面接日が決まり、求人票をもう一度開く。
勤務時間は午前9時から午後6時。残業は月10時間程度。仕事内容も、これまでの経験を生かせそうです。
ただ、親御さんの通院が月に二回ある。デイサービスから急に連絡が来る日もある。面接で話せば、「休みが多そうだ」と思われるかもしれません。
だからといって、何も言わずに入社し、後から勤務時間を変えてほしいと頼むのも気が引けます。
「正直に全部話すべきか」「不利になることは黙っておくべきか」と考え始めると、面接で何を答えても間違いになるように感じます。
ここで分けたいのは、介護をしているという家庭の事情と、その事情が仕事へ与える具体的な影響です。
伝えるかどうかは「介護の有無」より勤務への影響で決めます
介護中であること自体を、すべての応募先へ申告する必要はありません。
厚生労働省は、公正な採用選考では、応募者の適性や能力と関係のない家族・家庭環境などを面接で把握しないことが重要だと示しています。
一方で、応募先が求める勤務条件に対応できない可能性があるなら、その点まで伏せたまま入社するのは、本人にも職場にも負担が残ります。
| 現在の介護状況 | 面接での扱い | 伝える内容 |
|---|---|---|
| 介護サービスや家族分担が整い、求人票どおり働ける | 自分から介護の詳細を話さなくてもよい | 勤務可能時間や入社可能日を通常どおり答える |
| 特定の曜日、残業、夜勤などに制約がある | 採用前に伝えた方がよい | 難しい勤務と、対応できる範囲を具体的に示す |
| 急な呼び出しが頻繁で、勤務継続の見通しがまだ立たない | 応募を急ぐ前に介護体制も見直す | 現在の支援、代わりに動ける人、緊急時の対応を整える |
同じ「親を介護している人」でも、週五日働ける人と、毎週決まった時間に通院付き添いがある人では、伝えるべき内容が違います。
面接で説明する中心は、親御さんの病名や介護度ではなく、「いつ働けるか」「何が難しいか」「難しいときにどう対応するか」です。
求人票の四項目と、今の生活を照らし合わせます
面接で話す内容を決める前に、求人票の次の部分を見ます。
- 始業・終業時刻と、シフト変更の有無
- 残業、早出、夜勤、休日出勤の頻度
- 勤務地の変更や転勤の可能性
- 試用期間中を含む休日・休暇の扱い
たとえば、平日午前9時から午後5時までなら働けても、午後6時以降は親御さんの食事介助がある。土曜日は家族が代わってくれるが、日曜日は難しい。
このように、生活上の制約を勤務条件の言葉へ置き換えます。
「介護が大変です」とだけ伝えても、面接担当者には何ができて、何が難しいのか分かりません。
反対に、実際には毎週水曜日の午後が難しいのに、「何曜日でも大丈夫です」と答えると、入社後すぐに勤務変更を頼むことになります。
採用されるために無理な約束をするより、継続して働ける条件を示す方が、長い目では誠実です。
面接では、事情・勤務可能範囲・対応策の順で短く話します
介護のことを伝える場合でも、家庭の経緯を最初から詳しく説明する必要はありません。
次の三つが分かれば、勤務との関係を判断してもらえます。
事情:家族の介護を担っていること
勤務可能範囲:対応できる曜日、時間、残業など
対応策:介護サービス、家族分担、緊急時の連絡体制
求人票どおり勤務できる場合は、次の程度で足ります。
「家族の介護をしていますが、現在は介護サービスと家族の分担が整っています。記載されている勤務時間で、週五日の勤務が可能です」
決まった曜日に制約があるなら、難しい条件だけで終わらせません。
「母の通院付き添いが月二回、水曜日の午後にあります。その日は半日休暇などの調整を希望しますが、それ以外は通常勤務が可能です。予約日は前月までに分かります」
残業に制限がある場合も、曖昧に「できません」と言うより、範囲を示します。
「通常は午後6時まで勤務できます。事前に分かる残業は月に数回であれば家族と調整できますが、毎日の残業は難しい状況です」
実際にはできないことまで、「調整できます」と約束しないでください。
親御さんの病名や排泄・認知症状まで話す必要はありません
真面目な方ほど、事情を理解してもらうために詳しく話そうとします。
しかし、面接担当者が勤務条件を判断するために、親御さんの診断名、服薬、排泄介助、家族関係まで知る必要があるとは限りません。
詳しく話しすぎると、本人も答えながら苦しくなり、面接の中心である経験や能力を伝える時間が減ります。
家族の状態について聞かれたときは、勤務への影響へ戻せます。
「家族の詳しい病状については控えますが、勤務への影響は月二回の通院付き添いです。それ以外は通常どおり勤務できます」
「介護の内容ではなく、働ける条件についてお答えします。平日の日中勤務と、事前に分かる残業には対応可能です」
隠し事をしているのではありません。仕事に必要な範囲へ答えを絞っているだけです。
「急に休むことはありますか」には、ゼロと言い切らない方がよい
介護では、転倒、発熱、サービス事業所からの呼び出しなど、予定外の出来事が起こる場合があります。
とはいえ、「急に休むかもしれません」とだけ答えると、頻度や対策が分かりません。
まず、現在の体制を説明します。
「緊急の連絡が入る可能性はありますが、日中は訪問介護と家族の連絡体制があります。私しか対応できない場合には、分かった時点ですぐ職場へ連絡します」
過去の頻度も、分かる範囲で伝えられます。
「この半年で、予定外に付き添ったのは二回です。現在はケアマネジャーとも対応方法を見直しています」
まだ体制が整っておらず、毎週のように呼び出されている場合は、面接の答え方だけで解決しようとしない方がよいでしょう。
誰から連絡を受けるのか、本人以外に誰が動けるのか、救急時はどうするのかを、家族やケアマネジャーと決める必要があります。
介護離職や職歴の空白は、辞めた理由より現在の就業可能性を伝えます
親御さんの介護で退職した方は、前職を辞めた理由を話すと、「また同じことが起きるのでは」と思われそうで言いにくいことがあります。
退職理由を隠すために不自然な説明を作る必要はありません。
ただし、過去の大変さだけで話を終えず、現在何が変わったのかまで伝えます。
「前職は、父の介護体制が整っておらず退職しました。現在は要介護認定を受け、デイサービスと家族の分担が決まっています。平日の勤務を継続できる見通しが立ったため、再就職を希望しています」
空白期間中に行っていたことも、事実の範囲で加えられます。
「介護をしながら、以前の業務で使っていたパソコン操作を復習し、現在は週五日勤務へ戻れる生活リズムを整えています」
「家族のために仕方なく辞めました」と長く説明するより、今は働ける状態なのかを明確にした方が、採用側も判断しやすくなります。
入社後の介護制度を、採用前から使える前提にしない
育児・介護休業法には、介護休業、介護休暇、残業や深夜業の制限、短時間勤務など、仕事と介護を両立するための制度があります。
2025年4月からは、労働者が介護に直面したと申し出た場合、事業主が制度を個別に知らせ、利用意向を確かめることなども義務化されています。
ただし、制度によって対象となる家族、雇用期間、週の勤務日数、申出期限などの条件が異なります。労使協定によって、継続雇用期間が短い労働者などが一部制度の対象外になる場合もあります。
そのため、「入社したらすぐ介護休業を取ればよい」と考えて勤務条件を曖昧にするのは避けてください。
制度を尋ねるときは、介護を詳しく告白する必要はありません。
「御社の介護休暇、短時間勤務、所定外労働の制限について、対象要件と申出先を教えていただけますか」
求人票や会社案内に載っていなければ、内定後から入社承諾前に、就業規則や制度案内を確認する方法もあります。
制度を尋ねる時期は、必要度によって変えます
入社初日から勤務時間の配慮が必要なら、面接中に伝えます。内定後まで伏せると、採用条件そのものが合わない可能性があるからです。
現在は求人票どおり働けるものの、将来のために制度を知りたい程度なら、面接の最後や内定後に質問できます。
質問するときは、「休みたい人」と受け取られないように取り繕う必要はありません。ただ、制度名だけを次々聞くより、長く働くための確認だと伝えると意図が明確です。
「長期的に勤務するため、仕事と介護を両立する制度について確認させてください。利用実績ではなく、申出先と対象条件を知りたいです」
制度があるかだけでなく、誰へ申し出るのか、シフト職でも使えるのか、試用期間中の扱いはどうなるのかまで聞きます。
介護を伝えたときの反応も、職場を選ぶ材料になります
面接担当者が、その場ですべての制度を把握しているとは限りません。
すぐ答えられず、「担当部署へ確認します」と言われること自体は、不自然ではありません。
一方、次のような反応がある場合は、入社後も両立が難しくないか慎重に見ます。
- 家族構成や親御さんの病状を必要以上に尋ねる
- 介護を理由に応募を取り下げるよう促す
- 「休む人は困る」とだけ言い、勤務条件の話を聞かない
- 求人票と異なる長時間残業を、その場で当然の条件として示す
- 制度の利用者を批判するような発言がある
採用されることだけを優先すると、働き始めてから同じ問題へ直面します。
面接は、自分が評価される場であると同時に、介護と仕事を続けられる職場かを見る場でもあります。
不適切な家族質問には、勤務可能性へ答えを戻します
「親御さんは何歳ですか」「ごきょうだいは何をしているのですか」「家族の介護は女性がするものではありませんか」など、仕事との関係が分からない質問を受ける場合があります。
厚生労働省は、採用選考で家族や家庭環境など、応募者の適性・能力と関係のない事項を把握することは、就職差別につながるおそれがあるとしています。
その場で面接担当者を問いただすのが難しければ、勤務条件へ戻して答えます。
「家族についての詳しい説明は控えますが、業務上必要な勤務条件には対応可能です」
「今回の職務に関する点であれば、残業と休日勤務への対応についてお答えします」
質問が繰り返され、応募を続けるか迷う場合は、日時、会社名、質問内容を記録しておきます。募集・採用を含む労働問題は、都道府県労働局の総合労働相談コーナーなどへ話を持ち込めます。
採用後に介護状況が変わったら、限界まで隠さず早めに伝えます
入社時には問題がなくても、親御さんの入院や認知機能の変化によって、介護の負担が増えることがあります。
遅刻や欠勤が続いてから事情を話すより、勤務へ影響する可能性が見えた時点で、上司や人事など社内の申出先へ伝えます。
「母の介護状況が変わり、来月から月二回の通院付き添いが必要になる見込みです。利用できる制度と、勤務の調整方法を教えてください」
介護休業等を申し出たり、制度を利用したことを理由とする解雇や降格などの不利益な取扱いは、育児・介護休業法で禁止されています。
ただし、希望する働き方がすべてそのまま認められるという意味ではありません。利用要件、申出時期、業務上可能な調整を、会社の窓口と具体的に話します。
面接前の今夜は、求人票の四項目へ○△×を付けます
面接で介護を話すかどうかを、今夜決め切る必要はありません。
応募先の求人票を開き、勤務時間、残業、休日、勤務地の四項目に印を付けます。
そのまま対応できる条件は○、調整すれば対応できる条件は△、現在は難しい条件は×です。
次に、△と×について一文ずつ用意します。
「毎週水曜日の午後は難しいですが、それ以外の平日は勤務できます」
「急な連絡には家族が一次対応し、私しか動けない場合は分かった時点で職場へ連絡します」
介護を隠すか、すべて話すかの二択にする必要はありません。
仕事に影響する部分だけを、できることと対策まで含めて伝える。その準備ができれば、家庭の事情を必要以上に差し出さず、働き続けられる条件を面接で確かめられます。


















