冷蔵庫を開けたら、牛乳が四本並んでいた
実家へ行き、冷蔵庫を開ける。まだ封を切っていない牛乳が四本、豆腐が五丁、同じ漬物が三袋入っています。
洗面所には詰め替え用の洗剤が何袋もあり、押し入れには箱のままのティッシュ。賞味期限を過ぎた食品も混ざっています。
親へ「どうしてこんなに買ったの」と聞くと、悪びれる様子もなく言います。
「なかったから買ったの」
「安かったから、あっても困らないでしょう」
「それはあなたが持ってきたんじゃない?」
昨日も同じ話をしたのに、今日また買ってくる。家族は、つい強い言い方になってしまいます。
「もう買い物に行かないで」
「冷蔵庫を見てから行ってと言ったでしょう」
「お金がもったいないじゃない」
けれど、親にとって買い物は、必要な物を手に入れるだけの作業とは限りません。
毎朝店へ行くのが生活のリズムになっている。店員との短い会話が楽しみになっている。家族の食事を用意することが、自分の役割だと思っている。
その部分を見ずに財布や買い物をすべて取り上げると、「無駄遣いを止められた」ではなく、「自分の生活を奪われた」と感じることがあります。
一方で、食品が傷むほど増えている、支払いに困るほど買っている、通販の箱が次々と届く状態は、年齢のせいとして放っておけません。
本人の役割を残しながら、暮らしとお金を守る。そのために、まず同じ買い物が起きる場所を分けて見ていきます。
「忘れている」と決める前に、買うまでのどこで重なったかを見る
同じ物を買う理由は、購入したことを忘れたからとは限りません。
在庫が見えない、別々の場所にしまっている、買い物メモの使い方が合っていない、いつもの習慣で手に取っているなど、家の仕組みが関係していることもあります。
| 重複が起きる場面 | よくある様子 | 最初に変えたいこと |
|---|---|---|
| 在庫を見るところ | 食品や日用品が複数の棚、部屋、袋に分かれている | 同じ種類は一か所へ集める |
| 買う物を決めるところ | いつも買う品を、残量に関係なく買い物かごへ入れる | 「買う物」だけでなく「今日は買わない物」もメモする |
| 店内で選ぶところ | 特売、目立つ陳列、試食などをきっかけに予定外の物を買う | 買う店や通る売り場、持っていく金額を小さく整える |
| 買った後にしまうところ | 新しい物を手前へ置き、古い物が奥に残る | 新しく買った物は奥、古い物は手前へ置く |
| 購入したことを覚えるところ | 帰宅後すぐ別の作業をし、買った物の記憶が残りにくい | レシートと買った物を一緒に確認する |
| 家族間で共有するところ | 本人と家族が別々に同じ物を買っている | 家族が補充する品と、本人が買う品を分ける |
たとえば、母親が牛乳を三本買っていても、一本は本人、一本は同居する父親、もう一本は訪ねてくる孫のためかもしれません。
家族には重複に見えても、本人なりの用途がある場合があります。
反対に、「昨日買ったことを覚えていない」「家にあると見せても初めて見るような反応をする」という場合は、在庫の置き方だけでは減らない可能性があります。
一週間だけ、買った物ではなく「買った場面」を記録する
同じ物を見つけるたびに注意しても、繰り返す理由は分かりません。
まず一週間だけ、重複した買い物の場面を記録します。
| 書くこと | 記入例 |
|---|---|
| 買った日時 | 7月28日午前10時 |
| 買った物と数 | 牛乳2本、食パン1袋 |
| 家にあった在庫 | 未開封の牛乳2本、食パン1袋 |
| 買った場所 | いつものスーパー |
| 本人が話した理由 | 「朝ごはんに必要だから」 |
| 支払方法 | 現金。レシートあり |
| 一緒にあった変化 | 前夜あまり眠れていない。同じ質問が多かった |
記録の目的は、買い物の失敗を数えることではありません。
曜日、時間帯、店、商品に傾向があるかを見るためです。
- 毎朝の散歩で、同じ店へ寄るたびに買う
- 家族が来る前日に、食品を多めに買う
- 夕方になると在庫を思い出しにくい
- 特売日だけ、同じ日用品をまとめて買う
- 電話がかかってきた日に健康食品を注文する
この違いが分かれば、対策も変えられます。
買ったこと自体を忘れている人へ「よく考えて」と伝えることと、家族のために多めに買っている人へ「もう買うな」と伝えることでは、どちらもかみ合いません。
買い物から帰った親に、最初から「また?」と言わない
同じ商品が入った袋を見れば、家族の顔にも疲れが出ます。
ただ、買ってきた直後に責めると、本人は商品を隠す、レシートを捨てる、家族に知らせず買うようになる場合があります。
最初は、三つの順番で対応します。
| 順番 | すること | 言葉の例 |
|---|---|---|
| 1 | 買い物を終えたことを受け止める | 「お帰り。荷物が重かったでしょう」 |
| 2 | すでにある物と一緒に並べる | 「今ある分と合わせて、使う順番を決めよう」 |
| 3 | 次回の仕組みを一つ決める | 「牛乳は残り一本になったら、冷蔵庫の札を裏返すことにしない?」 |
買った物が多いときも、全部を前に並べて問い詰める必要はありません。
傷みやすい食品、金額の大きい商品、契約が伴う品を先に見ます。
同じ食パンが二袋なら、冷凍する、家族で分けるなど、その場で使い道を決められるかもしれません。
高額な健康器具が二台届いているなら、開封や使用を進める前に、注文方法や返品条件を調べる方が先です。
在庫表より先に、棚を見れば分かる形にする
細かな在庫表を作っても、本人が毎回記入できなければ、家族の仕事が増えるだけです。
最初は、文字で管理するより、見れば分かる状態を作ります。
同じ物は一か所へ集める
台所、廊下、押し入れに分かれている洗剤を、一つの棚へまとめます。
本人が「そこでは使いにくい」と言う場合は、全部を動かさず、日常用を一つだけ残し、予備を置く場所を一か所にします。
古い物が先に目に入るようにする
新しく買った食品を手前へ置くと、奥の物が見えなくなります。
新しい物を奥、先に使う物を手前へ置き、冷蔵庫の中を詰め込みすぎないようにします。
残量が分かる目印を使う
洗剤やトイレットペーパーなどは、「残り一つになったら買う」という線や札を決めます。
透明な箱を使う、棚へ品名の写真を貼るなど、本人が一目で判断できる形を選びます。
| 品物 | 重複を減らす仕組み |
|---|---|
| 牛乳、卵、豆腐 | 定位置を決め、置ける数を棚の幅で見せる |
| 調味料 | 開封中の一本と未開封の予備一本だけを同じ場所へ置く |
| 冷凍食品 | 袋を重ねず、種類が見える向きで立てる |
| 洗剤、シャンプー | 使用中と予備を一つずつ置き、それ以上は別の場所へ増やさない |
| ティッシュ、トイレットペーパー | 補充する位置に「ここが空いたら買う」と表示する |
| 乾電池、電球 | 一つの透明な箱にまとめ、使用済みと新品を分ける |
家族がきれいに片づけても、本人にとって見慣れない場所へ移すと、かえって「なくなったから買う」が増えることがあります。
配置を変えるときは、本人と一緒に動かし、どこへ置いたかをその場で確かめます。
買い物メモには、「買わない物」も書く
一般的な買い物メモには、必要な商品だけを書きます。
けれど、いつもの品を習慣で買う人には、買わない物も目に入る方が役立つことがあります。
| 今日買う物 | 今日は買わない物 |
|---|---|
| バナナ | 牛乳は家に3本あります |
| 魚 | 豆腐は明日までの分があります |
| 新聞 | 洗剤の予備があります |
「絶対に買うな」と大きく書くより、「家に何個ある」と事実を書く方が、命令された感じを弱められます。
本人がスマートフォンを使えるなら、出発前に冷蔵庫や棚の写真を一枚撮る方法もあります。
操作が負担になる場合は、小さなホワイトボードや紙のメモで十分です。
買い物へ同行する家族は、店内で商品を取り上げるより、本人へ家の在庫を思い出せる材料を見せます。
「牛乳は買わないって書いてあるよ」ではなく、「出る前の写真では、牛乳は三本あったね。今日はどうしようか」と選択を促します。
買い物を全部止めず、本人に任せる品を小さく決める
重複購入が増えると、家族は「今後の買い物は全部こちらで行う」と決めたくなります。
けれど、買い物を一気に取り上げると、外出の機会や本人の役割まで失われることがあります。
安全面と金銭面に大きな問題がなければ、本人が担える部分を残します。
| 今までの買い物 | 残しやすい形 |
|---|---|
| 食料品をすべて一人で買う | 本人はパンと果物、家族は重い物や日持ちする物を買う |
| 毎日スーパーへ行く | 買う日は週3回にし、ほかの日は新聞や散歩を目的にする |
| 財布の現金を自由に使う | 本人と話し合い、一週間分の買い物用現金を分けて持つ |
| 特売品をまとめ買いする | 買ってよい数をメモし、必要なら家族と一緒に行く |
| 家族全員の食事を用意する | 一品や一日の献立だけを本人の担当として残す |
現金やカードを調整するときは、できる限り本人と一緒に決めます。
家族が黙って財布からカードを抜いたり、口座を動かしたりすると、「お金を取られた」という不信につながることがあります。
「使わせないため」ではなく、「買い物を続けながら、支払いに困らないようにするため」と目的を共有します。
同じ食品が増える家では、「食べられているか」も見る
買ってきた物の数だけを見ていると、食生活の変化を見落とすことがあります。
冷蔵庫に食品が多くても、実際にはほとんど食べていない場合があります。
- 新しい食品ばかり増え、古い物を開封していない
- 賞味期限や消費期限が切れた物が大量に残っている
- 調理が必要な物を買うが、料理をしていない
- 同じ菓子やパンだけを食べている
- 冷蔵と常温の区別がつかず、保管場所を間違える
- やせてきた、服がゆるくなった
この場合は、「買いすぎを止める」だけでは足りません。
調理の手順が難しくなっていないか、歯や飲み込みに困りごとがないか、食欲や体調が変わっていないかも見ます。
使い切れない生鮮食品や、保管方法が分からなくなっている食品は、本人と一緒に状態を見て、食べない物を分けます。
「全部捨てる」と家族だけで進めると、本人には自分の持ち物を勝手に処分されたように感じられることがあります。
「今日は冷蔵庫の一段だけ」「期限が過ぎた物だけ」と範囲を小さくします。
同じ物を買うことだけで、認知症とは決められません
同じ買い物を繰り返すことは、認知機能の変化でみられる生活上のサインの一つです。
国立長寿医療研究センターは、認知機能の変化によって生じる日常生活上の例として、必要な物の買い忘れ、同じ物の繰り返し購入、賞味期限切れ食品の蓄積、服薬や金銭管理の難しさなどを挙げています。
ただし、同じ商品を何度か買っただけで、認知症と判断することはできません。
在庫が分かりにくい住環境や、長年の習慣、視力や聴力の変化、睡眠不足などが影響することもあります。
受診や相談を考えるときは、買い物以外にも変化がないかを見ます。
- 同じ質問や電話が増えた
- 買った物を見せても、購入した記憶がない
- 料理の手順や味付けが以前と変わった
- 薬を飲んだか分からなくなる
- 請求書を二度払う、支払いを忘れる
- ATMやカードの使い方が分からなくなった
- 慣れた店への道で迷う
- 店で必要な金額を出せなくなった
- 怒りっぽさや疑い深さが以前より強くなった
複数の変化があり、本人や家族の生活に影響が出ている場合は、買い物の記録を持って、かかりつけ医やもの忘れ外来へ伝えることを考えます。
本人が病院を嫌がる場合は、家族だけで地域包括支援センターへ状況を話すところから始められます。地域包括支援センターは市町村が設置する高齢者の総合相談窓口で、必要に応じて認知症疾患医療センターなどの関係機関と連携します。
急に買い方が変わったときは、認知症の進行だけで済ませない
数か月かけて同じ買い物が少しずつ増えた場合と、数日前から急に大量購入するようになった場合では、考え方が異なります。
以前はなかったのに、急に話が通じにくくなり、落ち着かず何度も店へ行く。昼間から強く眠そうにする。発熱や食欲低下、ふらつきがある。
このような急な変化では、感染症、脱水、薬の影響などが重なり、一時的な混乱が生じている可能性もあります。高齢者の急な混乱には複数の身体的な要因が関わるため、普段との違いを医療機関へ伝える必要があります。
次の様子がある場合は、次回の定期受診まで待たず、かかりつけ医などへ連絡してください。
- 発熱、せき、息苦しさがある
- 食事や水分をほとんど取れていない
- 急にぼんやりし、呼びかけへの反応が悪い
- 薬が変わった、飲み間違えた可能性がある
- 急に歩けなくなった、転倒が増えた
- 昼と夜で様子が大きく変わる
突然、顔の片側がゆがむ、ろれつが回らない、片方の腕や脚に力が入らない、立っていられないほど急にふらつく、強い息苦しさがある場合は、買い物の問題として様子を見ず、119番を考えます。
通販の箱が増えているときは、在庫より先に契約を調べる
同じ商品が増えている場所が、冷蔵庫ではなく玄関や廊下なら、通販や電話注文の契約を確かめます。
本人は一回だけ申し込んだつもりでも、定期購入になっている場合があります。
また、電話がかかるたびに同じ健康食品を注文していたり、別の販売会社から似た商品を買っていたりすることもあります。
箱をすぐ捨てず、次の物を一か所へ集めてください。
- 商品が入っていた箱や配送伝票
- 納品書、請求書、払込票
- 注文確認メール
- クレジットカードや口座の明細
- 事業者名、電話番号、注文番号
- 返品や解約について書かれた書面
| 確かめること | 見る場所 |
|---|---|
| 一回限りか定期購入か | 注文書、確認メール、契約内容 |
| 何回届く契約か | 継続回数、次回発送予定 |
| 毎回の金額と総額 | 商品代、送料、手数料 |
| 解約方法 | 電話、ウェブ、書面など指定された連絡手段 |
| 返品できる条件 | 返品期限、未開封の条件、送料負担 |
| 誰から勧められたか | 本人の記憶、着信履歴、同封書類 |
通信販売では、注文前の最終確認画面で定期購入の条件、総額、解約方法、返品条件などを確かめ、画面やメールを保存することが案内されています。すでに注文している場合も、残っているメールや書類が契約内容を調べる手がかりになります。
一般的なインターネット通販には、訪問販売と同じクーリング・オフ制度はありません。一方、訪問販売や電話勧誘販売には、原則として法定書面を受け取った日から8日以内のクーリング・オフが設けられていますが、商品や契約の状況によって扱いが異なります。
「一度開けたから無理」「家族からの連絡では解約できない」と言われても、自分たちだけで結論を出さず、消費者ホットライン188へ相談できます。
家族が本人に代わって事業者へ連絡するときは、本人確認や委任が必要になる場合があります。本人が話せる状態なら、隣で支えながら一緒に電話する方法もあります。
届いた商品を隠すより、注文までの入口を減らす
通販商品が増えると、家族はカタログ、スマートフォン、固定電話をすべて取り上げたくなります。
けれど、本人へ知らせずに商品や請求書を隠すと、支払いが遅れたり、本人の不信感が強くなったりします。
まず、どの入口から注文しているかを調べます。
| 注文の入口 | 取りやすい工夫 |
|---|---|
| 電話勧誘 | 知らない番号にはすぐ出ない、留守番電話を使う、勧誘電話だと分かったら家族へ共有する |
| テレビ通販 | 注文前に商品名と金額をメモし、一晩置いてから決める |
| 新聞・カタログ | 購入希望に印を付け、注文する日を週一回に決める |
| ネット通販 | 購入前にカートの中身と定期購入条件を家族と見る |
| 店頭の勧誘 | 高額品はその日に契約せず、見積書を持ち帰る |
認知症などにより判断が難しくなった高齢者は、自分で被害に気づかなかったり、周囲へ相談できなかったりして、消費者被害が表面化しにくいことがあります。消費者庁は、家族だけでなく地域の関係者が連携して見守る必要性を示しています。
荷物が増えた、見慣れない契約書がある、家計が急に苦しくなったという場合は、地域包括支援センターと消費生活センターの両方へ状況を伝える方法があります。
親に伝えるときは、無駄遣いより「使い切れない困りごと」を話す
家族から「無駄遣いをやめて」と言われると、本人は自分のお金の使い方を管理されたと感じます。
何が問題なのかを、目の前の生活場面で伝えます。
| 避けたい伝え方 | 代わりに伝えられる言葉 |
|---|---|
| 「また同じ物を買ったの?」 | 「牛乳が四本になったから、飲み切れる数を一緒に決めたい」 |
| 「お金の管理ができていない」 | 「今月、同じ健康食品の支払いが三回あるから、契約を一緒に見たい」 |
| 「もう一人で買い物に行かないで」 | 「重い物は私が買うから、パンと果物はお母さんにお願いしてもいい?」 |
| 「認知症だから忘れるのよ」 | 「家の物が見つけにくくなっているから、置き場所を一緒に変えてみない?」 |
| 「カードは没収する」 | 「請求が分かりにくくなっているから、普段使う支払い方法を一つに絞らない?」 |
本人が「私は困っていない」と言う場合もあります。
そのときは、認知症かどうかを争わず、家族が困っている事実を一つだけ伝えます。
「冷蔵庫に入り切らず、古い物から使えなくなっている。牛乳だけ、買う日を決めさせてほしい」
すべての買い物を一度に変えようとすると反発が強くなります。最初は、重複が多い一品だけを対象にします。
離れて暮らす兄弟には、写真と数字で共有する
同居している家族が「同じ物を何度も買う」と伝えても、遠方の兄弟から「それくらい年を取れば誰にでもある」と言われることがあります。
反対に、冷蔵庫の写真だけを見て「認知症だからカードを取り上げよう」と急ぐ人もいます。
家族間で判断が分かれるときは、印象ではなく、同じ記録を共有します。
- 同じ商品を買った日と個数
- 一か月に使った買い物金額
- 廃棄した食品の種類と量
- 通販の契約数と支払総額
- 買い物以外に起きている生活上の変化
- 本人が今も一人でできていること
兄弟へは、次のように伝えられます。
「買い物を全部やめさせたいわけではないよ。牛乳を週に6本買い、2本ずつ期限が切れている。まず牛乳だけ買う日を決めたいので、同じ方針で声をかけてほしい」
遠方の家族にも、通販の明細を月に一度見る、定期購入の解約を手伝う、地域包括支援センターを調べるなど、現地へ行かなくてもできる役割があります。
対策をしても増え続けるなら、家族だけで抱えない
棚を分かりやすくし、買い物メモを作り、家族が同行しても、同じ物が増え続ける場合があります。
本人が買い物を拒まれると強く怒る。借金をしてまで買う。届いた商品を隠す。家族の通帳やカードを使う。食費や公共料金が足りなくなっている。
この段階では、片づけ方だけの問題ではありません。
| 困っていること | 相談の入口 |
|---|---|
| 買い物以外にも認知機能の変化がある | かかりつけ医、もの忘れ外来、地域包括支援センター |
| 通販や電話勧誘の契約が増えている | 消費者ホットライン188、地域の消費生活センター |
| 家計や支払いの管理が難しくなった | 地域包括支援センター、市区町村の高齢者福祉窓口 |
| 家族が怒鳴る、無理に財布を取り上げそうになる | ケアマネジャー、地域包括支援センター、家族の相談窓口 |
| 特定の人による不審な購入や金銭利用が疑われる | 消費生活センター、市区町村の相談窓口、状況により警察 |
地域包括支援センターへは、認知症と決まっていない段階でも連絡できます。
「一人暮らしの母が同じ食品を繰り返し買い、通販の支払いも増えています。本人は困っていないと言っていますが、家族だけでは買い物を調整できません」と、生活の様子をそのまま話してください。
診断名を付けてもらうためではなく、本人の買い物をどこまで残し、どの支えを入れるかを考えるための相談です。
今日することは、冷蔵庫を空にすることではありません
同じ物が家中に増えていると、全部片づけ、買い物方法もお金の管理も一度に変えたくなります。
けれど、大きく変えるほど、本人には「勝手に触られた」「もう何もさせてもらえない」という気持ちが残ります。
今日は、次の中から一つだけ選んでください。
- 一番重複している商品を一つ選ぶ
- その商品の在庫を一か所へ集める
- 買った日と個数を一週間だけ記録する
- 次の買い物メモに「家にある物」を一つ書く
- 通販の箱があるなら、納品書を一か所へ集める
- 買い物以外にも変化があるなら、地域包括支援センターの電話番号を調べる
親が今日また同じ物を買ってきたとしても、その一回で将来を決めなくて大丈夫です。
まず、「どこで重なったのか」を見る。家にある物が見える形にする。本人に残したい買い物を一つ決める。
目標は、親から買い物を取り上げることではありません。本人が自分で選ぶ時間を残しながら、使い切れない物、払えない契約、傷んだ食品を増やさない形へ変えることです。
家族が強く言ってしまった日も、それまでの対応が全部間違いだったわけではありません。食品を捨て、請求を確認し、同じ説明を繰り返す生活は、それだけで疲れます。
「また買ったの」と言う代わりに、今日は一品だけ並べてみてください。
「牛乳が四本あるね。次は残り一本になったら買う形にしたい。どこへ置けば分かりやすいかな」
本人と一緒に決められる場所が一つ残れば、注意するだけだった買い物を、暮らしを整える話へ変えていけます。
出典・確認先メモ
- 国立長寿医療研究センター「認知症はどう予防する?もの忘れと認知症を知ろう」「認知症とMCI」:同じ物の繰り返し購入、期限切れ食品の蓄積、金銭・服薬管理など、日常生活に現れる変化の確認先。
- 厚生労働省「認知症に関する相談について」「地域包括ケアシステム」:地域包括支援センターの役割と、認知症に関する主な相談先の確認先。
- 国民生活センター「ネット通販・定期購入トラブルに遭わないための注意点」:定期購入の条件、総額、解約方法、返品条件などの確認先。
- 消費者庁「悪質商法などから消費者を守る」「特定商取引法とは」:訪問販売、電話勧誘販売、通信販売とクーリング・オフ制度に関する確認先。
- 消費者庁「高齢者・障がい者の消費者トラブル」:認知機能の低下などにより消費者被害へ気づきにくい高齢者を、地域で見守る仕組みに関する確認先。
- 厚生労働省「こんな時は迷わず119へ」:急な顔のゆがみ、ろれつの異常、片側の脱力、強い息苦しさなど、緊急性が高い症状の確認先。















