面会へ行くたび、「お願い、一緒に連れて帰って」と言われる
母が介護施設へ入って、一か月がたちました。
面会中は穏やかに話していたのに、帰る時間が近づくと、母がバッグを持って立ち上がります。
「そろそろ家へ帰らないと」
「お父さんの夕飯を作らなくちゃ」
父が亡くなってから、もう十年になります。
「ここがお母さんの家でしょう」
「今は一人では暮らせないから、ここにいるの」
何度説明しても、母は納得しません。
最後には、「私を閉じ込めるの」「家があるのに、どうして帰れないの」と泣き出してしまいます。
施設を出るとき、母の手を振りほどいた感覚が残ります。
「本当に家へ戻してあげるべきなのだろうか」
「施設へ入れた自分が間違っていたのでは」
「次の面会でも責められるなら、行くのが怖い」
家族にとってつらいのは、同じ言葉を繰り返されることだけではありません。
本人の願いを無視しているような罪悪感と、自宅へ戻せば安全を守れないという現実の間で、答えを求められ続けることです。
本人が言う「家」は、現在の住所とは限らない
「家に帰りたい」という言葉を、そのまま「今住んでいた家へ戻りたい」という意味だけで受け取ると、帰せるか帰せないかの二択になってしまいます。
実際には、本人が求めているものが別にあることもあります。
| 本人の言葉 | 奥にあるかもしれない気持ち | 家族や職員が探したいこと |
|---|---|---|
| 「夕飯を作らないと」 | 家族の世話をする役割へ戻りたい | 料理や家事に代わる小さな役割を持てるか |
| 「母が待っている」 | 子どもの頃に安心した家へ帰りたい | どの家、どの時代を思い浮かべているか |
| 「戸締まりが心配」 | 家や大切な物を守れない不安がある | 鍵、仏壇、ペット、郵便など気がかりは何か |
| 「ここには知っている人がいない」 | 場所や人になじめず、孤独を感じている | 安心できる職員、席、時間帯はあるか |
| 「仕事へ行かなくては」 | 働いていた頃の役割や時間感覚の中にいる | 以前の仕事や一日の習慣をどう再現できるか |
| 理由を言わず出口へ向かう | 痛み、尿意、空腹、騒音、疲労などから離れたい | 体調や周囲の環境に不快なことがないか |
厚生労働省が示す意思決定支援の考え方では、本人が口にした言葉だけで結論を出さず、生活歴やこれまでの習慣、本人が大事にしてきたことも踏まえて、意思を丁寧にくみ取ることが重視されています。「家に帰りたい」の背景が、家にある仏壇を気にしていたことだったという例も紹介されています。
まずは、「家へ帰れるか」を説得する前に、「家で何をしたいのか」を聞いてみてください。
最初の返事は、正しい場所を教えることではない
本人が「家に帰る」と言ったとき、家族は現実を理解してもらおうとします。
けれど、本人にとっては初めて口にした訴えであり、その瞬間、本当に帰らなければならないと感じています。
事実を何度も示しても、不安そのものが消えなければ、言葉は繰り返されます。
| 避けたい返し方 | 最初に使いたい返し方 |
|---|---|
| 「ここが家でしょう」 | 「家に帰りたいんだね」 |
| 「何度説明したら分かるの」 | 「何か気になることがある?」 |
| 「もう一人では暮らせないよ」 | 「家では、何をする予定だった?」 |
| 「お父さんはもう亡くなったでしょう」 | 「お父さんのことが気になっているんだね」 |
| 「帰れないから諦めて」 | 「どうしたら少し安心できるか、一緒に考えよう」 |
認知症の人への伝え方では、短く具体的な言葉を使い、答えを急かさず、本人のペースへ合わせることが勧められています。訂正や否定を繰り返すより、不安や希望を受け止める方が、その後の話へ進みやすくなります。
受け止めることは、「必ず家へ帰す」と約束することではありません。
気持ちを認めることと、実際の帰宅を決めることは分けて考えられます。
「帰ろう」と立ち上がった直後は、五つの不快を先に見る
理由を尋ねても、本人がうまく言葉にできないことがあります。
その場合は、今この瞬間に困っていることがないかを見ます。
- トイレへ行きたい、失敗しそうで落ち着かない
- 空腹や喉の渇きがある
- 腰、歯、関節などに痛みがある
- 暑い、寒い、まぶしい、周囲の音が大きい
- 疲れている、眠い、人が多くて落ち着かない
たとえば、施設の夕食前に毎回「帰る」と言うなら、空腹だけでなく、「家族の夕食を用意する時間」という長年の習慣が関係しているかもしれません。
入浴前なら、入浴への不安や羞恥心が「帰る」という言葉になっている可能性もあります。
認知症では、身体の不調やストレス、環境、周囲の対応が不安や落ち着かなさなどの行動・心理症状へ影響することがあります。本人が痛みや息苦しさを言葉にしにくい場合は、表情、呼吸、動き、声の変化も手掛かりになります。
理由を聞くときは、答えを当てにいかず一つずつ尋ねる
「どうして帰りたいの」と聞かれても、本人は理由をまとめて説明できないことがあります。
質問を小さくしてください。
- 「家では、誰が待っている?」
- 「ご飯のことが気になる?」
- 「戸締まりが心配?」
- 「ここで嫌なことがあった?」
- 「体のどこかが痛い?」
- 「少し静かな所へ行こうか?」
一度に何問も聞かず、返事を待ちます。
言葉では答えられなくても、写真を見せたときの表情や、特定の人の名前を聞いたときの反応から分かることがあります。
本人の答えが現実と合わなくても、その内容をすぐ訂正せず、「その人のことが気になっているんだね」と気持ちを拾ってください。
できない約束で落ち着かせると、次の不安が大きくなることがある
その場を収めるために、「明日帰れるよ」「あとで迎えが来るよ」と言いたくなることがあります。
しかし、実際には帰れないと分かっている約束を繰り返すと、本人が待ち続けたり、「約束を破られた」と感じたりすることがあります。
すぐに帰宅できない場合は、今できることへ言い換えます。
| 言い切らない方がよい言葉 | 今できることを伝える言葉 |
|---|---|
| 「明日には帰れるよ」 | 「家のことが心配なんだね。今日は私が話を聞くよ」 |
| 「迎えがすぐ来るよ」 | 「今は暗いから、ここで温かい物を飲んで休もう」 |
| 「家はもうないよ」 | 「どんな家だったか、写真を見ながら教えて」 |
| 「ここにずっといるしかない」 | 「暮らしやすくするために、困っていることを教えて」 |
話題を変える場合も、訴えを無視して突然テレビをつけるのではなく、いったん気持ちを受け止めてから別の行動へ誘います。
「おうちの夕飯が気になるんだね。今日はここでお茶を飲みながら、献立を一緒に考えてくれる?」
本人が大切にしてきた役割へつながる行動であれば、単なる気晴らしより受け入れやすいことがあります。
夕方に繰り返すなら、その時間の前から一日を見直す
朝や昼は穏やかなのに、夕方になると落ち着かなくなり、「家に帰る」と出口へ向かう人がいます。
このような状態は「夕暮れ症候群」と呼ばれることがあります。睡眠と覚醒のリズム、暗くなる環境、本人や介護者の疲れ、不安などが影響する可能性があります。国立長寿医療研究センターは、早めに照明をつけること、日中に光を浴びること、昼夜の生活リズムを整えることなどを対応例として挙げています。
夕方の訴えが強い場合は、本人が言い始めてから説得するだけでなく、その前の過ごし方を見ます。
| 見る時間 | 確認すること |
|---|---|
| 午前 | 日光を浴びたか、無理のない活動ができたか |
| 昼食後 | 長時間眠り続けていないか |
| 午後 | 疲れる予定が続いていないか、水分が取れているか |
| 夕方前 | 室内が暗くなっていないか、職員交代などで周囲が慌ただしくないか |
| 訴えの直前 | トイレ、空腹、痛み、騒音、人間関係などのきっかけがなかったか |
日中に活動を増やしすぎて疲れさせるのではなく、本人の体力に合う生活リズムを、主治医や介護職と一緒に調整してください。
一週間の記録から、毎回同じきっかけがないか探す
家族から見ると、突然「帰る」と言い出したように感じます。
記録すると、時間、場所、人、直前の出来事に共通点が見えることがあります。
| 記録すること | 記入例 |
|---|---|
| 日時 | 7月29日午後4時30分 |
| いた場所 | 施設の食堂 |
| 本人の言葉 | 「子どもが帰ってくるから夕飯を作る」 |
| 直前の出来事 | 職員が食事の準備を始めた |
| 体調 | 昼食後に長く眠った。水分が少なかった |
| 対応 | 否定せず、食卓を拭く作業を一緒にした |
| その後 | 15分ほどで着席し、落ち着いた |
「帰宅願望が強い」とだけ伝えるより、「毎日午後4時半ごろ、夕食準備が始まると子どもの夕飯を作ると言って出口へ向かう」と伝える方が、対応を考えやすくなります。
施設、デイサービス、家族で同じ記録を使い、うまくいった声かけも共有してください。
自宅にいるのに「家へ帰る」と言われたら、住所の話をいったん外す
長年住んだ自宅にいるのに、「家へ帰らないと」と靴を履くことがあります。
家族は、「ここがあなたの家でしょう」と言いたくなります。
けれど、本人が思い浮かべているのは、現在の家ではなく、子ども時代の実家、新婚時代の家、両親がいた頃の家かもしれません。
また、家という言葉が「自分の居場所」「安心できる状態」を表していることもあります。
認知症に伴う一人歩きは、周囲から目的がないように見えても、本人には「母の所へ行く」「仕事へ行く」などの理由があり、不安が背景にある場合があるとされています。止めることだけでなく、どこへ何をしに行こうとしているかを見ることが必要です。
次のように話してみてください。
「どの家へ帰るの?」
「そこには誰がいる?」
「家に着いたら、何をする予定?」
本人が話した家族や暮らしの記憶を聞きながら、安心できる場所へ座ってもらいます。
施設では、家族しか知らない生活歴をケアへ渡す
施設側が本人の過去を知らないと、「帰りたい」と言われるたびに、その場の声かけだけで対応することになります。
家族から、本人の暮らしを一枚へまとめて渡してください。
| 施設へ伝えたいこと | 具体例 |
|---|---|
| 本人が言う「家」 | 現在の自宅、子ども時代の実家、以前の住所 |
| 夕方の習慣 | 午後4時から夕飯を作り、家族の帰宅を待っていた |
| 家庭内の役割 | 洗濯物を畳む、食卓を拭く、仏壇へ水を供える |
| 安心しやすい物 | 夫の写真、昔の手帳、好きな音楽、普段使っていたひざ掛け |
| 落ち着く人・言葉 | 長女の名前、「夕飯は準備できています」という説明 |
| 嫌がること | 急に腕をつかまれる、大人数に囲まれる |
居室へ物を持ち込む場合は、施設のルールや安全面を確かめます。
写真や家具を増やせば必ず落ち着くわけではありません。本人の反応を見ながら、職員と一緒に調整してください。
家族が帰る瞬間に強く訴えるなら、面会の終わり方を変える
面会中は落ち着いていても、家族がコートを着たりバッグを持ったりすると、「私も帰る」と立ち上がることがあります。
家族が帰る動作が、本人に置いていかれる不安を起こしている可能性があります。
施設職員と、次の方法を相談してみてください。
- 本人が活動や食事へ移る時間に面会を終える
- 家族が帰る前に、なじみの職員へ自然に引き継ぐ
- 出口付近ではなく、落ち着ける場所で別れる
- 長い説得をせず、次に会う予定を見える形で残す
- 面会後の様子を職員から教えてもらう
「また来るね」と伝える場合は、実際に見通せる日付や曜日を書きます。
本人が日付を理解しにくい場合は、「お昼を食べたあとに娘さんが来る」など、施設の日課と結び付ける方法を職員と考えます。
入院後に急に「帰る」が強くなったら、いつもの認知症と決めない
入院や転院を境に、急に落ち着かなくなり、点滴を外そうとしたり、夜中に帰ろうとしたりすることがあります。
環境の変化による不安だけでなく、せん妄や身体の不調が関係している可能性があります。
認知症の状態が短期間で急に変化した場合には、脱水、感染症、血糖や電解質の異常、薬の影響、転倒後の頭部の問題など、治療可能な原因が隠れていることがあります。国立長寿医療研究センターも、入院後などに急に悪くなったように見える場合は、体調や薬剤を含む原因の確認が必要と案内しています。
次の変化は医師や看護師へ具体的に伝えてください。
- 昨日まではなかったのに、急に帰ろうとし始めた
- 発熱、咳、食欲低下、排尿の変化がある
- 水分をほとんど取っていない
- 痛そうな表情や動作がある
- 睡眠薬など、薬が追加・変更された
- 昼夜が逆転し、呼びかけへの反応にも波がある
「認知症だから仕方がない」と家族だけで判断せず、いつから変わったかを医療職へ伝えます。
本当に自宅へ戻れるかは、本人の言葉だけでも家族の不安だけでも決めない
親から何度も「家へ帰りたい」と言われると、一度帰せば落ち着くのではないかと思います。
一方、施設側から「今は難しい」と言われ、本人の希望が軽く扱われていると感じることもあります。
自宅復帰を考える場合は、次の生活を具体的に置いてみてください。
| 生活場面 | 自宅で考えること |
|---|---|
| 夜間 | 一人で外へ出る可能性、トイレ、睡眠、見守る人 |
| 服薬 | 飲み忘れや二重服用を防ぐ方法 |
| 食事 | 用意する人、火の使用、食事量と水分 |
| 移動 | 転倒、階段、玄関、通院手段 |
| 排泄・入浴 | 一人で安全に行えるか、介助を受け入れられるか |
| 介護する家族 | 仕事、睡眠、持病、代わりに対応できる人 |
| 利用できる支援 | 訪問介護、デイサービス、ショートステイ、福祉用具など |
家へ帰りたいという希望は、最初から無理だと切り捨てるものではありません。
同時に、本人と家族の安全を確かめずに帰宅させるものでもありません。
主治医、ケアマネジャー、施設職員、リハビリ職などと、「何ができれば帰れるか」「どの時間帯に支援が足りないか」を話します。
認知症の人が住まいを移す場面でも、本人の意思をできる限り丁寧にくみ取り、選択肢を用意しながら決めることが意思決定支援の対象とされています。
すぐの自宅復帰が難しくても、家とのつながりを残す方法はある
自宅での生活をそのまま再開するのが難しい場合も、本人が求めるものを一部取り戻せることがあります。
- 安全を確保したうえで、家族付き添いの短時間外出を検討する
- 自宅の写真や、庭・仏壇・ペットの様子を見せる
- 本人が気にしている戸締まりや郵便を家族が確認して報告する
- 自宅で使っていた家具や生活用品を施設へ持ち込む
- 本人が担っていた家事に近い役割を施設で作る
- 地域の知人や家族との関係を途切れさせない
一時帰宅や外出は、本人の体調、移動手段、自宅の安全、施設の方針などによって可否が異なります。
家族だけで連れ出す前に、ケアマネジャーや施設と、付き添う人、滞在時間、戻るときの対応まで話してください。
出口へ向かったときは、力で止める前に安全な場所へ並んで動く
本人が外へ出ようとすると、家族は反射的に腕をつかんだり、玄関の前へ立ちはだかったりします。
強く止められると、「邪魔をされた」「閉じ込められた」という恐怖や怒りが強くなる場合があります。
危険が差し迫っていなければ、次のように動きます。
- 正面から詰め寄らず、横から穏やかに声をかける
- 「どこへ行く予定?」と目的を聞く
- 安全な範囲で少し一緒に歩く
- トイレ、飲み物、休憩などへ自然に誘う
- 一人で対応できなければ、家族や職員を呼ぶ
国立長寿医療研究センターは、外へ出ようとする時間や目的を見たうえで、安全が保てる範囲で一緒に歩くことなどを対応例として挙げています。行動を止めることだけでなく、不安を生む環境や声のかけ方を見直す視点が必要です。
道路への飛び出しや転落など、目の前に危険がある場合は、安全確保を優先します。家族だけで繰り返し対応するのが難しい場合は、その日のうちにケアマネジャーや事業所へ伝えてください。
外へ出て行く心配があるなら、いなくなる前に情報をそろえる
一人歩きがあり、帰り道が分からなくなる可能性がある場合は、家族の注意だけに頼らない準備が必要です。
- 最近の顔写真と全身写真を用意する
- 身長、体格、眼鏡、歩き方などの特徴を書く
- よく着る上着、靴、バッグを撮影する
- 以前の自宅、職場、駅、店など行きそうな場所を挙げる
- 家族、ケアマネジャー、施設の連絡先をまとめる
- 自治体の見守り・SOS事業や事前登録制度を聞く
- 本人の尊厳とプライバシーに配慮した身元確認方法を検討する
地域によっては、認知症の人が行方不明になった場合の早期発見を支える見守りネットワークや事前登録制度があります。制度の名称や内容は自治体によって異なるため、地域包括支援センターや市区町村へ尋ねてください。
姿が見えなくなったら、「そのうち戻る」と待ち続けない
本人がいないことに気づいたら、家の中、庭、建物の周囲を手早く見ます。
見つからない場合は、時間を置かず警察へ連絡してください。
伝えられるよう、次を用意します。
- 氏名、年齢、住所
- 認知症があること
- いなくなった時刻と場所
- 当日の服装、靴、持ち物
- 最近の写真
- 歩いて行きそうな場所
- 携帯電話や位置情報機器の有無
身の危険が考えられる行方不明など緊急の通報は110番、緊急ではない日頃の備えや安全上の相談は最寄りの警察署または警察相談専用電話「#9110」を利用できます。
家族で探す場合も、連絡役を一人決め、誰がどこを探しているかを警察と共有してください。
家族が「家へ帰せない」と決めても、親を見捨てたことにはならない
自宅へ戻したい気持ちはあっても、夜間の見守り、仕事、介護者の病気、住宅の危険などから難しいことがあります。
その現実を見て施設を選んだ家族が、「帰りたい」と言われるたびに、自分の判断を責め続ける必要はありません。
帰宅できないことと、本人の気持ちを無視することは同じではありません。
家族にできることは、帰せない理由を毎回説明することだけではなく、本人が施設で安心できない理由を職員と探すことです。
面会後に泣き続ける、家族へ怒りをぶつける、施設を出ようとする状態が続く場合は、家族だけで抱えず、ケアマネジャーや施設へケアの見直しを求めてください。
厚生労働省は、認知症の本人だけでなく、家族の心身や生活、介護負担も含めて支える必要があるとしています。介護者が自分の時間や休息を確保することも、本人の生活を続けるための支援の一部です。
家族の対応を変えても続くときは、ケア会議を頼んでよい
何度声をかけても落ち着かないと、「家族の接し方が悪いのでは」と思うかもしれません。
しかし、家族だけで原因を見つけられないこともあります。
次の状態が続く場合は、担当者へ具体的な見直しを求めてください。
- 毎日、長時間にわたって出口を探す
- 夜間にも外へ出ようとする
- 転倒や道路への飛び出しの危険がある
- 食事や睡眠が取れなくなっている
- 急に訴えが強くなった
- 怒りや暴力があり、家族・職員だけでは安全を守れない
- 家族が面会や介護を続けられないほど疲れている
ケアマネジャーには、次のように伝えます。
「母が毎日午後4時ごろ、『夕食を作るため家へ帰る』と言って玄関へ向かいます。家族と施設で声かけを変えましたが、転倒の危険も出ています。体調の確認と、日中の過ごし方、夕方の人員や環境を含めてケア会議をお願いしたいです」
認知症や介護に関する相談は、本人の住所地を担当する地域包括支援センターでも受け付けています。必要に応じて認知症疾患医療センター、認知症初期集中支援チーム、介護サービスなどと連携します。
今日するのは、親を家へ帰すか決めることではありません
次に「家へ帰りたい」と言われたら、まず一度だけ、次の言葉を返してください。
「帰りたいんだね。家では何をしたい?」
返ってきた言葉を、そのまま一行書きます。
「夫の夕飯を作る」
「母が待っている」
「戸締まりを見たい」
次に、言い始めた時刻と、直前に起きたことを書いてください。
その記録を、施設やケアマネジャーへ渡します。
急に始まった変化なら、発熱、水分、痛み、薬の変更なども確認し、医療職へ伝えます。
「家に帰りたい」という言葉へ必要なのは、正しい住所を教えることだけではありません。本人が今いる場所で失っている安心、役割、人とのつながりを見つけ、できる形で戻していくことです。
今すぐ自宅へ戻せなくても、気持ちを聞くことはできます。
家族だけで答えを出せなくても、施設や地域の支援者と一緒に探せます。
今日は「帰れる・帰れない」を決めるのではなく、親が帰った先で何をしたいのかを、一つ聞くところから始めてください。
出典・確認先メモ
- 厚生労働省「認知症の人の日常生活・社会生活における意思決定支援ガイドライン」:本人の言葉、生活歴、価値観を踏まえて意思をくみ取る際の確認先。
- 国立長寿医療研究センター「認知症の人と上手に向き合うために」:夕方の落ち着かなさ、家へ帰ろうとする場合の見方、声かけ、家族介護者の負担に関する確認先。
- 認知症介護情報ネットワーク「認知症Q&A」:一人歩きや「家に帰りたい」という行動の背景にある目的や不安を考える際の確認先。
- 国立長寿医療研究センター「よくある質問・Q&A」:入院後などに急に状態が変化した場合の身体状態、薬剤、感染症などの確認先。
- 厚生労働省「認知症に関する相談先」:地域包括支援センター、認知症疾患医療センター、認知症初期集中支援チームなどの確認先。
- 厚生労働省「地域の見守り体制整備」・警察庁「各種相談」:行方不明への備え、地域の見守り制度、警察への緊急通報に関する確認先。















