昨日まであった通帳が消え、親から「あなたが持っていった」と言われます
実家へ行くと、母がたんすの引き出しを何度も開けています。
「年金の通帳がない。誰かに盗られた」
先週は、封筒へ入れて仏壇の横に置いていたはずです。しかし、そこにはありません。
一緒に探そうとすると、母は引き出しを閉めます。
「私のお金なんだから、触らないで」
「あなたが持っているんでしょう」
「子どもだからって、勝手なことをしないで」
家族は焦ります。
通帳が本当に紛失したのか。どこかへ隠して忘れたのか。詐欺に遭ったのか。別の家族が預かっているのか。
介護費や公共料金の支払いもあるため、早く見つけなければと思います。それでも、問い詰めるほど親は警戒し、話をしてくれなくなります。
「心配しているだけなのに、泥棒のように疑われる」
そう感じ、腹が立ったり悲しくなったりするのは無理もありません。
ただ、親にとって通帳は単なる紙ではありません。
自分が働いてきた証しであり、これからも一人で暮らせるという安心であり、最後まで自分で決められるという感覚でもあります。
その通帳が見つからないとき、親自身も家族以上に怖くなっていることがあります。
「隠した」と決めつける前に、四つの状態を分けます
| 考えられる状態 | 見られやすい様子 | 先にすること |
|---|---|---|
| 本人が安全な場所へ隠し、場所を忘れた | 大事な物を何度も移す、探すたびに違う場所を言う | 責めずに、本人の行動順に沿って探す |
| 家族や支援者が預かっている | 通院や入院の前後から見当たらない | 預かった人、返した日、保管場所を確かめる |
| 外出先やATMで紛失した | カードや印鑑も一緒にない、最後に使った日が分かる | 金融機関へ紛失時の対応を聞く |
| 盗難・詐欺・使い込みの可能性がある | 知らない出金、訪問者、電話、契約書、急な残高減少がある | 取引銀行や警察などへ早めに状況を伝える |
認知症では、しまい忘れや置き忘れが増え、財布や通帳を盗られたと周囲を疑うことがあります。ただし、認知症があるという理由だけで、本人の訴えをすべて記憶違いと扱ってはいけません。実際の紛失や不正利用が起きていないかは別に確かめる必要があります。
次の変化がある場合は、家の中を探すより先に動きます
- 通帳だけでなくキャッシュカードや印鑑もない
- 本人が知らない高額な出金や振込みがある
- 警察、銀行、役所を名乗る人から電話が来ていた
- 知らない人が自宅へ来て、カードや封筒を持ち帰った
- 暗証番号を書いた紙が見つからない
- 急に多額の現金を引き出した形跡がある
- 未納料金や還付金について電話で指示を受けた
- 家族の誰かが通帳を預かり、出金内容を説明しない
警察官、銀行員、自治体職員などを名乗り、暗証番号やキャッシュカードを求める詐欺があります。銀行員や警察官などが電話や訪問で暗証番号を聞き、カードを預かることはないと政府広報は注意を呼びかけています。被害が疑われる場合は、相手から教えられた番号ではなく、取引銀行の正式な窓口や警察へ連絡してください。
通帳を探す日の目標は、「見つける」より親の警戒を強めないことです
家族は、親が買い物や通院へ出た間に家中を探したくなるかもしれません。
けれど、本人が戻ったときに物の位置が変わっていれば、「やはり家族が家を荒らした」と感じることがあります。
その後、通帳をさらに分かりにくい場所へ隠すようになれば、問題は深くなります。
探すときは、次のルールを決めます。
- 原則として本人がいる時間に行う
- 一度に大勢で家へ入らない
- 探す範囲を「机の周りだけ」など小さくする
- 開ける引き出しや箱は本人へ一声かける
- 現金や書類を見つけても勝手に持ち帰らない
- 移動した物は元の場所へ戻す
- 見つけた人、場所、日時をメモする
認知症があっても、本人の意思を置き去りにしてよいわけではありません。厚生労働省の意思決定支援に関する案内でも、認知症の人が自らの意思に基づいて生活できるよう支える考え方が示されています。
「どこに隠したの?」ではなく、最後に使った場面から一緒に戻ります
記憶を試すような質問を繰り返すと、親は答えられないことを責められていると感じます。
| 避けたい聞き方 | 話しやすい聞き方 |
|---|---|
| 「また隠したんでしょう」 | 「最後に通帳を見たのは、年金を確かめたときだった?」 |
| 「どこへ置いたか思い出して」 | 「いつもお金の物を置く場所から一緒に見ようか」 |
| 「私が盗るわけないでしょう」 | 「なくなったら怖いよね。勝手に持ち出さず一緒に探すよ」 |
| 「認知症だから忘れたのよ」 | 「場所が変わった可能性もあるから、一つずつ見てみよう」 |
| 「もう私が管理する」 | 「支払いに必要な分だけ、分かりやすい置き方を考えない?」 |
事実と違う疑いを向けられたとき、家族が否定したくなるのは当然です。
それでも、その場で潔白を証明しようと議論を続けるより、「通帳が見つからなくて不安なのだ」という感情へ返事をした方が、探す話へ戻りやすくなります。
親が隠す理由は、物忘れだけではありません
| 背景にあること | 親の中にある気持ち | 家族が見たいこと |
|---|---|---|
| 保管場所を忘れる | 自分では安全な所へ置いたつもり | 物を移す頻度、ほかの探し物の増加 |
| 盗られることへの不安 | 財産を守らなければならない | 家族や訪問者への疑いが増えていないか |
| 家族に管理される抵抗 | 自分の人生を奪われるように感じる | 家族が説明なく通帳を触っていなかったか |
| お金が足りない心配 | 年金で今後も暮らせるか怖い | 生活費、介護費、未払いの有無 |
| 実際の家族関係の問題 | 以前、無断で使われた経験がある | 出金記録や家族間の金銭トラブル |
| 詐欺や他人からの指示 | 誰にも言わないよう求められている | 不審電話、訪問者、契約、送金 |
認知症の症状には、記憶障害だけでなく、本人の不安、環境、人間関係などが重なって妄想的な言動が現れることがあります。本人は何も分かっていないのではなく、自分の変化を感じて強い不安を抱えている場合があります。
探す範囲は、親の「しまう習慣」から広げます
家中を無作為に探すより、親が大事な物を扱うときの動きを思い出します。
- 郵便物を開ける場所
- 年金や税金の通知を読む場所
- 印鑑や保険証を置いている場所
- 来客時に物を急いで移す場所
- 外出用のバッグや上着
- 入院・通院時に使った手提げ
- 家計簿や領収書を保管する場所
布団、衣類、紙袋などを動かす場合は、物を一つずつ元に戻します。
大量の現金や別の通帳が出てきても、その場で家族へ分けたり、別宅へ移したりしないでください。
まず本人へ知らせ、見つけた状態を記録します。
見つかった通帳を、そのまま家族が持ち帰らないようにします
見つかった安心から、「今度なくさないよう、私が預かるね」と持ち帰る家族がいます。
本人が納得していれば一つの方法になることはありますが、説明や同意が曖昧なまま移すと、次に本人が探したとき「盗られた」という思いを強めます。
本人が話し合える状態なら、次の中から選んでもらいます。
| 保管方法 | 向いている状況 | 決めておくこと |
|---|---|---|
| 本人の家の定位置に置く | 自分で出し入れできる | 置き場所を増やさず、本人と家族一人が共有 |
| 鍵のかかる場所へ置く | 訪問者や紛失が心配 | 鍵を持つ人、緊急時の開け方 |
| 本人の同意を得て家族が預かる | 本人が管理の負担を感じている | 預かった日、返す条件、支出報告 |
| 金融機関の代理制度等を検討する | 将来の手続きへ備えたい | 本人の意思と銀行ごとの条件 |
| 福祉制度を使って日常的な金銭管理を支援してもらう | 本人だけでは支払いが難しいが契約内容は理解できる | 支援内容、費用、訪問頻度 |
通帳を預かる場合は、「長女が持っている」だけでなく、本人の目に入る場所へ保管先を書いたメモを残す方法があります。
ただし、第三者に見られやすい場所へ口座番号や暗証番号まで書かないようにします。
家族が預かるなら、「親のお金」と「家族のお金」を混ぜません
親の買い物を家族のカードで払い、後日親の口座からまとめて下ろす。介護費と自分の交通費を同じ封筒から出す。
このような状態が続くと、親のために使ったつもりでも、後からほかの家族へ説明できなくなります。
最低限、次の記録を残してください。
| 記録すること | 記入例 |
|---|---|
| 預かった物 | ○○銀行通帳、キャッシュカード、印鑑 |
| 預かった日と理由 | 7月20日、本人と相談し紛失防止のため |
| 入出金 | 7月22日、配食代8,400円 |
| 証拠となる物 | 領収書、請求書、振込控え |
| 残高の共有 | 月末に本人ときょうだいへ報告 |
| 返却・変更 | 本人の希望や支援制度開始時に見直す |
家族が親の財産を不当に処分したり、不当に利益を得たりすることは、高齢者虐待防止法上の経済的虐待に当たり得ます。介護費へ使った場合でも、本人のための支出か分からない状態を作らないことが、親だけでなく管理する家族自身を守ります。
通帳が見つからないときは、暗証番号を推測してATMを使わないようにします
親が教えてくれた覚えのある番号を、家族がATMで試すことは避けてください。
家族であっても、本人名義の口座を当然に自由に操作できるわけではありません。
通帳やカードが見つからないときは、取引銀行の正式な窓口へ、次の内容を伝えます。
- 口座名義人本人が通帳を紛失した可能性があること
- キャッシュカードと印鑑の所在
- 本人が窓口で手続きを理解し、意思を伝えられる状態か
- 不審な出金や詐欺の可能性があるか
- 家族が本人と同行できるか
- 本人確認や再発行に必要な書類
高齢者や認知判断能力が低下した人との金融取引、家族等による代理手続きへの対応は、金融機関や個別の状況によって異なります。家族だけで方法を決めず、本人の状態と必要な支払いを銀行へ具体的に伝えてください。
通帳探しと同時に、「今月止まると困る支払い」を守ります
すべての財産を把握するより先に、暮らしを止めないことが必要です。
| 優先して見る支払い | 確かめること |
|---|---|
| 家賃・住宅費 | 引落日、滞納の有無、振込先 |
| 電気・ガス・水道 | 支払方法、督促状、停止予定 |
| 医療・介護 | 病院、施設、サービス利用料 |
| 健康保険・税金 | 納付書、口座振替、未納 |
| 食費・日用品 | 本人が自由に使える生活費 |
| 電話 | 緊急連絡に必要な回線が止まらないか |
親のお金を守るために現金を一切持たせないと、本人が買い物や近所付き合いをできなくなる場合があります。
必要な支払いを自動振替にし、本人が使う現金は一週間分ずつにするなど、本人の暮らしを残しながら危険を減らす形を考えます。
本人がまだ決められるなら、口座を全部任せてもらう必要はありません
家族が知っておきたいのは、すべての残高や暗証番号ではなく、緊急時に生活を止めないための情報です。
- 年金が入る金融機関名
- 生活費が引き落とされる口座
- 医療・介護費を払う口座
- 通帳や保険書類の保管場所
- 銀行へ同行してよい家族
- 将来頼みたい手続きの範囲
「財産を全部教えて」ではなく、次のように頼めます。
「残高を知りたいわけではないよ。入院したときに電気代や介護費が止まらないよう、どの銀行から払っているかだけ一緒に書いておきたい」
金融機関によっては、代理人に関する届出や独自のサービスを設けている場合があります。本人が手続きを理解できるうちに、取引銀行へ利用できる仕組みを聞いておく方法があります。
急に通帳を隠し始めたときは、認知症だけと決めないでください
昨日まで自分で管理できていた人が、急に混乱し、家族を激しく疑い始めた場合は、体調や薬の影響なども考えます。
- 発熱や体調不良がある
- 睡眠が取れていない
- 薬が追加・変更された
- 脱水や食事不足がある
- 入院や転居など環境が大きく変わった
- 会話や動作が数日で急に変わった
- 時間や場所が分からず、普段より強く混乱している
認知症に似た状態には、せん妄、うつ、身体疾患などもあり、原因によって対応が異なります。急な変化やこれまでにない混乱がある場合は、かかりつけ医などへ「いつから、どのような変化が起きたか」を伝えてください。
受診を嫌がる親には、「認知症の検査」と言い切らない方法もあります
「通帳を隠すから認知症の検査へ行こう」と言われれば、本人は財産を取り上げる準備だと受け取るかもしれません。
困っている生活場面から話します。
| 避けたい伝え方 | 受診につなげやすい伝え方 |
|---|---|
| 「認知症が進んでいる」 | 「最近、眠れないことと探し物が増えたことを先生へ聞こう」 |
| 「お金を管理できないでしょう」 | 「薬や体調で物忘れが増えていないか見てもらおう」 |
| 「病院へ行かないと通帳を預かる」 | 「これからも自分でお金を使える方法を一緒に考えたい」 |
| 「家族が困っている」 | 「お母さんが探し物で疲れないようにしたい」 |
受診前には、本人の前で症状を並べて責めず、別紙へ変化を書いて医師へ渡す方法があります。
本人が受診を拒む場合は、家族だけで地域包括支援センターやかかりつけ医へ状況を伝え、近づき方を考えます。認知症に関する相談先として、地域包括支援センター、かかりつけ医、認知症疾患医療センターなどが案内されています。
「盗られた」と特定の家族を疑うときは、全員で反論しないようにします
親が長女だけを疑う場合、きょうだい全員で「そんなわけがない」と説得すると、親は自分だけが囲まれているように感じます。
対応する人を一人に絞り、会話を短くします。
「盗られたと思って心配なんだね」
「今日は机の周りだけ一緒に見よう」
「見つからなければ、明日銀行へ安全な方法を聞こう」
疑われた家族は、毎回探す役を引き受けなくても構いません。
別のきょうだい、ケアマネジャー、支援者など、親が受け入れやすい人に間へ入ってもらう方法があります。
同じ通帳を何度も隠す場合は、置き場所より管理方法を変えます
| 起きていること | 見直す方法 |
|---|---|
| 毎週保管場所が変わる | 本人が見える一か所へ置き、移すときは一緒に行う |
| 残高を一日に何度も確かめる | 安心して確認できる頻度と方法を銀行や支援者と考える |
| 何度もATMで引き出す | 生活費の渡し方、出金限度、支払い方法を本人と見直す |
| カードと暗証番号を一緒に保管する | 別々に管理し、暗証番号を書いた紙をカードへ添えない |
| 訪問者へ通帳を見せる | 知らない人へ見せない約束と、訪問販売・詐欺対策を整える |
| 家族が預かると強く疑う | 家族だけでなく、福祉制度や第三者支援を検討する |
親を安心させる目的でも、偽物の通帳を作る、本人に内緒で本物をすり替えるといった対応は、気づかれたときに不信を深める可能性があります。
家族だけで工夫を続けず、本人の状態を知る医療・介護職と方法を考えてください。
日常の支払いに少し助けが必要なら、社会福祉協議会の支援もあります
本人だけでは公共料金や福祉サービスの支払いが難しくなっていても、支援契約の内容を理解できる場合には、「日常生活自立支援事業」を利用できる可能性があります。
この事業では、本人との契約に基づき、福祉サービスの利用援助に伴う日常的な金銭管理や、定期的な訪問による生活変化の把握などを行います。窓口は市町村の社会福祉協議会などです。
| 支援が合いそうな状態 | 別の制度を含めて考えたい状態 |
|---|---|
| 支援内容を説明すると理解し、利用へ同意できる | 契約の内容を理解すること自体が難しい |
| 日常の支払いや書類管理に助けが必要 | 不動産売却や高額な契約など広い代理権が必要 |
| 本人の意思を確かめながら支援できる | 詐欺や財産侵害の危険が高く、法的保護が必要 |
利用できる条件や援助内容、費用は地域や本人の状態によって異なります。家族が「この制度で通帳を預かってもらえる」と決めつけず、社会福祉協議会へ現在困っている支払いを伝えてください。
本人による契約や財産管理が難しい場合は、成年後見制度も選択肢になります
認知症などで判断能力が不十分になり、預貯金や不動産の管理、介護サービスや施設の契約を本人だけで行うことが難しい場合には、成年後見制度による法的な支援を検討することがあります。
ただし、「通帳を隠した」という一つの出来事だけで、すぐ成年後見制度が必要と決まるわけではありません。
- 本人がどの程度、説明を理解して決められるか
- 日常の支払いだけを支えればよいか
- 不動産や高額契約の代理が必要か
- 詐欺や使い込みの危険がどの程度あるか
- 本人が希望する支援者は誰か
- 制度利用後に必要となる費用や報告
これらを、地域包括支援センター、社会福祉協議会、家庭裁判所の案内窓口などへ伝えて検討します。
成年後見制度については、2026年6月に制度を見直す法律が公布されましたが、成年後見制度に関する改正部分は施行前です。利用を検討する時点の最新制度と経過措置を、公的窓口で確かめてください。
きょうだいの一人が通帳を持っているときは、親の症状だけの問題にしません
「認知症の親が隠している」と思って探していたら、実は同居するきょうだいが通帳を管理していたという場合があります。
管理する家族に事情があっても、ほかの家族へ何も説明せず、本人のお金を使っている状態は放置しない方がよいでしょう。
| 確かめたいこと | 聞き方の例 |
|---|---|
| 誰が何を預かっているか | 「母名義の通帳、カード、印鑑の保管者を一覧にしたい」 |
| 本人が預けることへ同意したか | 「いつ、どのような話で預かった?」 |
| 何へ使ったか | 「医療費、生活費、介護費の記録と領収書を共有してほしい」 |
| 残高を誰が把握しているか | 「残高そのものより、支払いが続けられるか共有したい」 |
| 本人へ報告しているか | 「母が分かる形で、月の支出を見せている?」 |
本人の生活費が不足している、説明のない出金が続く、通帳を返さず面会も妨げるなどの状況がある場合は、家族だけで対立を続けず、市区町村の高齢者担当窓口や地域包括支援センターへ具体的な事実を伝えてください。
家族の管理を透明にするため、月一枚の記録を共有します
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 月初残高 | 共有が必要な口座のみ |
| 収入 | 年金、家賃収入など |
| 固定支出 | 家賃、介護、医療、光熱費 |
| 臨時支出 | 家電、修繕、入院準備など |
| 本人の生活費 | 現金で渡した日と金額 |
| 家族の立替え | 領収書、返金の有無 |
| 月末残高 | 通帳記帳日とともに記録 |
すべてのきょうだいへ暗証番号や通帳の画像を送る必要はありません。
親の生活に必要な支出が説明できる形を作り、管理する家族だけが疑われ続けないようにします。
親の前で話す人を一人にし、家族内の意見は先にそろえます
長男は「全部預かるべき」、長女は「本人へ任せるべき」と、親の前で言い争うと、親はますます誰にも渡せなくなります。
親と話す前に、家族側で次の点を決めます。
- 今すぐ守りたい支払いは何か
- 通帳を預かることが本当に必要か
- 本人へ残す現金や自由に使える範囲
- 銀行へ誰が同行するか
- 出金記録を誰へ共有するか
- 医療・福祉窓口へ相談する担当者
意見がまとまらない場合は、親の前で結論を迫らず、ケアマネジャーや地域包括支援センターを交えて話します。
家族だけで抱えない方がよい状態があります
- 通帳や現金を隠すことが何度も続く
- 盗られたという訴えで家族関係が壊れかけている
- 生活費や介護費の支払いが止まりそう
- 大金を頻繁に引き出している
- 詐欺や高額契約の被害が疑われる
- 家族による使い込みが疑われる
- 親が食事や医療を受けられない状態になっている
- 家族が怒鳴る、無理に取り上げるなど限界に近い
- 本人が契約や支払いを理解することが難しい
地域包括支援センターは、認知症や介護、権利擁護を含む高齢者の総合相談窓口です。本人が同行しなくても、家族から困っている状況を伝えられます。必要に応じて認知症疾患医療センターや認知症初期集中支援チームなどとも連携します。
「認知症の母が通帳を隠して困っています」だけでなく、次のように話すと状況が伝わります。
「一人暮らしの母が、通帳を週に何度も隠して場所を忘れます。先月は電気料金が引き落とせず、最近は私が盗ったと強く疑います。キャッシュカードは本人が持ち、ATMで何度も出金しています。本人の自由を残しながら、生活費を守る方法を考えたいです」
今日することは、家中を探し尽くすことではありません
紙を一枚用意し、次の五行を書いてください。
- 最後に通帳を使った日と場所:
- 一緒になくなった物:
- 今月止まると困る支払い:
- 不審な電話・訪問・出金の有無:
- 最初に連絡する銀行または支援者:
キャッシュカードもない、不審な取引があるなら、取引銀行へ連絡する。
生活費の支払いが止まりそうなら、請求先と口座を確かめる。
何度も隠す状態が続くなら、地域包括支援センターへ家族だけで電話する。
今日行うのは、そのうち一つで構いません。
親の通帳を守ることと、親から通帳を取り上げることは同じではありません。
本人が自分で決められる部分を残し、危険のある部分だけ支え、家族が扱うお金は記録する。
その小さな仕組みを作る方が、家族が隠し場所を探し続けるより長く役に立ちます。
まずは「誰が隠したのか」を決めるのではなく、「今日止まると困る支払いは何か」から見てください。
出典・確認先メモ
- 政府広報オンライン・厚生労働省:認知症では、しまい忘れや、財布・通帳などを盗られたと疑う言動が見られることがある一方、本人の不安や意思を踏まえた対応が必要です。
- 厚生労働省「認知症に関する相談先」:地域包括支援センター、かかりつけ医、認知症疾患医療センターなどの主な相談先。
- 政府広報オンライン:警察官や銀行員等を装い、暗証番号やキャッシュカードをだまし取る特殊詐欺への注意。
- 全国銀行協会:認知判断能力が低下した人や家族等による代理取引への対応は、金融機関や個別状況により異なります。
- 厚生労働省「日常生活自立支援事業」:契約内容を理解できる人を対象とした、日常的金銭管理等の支援。
- 法務省「成年後見制度」:判断能力が不十分な人の財産管理や契約を法的に支援する制度。2026年6月公布の改正法は、成年後見制度部分について施行前です。
- 制度、銀行手続き、代理権の範囲は、本人の判断能力、金融機関、自治体、制度改正の施行状況などによって異なります。実際の手続き前に最新情報をご確認ください。















