職金の支給時に徴収される仕組みです。
健康保険は、退職日の翌日から別の加入先を選びます
会社の健康保険は、原則として退職日の翌日に資格を失います。
退職後の健康保険には、主に次の三つの選択肢があります。
| 選択肢 | 向いている可能性がある人 | 確認する場所 |
|---|---|---|
| 現在の健康保険を任意継続する | 退職前の健康保険へ一定期間加入しており、国保より保険料が低い人 | 協会けんぽまたは健康保険組合 |
| 国民健康保険へ加入する | 任意継続より保険料が低い人、減免・軽減の対象になる人 | 居住地の市区町村 |
| 家族の健康保険の扶養へ入る | 収入など、家族が加入する保険の扶養条件を満たす人 | 家族の勤務先・健康保険 |
退職後は、この三つのどれかを選ぶのが基本です。加入条件や毎月の保険料を比較してから決めます。
75歳以上の人は、原則として後期高齢者医療制度の対象です。退職を理由に任意継続や国民健康保険へ移るのではなく、現在の制度と保険料の通知を自治体へ確認します。
任意継続は、在職中と同じ保険料ではありません
協会けんぽの任意継続を利用するには、原則として退職日までに継続して2か月以上の被保険者期間があり、退職日の翌日から20日以内に申請する必要があります。加入期間は原則2年間です。
在職中の健康保険料は会社と本人が負担していましたが、任意継続では本人が全額を負担します。
そのため、給与明細で見ていた本人負担額の単純な2倍近くに感じることがあります。ただし、計算には標準報酬月額の上限などがあるため、実際の金額は加入していた保険者へ確認します。
| 任意継続で見ること | 確認内容 |
|---|---|
| 月額保険料 | 健康保険分と介護保険分を含めた額 |
| 扶養家族 | 扶養として継続できるか、追加保険料があるか |
| 申請期限 | 退職日の翌日から20日以内か |
| 納付期限 | 毎月いつまでに払うか |
| 途中での変更 | 国保や家族の扶養へ移る場合の資格喪失手続き |
任意継続は、扶養家族が複数いる世帯では国保より負担を抑えられることがあります。
反対に、一人暮らしで退職後の所得が低くなる場合や、失業による軽減を受けられる場合は、国保の方が低くなることもあります。
国民健康保険は、退職後の収入がゼロでも高くなることがあります
国民健康保険料は、市区町村ごとの計算方法により、前年所得や加入人数などを基に決まります。
今年退職して収入が減っても、前年に会社員として得た所得が高ければ、退職直後の保険料は高くなる場合があります。
| 国保の見積もりに必要になりやすいもの | 見る場所 |
|---|---|
| 退職する年の前年所得 | 源泉徴収票、住民税通知書 |
| 国保へ入る家族の人数 | 世帯構成 |
| 年齢 | 40〜64歳は介護分も関係する |
| 退職理由 | 雇用保険受給資格者証等 |
| 加入予定日 | 退職日の翌日 |
自治体の窓口では、「国保はいくらですか」とだけ聞くより、退職日、前年の給与収入、加入する家族を伝え、試算を依頼します。
退職日は__月__日です。
前年の給与収入は約__万円で、国保へ加入するのは__人です。
退職翌月から年度末までと、次年度の保険料の概算を教えてください。
国民健康保険へ加入する場合は、原則として資格取得から14日以内に市区町村へ届け出ます。届出が遅れても、退職日の翌日までさかのぼって保険料がかかる場合があるため、医療機関へ行かないからと先延ばしにしないようにします。
会社都合や雇止めなら、国保の軽減対象になることがあります
倒産・解雇などの特定受給資格者や、雇止めなどの特定理由離職者に該当する人には、国民健康保険料を計算する際、前年の給与所得を30%として扱う軽減制度があります。対象期間や離職理由の条件があるため、雇用保険受給資格者証等を持って市区町村へ確認します。
自己都合退職でも、所得の急減、災害などの事情に応じ、自治体独自の減免や納付猶予を利用できる場合があります。制度は自治体によって異なるため、納期限を過ぎる前に相談します。
窓口では、単に「高くて払えません」と伝えるより、現在の収入と支払予定を具体的に示します。
退職前の所得で保険料が計算されていますが、現在の月収は__円です。
離職理由は__で、雇用保険の離職理由コードは__です。
利用できる軽減、減免、分割納付があるか確認したいです。
家族の扶養へ入れるかは、昨年の年収だけでは決まりません
配偶者や子どもが会社の健康保険へ加入している場合、被扶養者になれる可能性があります。
扶養の認定では、今後見込まれる収入、失業給付、年金、同居・別居、生計維持の状況などが見られます。健康保険組合によって必要書類や判断方法が異なるため、「昨年は高収入だったから無理」「今は無職だから必ず入れる」と自己判断しません。
| 扶養申請前に伝える収入 | 例 |
|---|---|
| 退職後の給与 | 再就職や短時間勤務の予定 |
| 雇用保険の基本手当 | 日額、受給開始日、受給期間 |
| 公的年金 | 老齢年金等の年間見込額 |
| 事業・不動産収入 | 退職後も続く収入 |
| 家族からの仕送り | 別居している場合の生計維持状況 |
扶養に入れれば、自分で健康保険料を払わずに済む場合があります。
ただし、扶養認定を待っている間に任意継続の申請期限を過ぎないよう、家族の勤務先へ審査期間も聞いておきます。
三つの健康保険は、月額だけでなく家族分を含めて比べます
| 比較項目 | 任意継続 | 国民健康保険 | 家族の扶養 |
|---|---|---|---|
| 自分の月額 | __円 | __円 | __円 |
| 家族を含めた月額 | __円 | __円 | __円 |
| 介護保険分 | 含む・別 | 含む・別 | 確認 |
| 加入期限 | 退職翌日から20日以内 | 原則14日以内 | 家族の勤務先へ確認 |
| 翌年度の変化 | 原則として大きくは変わりにくい | 前年所得により変わる | 収入条件を外れると資格変更 |
国保は、退職直後の年度と、その翌年度で金額が変わることがあります。
比較するときは、最初の一か月だけでなく、「退職翌日から年度末まで」と「翌年度」の二段階で見積もります。
60歳未満で退職した人は、健康保険とは別に国民年金を切り替えます
60歳未満の人が会社を退職し、すぐに厚生年金へ加入する会社へ再就職しない場合は、原則として国民年金第1号被保険者への切替手続きが必要です。
配偶者の健康保険の扶養となり、国民年金第3号被保険者の条件も満たす場合は、配偶者の勤務先を通じて手続きします。
| 退職後の状態 | 年金の手続き |
|---|---|
| すぐに再就職し、厚生年金へ加入する | 新しい勤務先が手続きする |
| しばらく働かない・自営業になる | 国民年金第1号へ切り替える |
| 配偶者の扶養へ入る | 条件を満たせば第3号の手続きをする |
| 60歳以上 | 原則として強制加入期間は終了。必要に応じ任意加入を検討する |
2026年度の国民年金保険料は月額17,920円です。退職日の翌日から14日以内を目安に、市区町村または年金事務所で手続きをします。
会社員に扶養されていた60歳未満の配偶者も、本人の退職によって第3号被保険者ではなくなる場合があります。退職者本人だけでなく、配偶者の手続きも忘れないようにします。
国民年金を払うのが難しいときは、未納のままにしません
失業や収入減少で国民年金保険料を納めることが難しい場合は、保険料免除や納付猶予を申請できる可能性があります。
失業の事実を確認できる場合、失業した本人の前年所得にかかわらず審査する特例もあります。
納付書を放置した期間と、免除・猶予の承認を受けた期間では、将来の年金や障害年金・遺族年金の要件への扱いが異なります。
「収入ができてから払おう」とそのままにせず、離職票や雇用保険受給資格者証を持って申請方法を聞きます。
65歳以上では、介護保険料が別に見えるようになります
40歳から64歳までの介護保険料は、加入している健康保険料と合わせて負担するのが基本です。
65歳以上になると、市区町村が介護保険料を決定し、一定の条件を満たす人は年金から差し引かれます。
年金額など所定の条件に該当する65歳以上の人は、介護保険料が年金から特別徴収されます。退職したから介護保険料がなくなるわけではありません。
退職後の手取りを見積もるときは、健康保険料だけでなく、年金振込通知書に記載される介護保険料等も確認します。
支払いが重なるのは、退職直後だけとは限りません
| 時期 | 起こりやすい支払い・手続き |
|---|---|
| 退職前 | 住民税の残額、健康保険3案の見積もり、会社から受け取る書類の確認 |
| 退職日の翌日 | 会社の健康保険・厚生年金の資格喪失 |
| 退職後14日程度まで | 国保、国民年金などの手続き |
| 退職後20日以内 | 任意継続を選ぶ場合の申請期限 |
| 退職後1〜2か月 | 普通徴収へ切り替わった住民税の納付書が届く場合がある |
| 翌年6月ごろ | 退職した年の所得を基にした新年度の住民税通知 |
退職金が入った直後は預金残高に余裕があるように見えても、翌年6月に住民税が届くことがあります。
退職金を住宅ローン返済、旅行、車の買替えなどへ使う前に、少なくとも翌年夏までの税金と保険料を別に確保します。
退職後一年分を、毎月の生活費と分けて置いておきます
| 確保するお金 | 見積額 |
|---|---|
| 退職時点で残っている住民税 | __円 |
| 翌年度の住民税 | __円 |
| 健康保険料12か月分 | __円 |
| 国民年金保険料 | __円 |
| 介護保険料 | __円 |
| 予備費 | __円 |
| 合計 | __円 |
正確な金額がまだ分からない場合は、空欄の横へ問い合わせ先を書きます。
会社、市区町村、健康保険、年金事務所へ同じ日にすべて電話する必要はありません。
期限が短い任意継続と、退職翌日から切替えが必要な健康保険を先に進めます。
会社から受け取る書類は、封筒のままにしないようにします
- 健康保険資格喪失証明書
- 雇用保険被保険者離職票
- 雇用保険被保険者証
- 源泉徴収票
- 退職所得の源泉徴収票
- 最終給与明細
- 住民税の一括徴収額が分かる書類
- 企業年金・退職金に関する書類
書類が届く時期は会社によって異なります。
退職前に、何の書類が、いつ、どの住所へ届くかを書いてもらうと、手続き待ちなのか、届いていないのかを判断しやすくなります。
退職後に届く書類の一覧と発送予定日を教えてください。
特に、健康保険資格喪失証明書、離職票、源泉徴収票、住民税の徴収方法を確認したいです。
すぐ再就職する場合も、空白日を確かめます
金曜日に退職し、翌週月曜日から新しい会社で働く場合でも、退職日の翌日から新しい資格取得日の前日までに空白がないかを確認します。
新しい勤務先の健康保険・厚生年金へいつから加入するのか、住民税の給与天引きを引き継げるかを人事担当へ聞きます。
再就職先で住民税の特別徴収を継続できる場合は、前の会社と新しい会社の間で必要な届出を進めます。すでに自宅へ納付書が届いた後でも、未納分を給与天引きへ切り替えられる場合があるため、自治体と勤務先へ確認してください。
支払えないかもしれないと分かった時点で、納期限前に連絡します
退職後は、住民税、国保、国民年金が同じ時期に重なることがあります。
手元のお金で全額払えないと分かったら、督促が届くまで待たず、それぞれの窓口へ連絡します。
| 払うもの | 伝えること |
|---|---|
| 住民税 | 退職日、現在の収入、納期限、払える金額 |
| 国民健康保険料 | 離職理由、前年所得、現在収入、軽減・減免の希望 |
| 国民年金保険料 | 失業・収入減少、免除申請に必要な書類 |
| 介護保険料 | 所得減少と利用可能な減免・納付方法 |
制度によって、分割、猶予、免除、減免の意味や条件は異なります。
「全部払わなくてよい方法」を探すのではなく、どの制度の何を申請できるのかを一つずつ聞きます。
今日するのは、正確な老後資金を計算することではありません
今日は、退職予定日を書いた紙へ、次の五つを並べてください。
- 最後の給与から引かれる住民税
- 翌年6月ごろに来る住民税の概算
- 任意継続の月額
- 国民健康保険料の試算額
- 60歳未満なら国民年金保険料
最初の連絡先は、会社の給与・社会保険担当です。
そこで住民税の残額、健康保険の資格喪失日、必要書類の発送日を聞きます。
次に、任意継続の保険者と市区町村へ同じ家族構成を伝え、健康保険料を比較します。
退職後のお金が不安になるのは、支払いが多いからだけではありません。
請求の時期と金額が見えないまま、退職金や預金が減っていくように感じるからです。
まず一年分を完璧に計算しなくても構いません。
「誰に聞けば金額が埋まるか」が分かれば、空欄は一つずつ減らせます。
今日は、会社へ「最後の給与から住民税はいくら引かれますか」と聞くところから始めてください。
出典・確認先メモ
- 横浜市・大阪市:個人住民税の課税時期、退職後の普通徴収・一括徴収、翌年度の納税通知。
- 協会けんぽ:退職後の健康保険の選択肢、任意継続の加入条件・期限・保険料。
- 厚生労働省:国民健康保険の加入、保険料の軽減・減免、非自発的失業者への軽減。
- 日本年金機構:退職後の国民年金手続き、2026年度保険料、免除・納付猶予。


















