親を車へ乗せるだけで、通院前に二人とも疲れてしまいます
父の診察日は、朝から家族全員が緊張します。
玄関には三段の階段があり、父は手すりを握っても足が上がりにくくなっています。
ようやく家の前まで出ても、家族の車の座席は低く、身体の向きを変えて乗り込むのに時間がかかります。
「お尻をもう少し奥へ」
「そこにつかまって」
「急に立たないで」
父は「自分でできる」と言いますが、膝が崩れそうになるたび、支える家族の腰にも力が入ります。
病院へ着けば、駐車場から受付まで車いすを押し、診察後は会計と薬局を回る。帰宅して階段を上がるころには、本人も家族もぐったりしています。
介護タクシーなら楽になるのかもしれない。
けれど、調べると「介護保険が使える」「全額自費」「運賃のほかに介助料が必要」など、違う説明が出てきます。
「普通のタクシーより大げさではないか」
「毎月使うには高すぎないか」
「家族が一緒なら頼まなくてもよいのでは」
迷うのは、介護タクシーという名前だけでは、どこまで助けてもらえて、何に料金がかかるか分からないからです。
「介護タクシー」という名前だけでは、サービス内容は分かりません
一般に介護タクシーと呼ばれているものには、大きく分けて二つの使い方があります。
| 使い方 | 主な特徴 | 費用の考え方 |
|---|---|---|
| 自費の介護・福祉タクシー | 車いすやストレッチャーで乗車でき、通院以外の外出にも使える | 運賃、介助、機材、待機などを原則自費で支払う |
| 介護保険の通院等乗降介助を伴う送迎 | 指定訪問介護事業所の職員が、ケアプランに基づき乗降や移動を介助する | 介助部分は介護保険の対象になり得るが、車の運賃などは別に支払う |
国土交通省が使う「福祉タクシー」は、福祉車両を使う一般タクシー事業者や、高齢者・障害者などの輸送に限定した許可を受けた事業者による運送を指します。事業者が「介護タクシー」という名称を使っていても、介護保険が適用されるとは限りません。
予約するときは、名称ではなく次のように尋ねてください。
「この利用は介護保険の通院等乗降介助ですか。それとも全額自費の福祉タクシーですか」
普通のタクシーで足りる場合と、介護タクシーが向く場合があります
| 本人の状態 | 検討しやすい移動手段 |
|---|---|
| 自分で歩けて、乗り降りにもほぼ介助がいらない | 一般のタクシー |
| 折りたたみ車いすを家族が積み、座席へ移乗できる | 一般タクシーやUDタクシーを事前相談 |
| 車いすから座席へ移るのが危ない | 車いすのまま乗れる介護・福祉タクシー |
| 玄関から車まで支えが必要 | 乗降・移動介助を頼める介護タクシー |
| 階段、段差、狭い通路がある | 自宅環境を事前確認できる介護タクシー |
| リクライニング車いすやストレッチャーが必要 | 対応車両と機材を持つ福祉タクシーや患者等搬送事業者 |
| 急な意識障害や呼吸困難などがある | 介護タクシーではなく119番 |
判断のポイントは、歩けるかどうかだけではありません。
家から車へ移動できるか、座席へ安全に座れるか、到着後に受付まで行けるかという、外出全体を見ます。
介護タクシーを検討したいのは、家族の力だけでは危なくなったときです
- 車へ乗せるとき、親が倒れそうになった
- 家族が抱え上げ、腰や肩を痛めている
- 通院のたびに家族二人以上が必要になる
- 自家用車へ車いすが入らない
- 車いすから座席への移乗が難しい
- 階段や玄関の段差で外出を諦めている
- 家族が仕事を休めず、受診を先送りしている
- 病院へ着いてからの移動や手続きにも助けがいる
- 退院時に通常の車へ座っていられない
介護タクシーは、歩けなくなってから初めて使うものではありません。
家族が無理な姿勢で抱えるようになった、転倒が心配で通院回数を減らしているという段階も、移動方法を変える理由になります。
必要なのが「車」なのか「人の手」なのかを分けて考えます
| 困っていること | 必要になりやすい支援 |
|---|---|
| 車いすを自家用車へ積めない | 車いすのまま乗れる車両 |
| ベッドから車いすへ移れない | 自宅内の移乗介助 |
| 玄関の階段を下りられない | 階段介助、複数人対応、専用機材 |
| タクシーの座席へ座れない | 車いすまたはストレッチャー対応車両 |
| 病院の受付まで一人で行けない | 降車後の移動・受付介助 |
| 診察中の説明を一人で聞けない | 家族や別途の院内付き添い |
| 帰りの待ち時間が長い | 待機予約または診察後の再配車 |
車いす対応車両だけ借りれば足りる人もいれば、寝室から病院受付まで一連の介助が必要な人もいます。
必要な人の手が多いほど、料金の項目も増えます。
介護保険を使う「通院等乗降介助」には条件があります
介護保険の通院等乗降介助は、単に高齢者が病院へ行くときのタクシー代を安くする制度ではありません。
指定訪問介護事業所の訪問介護員等が、自ら運転する車への乗車・降車介助に加え、乗車前後の移動や受診手続きなど、具体的な介助を行う訪問介護サービスです。
一般的には、次の条件を満たすかをケアマネジャーと確認します。
- 要介護1から5の認定を受けている
- 自宅等で生活している
- 一人での乗降や移動が難しく、介助の必要性がある
- 利用目的が介護保険で認められる範囲に当たる
- ケアプランと訪問介護計画に位置付けられている
- 通院等乗降介助に対応する指定訪問介護事業所を利用する
厚生労働省は、通院等乗降介助について、ケアプランへの位置付けを前提に、要介護1以上の人へ提供する仕組みとして示しています。要支援や認定を受けていない人でも、自費の介護・福祉タクシーを利用できる場合はあります。
介護保険が使えても、タクシー代全体が1割になるわけではありません
2026年6月時点の介護報酬では、通院等乗降介助は片道1回につき97単位です。介護保険サービス部分の利用者負担は、所得に応じて原則1割、一定以上の所得がある場合は2割または3割です。地域区分や事業所の加算などにより、実際の金額は変わります。
ここで注意したいのは、97単位に車の運賃が含まれているわけではないことです。
介護保険の対象になるのは、条件を満たす乗降や移動などの介助部分です。走行中の運賃、迎車、車いす等の機材、待機などは、原則として別料金になります。
| 料金項目 | 介護保険の扱い |
|---|---|
| 通院等乗降介助 | 条件を満たせば介護保険の対象 |
| 車両の運賃 | 原則として自費 |
| 迎車・予約料金 | 原則として自費 |
| 車いす・リクライニング車いす・ストレッチャー | 原則として自費 |
| 階段介助や二人介助 | 内容により保険または自費。事前確認が必要 |
| 病院での待機 | 自費になることが多い |
| 保険対象外の院内付き添い | 自費として組み合わせる場合がある |
| 高速道路・駐車場 | 原則として実費 |
厚生労働省の制度上、運転中の移送そのものや運賃は、通院等乗降介助の介護報酬には含まれません。また、保険対象の介助後に、自費の院内介助を明確に区分して提供することも認められています。
往復料金は、七つの項目を足して考えます
「病院まで片道2,000円」と聞いても、それだけで一日の費用は分かりません。
| 費用項目 | 見積もりで聞くこと |
|---|---|
| 往復運賃 | 距離制か時間制か、帰りも同額か |
| 迎車・予約 | 自宅まで迎えに来る料金があるか |
| 乗降・移動介助 | 玄関から車、車から受付まで含むか |
| 機材 | 車いす、リクライニング、ストレッチャーの利用料 |
| 追加の人員 | 階段などで二人以上必要な場合の料金 |
| 待機 | 診察中に待つ場合の時間料金 |
| 実費 | 高速道路、駐車場、キャンセル料 |
料金を比べるときは、「片道運賃」ではなく、次の形で尋ねます。
「自宅の寝室から病院受付まで、往復でいくらになりますか。車いす、玄関の三段の階段、診察二時間の待機を含めて、合計を教えてください」
見積書では「どこからどこまで」が最も重要です
| 表現 | 実際に確かめたい範囲 |
|---|---|
| 玄関まで | 家の内側か、道路側の玄関前か |
| 乗降介助込み | 車いすへの移乗も含むか |
| 病院まで | 車寄せまでか、受付までか |
| 階段対応可 | 何段・何階までか、二人介助か |
| 車いす対応 | 本人所有の車いすを使うか、借りるか |
| 付き添い可能 | 院内のどこまで、何分までか |
| 待機可能 | 待機料金の開始時刻と単位 |
当日に「それは別料金です」と分かるのを避けるには、場所と動作を細かく伝えます。
介護保険を使える外出と、自費になる外出を混ぜないようにします
| 外出目的 | 費用の考え方 |
|---|---|
| 定期的な通院 | 条件を満たせば通院等乗降介助の対象になり得る |
| 官公署での必要な手続き | 内容やケアプラン上の必要性を個別に確認 |
| 病院から病院への転院 | 自費の福祉タクシーや患者等搬送を検討することが多い |
| 入院・退院 | 介護保険の対象になるかを事前に確認し、自費も含めて見積もる |
| 買い物・外食 | 自費の介護・福祉タクシーを検討 |
| 冠婚葬祭・墓参り | 自費利用が基本 |
| 旅行・観光 | 自費利用が基本 |
自費の福祉タクシーは、通院だけでなく、買い物、冠婚葬祭、外出などにも使える場合があります。
介護保険を使いたい場合は、予約前にケアマネジャーへ目的を伝え、「今回の外出がケアプランへ位置付けられるか」を聞いてください。
院内の付き添いは、当然に含まれると思わない方が安心です
病院へ到着したあとも、家族の助けが必要になる場面があります。
- 車寄せから受付まで車いすを押す
- 受付や診察券の手続きをする
- 診療科まで移動する
- トイレを介助する
- 診察室へ入り、医師の説明を聞く
- 会計や薬局まで付き添う
- 帰りの車が来るまで見守る
通院等乗降介助には、必要に応じて降車後の移動や受診手続きなどが含まれますが、院内介助のすべてが介護保険になるわけではありません。病院側で対応できるか、介護上の必要性があるかなどによって扱いが変わり、対象外部分を自費で頼むこともあります。
予約時には、「受付で引き渡し」なのか、「診察が終わるまで付き添い」なのかを明確にします。
家族の同乗が必要かは、車の定員と本人の状態で変わります
介護タクシーを頼めば、家族が行かなくてもよいとは限りません。
運転と乗降介助は依頼できても、診察内容の説明、治療方針の判断、同意書への対応などは、家族や本人をよく知る人が必要になる場合があります。
| 本人の状態 | 家族同乗を考えたい理由 |
|---|---|
| 診察内容を理解し、帰宅後に伝えられる | 移動介助だけ依頼できる可能性がある |
| 耳が聞こえにくい、説明を忘れやすい | 医師の説明を聞く人が必要 |
| 治療や検査の判断が必要 | 本人の意思確認を支える人が必要 |
| 不安が強く、場所が変わると混乱する | 慣れた家族の同乗で落ち着く場合がある |
| 医療的なケアが必要 | 看護職等の付き添いが必要か医療機関へ確認 |
同乗できる人数や荷物の量は車種によって異なります。車いすのまま乗る場合は、家族用の座席数も事前に聞いてください。
車いすは「使っている」と伝えるだけでは足りません
| 伝えること | 具体例 |
|---|---|
| 車いすの種類 | 自走式、介助式、電動、リクライニング |
| 本人の乗り方 | 車いすのまま乗る、座席へ移る |
| 身体の状態 | 座位を保てる、身体が傾く、足が曲がりにくい |
| 車いすの大きさ | 幅、高さ、電動車いすの重量など |
| 持参品 | 酸素、歩行器、荷物、点滴台など |
| 貸出希望 | 通常車いす、リクライニング、ストレッチャー |
電動車いすや大きなリクライニング車いすでは、対応できる車両が限られることがあります。
車いすの型番や写真を送れるか、予約時に聞いておくと当日の行き違いを減らせます。
階段がある家は、段数だけでなく周囲の広さを伝えます
「玄関に三段あります」と伝えても、介助の難しさは家によって違います。
- 屋内か屋外か
- 段差の高さ
- 階段の幅
- 踊り場の有無
- 手すりの位置
- 車いすを置ける平らな場所
- 車両を玄関近くへ停められるか
- 本人が立位を保てるか
- 家族が介助へ加われるか
狭い階段や急な段差では、二人介助や専用機材が必要となり、追加料金が発生することがあります。
初回は、写真を見てもらう、事前に下見してもらうなど、当日初めて状況を知る形にしない方が安心です。
診察中に車を待たせるか、帰りに呼び直すかを比べます
| 方法 | 向いている場面 | 気をつけたいこと |
|---|---|---|
| 診察中も待機してもらう | 短時間の受診、帰りの車を確実にしたい | 待機料金が長くなる可能性 |
| 診察後に再配車する | 検査などで終了時間が読めない | 希望時刻に車が空いていない可能性 |
| 往路と復路を別々に予約する | 終了時刻のおおよその見込みがある | 診察が延びたときの変更方法 |
| 家族が帰りだけ迎えに行く | 片道だけ移乗介助が必要 | 家族の車へ安全に乗れるか |
病院の待ち時間が長い場合、車を待たせるより、帰りを別便にした方が安くなることがあります。
ただし、地域によっては介護タクシーの台数が少なく、当日の呼び直しが難しい場合もあります。料金だけでなく、帰宅手段を確保できるかで選んでください。
初回予約では、病院の予約時刻ではなく家を出たい時刻を伝えます
診察が午前10時だから、9時40分に迎えに来てもらえばよいとは限りません。
寝室からの移乗、階段、車への固定、病院入口から受付までに時間がかかります。
| 時間に入れたいこと | 必要時間の例 |
|---|---|
| ベッドから車いすへの移乗 | 本人の状態によって変わる |
| 玄関・階段の介助 | 段差や人員によって変わる |
| 車いすの固定 | 安全確認を含める |
| 道路の混雑 | 通勤時間や天候を考える |
| 病院入口から受付 | 大きな病院では移動時間が必要 |
| 受付前の余裕 | トイレや体調変化にも備える |
事業者には病院の予約時刻を伝えたうえで、「何時の迎えなら間に合うか」を組んでもらいます。
予約の電話では、この順番で伝えると見積もりやすくなります
「介護タクシーをお願いしたいのですが、いくらですか」と聞くだけでは、正確な金額を出しにくいものです。
次の順番で伝えます。
- 利用日と病院の予約時刻
- 出発地と行き先
- 片道か往復か
- 本人の歩行・移乗の状態
- 車いすの種類
- 自宅の階段や段差
- 介助してほしい範囲
- 家族の同乗人数
- 待機または帰りの迎え
- 介護保険利用の有無
電話では、次のように伝えられます。
「要介護2の母を、自宅から市民病院へ連れて行きたいです。母は室内を数歩なら歩けますが、車の座席へ移るのは難しく、車いすのまま乗りたいです。玄関に手すりのない三段の階段があります。家族一人が同乗します。自宅内から病院受付までの介助と、往復の総額を教えてください」
見積もりは二社ほど取り、安さより抜けている料金を見ます
| 比較項目 | 事業者A | 事業者B |
|---|---|---|
| 往復運賃 | ||
| 迎車・予約料金 | ||
| 乗降・玄関介助 | ||
| 階段・追加人員 | ||
| 車いす等の機材 | ||
| 院内介助 | ||
| 待機 | ||
| 高速・駐車場 | ||
| キャンセル料 | ||
| 合計見込み |
一方が安く見えても、階段、車いす、待機が別料金なら、最終的な合計は高くなることがあります。
見積もりは口頭だけでなく、可能であればメッセージや書面で残します。
介護保険を使いたいときは、タクシー会社より先にケアマネジャーへ伝えます
介護保険の通院等乗降介助を使うには、必要性をケアプランへ位置付ける流れがあります。
ケアマネジャーへは、単に「タクシーを安く使いたい」と言うより、家族が困っている動作を伝えます。
「父を自家用車へ乗せるとき、膝が崩れて家族一人では支えられません。通院を延期したこともあります。玄関から病院受付まで、どの部分を介護保険で支援できるか知りたいです」
介護サービス情報公表システムでは、訪問介護事業所が通院等乗降介助を実施しているかを調べられます。ただし、対応地域、空き状況、車種、介助範囲は事業所ごとに異なります。
要支援や介護認定前でも、自費なら利用できる場合があります
介護認定を受けていない、要支援で通院等乗降介助の対象にならないという場合でも、移動が危険なら自費の介護・福祉タクシーを検討できます。
次のような一時利用にも向いています。
- 骨折後の退院
- 検査のため一度だけ遠方の病院へ行く
- 家族が不在の日の通院
- 車いすで冠婚葬祭へ出席する
- 施設見学や転居の移動
- 旅行や墓参り
「介護保険が使えないなら利用できない」とは限りません。
保険が使えない場合の介助料を含めた総額を聞いて判断します。
自治体のタクシー券や助成を利用できる場合があります
自治体によっては、障害者手帳を持つ人や一定の要件を満たす高齢者などを対象に、福祉タクシー券や移送費の助成を行っていることがあります。
ただし、次の点は自治体ごとに異なります。
- 対象となる年齢、障害、要介護度
- 所得制限
- 利用できる事業者
- 普通タクシーと福祉タクシーのどちらに使えるか
- 一回または年間の助成額
- 申請前の利用へさかのぼれるか
利用前に、本人の住所地の障害福祉・高齢福祉担当窓口や地域包括支援センターへ、「福祉タクシー券や移送助成はありますか」と聞いてください。
緊急時に介護タクシーを予約しようとしないでください
介護タクシーは、予約した通院や、緊急性のない入退院・転院などに役立つ移動手段です。
次のような状態では、料金を調べたり空車を待ったりせず、119番を優先します。
- 意識がない、反応が弱い
- 急な呼吸困難や強い胸痛
- 顔や手足の片側が動かしにくい
- ろれつが回らない
- 大量の出血
- けいれん
- 急に立てなくなった
- 強い頭痛と普段にない異変
救急車を呼ぶべきか、今すぐ受診すべきか迷う場合、実施地域では救急安心センター「#7119」で医師、看護師、救急救命士などから助言を受けられます。緊急性が高い場合は、119番への案内も行われます。
寝たままの搬送では、患者等搬送事業者も選択肢になります
緊急性はないものの、ストレッチャーでの転院や入退院が必要な場合は、地域の消防本部が認定する患者等搬送事業者を利用できる場合があります。
患者等搬送事業は、寝たきりの高齢者や傷病者などを対象に、専用車で入退院、通院、転院、施設への送迎を行う、緊急性のない搬送です。
酸素、吸引、看護師の付き添いなどが必要な場合は、本人の状態を主治医や病院の退院支援担当者へ伝え、どの搬送方法が適切かを決めてください。
親が「大げさだ」と嫌がるときは、家族の都合だけで説得しません
親にとって、介護タクシーを使うことは「歩けない人になった」と認めるように感じられる場合があります。
| 避けたい伝え方 | 受け入れやすい伝え方 |
|---|---|
| 「もう普通の車には乗れないよ」 | 「病院へ着く前に疲れない方法を一度試したい」 |
| 「家族が大変だから使って」 | 「足や腰を痛めず、楽な姿勢で行けるか試してみない?」 |
| 「転んだら困るでしょう」 | 「階段を慣れた人に手伝ってもらうと安心できそう」 |
| 「介護タクシーに決めたから」 | 「行きだけ試して、帰り方はその後考えよう」 |
毎回使うと決めず、最初は片道だけ、雨の日だけ、検査の日だけ試す方法もあります。
実際に乗ってみて、本人が楽だったこと、嫌だったことを次回の予約へ反映します。
一度使ったあとに、料金以外の負担も比べます
| 比べること | 家族の車 | 介護タクシー |
|---|---|---|
| 本人の疲れ | ||
| 乗降時の危険 | ||
| 家族の人数 | ||
| 仕事を休む時間 | ||
| 駐車場探し | ||
| 家族の腰・肩の負担 | ||
| 一回の費用 | ||
| 受診を続けやすいか |
介護タクシーの方が金額は高くても、家族二人が仕事を休まずに済む、移乗時の転倒を避けられる、通院を中断せずに済むなら、家庭全体では負担が減る場合があります。
反対に、本人が安全に座席へ移れ、家族一人の付き添いで無理なく通えるなら、毎回介護タクシーへ変える必要はありません。
初回利用の前日に、六つだけ再確認します
- 迎えの日時と電話番号
- 自宅のどこまで迎えに来るか
- 使う車いすと機材
- 家族の同乗人数
- 病院での引き渡し場所
- 帰りの待機・再配車方法
加えて、お薬手帳、診察券、保険証類、本人の上着や飲み物を一つのかばんへまとめます。
当日の体調が普段と違う場合は、無理に乗せる前に事業者や医療機関へ状況を伝えてください。
今日することは、介護タクシーを予約することではありません
まず紙へ、次の五行を書いてください。
- 出発地と行き先:
- 本人が一人でできない動作:
- 車いす・ストレッチャーの必要性:
- 玄関の段差・階段:
- 病院内で必要な付き添い:
要介護認定とケアマネジャーがいる場合は、この紙を見ながら、通院等乗降介助をケアプランへ入れられるか聞きます。
自費で使う場合は、二つほどの事業者へ同じ条件を伝え、往復の総額を出してもらいます。
介護タクシーは、家族が介護を手放すためのぜいたくではありません。
本人が安全に受診を続け、家族が身体を痛めず、無理な抱きかかえを減らすための移動手段です。
それでも毎回使う必要はありません。
検査の日だけ、階段が危ない時期だけ、家族が同行できない日だけという使い方もできます。
今日は料金表を眺め続けるのではなく、「玄関から病院のどこまで助けてほしいか」を一文にするところから始めてください。
出典・確認先メモ
- 国土交通省「福祉タクシー」:福祉車両を使用する一般タクシー事業者や、利用者を高齢者・障害者等に限定した事業者による運送の定義。
- 厚生労働省「指定居宅サービスに要する費用の額の算定に関する基準」:通院等乗降介助の内容と、2026年6月時点の97単位。
- 厚生労働省「移送(いわゆる介護タクシー関係)の取扱い」:要介護1以上、ケアプランへの位置付けなど介護保険適用の基本的な考え方。
- 厚生労働省「介護保険サービスと保険外サービスを組み合わせて提供する場合の取扱い」:介護保険対象外の院内介助などを自費サービスとして区分して提供する際の扱い。
- 厚生労働省「介護サービス情報公表システム」:通院等乗降介助を実施する訪問介護事業所の検索。
- 総務省消防庁「救急安心センター事業」「患者等搬送事業」:緊急時の相談と、緊急性のない入退院・転院等に利用する搬送事業。
- 料金、介護保険の適用範囲、介助内容、車種、自治体の助成制度は、本人の状態、ケアプラン、事業者、地域によって異なります。利用前にケアマネジャー、事業者、自治体の窓口へ個別にご確認ください。















