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認知症の親が近所トラブルを起こしたとき|謝罪・安全確保・再発防止の進め方

2026.07.12 更新 なやみ晴れ編集部
#介護・見守り#認知症#認知症相談
この記事の結論

認知症の親御さんが近所トラブルを起こしたときは、謝罪だけで終わらせず、危険度、実際に起きたこと、繰り返す条件を分けます。暴力や侵入など差し迫った危険は110番、急な混乱や身体症状は119番を優先し、通常時は医療・介護の支援を組み直します。

「昨夜もお母さんが玄関をたたきに来ました」と電話がかかってきた

仕事中、知らない番号から電話が入りました。

相手は親御さんの隣に住む方で、「夜中にインターホンを何度も鳴らされた」「郵便物を盗んだと言われた」「もう家族で対応してほしい」と話します。

親御さんへ電話すると、今度は「隣の人が家へ入って財布を持っていった」と言い張ります。

どちらの話が正しいのか分からない。近所の方には申し訳ないと思う一方で、親御さんだけを悪者にされることにも抵抗があります。

すぐ謝るべきなのか。認知症であることを伝えるべきなのか。本人を叱っても、話したことを忘れてしまうのではないか。

家族がその場で背負わされるのは、事実確認、謝罪、再発防止、親御さんの生活、近所との関係です。一度の電話で答えを出せる内容ではありません。

最初に決めるのは、誰が悪いかではなく、今すぐ止めるべき危険があるかです。

今夜の危険と、後日話せる苦情を分けます

近所トラブルといっても、挨拶やゴミ出しをめぐる行き違いから、暴力や住居への侵入まで幅があります。

緊急性を分けずに「家族で話します」と答えると、本当に危険な状態を見逃すことがあります。

起きていること 優先する対応
挨拶を返さない、同じ話を繰り返す、分別を間違えるなど、差し迫った危険がない 日時と内容を聞き、家族・支援者で再発防止を考える
夜中の訪問、大声、繰り返すインターホン、敷地への立入りなどが続いている 本人と近所の方を直接対面させず、家族、地域包括支援センター、管理会社などを交えて対応する
脅す、物を投げる、窓や扉を壊す、相手宅へ無理に入る、刃物を持つ 近所の方にも直接対応しないよう伝え、現在進行中なら110番を優先する
急に話が通じなくなった、強く興奮する、ふらつく、発熱や脱水が疑われる 認知症の進行と決めつけず、医療機関または119番へつなぐ
行方が分からない、車で出たまま戻らない、危険な場所を歩いている 時間を置かず110番へ連絡し、服装、写真、移動手段、向かいそうな場所を伝える

警察へ連絡することは、親御さんを処罰してほしいという意味だけではありません。

事件や事故が起きている、または差し迫っているときは110番です。現在進行中ではないものの、今後の安全や繰り返す迷惑行為について警察へ聞きたい場合は、最寄りの警察署または警察相談専用電話「#9110」を利用できます。

ポイント

認知症が背景にあっても、近所の方が暴力や侵入を我慢する必要はありません。一方、危険がない苦情まで直ちに警察だけで解決しようとせず、医療と生活支援を並行して整えます。

苦情を受けた直後は、反論も約束もせずに一度受け取ります

近所の方が強い口調で話していると、「本人はそんなことをする人ではありません」と反論したくなる場合があります。

反対に、親御さんの様子を知っている家族ほど、「すべてこちらが悪いです。もう二度とさせません」と約束してしまうこともあります。

どちらも、その時点では早すぎます。

本人の記憶だけでなく、近所の方の説明にも思い違いや感情が混ざることがあります。まずは、相手が困った事実と、まだ分からない事実を分けます。

最初の返答は、次の程度で構いません。

「ご不安とご迷惑をおかけして申し訳ありません。まず昨夜の状況を確認し、家族と支援先で対応を考えます。今後の連絡は私が受けますので、起きた日時と内容を教えていただけますか」

ここで謝っているのは、相手へ負担が生じたことです。まだ分からない行為や損害まで、すべて認める必要はありません。

次のような返答は避けた方が安全です。

認知症という事情は、相手の生活上の被害をなくす言葉ではありません。また、家族が24時間見張るなど、続けられない約束をすると、次に問題が起きたとき関係がさらに悪化します。

親御さんと近所の方から、別々に話を聞きます

当事者同士をその場で向かい合わせ、「どちらが本当か」を決めようとしないでください。

親御さんが盗難や嫌がらせを訴えている場合、近所の方を目の前にすると興奮が強くなることがあります。近所の方も、これまでの積み重ねから冷静に話せないかもしれません。

まず、近所の方には次の点を尋ねます。

親御さんには、「隣の人に迷惑をかけたでしょう」と詰めるのではなく、出来事から聞きます。

「昨日の夜、隣の家へ行った?」

「何かなくなったと思ったの?」

「玄関を出る前に、何があったか覚えている?」

本人の説明が事実と合わなくても、その場で何度も訂正する必要はありません。

本人が「財布を盗まれた」と話すなら、財布が見つからず困っていることは事実かもしれません。ただし、一緒になって近所の方を犯人扱いすることは避けます。

「財布が見つからなくて困っているんだね。まず家の中を一緒に探そう。隣の人のことは、見つからなかった後で考える」

本人の困りごとを受け止めながら、訴えの内容へ同意しない伝え方です。

一件ごとに「行動・きっかけ・結果」を残します

「最近、近所迷惑が増えた」というまとめ方では、医療機関や地域包括支援センターへ状況が伝わりにくくなります。

次の形で、一件ずつ残してください。

記録する内容 記録例
日時 7月12日午前1時20分
直前の出来事 財布を探していた。夕食後の薬を飲んだか不明
本人の行動 隣家のインターホンを約10回鳴らした
本人の発言 「財布を返して」と訴えた
相手への影響 家族が起こされ、子どもが怖がった
身体・生活の変化 前日から食欲がなく、夜間に何度も起きていた
その後 家族が迎えに行き、約30分後に落ち着いた

この記録から、夕方から夜に増える、探し物をした後に外へ出る、眠れていない日に強くなるといった傾向が見えることがあります。

再発防止は、「二度と行かないよう言い聞かせる」だけでは不十分です。出発前のきっかけを減らす方が有効な場合があります。

トラブルの種類によって、止める場所が変わります

「物を盗られた」と近所の方を責める

財布、通帳、衣類などを置いた場所が分からず、身近な人へ「盗られた」と訴えることがあります。

近所の方へ事実のない謝罪を強要したり、本人と直接話し合わせたりすると、疑いが強まる場合があります。

よくなくなる物の定位置を決める、予備を用意する、本人が探しやすい収納へ変えるなど、探し物そのものを減らします。

家族は近所の方へ、

「物が見つからないと、身近な方を疑うことがあります。直接説得せず、同じことがあれば私へ連絡してください」

と伝える方法があります。

夜中に訪ねる、インターホンを鳴らす

昼夜の感覚が分からなくなっている、孤独や不安が強い、家へ帰れないと思っているなどの背景が考えられます。

日中の活動量、昼寝、服薬、夕方以降の照明、夜間のトイレ動線なども見ます。

玄関へ音が鳴るセンサーを付ける、夜間に家族へつながる電話を置く、介護サービスや見守りを増やす方法もあります。

ただし、鍵を外からかけて本人を閉じ込めるような方法は、火災や急病時の避難を妨げる危険があります。

ゴミ、騒音、共用部分の使用で苦情が出る

ゴミ出しの曜日を間違える、共用廊下へ物を置く、深夜にテレビを大音量でつけるといった問題では、本人の注意力だけに頼らない仕組みが必要です。

収集日に訪問支援を入れる、テレビの最大音量を調整する、共用部分の物を室内へ移すなど、行動が起きる環境を変えます。

集合住宅では、管理会社や大家にも連絡し、家族の連絡先と対応中であることを共有します。

他人の敷地や家へ入ろうとする

昔の知人宅と勘違いしている、自宅だと思っている、帰り道が分からないといった可能性があります。

本人の住所と家族の連絡先が分かる物を持たせる、自治体の認知症高齢者等SOSネットワークを調べるなど、外出時の備えが必要です。

無理に扉を開けようとする、敷地から出ない、住人を脅す状態では、近所の方だけに対応を任せず、110番を含めて安全を確保します。

本人へ謝罪を強制しても、再発防止にならないことがあります

近所の方から「本人を連れて謝りに来てほしい」と言われることがあります。

本人が起きたことを理解し、相手の気持ちを受け止められるなら、一緒に謝ることが関係修復につながる場合があります。

一方、本人が出来事を覚えていない、近所の方を犯人だと思っている、顔を見ると興奮する状態で連れて行けば、再び言い争いになるかもしれません。

その場合は、家族がまず単独で対応します。

「本人は今、出来事の理解が難しく、直接伺うと再び興奮する可能性があります。家族からお詫びし、支援先と再発防止を進めます」

本人を謝らせないことは、近所の方の被害を軽く扱うことではありません。

形だけの謝罪より、夜間の外出を減らす、連絡先を一本化する、受診や介護支援につなぐといった再発防止の方が重要です。

近所の方へ病名をどこまで話すか

トラブルの説明として、本人の診断名や詳しい病歴を伝えるべきか迷うことがあります。

近所の方が知る必要のない医療情報まで、家族の判断で広く伝える必要はありません。

一方、繰り返す行動に備えるため、必要な範囲の情報共有が役立つ場合もあります。

たとえば、

「体調と認知機能の変化があり、事実と違う訴えをすることがあります。直接言い争わず、この番号へ連絡してください」

という伝え方なら、診断名や病歴を細かく説明せずに対応方法を共有できます。

相手へお願いする内容も限定します。

近所の方は介護者ではありません。薬を飲ませる、家まで毎回送り届ける、日常的に見張るといった役割まで求めないことも、関係を保つうえで欠かせません。

急にトラブルが始まった場合は、認知症の進行と決めつけません

これまで近所との問題がなかった親御さんが、数時間から数日のうちに急に怒鳴る、疑う、歩き回るようになった場合は、身体状態の変化も考えます。

高齢者では、脱水、感染症、便秘、痛み、睡眠不足、薬の追加や変更などにより、急に混乱や興奮が強くなることがあります。

次の変化があれば、かかりつけ医へ早めに伝えてください。

片側の手足が動かない、ろれつが回らない、意識が悪い、立てないなどの症状が突然現れた場合は、翌日の受診を待たず119番へ連絡します。

薬が原因に思えても、家族の判断で中止や減量をしないでください。お薬手帳と実際に飲んでいる薬を医師や薬剤師へ見せます。

繰り返すトラブルは、本人への注意ではなく支援体制を変える合図です

一度目は家族が謝った。二度目は玄関の鍵を変えた。三度目は本人を強く叱った。

それでも繰り返すなら、家族の伝え方だけの問題ではありません。

かかりつけ医には、近所トラブルという評価ではなく、実際の行動を伝えます。

「母が夜中に隣家へ行き、物を盗られたと訴えることが三回ありました。睡眠、薬、身体の病気、認知症の行動・心理症状を含めて見直してほしいです」

介護保険を利用している場合は、ケアマネジャーへ時間帯、きっかけ、家族の対応状況を伝えます。

利用していない場合や、本人が受診・介護を拒んでいる場合は、親御さんの住所地を担当する地域包括支援センターが入口になります。

「一人暮らしの父が近所の家へ何度も行き、盗難を訴えています。本人は受診を拒否し、家族は遠方です。近所との対応だけでなく、訪問して生活と医療の支援を検討できるか聞きたいです」

地域によっては、認知症初期集中支援チームが、認知症が疑われる方や支援につながっていない方の家庭を訪問し、医療・介護につなぐ支援を行っています。

地域包括支援センターが近所トラブルの損害を決めたり、本人を強制的に施設へ移したりするわけではありません。生活状況を見て、医療、介護、見守り、住まいの支援を組み合わせる場所です。

物が壊れた、けがをしたと言われたときは、その場で現金を渡さない

植木鉢を倒した。車へ傷を付けた。扉を壊した。近所の方から修理代や治療費を求められることがあります。

相手の負担を軽く扱ってはいけませんが、家族だからという理由だけで、その場で金額を約束する必要もありません。

まず、次の資料を残します。

親御さんが加入している火災保険、自動車保険、個人賠償責任に関する補償などが使える可能性もあるため、保険証券や契約先を確認します。適用条件は契約ごとに異なります。

金額や責任について意見が合わない場合は、当事者だけで示談書へ署名せず、保険会社や法律相談へ内容を見てもらいます。

「ご迷惑をおかけしたことは重く受け止めています。損害の内容と保険の対象を確認してから、改めてご連絡します」

謝罪と、法的な責任や金額を確定することは分けて進めます。

近所の方の訴えが強すぎる場合も、家族だけで対抗しません

すべての近所からの苦情が正確とは限りません。

親御さんの認知症を知った後、何でも本人のせいにされる。家族へ一日に何度も電話が来る。本人へ侮辱的な言葉を浴びせる。金銭を繰り返し要求される。

そのような場合も、感情的に言い返すより記録を残します。

集合住宅なら管理会社や大家、自治会が関係する問題なら自治会役員など、双方から距離のある人に事実を共有します。

脅迫、つきまとい、住居への侵入など、家族や本人の安全に関わる行為がある場合は、最寄りの警察署または「#9110」へ伝えてください。現在進行中の危険は110番です。

今の住まい方を見直すのは、「苦情が来たから」ではなく安全を保てないときです

近所トラブルが起きたからといって、すぐ施設へ入れるべきとは限りません。

昼間の訪問介護、デイサービス、服薬管理、夜間の見守り、家族の訪問などを組み合わせることで、自宅生活を続けられる場合があります。

一方、次の状態が続くなら、現在の見守り方法や住まいを見直す時期です。

住み替えは、近所から追い出すためではありません。

本人が落ち着いて過ごせる環境と、周囲の安全を両立できる場所を探す判断です。本人の気持ちも聞きながら、ケアマネジャー、地域包括支援センター、医療機関と検討します。

近所トラブルを家族だけの謝罪で処理し続けると、本人の症状や生活上の危険が見えなくなることがあります。同じ問題が二度以上起きたら、医療・介護の支援を見直す合図として扱ってください。

今日は近所の方へ返す一文と、一件分の記録を作ります

今夜のうちに、親御さんと近所の方を仲直りさせる必要はありません。

まず近所の方へ、次の一文を返してください。

「ご連絡ありがとうございます。起きたことを確認し、家族と支援先で対応します。直接の説得が難しい状態もあるため、同じことがあれば本人と口論せず、私へご連絡ください。危険がある場合は110番または119番を優先してください」

次に、直近の出来事を一件だけ、日時、行動、相手への影響、直前の本人の状態に分けて残します。

その記録を持って、かかりつけ医、ケアマネジャー、地域包括支援センターのうち、すでにつながりがある場所へ連絡します。

近所の方へ頭を下げ続けることと、親御さんを強く叱ることの間に、別の道があります。

事実を一件ずつ確かめ、相手の安全を守り、本人がその行動へ至るきっかけを減らす。その積み重ねが、謝罪だけでは止まらなかったトラブルを、生活支援の課題として扱える形へ変えていきます。

出典・確認先メモ

よくある質問

Q. 認知症の親が近所トラブルを起こしたら、家族がすぐ謝るべきですか?

相手へ負担や恐怖を与えたことについては、早めにお詫びと対応の意思を伝えます。ただし、まだ分からない事実や損害まで認めず、日時、行動、被害内容を聞いてから再発防止と補償を分けて考えてください。

Q. 近所の人に親が認知症だと伝えてもよいですか?

詳しい診断名や病歴まで広く伝える必要はありません。「認知機能の変化で事実と異なる訴えをすることがあるため、直接言い争わず家族へ連絡してほしい」など、対応に必要な範囲へ絞る方法があります。

Q. 認知症の親が近所の人を泥棒扱いするとき、どうすればよいですか?

本人の前で近所の方と対決させたり、訴えを強く否定したりすると、疑いが強まる場合があります。なくなった物を一緒に探し、近所の方とは家族が別に連絡を取り、同じ訴えが続く場合は医師や地域包括支援センターへ具体的な行動を伝えてください。

Q. 近所から損害賠償を求められたら、家族が払わなければなりませんか?

家族であることだけで、その場で支払いを約束する必要はありません。写真、見積書、発生状況を残し、親御さんの保険契約や責任の範囲を確かめます。金額や事実に争いがある場合は、示談書へ署名する前に保険会社や法律相談へ内容を確認してください。

Q. 認知症の親の近所トラブルで警察へ相談してもよいですか?

暴力、侵入、器物損壊など事件・事故が現在起きている場合や、差し迫った危険がある場合は110番です。緊急ではないものの繰り返す迷惑行為や今後の安全対策を相談したい場合は、最寄りの警察署または警察相談専用電話「#9110」を利用できます。

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