電話を切ったあと、「結局、何を待てばいいのだろう」が残る
親御さんが薬を飲み忘れるようになり、冷蔵庫には同じ食品がいくつも並んでいる。心配になって地域包括支援センターへ電話をすると、担当者は話を聞き、「こちらでも検討します」「必要があればご連絡します」と答えてくれた。
電話をする前より少し気持ちは軽くなったものの、受話器を置いたあとで疑問が残ります。
次はセンターから連絡が来るのか。家族からもう一度電話するのか。親御さんの家へ訪問してもらえるのか。それとも、介護認定の申請を自分で始めるのか。
相談したことで何かが動き始めたようにも感じますが、予定がはっきりしないまま数日過ぎると、「大したことではないと思われたのかな」「忙しいのに何度も電話したら迷惑ではないか」と、また一人で抱え始めることがあります。
地域包括支援センターへの相談は、支援の入口です。ただし、相談をしただけで、訪問、介護認定、サービス契約まで自動的に進むわけではありません。
相談後に最初に確かめたいのは、誰が、何を、いつまでに行うのかです。
相談後の進み方は、親御さんの状態によって分かれます
地域包括支援センターは、高齢者やご家族から介護、健康、福祉、生活上の困りごとを聞き、必要に応じて市区町村、医療機関、介護事業所などへつなぐ窓口です。
そのため、同じ「親のことが心配」という相談でも、その後の進み方は一つではありません。
| 相談後の流れ | 考えられる対応 | ご家族が確かめること |
|---|---|---|
| 情報を聞いて、いったん家庭で様子を見る | 使える制度、地域の教室、配食や見守りなどの案内を受ける | 何が起きたら再度連絡するのか |
| センターが詳しい状況を聞く | 再度の電話、来所面談、家庭訪問などが検討される | 連絡予定日、訪問時に本人が同席するか |
| 医療や別の福祉窓口へつなぐ | かかりつけ医、認知症の相談先、市区町村の担当課などが案内される | 家族が予約するのか、センターが連絡を取るのか |
| 要介護・要支援認定を申請する | 申請、認定調査、主治医意見書、判定へ進む | 申請する場所、必要書類、申請を手伝ってもらえるか |
| 安全確保を優先する | 虐待、消費者被害、行方不明のおそれなどについて関係機関と連携する | 今夜の安全を誰が確保するか、緊急連絡が必要か |
初回の電話だけで方向を決められない場合もあります。親御さんの体調、住まい、家族関係、本人の希望などを聞いたうえで、どの支援が合うかを検討するためです。
「まだ何も決まっていない」ことと、「何もしてもらえない」ことは同じではありません。ただし、ご家族が次の予定を知らないまま待ち続ける必要もありません。
最初に確かめたいのは、担当者・次の連絡・家族の宿題です
相談した内容を一からきれいにまとめ直すより、次の三つを確認する方が先です。
誰が相談を受け持っているのか
最初に電話へ出た人が、その後も担当するとは限りません。保健師、社会福祉士、主任ケアマネジャーなどが、内容に応じて連携することがあります。
電話の終わりに担当者名を聞けなかった場合は、かけ直して構いません。
「先ほど母のことで相談した者です。今後問い合わせる際に、どなた宛てに連絡すればよいか教えてください」
と聞けば十分です。
次に連絡するのは、センターと家族のどちらか
「また連絡します」という言葉だけでは、待つ期間が分かりません。
「次はセンターから連絡をいただけますか。それとも、こちらから連絡した方がよいですか」
「いつごろまで待ち、連絡がなければこちらから電話すればよいでしょうか」
と確認します。
担当者がその場で日付を決められないこともあります。その場合でも、「今週中」「関係先を確認してから」など、次の目安が分かれば待ち方が変わります。
次の連絡までに、ご家族が準備するもの
センターから連絡を待つ間に、家族が病院や施設を片っ端から探す必要はありません。まずは、担当者から求められた情報をそろえます。
- 親御さんの氏名、生年月日、住所、連絡先
- 一緒に暮らしている人と、離れて暮らすご家族
- かかりつけ医、受診中の病気、服薬内容
- 直近に起きた転倒、服薬忘れ、火の不始末、道迷いなど
- 食事、入浴、排泄、買い物、金銭管理で困っている場面
- 介護保険証や医療保険を確認できるもの
- 家族が対応できる曜日と、対応できない時間帯
介護の大変さを上手に説明しようとしなくても、実際に起きたことが分かれば、支援の必要性を検討しやすくなります。
相談後に残しておきたいメモは、「担当者名」「次の連絡予定」「家族が準備するもの」「状態が悪化した場合の連絡先」の四つです。
要介護認定を勧められたら、結果が出るまでにも段階があります
介護保険の訪問介護、デイサービス、ショートステイなどを利用するには、原則として要介護・要支援認定の申請が必要です。
地域包括支援センターから「介護認定を申請してみましょう」と言われても、その場で介護度や利用するサービスが決まるわけではありません。
一般的には、次のように進みます。
- 市区町村の窓口で要介護・要支援認定を申請する
- 市区町村の調査員などが、本人の生活や心身の状態を確認する
- 市区町村から依頼を受けた医師が主治医意見書を作成する
- 認定調査と主治医意見書などをもとに判定する
- 市区町村から要支援、要介護、非該当などの結果が届く
- 結果に応じてケアプランを作り、サービス事業所と契約する
申請から認定通知までは原則30日以内とされていますが、調査や主治医意見書の状況などにより、時間がかかる場合があります。
申請を誰が行うかも確認してください。自治体によっては、地域包括支援センターなどが申請手続きを手伝ったり、本人に代わって提出したりする場合があります。
65歳以上の方は介護保険被保険者証、40歳から64歳までの方が申請する場合は医療保険への加入を確認できる書類などが必要になります。実際の持ち物は自治体から案内された内容を優先してください。
認定結果によって、ケアプランを担当する人が変わります
認定後に在宅で介護サービスを利用する場合は、本人の状態や希望に合わせてケアプランを作ります。
要支援1・2の場合は、地域包括支援センターが介護予防サービス計画の作成を支援します。地域によっては、地域包括支援センターから委託された居宅介護支援事業所などが担当することもあります。
要介護1から5の場合は、通常は居宅介護支援事業所のケアマネジャーへケアプラン作成を依頼します。
「ケアマネジャーを紹介します」と言われても、紹介された相手とその場で契約しなければならないわけではありません。次の点を聞いてから判断できます。
- 自宅からの距離や対応地域
- 認知症、医療的ケア、ひとり暮らしなどへの対応経験
- 連絡を取りやすい曜日や時間
- 緊急時の連絡方法
- 本人や家族が希望を伝えやすいか
すでにケアマネジャーがいる場合は、日常のサービス変更や介護負担について、まず担当ケアマネジャーへ伝えるのが一般的です。
ただし、担当者との関係で困っている、支援が進まない、虐待や消費者被害など別の問題がある場合は、地域包括支援センターへ改めて相談できます。
家庭訪問では、家をきれいに見せる必要はありません
センターから「一度、ご自宅へ伺います」と言われると、親御さんより先に家族が緊張することがあります。
散らかった台所を見られたら責められるのではないか。薬の袋が山積みになっていることを知られたくない。親御さんが職員の前では元気に振る舞い、「何も困っていません」と言ったらどうしよう。
訪問の目的は、部屋を採点することではありません。
玄関の段差、寝室からトイレまでの動線、冷蔵庫の食品、薬の管理場所など、実際の暮らしを見ることで、電話では分からなかった危険や支援方法が見つかることがあります。
片づけすぎると、普段困っている状態が見えなくなる場合もあります。最低限、職員が入れる場所を確保し、次のようなものを手元に置いておけば足ります。
- 薬の一覧やお薬手帳
- 医療機関の診察券
- 介護保険証
- 最近困った出来事のメモ
- 家族の連絡先
- 本人が困っていること、続けたい生活
親御さんの前では話しにくいことがある場合は、訪問前に担当者へ伝えてください。
「本人の前では、火の不始末と金銭管理の話をしにくいです。家族だけで話せる時間を少し取れますか」
と頼めます。
親御さんが相談や訪問を嫌がるときは、家族だけで話しても構いません
親御さんが「私は介護されるほど弱っていない」「勝手に役所へ話すな」と怒ることがあります。
本人から見ると、地域包括支援センターへの相談が、施設へ入れられる準備や、生活を取り上げられる合図に思えることがあるためです。
家族が心配していることと、本人が生活を守りたい気持ちは、どちらか一方だけが間違っているわけではありません。
この段階では、本人を説得し切ってから相談する必要はありません。まずご家族だけで、実際に起きていることを伝えられます。
「認知症だと思います」と決めつけるより、事実を短く伝えます。
「先月から同じ請求書を三回支払い、夜中に近所へ出たことが二回あります。本人は困っていないと言っていますが、家族だけで今後の対応を相談したいです」
そのうえで、本人へどう話すか、どのような名目なら訪問を受け入れやすいかを担当者と考えます。
ただし、地域包括支援センターも、本人の意思を無視して介護サービスを強制できる場所ではありません。本人の拒否が強い場合は、危険性、判断能力、家族の負担を見ながら、少しずつ関わる方法を探します。
センターから連絡が来ないときは、催促ではなく予定の確認として電話します
地域包括支援センターでは、相談内容に応じて市区町村、医療機関、事業所などへ連絡し、回答を待っている場合があります。一方で、担当者間の引き継ぎや連絡の行き違いが起きる可能性もあります。
約束された日を過ぎても連絡がない場合や、次回の予定を聞いていなかった場合は、家族から電話して構いません。
「○月○日に、母の物忘れと一人暮らしについて相談した○○です。今後の連絡時期と、家族が先に進めることを確認したくて電話しました」
この言い方なら、相手を責めずに用件を伝えられます。
電話では、次の三点を聞きます。
- 現在、誰が担当しているか
- 何を確認中なのか
- 次にいつ、どちらから連絡するか
親御さんの状態が初回相談時より悪くなった場合は、「前回の続き」として扱わず、新しく起きた事実を先に伝えてください。
「前回は買い物の重複について相談しましたが、昨日、外で転倒して帰宅できなくなりました」
状況が変われば、必要な対応の優先順位も変わります。
きょうだいへ伝えるときは、「センターが決めた」と言わない方が話しやすい
介護を担っている家族がセンターへ相談すると、離れて暮らすきょうだいへ説明する場面も出てきます。
そのときに「センターが介護認定を受けるべきだと言った」「専門家も施設が必要だと言っている」と伝えると、相手はすでに結論が決まったように感じることがあります。
センターの助言と、家族がこれから決めることを分けて伝えます。
「センターには、まず介護認定の申請を検討してはどうかと言われた。まだサービスや施設は決まっていない。申請に必要な情報と、今後の分担を話したい」
地域包括支援センターは、家族の誰がどれだけ介護を担当するか、費用をどう分けるかを強制的に決める場所ではありません。
ただし、介護を担う人の負担や、遠方家族ができる役割を伝えれば、サービスを含めた現実的な体制を一緒に考えてもらえます。
次の連絡日を待たず、安全確保を優先する状態があります
通常の相談であれば、担当者と日程を決めて順番に進められます。
一方で、次のような変化が起きた場合は、予定された連絡日を待たないでください。
- 意識がもうろうとしている、呼吸が苦しそう、急に動けなくなった
- 転倒して頭を打った、強い痛みや出血がある
- 親御さんが行方不明になり、居場所の見当がつかない
- 暴力が起きている、本人や家族が傷つくおそれがある
- 食事、水分、薬が取れず、生活を維持できない
- 火の不始末などにより、本人や周囲へ差し迫った危険がある
- 介護する家族が手を出しそうで、二人きりでは安全を保てない
急病やけが、救助が必要な場合は119番、暴力や行方不明などで警察の緊急対応が必要な場合は110番を優先します。
差し迫った危険ではないものの、その日の生活を維持できない、虐待につながりそう、家族が介護を続けられないという場合は、地域包括支援センターまたは市区町村の高齢者福祉担当へ、緊急性があることを明確に伝えます。
今日することは、「次に誰が連絡するか」を一つ確定させることです
相談内容をもう一度すべて書き直したり、介護施設を何十件も調べたりする必要はありません。
まず、地域包括支援センターの電話番号と相談した日を確認してください。
次の予定が分からない場合は、営業時間内に一度電話し、こう伝えます。
「先日、父のことで相談した○○です。今後はセンターからの連絡を待つのか、家族から改めて連絡するのか分からなくなりました。次の連絡時期と、それまでに準備するものを教えてください」
この確認は、支援を急かすためではありません。途中で話が止まらないよう、役割をそろえるための連絡です。
今日決めるのは、親御さんの今後をすべて決めることではありません。次の連絡を誰がするのか。それが分かれば、相談後の空白は一つ埋まります。















