先月は1万8,000円だった介護サービスの請求が、今月は3万1,000円になっている。
親御さんへ聞いても、「いつもと同じだと思う」と言います。ケアマネジャーから何か説明を受けた気もするけれど、通院や仕事に追われ、内容までは覚えていません。
このまま毎月増えたら払えない。そう思うと、デイサービスを一日減らす、ショートステイをやめるなど、すぐ利用を削りたくなります。
ただ、そのサービスによって入浴できていたり、食事や服薬を見てもらえていたり、ご家族が仕事を続けられていたりすることがあります。
先に確かめたいのは、介護が必要かどうかではありません。
先月から、何の料金が、いくら増えたのか。
原因が分かれば、必要な支援を残しながら、回数、時間、事業所、保険外費用などを見直せます。
先月より高くても、すぐに介護サービスを減らさないでください
介護費用が増えると、「利用しすぎているのでは」と考えがちです。
しかし、請求額の増加が利用回数によるものとは限りません。
介護保険サービスの利用者負担は原則として費用の1割で、一定以上の所得がある方は2割または3割です。これに加えて、食費、居住費、日用品、保険外サービスなどが請求される場合があります。
さらに、要介護度ごとに定められた支給限度額を超えた部分は、原則として全額自己負担です。
つまり、同じ「3万円の増加」でも、原因によって対処が違います。
- サービスを利用する日数が増えた
- 1回の利用時間や支援内容が変わった
- 自己負担割合が1割から2割・3割へ変わった
- 支給限度額を超えた
- 食費や宿泊費など、介護保険外の費用が増えた
内容を見ずにサービスを減らすと、費用があまり下がらないのに、親御さんの生活とご家族の負担だけが悪化することがあります。
二か月分の請求書を横に並べると、増えた場所が見えてきます
用意するのは、現在の請求書と前月の請求書です。
事業所が複数ある場合は、訪問介護、デイサービス、ショートステイ、福祉用具など、同じ事業所の書類同士を比べます。
| 増えた欄 | 考えられる原因 | 確かめる相手 |
|---|---|---|
| 利用日数・回数 | 訪問、通所、宿泊などが追加された | ケアマネジャー、サービス事業所 |
| 利用者負担額 | 負担割合が変わった、利用量が増えた | 市区町村、ケアマネジャー |
| 保険給付対象外 | 食費、居住費、日用品、自費サービスなど | 請求した事業所 |
| 限度額超過分 | 要介護度別の支給限度額を超えた | ケアマネジャー |
| 加算・その他費用 | 提供体制、支援内容、送迎、キャンセルなどによるもの | サービス事業所 |
請求書だけで分からなければ、サービス利用票や別表、利用明細も一緒に見ます。
書類の名称や表示方法は事業所によって異なります。項目名が難しいときは、ご家族だけで制度を読み解こうとせず、増えた欄へ印を付けて質問すれば構いません。
「合計が高い」ではなく、「前月より増えた項目」を見つけます。原因が一つとは限らないため、保険内の自己負担と、食費などの保険外費用を分けてください。
利用日数が増えたなら、追加した目的まで確かめます
デイサービスが週2回から3回になった。訪問介護の時間が延びた。家族の出張中にショートステイを使った。
このような変更があれば、費用が増えるのは自然です。
ただし、「回数が増えたから元へ戻す」と決める前に、その変更によって何を補っていたのかを見ます。
- 一人で入浴するのが危険になった
- 食事を取らない日が増えた
- 服薬忘れが続いていた
- 家族が介護のため仕事を休んでいた
- 夜間や休日を含め、家族が休めない状態だった
- 退院後の一時的な支援として回数を増やした
退院直後や体調を崩した月だけ、一時的に利用が増えている場合もあります。
ケアマネジャーには、次のように聞いてください。
「先月追加したサービスは、何を防ぐためのものでしたか。今後も同じ回数が必要なのか、一時的な利用だったのか教えてください」
追加の理由が分かれば、回数を戻せるのか、別の支援へ置き換えられるのかを考えられます。
要介護度が変わっても、請求額が同じ割合で増えるとは限りません
要介護1から要介護2になったため、料金が急に高くなったと思うことがあります。
要介護度が上がると、利用できる居宅サービスの支給限度額は増えます。しかし、限度額が増えただけで、自動的に上限まで請求されるわけではありません。
実際の費用は、利用したサービスの種類、回数、時間、事業所の地域、加算などによって決まります。
一方、施設サービスや小規模多機能型居宅介護など、要介護度によって月額の基本部分が変わるサービスもあります。
認定結果が変わった月は、次の二つを分けて聞きます。
「要介護度が変わったことで増えた基本料金はいくらですか」
「サービス内容を増やしたことで増えた金額はいくらですか」
要介護度の変更と、ケアプランの変更を一緒に扱わないことがポイントです。
負担割合が変わっていないか、負担割合証を見ます
利用回数が同じなのに、保険内の自己負担が大きく増えている場合は、「介護保険負担割合証」を見ます。
負担割合証には、ご本人の負担が1割、2割、3割のどれに当たるかが記載されています。
所得や世帯の状況により、以前は1割だった方が2割になるなど、負担割合が変わることがあります。
たとえば、介護サービスの総費用が月10万円なら、単純計算では1割負担で1万円、2割負担で2万円です。サービス内容が同じでも、請求額には大きな差が出ます。
ただし、すべての支払いがそのまま2倍になるとは限りません。高額介護サービス費の対象になる場合や、食費など別に計算される項目があるためです。
負担割合に疑問がある場合は、事業所ではなく、負担割合証を発行した市区町村の介護保険担当窓口へ尋ねます。
「介護サービスの利用内容は同じですが、負担割合が変わっています。判定に使われた所得と適用期間を確認したいです」
限度額を超えた分は、1割ではなく全額負担になることがあります
在宅で介護保険サービスを使う場合、要支援・要介護度ごとに、1か月に利用できるサービス量の目安となる「区分支給限度基準額」があります。
限度額の範囲内で利用した部分は、所得に応じて1割から3割を負担します。
一方、限度額を超えて利用した部分は、原則として超過分の全額を負担します。
限度額の近くまで利用している家庭では、訪問介護を一回追加しただけでも、請求額が予想以上に増えることがあります。
ケアマネジャーへは、金額を三つに分けてもらいます。
- 今月利用した介護サービスの総額
- 支給限度額の範囲内に収まっている金額
- 限度額を超えて全額自己負担になっている金額
「今月は限度額をいくら超えていますか。超過した原因になったサービスを教えてください」
限度額を超えたからといって、直ちにそのサービスが不要とは限りません。
家族が仕事を休んで代わりに介護する費用や、事故や入院を防ぐ役割まで含めて考えます。
食費・居住費・日用品は、介護保険の自己負担とは別です
デイサービス、ショートステイ、介護施設では、介護サービスの自己負担以外にも費用がかかります。
- 食費
- ショートステイや施設の居住費・滞在費
- 理美容や日用品などの実費
- 本人が希望した保険外のサービス
- 契約に基づく特別な居室や追加サービスの費用
ショートステイを利用した月だけ請求が増えた場合、介護サービス費よりも、宿泊日数分の食費や滞在費が大きく影響していることがあります。
保険外費用は、高額介護サービス費の計算に含まれないものがあります。
請求書では、次のように尋ねてください。
「この請求のうち、介護保険の対象になっている金額と、食費など対象外の金額を分けて説明してください」
また、2026年8月1日から、介護保険施設やショートステイを利用する一部の方について、食費・居住費の負担限度額や基準費用額が変更されます。
対象になる所得区分や増額幅は利用状況によって異なるため、8月以降に請求が変わった場合は、施設または市区町村へ「制度変更による増額か」を確かめてください。
高額介護サービス費で戻る可能性がある金額を確かめます
介護保険サービスの1か月の利用者負担が、所得区分に応じた上限額を超えた場合は、「高額介護サービス費」として超過分が支給される場合があります。
ただし、次のような費用は対象外となることがあります。
- 食費や居住費
- 日用品などの日常生活費
- 支給限度額を超えた全額自己負担分
- 福祉用具購入や住宅改修の自己負担分
そのため、請求額全体が高くても、すべてが上限計算の対象になるわけではありません。
支給を受けるには市区町村への申請が必要です。自治体によっては、初回申請後、対象月の超過分が指定口座へ支給される仕組みを取っています。
市区町村へ連絡するときは、介護保険被保険者証、負担割合証、請求書を手元に置きます。
「今月の介護保険サービスの自己負担が増えました。高額介護サービス費の対象になる金額と、申請の有無を確認したいです」
医療費と介護費の両方が高い家庭では、一年間の自己負担を合算する「高額医療・高額介護合算制度」の対象になる場合もあります。
施設やショートステイの食費・居住費には軽減制度があります
所得や資産などが一定以下の方が、介護保険施設やショートステイを利用する場合は、「介護保険負担限度額認定」により、食費や居住費の負担が軽減されることがあります。
この軽減は自動的に適用されるとは限らず、市区町村への申請が必要です。
以前は認定を受けていても、更新手続き、所得区分、預貯金などの条件により、今期は適用されていない可能性があります。
施設の請求が増えたときは、次の点を見ます。
- 負担限度額認定証の有効期間
- 施設へ認定証を提出しているか
- 今回の食費・居住費に認定額が反映されているか
- 所得や預貯金の条件が変わっていないか
市区町村民税が非課税だから必ず対象になる、とは限りません。配偶者の課税状況や預貯金なども判定に関係するため、市区町村へ個別に確かめてください。
減らすなら「安全を守る支援」と「調整できる支援」を分けます
原因を確かめても、家計上これまでのサービスを維持できない場合があります。
そのときは、すべてを同じように削らず、役割で分けます。
先に残すことを考えたい支援
- 食事や水分を確保する支援
- 服薬、排泄、清潔を保つ支援
- 転倒、火の不始末、徘徊などの危険を減らす支援
- 家族だけでは難しい入浴や身体介護
- 介護者が休み、仕事や治療を続けるための支援
調整できる可能性がある部分
- 一時的に増やしていた利用回数
- 同じ目的で重なっている支援
- 保険外で追加している作業や時間
- 本人が使っていない有料の備品やサービス
- 時間帯や提供方法を変えても目的を満たせる支援
回数を減らす以外にも、サービスの種類、時間、曜日、事業所、家族が担当する範囲を変える方法があります。
ただし、家族が引き受けることで節約する場合は、「誰が、週に何時間、いつまでできるか」まで決めます。
費用を下げた代わりに、一人の家族だけが仕事を休み続ける形では、長く続きません。
ケアマネジャーへは「安くして」ではなく、内訳と代替案を聞きます
ケアマネジャーは、請求を直接決める立場ではありません。
それでも、どのサービスがケアプランに入り、何の目的で利用しているのか、限度額をどの程度使っているのかを一緒に見直せます。
電話では、次のように伝えると話が具体的になります。
「介護費が先月1万8,000円、今月3万1,000円になりました。何がいくら増えたのか、保険内、限度額超過、保険外費用に分けて教えてください。そのうえで、安全を落とさず減らせる部分があるか考えたいです」
事業所へ直接聞く方がよい項目は、ケアマネジャーから案内してもらいます。
その場でサービスの中止を決める必要はありません。
「今日は内訳を持ち帰り、家族と本人に説明してから決めます」
そう伝えて構いません。
支払えないと分かったら、請求日を過ぎる前に伝えます
介護サービス費を払えず、黙ったまま請求を放置すると、事業所との話し合いが難しくなります。
全額を用意できないと分かった段階で、事業所とケアマネジャーへ連絡してください。
「今月の請求を期限までに全額支払うのが難しい状況です。支払いについて相談できることと、サービスを続けるために必要な手続きを教えてください」
分割などに対応できるかは、事業所や契約内容によって異なります。
介護費だけでなく、家賃、医療費、食費なども足りない場合は、市区町村の介護保険担当窓口だけでなく、自立相談支援機関へ家計全体を伝える方法があります。
また、食事、服薬、排泄、入浴などが保てず、サービスを止めることで親御さんの生命や身体へ危険が及ぶ場合は、費用だけを理由に急な中止をしないでください。
今夜は前月と今月の「最大の差額」を一つ見つけます
制度をすべて理解してから問い合わせる必要はありません。
前月と今月の請求書を並べ、最も増えている項目を一つだけ探してください。
その横に、次のどれかを書きます。
- 回数・日数が増えた
- 負担割合が変わった
- 限度額を超えた
- 食費・宿泊費などが増えた
- 項目の意味が分からない
「項目の意味が分からない」でも十分です。
翌日、ケアマネジャーまたは請求した事業所へ、こう伝えます。
「今月、この項目が前月より1万3,000円増えています。増えた理由と、来月も続く費用かを教えてください」
原因が分かってから、残す支援と変えられる支援を分けます。請求書を見た夜に、親御さんの暮らしを支えているサービスまで決めてしまう必要はありません。















