親戚の名前が並んだスマートフォンの連絡先を、上から何度も見直す。
父の兄には知らせるべきだろう。何年も会っていない従姉にはどうする。母の妹を呼ぶなら、その夫にも声をかけるのか。一人を呼べば、「なぜ私は呼ばれなかったの」と別の親戚から言われるかもしれない。
ご家族が亡くなった直後は、死亡届、火葬、葬儀社との打ち合わせ、遺影、宗教者への連絡など、決めることが次々に出てきます。
その中でも、答えが一つに決まらないのが、誰に参列してもらうかです。
故人を静かに見送りたい気持ちがある。一方で、親戚へ知らせず、後から責められるのも怖い。呼ぶ人数を増やせば、ご家族の対応や費用も増えます。
どちらを選んでも、誰かへの配慮が欠けているように感じてしまうことがあります。
けれど、全員が納得する線を探し続けていると、限られた時間の中で、ご遺族が疲れ切ってしまいます。
必要なのは、誰からも何も言われない決め方ではなく、ご家族が理由を説明できる決め方です。
「家族葬」という名前だけでは、呼ぶ範囲は決まりません
家族葬と聞くと、同居家族だけの葬儀を想像する方もいます。
実際には、配偶者と子どもだけで行う場合もあれば、故人のきょうだい、叔父・叔母、甥・姪、親しかった友人まで招く場合もあります。
「二親等まで」「親族十人まで」といった一律の決まりがあるわけではありません。葬儀社のプラン名に家族葬と書かれていても、参列できる人数や範囲は、会場と契約内容によって異なります。
そのため、「家族葬だから叔父は呼ばない」「三親等だから呼ぶ」と親等だけで決めると、故人との実際の関係が抜け落ちることがあります。
親等が遠くても毎週電話をしていた人もいます。反対に、近い親族でも長年交流がなく、連絡そのものがご家族の負担になる場合があります。
家族葬の参列範囲は、親族の肩書ではなく、「故人とどのような時間を過ごしてきた人か」を中心に決めます。
親戚の名前を、三つの連絡先に分けます
悩みやすい原因の一つは、「知らせること」と「参列をお願いすること」を同じものとして考えている点です。
親戚への対応は、次の三つに分けられます。
| 分け方 | 該当しやすい人 | 伝える内容 |
|---|---|---|
| 参列をお願いする | 故人と親しく、最期の別れに立ち会ってほしい人 | 死亡の事実、日時、場所、葬儀形式、香典などの扱い |
| 訃報は伝えるが、参列はお願いしない | 早く知らせる必要はあるが、葬儀は限られた人数で行いたい人 | 家族葬で行うこと、参列辞退のお願い、香典・供花の扱い |
| 葬儀後に知らせる | 交流が少なく、事前に知らせると参列対応が必要になる人 | 亡くなった日、葬儀を済ませたこと、生前のお礼 |
訃報を事前に伝えれば、相手は「葬儀へ行くべきだろうか」と考えます。
参列をお願いしないのであれば、死亡の事実だけを伝えて終わらせず、家族葬であることと、参列を遠慮してもらいたいことまで明確に伝えてください。
反対に、葬儀後の報告でよい関係なら、無理に当日までに連絡する必要はありません。連絡する人数を絞ることは、故人との関係を否定することではなく、葬儀当日の対応を現実的な範囲に収める判断です。
迷う親戚ごとに、四つの問いを当てはめます
名前を一人ずつ見ながら、次の四点を考えます。
- 故人は、その人に最期に会ってほしいと思っていたか
- 直近数年で、電話、訪問、年賀状などの交流があったか
- 呼ばなかった場合、本人だけでなく他の親族関係にも影響するか
- 参列してもらうことで、ご遺族が対応しきれなくならないか
すべてに「はい」と答えられる人から優先する必要はありません。
たとえば、交流は減っていても、故人のきょうだいには最期に会ってほしいと考えるご家族もいます。一方、血縁は近くても、長期間の絶縁や深刻な争いがあり、連絡しない方が安全な場合もあります。
「世間ではどうするか」より、故人との関係と、ご遺族が対応できる範囲を重ねて考えてください。
故人のきょうだいは、親等だけで外さない方がよいことがあります
父親や母親のきょうだいに当たる叔父・叔母は、喪主から見ると少し離れた親戚に感じるかもしれません。
しかし、故人にとっては、子どもの頃から一緒に育った兄弟姉妹です。
長年会っていなくても、亡くなったことを葬儀後に初めて知れば、「最後に顔を見たかった」と感じる可能性があります。
故人のきょうだいを呼ぶか迷う場合は、喪主との付き合いではなく、故人本人との関係を見ます。
- 最近も電話や年賀状のやり取りがあった
- 病気や入院について知らせていた
- 故人が生前、名前をよく口にしていた
- 過去の家族の葬儀では互いに参列していた
高齢や遠方で参列が難しそうな場合も、家族側だけで「来られないだろう」と決めない方法があります。
「無理に来てほしいということではありません。ただ、最期のお別れを希望されるかと思い、先にお知らせしました」
参列するかどうかは相手に委ね、移動や体調への心配も添えます。
従兄弟・甥・姪は、家単位ではなく故人との交流を見ます
「叔父を呼ぶなら、その子どもである従兄弟も全員呼ばなければならないのか」と迷うことがあります。
必ずしも、一つの親族世帯を全員招く必要はありません。
故人と直接交流のあった方だけへ声をかける方法もあります。ただし、同じきょうだいの中で一人だけ招く場合は、理由が伝わらないと不公平に受け取られることがあります。
一人だけ故人の介護を手伝っていた、頻繁に見舞いへ来ていたなど、明確な関係があるなら、その事実をご家族内で共有しておきます。
一方、交流に大きな違いがないなら、次のどちらかへそろえた方が説明しやすくなります。
- その世帯の代表者一人へ参列をお願いする
- その世代には葬儀後にまとめて報告する
人数を抑える必要がある場合は、「あなたは呼ぶけれど、ほかのきょうだいへは知らせないで」と秘密を求めるより、連絡方針をそろえた方が後の負担を減らせます。
疎遠な親戚を無理に呼ばなくても構いません
何年も連絡を取っていない親戚を呼ぶべきか迷うこともあります。
「血がつながっているから」という理由だけで連絡すると、ご遺族が相手の住所や家族構成を調べ、過去の関係まで説明しなければならなくなることがあります。
交流がなく、故人も連絡を望んでいなかったのであれば、葬儀後の報告とする判断もできます。
ただし、単に仲が悪いというだけでなく、暴力、金銭問題、つきまといなど、安全上の事情がある場合は別です。葬儀場所や自宅住所を伝えることで問題が起こる可能性があるなら、無理に連絡せず、葬儀社にも事情を伝えてください。
親族だからといって、葬儀の場所や予定を必ず知らせなければならないわけではありません。
一人を呼ぶと親戚中へ伝わりそうな場合は、先に範囲を伝えます
親戚へ電話を一本入れた後、本人の善意でほかの親族へ一斉に連絡が回ることがあります。
その結果、予定していなかった方から「私も参列します」と連絡が入り、座席、料理、返礼品を急いで増やすことになるかもしれません。
連絡を広げてほしくない場合は、最初の電話で伝えます。
「今回は会場の都合もあり、こちらからお声がけした方だけで見送る予定です。ほかのご親戚への連絡は、葬儀後にこちらから行います」
ただし、「絶対に誰にも言わないで」と強く口止めすると、相手も戸惑います。
秘密にしたいのではなく、連絡の混乱を避けるためにご遺族側でまとめる、と説明してください。
家族内で意見が割れたら、参列基準を一文にします
喪主は少人数を希望している。配偶者は親戚へ失礼がないかを気にしている。きょうだいの一人は、「父なら皆を呼んだはずだ」と言う。
このような場面で、親戚一人ひとりの好き嫌いを話し始めると、葬儀の相談が過去の家族関係の話へ変わってしまいます。
まず、今回の基準を一文にします。
「故人と直近まで交流があり、本人が会いたいと思っていた親族へ参列をお願いする」
「故人のきょうだいまで案内し、それより下の世代には葬儀後に伝える」
「会場に入れる十五人を上限として、故人との関係が深い順に案内する」
基準を決めたら、個別の例外だけを話します。
全員が心から納得しなくても、「今回はこの基準で進める」と合意できれば、連絡を始められます。
話が終わらない場合は、次の言葉で区切って構いません。
「親戚関係の結論を今日すべて出すのではなく、葬儀へ案内する人だけを今決めたい」
参列をお願いするときは、判断に必要な情報を一度に伝えます
訃報を受けた親戚は、悲しみながらも、すぐ予定、交通、服装、香典などを考えます。
何度も電話を往復しなくて済むよう、次の内容をまとめて伝えます。
- 故人の氏名と亡くなった日時
- 通夜・葬儀の日時
- 会場名と住所
- 家族葬で行うこと
- 参列をお願いしたいこと
- 香典、供花、供物を受け取るか
- 返信や出欠連絡が必要な期限
電話では、次のように伝えられます。
「父の〇〇が、本日亡くなりました。葬儀は家族葬で行いますが、生前お世話になった叔父さんには、ぜひお別れに来ていただければと思っています」
参列を義務のように伝えず、遠方や体調への配慮も添えます。
「遠方ですので、どうか無理はなさらないでください。参列が難しい場合も、気になさらないでください」
呼ばない親戚へ事前に知らせるなら、参列辞退まで明確に伝えます
「家族葬で行います」とだけ伝えても、相手は自分が家族の範囲に含まれるのか判断できません。
参列をお願いしない場合は、曖昧にせず、しかし拒絶に聞こえない言葉を選びます。
「母〇〇が亡くなりました。葬儀は近親者のみの家族葬で執り行います。勝手ながら、ご参列はご遠慮いただきたくお願いいたします」
「故人と家族の希望により、葬儀はごく限られた人数で行います。葬儀後、改めてご報告いたします」
故人が実際に希望していなかったのに、「故人の強い遺志です」と説明するのは避けてください。
後から別の話が伝わると、親戚間の不信につながります。「遺族で話し合い、少人数で行うことにした」と正直に伝える方がよい場合があります。
香典・供花・弔電を辞退するかも、連絡時に決めます
参列を断られた親戚は、せめて香典や供花を送りたいと考えることがあります。
受け取るかどうかを決めていないと、電話を受けたご家族ごとに回答が変わってしまいます。
次の項目について、葬儀社とも話しておきます。
- 香典を受け取るか
- 供花や供物を受け取るか
- 弔電を受け取るか
- 後日の弔問を受けるか
- 辞退する場合、どの範囲まで辞退するか
すべて辞退する場合は、次のように伝えます。
「誠に勝手ながら、香典、供花、供物につきましても辞退させていただきます。お気持ちだけありがたく頂戴いたします」
弔電のみ受け取る、供花は葬儀社を通した物のみ受け取るなどの対応もあります。会場へ直接届く物については、葬儀社へ受付期限と送り先を確認してください。
葬儀後に知らせる場合は、先送りしすぎないようにします
家族葬を終えた後、ご遺族は役所、保険、銀行、住居などの手続きに追われます。
親戚への報告が後回しになり、別の人から訃報が伝わると、「なぜ知らせてくれなかったのか」と感じさせることがあります。
すぐ長文を書く必要はありません。
「父〇〇は〇月〇日に永眠し、葬儀は家族のみで執り行いました。ご報告が葬儀後となりましたことをご容赦ください。生前に賜りましたご厚情に、心より御礼申し上げます」
必要に応じて、後日の弔問やお別れの機会についても添えます。
- 自宅への弔問を受ける
- 四十九日法要などで会う
- 納骨後に墓所を知らせる
- 香典や供花は辞退する
- 落ち着いてから故人の思い出を聞く
葬儀へ呼ばなかったことと、その後も関係を断つことは同じではありません。別れの機会を葬儀当日以外に設けることで、親戚の気持ちが落ち着く場合もあります。
「なぜ呼んでくれなかったの」と言われたときは、正しさを争いません
葬儀後、親戚から強い言葉を受けることがあります。
その場で、「家族葬なのだから呼ばなくて当然です」「何年も会っていなかったでしょう」と言い返すと、葬儀の話が親族間の争いへ広がります。
まず、相手が最後に会えなかったことを残念に思っている点を受け止めます。
「最後に会いたかったお気持ちは分かります。こちらも短い時間で決めることが多く、今回は限られた人数で見送る判断をしました」
「知らせるのが遅くなり、申し訳ありません。呼びたくなかったということではなく、家族で対応できる範囲に絞りました」
何度説明しても責め続けられる場合は、長く議論しなくて構いません。
「ご意見は受け止めます。ただ、葬儀は既に終わっており、この決定についてこれ以上言い争うことは控えたいです」
故人を送った直後のご遺族が、すべての親戚の感情を引き受ける必要はありません。
人数を決める前に、葬儀社へ変更期限を聞いてください
参列人数は、座席だけに関係するものではありません。
- 式場の広さ
- 火葬場へ移動する車両
- 通夜振る舞いや精進落としの料理
- 会葬礼状や返礼品
- 供花を置く場所
- 宿泊や送迎
人数が増えると、プランや会場自体の変更が必要になることもあります。
国民生活センターは、「家族葬だから安い」と思って契約したものの、広告より高額になった、見積書に明細がなく追加費用が発生した、といった相談事例を公表しています。
参列人数を葬儀社へ伝えるときは、確定人数と、増える可能性のある人数を分けます。
「確定しているのは十二人です。親戚から最大五人増える可能性があります。料理、返礼品、車両はいつまで変更できますか」
人数が未確定でも、見積もりを出してもらえます。
家族葬というプラン名だけで判断せず、参列者が増えた場合の追加額、料理や返礼品の単価、式場変更の条件を明細で見てください。
今は、最も迷う親戚を三人だけ分けます
親戚全員の名前を一度に並べると、決められなくなります。
まず、最も迷っている三人について、次のどこへ入るかだけ決めてください。
- 参列をお願いする
- 訃報は伝えるが、参列はお願いしない
- 葬儀後に知らせる
決められない人には、横に「故人との最終連絡はいつか」「呼ばなかったとき、誰へ話が伝わるか」を付けます。
その後、葬儀社へ一つだけ尋ねます。
「参列人数は、いつまで変更できますか」
期限が分かれば、今すぐ決める人と、翌日まで考えられる人を分けられます。
家族葬の参列者を決めることは、親戚の順位を付ける作業ではありません。限られた時間と場所の中で、故人との別れをどう整えるかを決める作業です。
全員の気持ちを一度に満たせなくても、基準を持ち、必要な言葉を添えて連絡することはできます。まず三人。そこから先へ進めれば十分です。















