求人票を見ながら、「掃除なら自分にもできそう」と思ったけれど
定年して数か月。朝は以前と同じ時間に目が覚めるのに、出かける用事はそれほどない。
年金だけでは少し心細いし、家にいる時間が長くなると、家族にも気を使う。そんなときに見つけたのが、「未経験歓迎」「シニア活躍中」と書かれた清掃の求人だった。
掃除なら家でもしてきた。接客やパソコンの仕事より、自分には合っているかもしれない。
そう思う一方で、応募ボタンを押す前には、別の気持ちも出てきます。
「一日中立ちっぱなしなのだろうか」
「腰や膝が痛くなったら、周りに迷惑をかけないか」
「若い人と同じ速さを求められたら続かないかもしれない」
「トイレや汚れのひどい場所も担当するのだろうか」
清掃の仕事は、特別な資格を求めない求人が多く、定年後の再就職先として検討しやすい職種です。ただし、家庭の掃除と仕事としての清掃は同じではありません。
決められた時間までに、決められた場所を、一定の仕上がりにする。道具を運び、何度も腰を曲げ、濡れた床にも気を配る。現場によっては、想像以上に体を使います。
大切なのは、「清掃の仕事ができる年齢か」ではなく、「今の自分が無理なく続けられる条件か」を見ることです。
清掃の仕事は、ほうきで床を掃くだけではありません
ビルや施設の清掃では、床のほこり取りやモップがけのほか、机や設備の拭き掃除、トイレ清掃、消耗品の補充、ごみの回収と分別などを行います。
日中に人が使うオフィスや店舗では、利用者が来る前の早朝や、営業終了後の夜間に作業する現場もあります。厚生労働省の職業情報サイトでも、ビル清掃には室内外の清掃、トイレや洗面所の清掃、ごみ回収、床洗浄など幅広い作業が含まれると説明されています。
| よくある作業 | 体への負担が出やすい部分 | 応募前に聞きたいこと |
|---|---|---|
| モップ・掃除機がけ | 歩く距離、腕や肩、長時間の立ち作業 | 一人が担当する階数・面積はどのくらいか |
| トイレ・洗面所清掃 | 中腰、しゃがむ動作、洗剤への接触 | 便器の数、巡回回数、手袋や防護用品の支給 |
| ごみ回収・分別 | 袋の持ち上げ、台車の操作、におい | 重いごみの有無、集積場所までの距離 |
| 階段清掃 | 昇り降り、転倒、道具を持った移動 | 何階分を担当するか、エレベーターを使えるか |
| 浴室・厨房周辺 | 滑りやすさ、暑さ、油汚れ、力仕事 | 滑りにくい靴の指定、換気、作業人数 |
| ベッドメイク・客室整備 | 前かがみ、時間制限、布団やマットの扱い | 一室あたりの目安時間、一日に担当する部屋数 |
| 定期清掃・機械洗浄 | 重い機械、洗剤、普段と異なる動作 | 日常清掃だけか、機械作業も含むか |
求人票に「簡単な清掃」と書かれていても、何を簡単と感じるかは人によって違います。
雑巾がけそのものは難しくなくても、広い廊下を時間内に終わらせることや、何度も階段を上り下りすることは、体力を使います。
「掃除はできます」と答えるだけでなく、どこを、何人で、どのくらいの時間で清掃するのかまで聞いておきたいところです。
オフィス、マンション、病院、ホテルでは疲れ方が違います
清掃の仕事は、働く建物によって一日の動きが変わります。
「家から近い」「時給が少し高い」だけで選ぶ前に、現場ごとの特徴を比べてみてください。
| 清掃場所 | 仕事の特徴 | 向きやすい人 | 注意したい点 |
|---|---|---|---|
| オフィスビル | ごみ回収、床、机周り、給湯室、トイレなど | 決まった手順を黙々と進めたい人 | 早朝・夜間勤務、広いフロア、時間内の作業 |
| マンション共用部 | 玄関、廊下、階段、ごみ置き場、建物周辺の清掃 | 比較的小さな現場で働きたい人 | 屋外作業、階段、居住者へのあいさつや簡単な応対 |
| 病院・介護施設 | 病室、廊下、トイレ、共用部、消毒など | 衛生手順を守り、丁寧に作業できる人 | 感染対策、汚物処理、利用者の近くでの作業 |
| 商業施設 | 営業時間中の巡回、トイレ、ごみ回収、床清掃 | 人がいる場所でも落ち着いて動ける人 | 人通り、急な汚れへの対応、土日勤務 |
| ホテル・宿泊施設 | 客室清掃、浴室、ベッドメイク、備品補充 | 手早く作業を切り替えられる人 | 部屋数と終了時間が決まっており、腰を使いやすい |
| 学校・公共施設 | 教室、廊下、トイレ、体育館、外周など | 比較的決まった時間帯で働きたい人 | 校舎の広さ、階段、長期休暇中の勤務変動 |
| 店舗・飲食店 | 床、厨房周辺、トイレ、開店前・閉店後の清掃 | 短時間に集中して働きたい人 | 油汚れ、早朝・深夜、水で滑りやすい場所 |
膝に不安があるなら、階段の多いマンションより、エレベーターで移動できる小規模なオフィスの方が合うかもしれません。
腰を深く曲げる動作がつらいなら、客室清掃より、廊下や共用部を中心とした現場の方が続けやすい場合があります。
反対に、人前で作業するのが落ち着かない方は、営業時間中の商業施設より、利用者が来る前のオフィス清掃の方が働きやすいでしょう。
「清掃ならどこでも同じ」とまとめず、自分が避けたい動作と時間帯から現場を絞ると、求人選びが現実的になります。
資格より先に、「毎週続けられる体の使い方か」を見ます
一般的なビル清掃へ入職する際、特定の学歴や資格が必須とされないケースが多く、未経験から始める人もいます。一方で、洗剤や建材の知識、道具や機械の使い方、共同作業の進め方は、働きながら覚える必要があります。
つまり、資格がないことよりも、現場の動きを続けられるかの方が、最初の求人選びでは重要です。
応募前に、家の中で無理のない範囲で次の動きを試してみてください。
- 30分ほど立ったまま家事を続けられるか
- 床にある物を拾い、立ち上がる動作を数回できるか
- 手すりを使いながら階段を上り下りできるか
- 掃除機や買い物袋を持って部屋を移動できるか
- 腕を肩より上へ伸ばして拭く動作ができるか
- 朝の決められた時間に支度して出発できるか
- 作業した翌日に、強い痛みや疲れが残らないか
全部できなければ働けない、という判定ではありません。
しゃがむのが難しいなら、床に近い作業が少ない現場を探す。階段が不安なら、エレベーターのある施設にする。長く立てないなら、2時間程度の短時間求人から探す。
できないことを隠すより、避ける条件を先に決めた方が、採用後に「思っていた仕事と違った」となるのを防げます。
2026年4月からは、高年齢者の特性に配慮した作業環境や作業管理などについて、事業者が講ずるよう努めるべき措置を示した国の指針が適用されています。高年齢者の転倒や身体負担への配慮は、本人の我慢だけで解決する問題ではありません。
「一日3時間」でも、通勤を入れると半日仕事になります
短時間勤務だから楽だと思って応募したものの、朝5時に起き、電車を乗り継ぎ、着替えをして、仕事が終わって帰宅すると昼近くになっていた。
このようなこともあります。
求人票の勤務時間だけでなく、家を出てから戻るまでの時間を書き出してください。
| 見る時間 | 例 |
|---|---|
| 起床・身支度 | 午前5時起床、朝食、着替え |
| 自宅から現場まで | 徒歩15分、電車20分、駅から10分 |
| 始業前 | 制服への着替え、道具準備、引き継ぎ |
| 実際の勤務 | 午前7時から10時まで |
| 終業後 | 片づけ、報告、着替え |
| 帰宅まで | 買い物を含めて正午前に帰宅 |
勤務は3時間でも、生活の中では6時間近く使うことがあります。
特に早朝勤務では、前日の就寝時間も変わります。冬の暗い時間や、雨の日にも同じ経路で通えるかを考えておきましょう。
時給が50円高い遠方の現場より、徒歩や自転車で通える現場の方が、交通費や疲れを含めると続けやすいこともあります。
最初から週5日ではなく、「翌日に回復できる日数」から始めます
定年前に毎日働いていた方ほど、「週5日くらい問題ない」と考えやすいものです。
けれど、前職が事務や管理の仕事だった場合、清掃では使う筋肉も、立っている時間も変わります。
初めのうちは仕事中よりも、帰宅後や翌朝に疲れが出ることがあります。
生活費との兼ね合いはありますが、選べるなら次のような始め方も考えてみてください。
- 最初の1~2か月は週2日または週3日にする
- 連続勤務を避け、勤務の間に休みを入れる
- 一日2~4時間程度の現場から試す
- 早朝と夜間を混ぜず、生活時間を固定する
- 慣れてから日数を増やせるか聞いておく
少ない日数で始めることは、やる気がないという意味ではありません。
足腰の疲れ方、手荒れ、通勤の負担、家事との両立を見ながら、自分に合う働き方を探す試運転です。
勤務翌日に買い物へ行けないほど疲れるなら、仕事はこなせていても、生活全体では無理が出ています。
求人票の「シニア活躍中」より、11の条件を読みます
「60代活躍中」「年齢不問」と書かれていると、応募しやすく感じます。
ただし、同じ年代の人が働いていることと、あなたに合う条件であることは別です。
求人票では、次の項目に線を引いてみてください。
| 確認項目 | 見るポイント |
|---|---|
| 清掃場所 | オフィス、病院、ホテル、マンションなど、建物の用途 |
| 具体的な作業 | トイレ、浴室、階段、屋外、ベッドメイクを含むか |
| 勤務時間 | 早朝・夜間か、終了時刻を超えることがあるか |
| 勤務日数 | 週何日か、連続勤務か、曜日を固定できるか |
| 作業人数 | 一人現場か、複数人で分担するか |
| 担当範囲 | 階数、部屋数、トイレの数、移動距離 |
| 賃金 | 時給、研修中の時給、締め日、支払日 |
| 交通費 | 全額か上限付きか、自転車・自動車通勤が可能か |
| 道具・制服 | 貸与か自己負担か、靴の指定があるか |
| 契約期間 | 何か月契約か、更新基準、更新回数や上限年齢 |
| 欠勤時の対応 | 自分で代わりを探すのか、会社が調整するのか |
パートやアルバイトであっても、採用時には契約期間、更新基準、就業場所と仕事内容、始業・終業時刻、休日、賃金などの労働条件を、書面などで明示することが使用者に求められています。口頭で聞いた条件だけで働き始めず、労働条件通知書や契約書を受け取って内容を見てください。
特に定年後の求人では、有期契約になっていることがあります。
「長く働けます」と言われても、契約は6か月ごとの更新で、一定年齢以降は更新しない決まりになっている場合があります。何歳まで働けるかだけでなく、更新を何で判断するのかも確認しておきましょう。
面接では「できます」と答える前に、現場の一日を聞きます
採用してもらいたい気持ちが強いと、面接で何を聞かれても「大丈夫です」と答えたくなります。
けれど、できない条件を引き受けて短期間で辞めるより、応募の段階で合う現場を選ぶ方が、本人にも職場にも負担が少なくなります。
| 聞きたいこと | 質問例 |
|---|---|
| 担当する場所 | 「一人で担当する範囲と、主な清掃場所を教えていただけますか」 |
| トイレ清掃 | 「トイレ清掃はありますか。何か所を何回ほど回りますか」 |
| 階段・移動 | 「階段清掃は何階分ありますか。道具の移動にエレベーターは使えますか」 |
| ごみの重さ | 「重いごみ袋や、持ち上げる物はありますか」 |
| 一人勤務 | 「慣れるまでは教えていただけますか。独り立ちまでの目安はどのくらいですか」 |
| 時間の余裕 | 「作業が時間内に終わらない場合は、どのように対応しますか」 |
| 勤務日数 | 「最初は週2日で始め、慣れてから増やすことはできますか」 |
| 職場見学 | 「応募を決める前に、実際の作業場所を見せていただくことはできますか」 |
膝や腰に不安がある場合も、病名や細かな事情をすべて話す必要はありませんが、仕事に影響する動作は伝えておいた方が安全です。
たとえば、
「平地を歩くことや立ち仕事はできますが、重い物を持って階段を何度も上る作業は難しいです。共用部中心の現場はありますか」
と具体的に伝えます。
「年だからできません」と小さくなる必要はありません。できる動作と難しい動作を分けて伝えることは、働き続けるための条件交渉です。
「一人で気楽」と「困ったときに誰もいない」は表裏一体です
清掃の求人には、一人で担当する現場と、チームで分担する現場があります。
人間関係を気にせず黙々と働きたい方には、一人現場が魅力的に見えるでしょう。
ただし、一人だから楽とは限りません。
| 働き方 | 良いところ | 始める前に考えたいこと |
|---|---|---|
| 一人現場 | 自分の順番で動きやすく、人間関係が少ない | 遅れたときの応援、体調不良、利用者からの要望に一人で対応する場合がある |
| 複数人の現場 | 作業を分けられ、分からないことを聞きやすい | 作業速度を合わせる必要があり、人間関係も生まれる |
| 巡回型 | 複数の小さな現場を担当できる | 移動時間、天候、車の運転が負担になりやすい |
| 固定現場 | 場所と手順を覚えやすい | 担当範囲や人間関係が合わない場合、逃げ場が少ない |
未経験であれば、最初の数日は経験者と一緒に入り、道具の使い方や汚れの見分け方を教えてもらえる現場の方が入りやすいでしょう。
「研修あり」と書いてあっても、動画を見るだけなのか、現場で横についてもらえるのかは違います。研修の日数と、その間の時給も聞いておきます。
転倒と腰の痛みは、「気をつけます」だけで防げないことがあります
清掃中は、濡れた床、ホースや電気コード、段差、階段などに注意が必要です。
厚生労働省は、中高年齢の労働者を中心に、業務中の転倒による骨折などが増えているとして、職場での転倒防止を呼びかけています。
応募時や職場見学では、本人の注意力だけでなく、現場側の安全対策も見てください。
- 濡れた床に注意表示を出しているか
- 滑りにくい靴について説明があるか
- 階段や通路が暗くないか
- モップやコードを通路へ放置していないか
- 重いごみを台車で運べるか
- 高い場所を拭くために、無理な踏み台を使わないか
- 洗剤の薄め方や混ぜてはいけない物を教えているか
- 体調が悪いときに責任者へ連絡できるか
「これくらいできます」と無理をして転倒すれば、仕事だけでなく、その後の日常生活にも影響します。
仕事中に痛みやめまいが出たときは、恥ずかしさから隠さず、その場で作業を止めて責任者へ伝えます。痛みが続く場合は、早めに医療機関で状態を見てもらってください。
家族から反対されたら、仕事内容を見せて話します
本人は働きたいと思っていても、配偶者や子どもから「もう無理して働かなくてもいい」「転んだら困る」と反対されることがあります。
その言葉に腹が立つこともあるでしょう。
ただ、家族は清掃という言葉から、重い機械を扱う仕事や、一日中休みなく働く姿を想像しているのかもしれません。
「大丈夫だから」と押し切るより、求人票を見せて具体的に説明します。
「週2日、午前8時から11時まで。家から徒歩10分のマンションで、玄関と廊下を担当する。階段は2階分で、一人で重い物を持つ仕事はない。まず3か月やってみる」
ここまで分かれば、家族も心配している点を言葉にしやすくなります。
家族へ伝えておきたいのは、次のような内容です。
- 勤務先の名前と場所
- 出勤日と帰宅予定時刻
- 現場責任者や会社の連絡先
- 持病や服薬がある場合の緊急連絡方法
- 何か月後に働き方を見直すか
働く目的も共有してみてください。
生活費を補いたいのか、外へ出る習慣がほしいのか、人と関わりたいのか。目的が違えば、必要な日数と収入も変わります。
雇用される清掃と、シルバー人材センターの仕事は仕組みが違います
清掃の仕事を探す方法には、清掃会社や施設へパートとして雇用される方法のほか、地域のシルバー人材センターへ登録する方法もあります。
ただし、働き方の仕組みは同じではありません。
| 探し方 | 主な特徴 | 確認したいこと |
|---|---|---|
| 清掃会社・施設のパート | 会社と労働契約を結び、決められた時間に働く | 時給、勤務日、社会保険、休暇、契約更新 |
| ハローワークの求人 | 条件を比較し、紹介や応募支援を受けられる | シニア採用実績、職場見学、応募書類 |
| シルバー人材センター | 臨時的・短期的または軽易な仕事を会員へ提供する | 雇用契約か請負・委任か、配分金、仕事の頻度 |
| 求人サイト・折込求人 | 自宅近くの短時間求人を探しやすい | 会社名、雇用主、実際の勤務地、掲載条件との差 |
シルバー人材センターでは、家庭、企業、公共団体などから受けた臨時的・短期的または軽易な仕事を会員へ提供します。請負・委任の形では、発注者と会員の間に雇用関係がないため、通常のパート雇用と同じ仕組みだと思い込まないことが必要です。
毎月決まった収入を得たいなら、固定シフトのパートが向く場合があります。
反対に、収入額よりも地域とのつながりや、無理のない範囲での就業を希望するなら、シルバー人材センターの仕事が合うこともあります。
60歳を過ぎてからの仕事探しは、一人で求人を選ばなくてもいい
久しぶりの履歴書や面接に戸惑う方は、ハローワークの生涯現役支援窓口を利用できます。
生涯現役支援窓口は、おおむね60歳以上の求職者を対象とし、現在の生活環境や年金受給状況なども踏まえながら、職業相談、職業紹介、職場見学やセミナーなどの案内を行っています。全国の主要なハローワークに設置されています。
窓口では、単に「清掃の仕事を探しています」と伝えるだけでなく、次の条件を紙に書いて持っていくと話が早くなります。
- 週に働きたい日数
- 一日に働ける時間
- 希望する時間帯
- 自宅からの通勤時間
- 階段や重量物など避けたい作業
- トイレ清掃が可能か
- 毎月必要な収入
- 何歳くらいまで働きたいか
「年齢が高いから紹介してもらえる仕事なら何でも」と考える必要はありません。
定年後だからこそ、長時間働けるかよりも、生活を崩さず続けられるかを優先してよいのです。
年金を受けながら働く場合は、手取りを勤務先と年金事務所で確かめます
清掃の仕事を始めるとき、「働いたら年金が全部止まるのでは」と心配になる方もいます。
働いただけで老齢基礎年金が一律に止まるわけではありません。ただし、厚生年金に加入して働きながら老齢厚生年金を受ける方は、賃金と老齢厚生年金の額によって、老齢厚生年金の一部または全部が支給停止になる場合があります。
2026年度は、老齢厚生年金の基本月額と総報酬月額相当額の合計が月65万円を超える場合が支給調整の対象です。実際の計算には賞与や標準報酬月額も関わります。
短時間の清掃パートで必ず年金が減るという意味ではありません。
求人を決めるときは、次の点を勤務先や年金事務所で確かめます。
- 勤務先の社会保険へ加入する条件に当てはまるか
- 月の給与と賞与はいくらになる見込みか
- 厚生年金へ加入した場合、年金額へどのように影響するか
- 健康保険料や厚生年金保険料を引いた手取りはいくらか
短時間労働者の社会保険加入は、勤務先の規模、週の所定労働時間、雇用期間の見込みなどによって扱いが変わります。勤務時間だけを見て自己判断せず、採用担当者や年金事務所へ個別に聞いてください。
採用された最初の1か月は、速さより手順を覚えます
働き始めると、先輩が自分よりずっと速く作業しているように見えます。
「同じ速さで動かなければ」と焦ると、洗剤を間違える、道具につまずく、拭き残しを見落とすなど、かえって失敗しやすくなります。
初めの1か月は、次の順番で覚えていきます。
- 道具の置き場所と使い分けを覚える
- 清潔な場所と汚れやすい場所で道具を分ける
- 決められた清掃順序を守る
- 分からない汚れや危険物には勝手に触らない
- 終了時の報告方法を覚える
- 慣れてから移動や作業の無駄を減らす
家でのやり方と職場の手順が違っていても、「こちらの方がきれいになる」と自己流に変えない方が安全です。
施設によって、使える洗剤、拭く順番、道具の色分け、消毒方法などが決められています。
メモを取ることを恥ずかしがる必要はありません。自分が分かる言葉で、「青いクロスは洗面台」「ごみ回収は最後」などと書き、帰宅後に見返します。
「続けられるか」は、仕事中より帰宅後の生活で判断します
初日は緊張しているため、疲れていても動けてしまうことがあります。
本当に合っているかは、働き始めて2週間から1か月ほどの生活全体を見て判断します。
| 続けやすい状態 | 働き方を見直したい状態 |
|---|---|
| 一晩休めば疲れが軽くなる | 次の勤務日まで痛みや疲労が残る |
| 食事や入浴など普段の生活ができる | 帰宅後は横になったまま何もできない |
| 手順を少しずつ覚えられている | 急かされ続け、説明を聞く時間がない |
| 困ったときに責任者へ聞ける | 一人にされ、事故や苦情にも助けがない |
| 休憩や水分補給ができる | トイレや水分を我慢しなければ終わらない |
| 給与と負担が自分の目的に合っている | 交通費や準備時間を含めると割に合わない |
合わない部分があっても、すぐに「自分には清掃ができない」と決めなくて大丈夫です。
ホテルの客室清掃はきつくても、マンションの共用部なら続けられるかもしれません。早朝勤務は合わなくても、午前10時からの巡回清掃なら生活に合うかもしれません。
一つの現場が合わなかったことと、清掃の仕事全体に向いていないことは別です。
今日することは、求人へ応募する前に「できない条件」を三つ書くことです
仕事探しでは、できることや経験を書こうとします。
けれど、定年後の清掃で長く働くためには、無理になる条件を先に知っておくことも役に立ちます。
紙に、次のように三つ書いてみてください。
- 朝6時より前に家を出る勤務は避ける
- 重いごみを持って階段を上る現場は避ける
- 最初から週5日の勤務は選ばない
その下に、希望する条件を三つ書きます。
- 自宅から30分以内
- 週2~3日、一日3時間程度
- 現場を見てから応募を決められる
これだけでも、求人広告の見え方が変わります。
清掃の仕事は、目立つ仕事ではないかもしれません。それでも、誰かが気持ちよく建物を使えるように、毎日の暮らしを下から支える仕事です。
長年働いてきたあとに、もう一度新しい仕事を覚えるのですから、最初から速くできなくても当然です。
年齢を理由に無理だと決める必要も、採用してもらうために無理な条件を引き受ける必要もありません。
まずは一つ、気になる求人の「場所」「担当範囲」「勤務時間」を丸で囲んでください。分からない部分を電話か面接で聞き、実際の現場を見てから決める。その慎重さが、定年後の仕事を長く続ける力になります。
出典・確認先メモ
- 厚生労働省「職業情報提供サイト(job tag)・ビル清掃」:清掃業務の内容、入職時の資格、仕事の特徴を確認する際の参考。
- 厚生労働省「高年齢者の労働災害防止のための指針」:高年齢者の身体特性に配慮した作業環境や安全対策の確認先。
- 厚生労働省「労働契約の締結」「人を雇うときのルール」:労働条件通知書、契約期間、仕事内容、勤務時間、賃金などの確認先。
- 厚生労働省「生涯現役支援窓口事業」:おおむね60歳以上の再就職支援、求人紹介、職場見学などの確認先。
- 全国シルバー人材センター事業協会:シルバー人材センターの就業形態や仕事の仕組みの確認先。
- 日本年金機構「在職老齢年金」「短時間労働者の社会保険適用」:年金を受けながら働く場合や社会保険加入に関する確認先。


















