施設へ移った親の家で、きょうだいの意見が三つに分かれます
親が施設へ移り、誰も住まなくなった実家へ、きょうだいで集まる。
食器棚には母が毎朝使っていた湯飲みがあり、柱には子どものころの身長を付けた傷が残っています。
けれど、郵便受けには固定資産税の通知が届き、庭の草は前回より高く伸びています。雨戸を開けると、使っていない部屋には湿ったにおいがします。
長男は言います。
「誰も戻らないなら、早いうちに売った方がいい」
妹は反対します。
「売ったら二度と取り戻せない。貸せば家賃も入るでしょう」
もう一人は、「親が生きているうちに家を処分する話はしたくない」と黙り込みます。
実家をめぐる迷いには、お金だけではなく、親への申し訳なさ、きょうだい間の負担差、思い出を手放す怖さが混ざっています。
そのため、「売却価格はいくらか」「家賃はいくら取れるか」だけを先に聞いても、家族の答えはまとまりません。
まず、誰の家で、今後誰が使い、所有を続けた場合に誰が動くのかを明らかにします。
最初に見るのは査定額ではなく、現在の所有者です
実家と呼んでいても、家族が自由に売ったり貸したりできるとは限りません。
| 現在の状態 | 最初に確かめること |
|---|---|
| 親が存命で親名義 | 親本人の希望と、契約内容を理解して決められる状態か |
| 親が亡くなり、名義変更前 | 相続人、遺言書、遺産分割、相続登記 |
| きょうだいの共有名義 | 持分と、売却・賃貸・修繕の決め方 |
| 土地と建物の名義が違う | それぞれの所有者と権利関係 |
| 住宅ローンや抵当権が残る | 残債、金融機関との手続き、売却時の精算 |
固定資産税の通知書に書かれた宛名だけでは、現在の登記名義や権利関係をすべて判断できません。
登記事項証明書、権利証または登記識別情報、購入時の契約書、住宅ローン関係の書類を集めます。
親が存命なら、子ども同士で「売ろう」と決めても、親の家を当然に処分できるわけではありません。
親が内容を理解して意思を示せる場合は、本人が売るか貸すかを決め、必要に応じて正式な委任手続きを取ります。
認知症などで判断能力が十分ではなく、契約を本人だけで進めることが難しい場合は、家族だからという理由だけで代わりに署名せず、成年後見制度など法律上の支援が必要かを確認します。成年後見人等が本人の居住用不動産を売却したり賃貸したりする場合には、家庭裁判所の許可が必要になることがあります。
相続した家なら、売る・貸すの前に登記の期限も見ます
親が亡くなったあとも、登記簿上は親名義のままになっている実家があります。
相続登記は、相続によって不動産を取得したことを知った日から原則三年以内の申請が義務付けられています。制度開始前の相続で名義を変えていない不動産も対象になり、一定の場合は二〇二七年三月三十一日までの申請が必要です。
きょうだいの誰が取得するか決まっていない場合でも、期限を放置せず、法務局や司法書士へ現在できる手続きを聞いてください。
名義を曖昧にしたまま入居者を募集すると、賃貸借契約の貸主を誰にするか、修繕費や家賃収入を誰が負担・受領するかで混乱します。
一枚目には、売るか貸すかではなく六つの事実を書きます
- 現在の所有者と、意思決定に関わる人
- 三年以内に親や家族が住む可能性
- 年間の固定資産税、保険、管理にかかる金額
- 雨漏り、給湯器、配管、耐震性など建物の状態
- 売却した場合の見込み価格と諸費用
- 貸す前に必要な初期費用と、毎月の手残り
「いつか子どもが住むかもしれない」という話は、年月まで決めます。
「三年以内に転勤から戻れば住む」「誰も具体的な予定はない」の二つでは、家を残す意味が違います。
家族の誰も時期を言えない場合は、住む予定ではなく「手放す決心がつかない気持ち」として分けて扱います。
売却価格と家賃を、そのまま比べてはいけません
売却査定が二千万円、想定家賃が月十万円と言われると、「年間百二十万円入るなら貸した方が得」と考えたくなります。
けれど、比較すべきなのは二千万円と百二十万円ではありません。
| 売る場合に見る金額 | 貸す場合に見る金額 |
|---|---|
| 実際に成約しそうな価格 | 実際に入居者が決まりそうな賃料 |
| 仲介、登記、測量、片付けなどの費用 | 募集前の修繕、清掃、設備交換 |
| ローンや抵当権があればその精算 | 管理委託料、固定資産税、保険料 |
| 譲渡所得に関する税金 | 空室期間、滞納、退去後の修繕 |
| 家族へ残る手取り | 税や経費を考えた年間の手残り |
賃貸は、家賃がそのまま家族の利益になる仕組みではありません。
国税庁では、不動産所得を家賃などの総収入から必要経費を差し引いて計算し、必要経費の例として固定資産税、損害保険料、減価償却費、修繕費などを挙げています。
売る場合は、査定額より「手放したあとに残るもの」を見ます
実家を売る利点は、まとまったお金を得られることだけではありません。
- 固定資産税や保険、庭木、修繕の負担から離れやすい
- 遠方から定期的に見回る必要がなくなる
- きょうだいで財産を分ける材料にしやすい
- 大規模修繕や倒壊など、将来の不確実な出費を残しにくい
- 空き家が近隣へ影響する心配を減らせる
一方で、売買が成立すれば、原則として家は買主のものになります。
「親が元気になったら戻るかもしれない」「孫が住みたいと言うかもしれない」と考えている場合は、その可能性が具体的かを家族で確かめてください。
売ったあとに後悔しそうなら、家そのものを残す代わりに、室内写真、間取り、庭木の一部、表札、家族の思い出がある品を残す方法もあります。
売る前に、家の中をすべて空にする必要はありません
査定を頼む前に、何か月もかけて家財を処分しようとする家族がいます。
片付けが終わらないため、売るか貸すかの検討まで止まってしまいます。
まず、家の中を三つへ分けます。
| 区分 | 入れる物 |
|---|---|
| 今すぐ保管する | 権利証、通帳、保険、遺言書、写真、貴金属、重要な契約書 |
| 家族で決める | 仏壇、位牌、アルバム、形見、家族が使う家具 |
| 見積もり後に決める | 大型家具、家電、食器、日用品など |
不動産会社へは、「家財が残った現状で売る場合」と「家財を撤去して売る場合」の違いを聞けます。
賃貸にする場合も、家具を残したまま貸せるか、すべて撤去する必要があるかは、想定する入居者と契約条件によって変わります。
古い家は「解体してから売る」と先に決めないようにします
築年数が古いと、「建物には価値がないから、更地にすれば売れる」と考えることがあります。
しかし、古家を直して住みたい買主がいる地域もあれば、接道や再建築、解体費、地中埋設物、境界などの条件で判断が変わる土地もあります。
解体を先に行うと、建物を利用したい買主へ売る選択肢がなくなり、固定資産税の扱いにも影響する場合があります。
次の三つを同じ条件で比べてください。
- 建物を残した現状で売る
- 売主が修繕して住宅として売る
- 解体して土地として売る
見積もりでは、提示価格だけでなく、解体費、測量費、残置物撤去費、売れるまでの期間を並べます。
相続した空き家の税の特例は、貸す前に確かめます
相続した実家を一定の要件で売却した場合、譲渡所得から最高三千万円を控除できる「被相続人の居住用財産に係る特別控除」が使える可能性があります。
この特例は、対象となる家屋の建築時期、相続前の居住状況、売却期限、売却代金など細かな要件があります。二〇二七年十二月三十一日までの一定の譲渡が対象とされ、相続人が三人以上の場合は控除上限が二千万円となる場合があります。
特に注意したいのは、対象となる家屋や土地について、相続から売却まで事業、賃貸、居住に使われていないことが要件に含まれる点です。いったん賃貸すると、後で売る際にこの特例を使えなくなる可能性があります。
貸す場合は、最初の家賃が入る前にまとまった支出が出ます
長く人が住んでいなかった実家は、そのまま募集できるとは限りません。
| 貸す前に見る場所 | 必要になる可能性がある対応 |
|---|---|
| 屋根・外壁 | 雨漏り、ひび、落下の危険への補修 |
| 給湯器・水回り | 動作確認、配管、漏水、交換 |
| 電気設備 | 分電盤、配線、エアコン、照明の確認 |
| 床・階段 | 腐食、傾き、転倒につながる箇所の補修 |
| 窓・玄関 | 鍵、防犯、開閉、網戸の修理 |
| 庭・外構 | 越境した枝、塀、害虫、駐車場所の整備 |
| 室内 | 家財撤去、清掃、におい、壁紙や床の補修 |
家賃十万円で入居者が決まっても、募集前に二百万円の修繕が必要なら、その費用を何年で回収するかを見る必要があります。
さらに、退去のたびに清掃や修繕が発生し、設備が故障すれば貸主として対応する場面があります。
貸主になると、家族は「家を持つ人」から「住まいを提供する人」になります
実家を貸すことは、空き家へ人を入れて管理を任せることではありません。
入居者が安全に生活できる状態を保ち、故障や不具合へ対応し、契約終了時には原状回復や敷金を精算する立場になります。
国土交通省の賃貸住宅標準契約書では、住宅の使用に必要な修繕を貸主が行うこと、通常使用による損耗は原則として借主の原状回復義務に含まれないという考え方が示されています。
管理会社へ委託しても、次の判断が完全になくなるわけではありません。
- 給湯器を修理するか交換するか
- どの金額まで管理会社の判断に任せるか
- 家賃の滞納へどう対応するか
- 更新や退去の条件をどうするか
- 大規模な修繕費を誰が出すか
- 災害や近隣トラブルの連絡を誰が受けるか
きょうだいの一人が近くに住んでいるからといって、その人を無償の大家役にしないようにします。
家賃の手残りは、十二か月満室として計算しません
| 年間収支へ入れる項目 | 計算の考え方 |
|---|---|
| 家賃収入 | 想定賃料×実際に貸せる月数 |
| 管理委託料 | 毎月または契約時に必要な金額 |
| 固定資産税・保険 | 前年の通知や見積もりから算出 |
| 小規模修繕 | 毎年使わなくても、予備費として残す |
| 設備交換 | 給湯器、エアコン、水回りなど将来の支出 |
| 入退去費用 | 募集、清掃、貸主負担となる原状回復 |
| 空室 | 入居者がいない期間の家賃をゼロで見る |
| 税金 | 不動産所得や家族のほかの所得を含め個別に確認 |
たとえば想定家賃が月八万円でも、二か月の空室があり、年間の管理・税・保険・修繕で三十万円かかれば、手元に残る金額は単純な九十六万円ではありません。
修繕が集中した年には、家賃収入より支出が多くなることも考えて、予備費を持てるかを見ます。
貸せる家かどうかは、思い入れではなく入居者の目線で見ます
- 最寄り駅、病院、学校、買い物先への移動
- 駐車場の有無と車の出し入れ
- 間取りと家族構成の相性
- 築年数だけでなく、設備と修繕状態
- ペット、楽器、庭の使用などの条件
- 同じ地域の戸建て賃貸の募集状況
- 家賃を下げた場合でも借り手がいるか
- 災害リスクや接道など物件固有の条件
「駅から遠いが広いから借り手がいるはず」「庭付きだから人気があるはず」と家族だけで判断せず、地域で戸建て賃貸を扱う会社へ、成約が見込める家賃と募集期間を聞きます。
高い家賃の査定だけでなく、「その金額で何か月以内に決まりそうか」「決まらない場合、いくらまで下げる可能性があるか」まで尋ねてください。
将来家族が戻る可能性があるなら、契約の種類を先に考えます
「二年だけ貸し、息子が戻るときに退去してもらおう」と考えることがあります。
しかし、一般的な普通建物賃貸借では、貸主側から更新を拒むには正当な事由が問題となり、家族が使いたくなったからといって予定どおり明け渡してもらえるとは限りません。
期間満了で更新なく終了する定期建物賃貸借という方法もありますが、書面による契約や、更新がなく期間満了で終了することについて契約前の説明など、所定の手続きが必要です。
| 契約の考え方 | 特徴 | 家族が注意すること |
|---|---|---|
| 普通建物賃貸借 | 更新を前提としやすく、貸主からの更新拒絶には制限がある | 将来家族が使いたい時期と合わない可能性 |
| 定期建物賃貸借 | 定めた期間が満了すると、更新なく終了する仕組み | 書面、事前説明、終了通知など必要な手続きを守る |
契約名だけを選ばず、入居者の募集のしやすさ、想定家賃、家族が使う時期の確かさを不動産会社へ伝えて比較してください。
「貸してから売る」は、出口が同じとは限りません
貸してみて、合わなければすぐ売ればよいと考える方もいます。
しかし、入居中の家を売る場合、購入後すぐ自分で住みたい人ではなく、賃貸経営を引き継ぐ人が主な買主になる可能性があります。
また、入居者が退去する時期を家族の都合だけで決められないこともあります。
相続した空き家の売却特例についても、相続後に貸したことで要件を満たさなくなる可能性があります。
貸す判断をするときは、次の出口まで決めます。
- 何年間は貸す予定か
- 大規模修繕が必要になったら続けるか
- 家賃がいくらまで下がったら売却を考えるか
- 空室が何か月続いたら見直すか
- 共有者の一人が売りたいと言った場合どうするか
- 将来、誰が大家の役割を引き継ぐか
親が施設に入っただけなら、「もう戻らない」と家族だけで決めません
施設への入居が決まった直後、実家の維持費を減らすために売却を急ぐことがあります。
けれど、親には「体調が戻れば家へ帰りたい」「仏壇や庭を残してほしい」という思いがあるかもしれません。
反対に、親自身が「家の管理を子どもへ残したくない」と考えている場合もあります。
| 家族から聞きたいこと | 尋ね方の例 |
|---|---|
| 自宅へ戻る希望 | 「今後、短期間でも家で暮らしたい気持ちはある?」 |
| 家を残したい理由 | 「建物、仏壇、庭、近所付き合いのうち何を残したい?」 |
| 子どもへの負担 | 「税金や草取りを子どもが続けることをどう思う?」 |
| 売却への気持ち | 「すぐ売る、数年待つ、貸すなら、今はどれに近い?」 |
| 家財の扱い | 「絶対に残したい物を先に教えてほしい」 |
「施設代がかかるから売るしかない」と結論から話すのではなく、家を残したい理由と、所有を続ける負担を分けて伝えます。
売却代金を施設費や生活費へ使う必要がある場合も、親本人の財産であることを忘れず、使途と管理方法を明確にしてください。
きょうだいで共有するなら、家賃の分け方より大家の仕事を決めます
| 決めること | 記録する内容 |
|---|---|
| 契約の窓口 | 管理会社と連絡する人 |
| 修繕の判断 | いくらまで担当者だけで決められるか |
| 費用の出し方 | 持分、定額、家賃から積み立てるなど |
| 家賃収入 | 受取口座、税の申告、分配時期 |
| 空室時の負担 | 税、保険、管理費を誰が出すか |
| 売却への切替え | 空室期間、修繕額、年齢などの見直し条件 |
| 家族の利用 | 誰かが一時利用する場合のルール |
「長男が近くにいるから任せる」「家賃は三等分する」とだけ決めると、現地対応をする人と収入を受け取る人の負担が合わなくなります。
共有名義の不動産は、行う行為によって必要な同意や権限が異なることがあります。契約前に登記の状態を示し、不動産会社や司法書士などへ手続きの進め方を確かめてください。
売る方へ傾きやすい家、貸す余地がある家を分けます
| 現在の状況 | 考えやすい方向 |
|---|---|
| 家族が住む具体的な予定がない | 売却を中心に、手残りと時期を調べる |
| 遠方で管理する人がいない | 売却、または管理を全面委託して採算を再計算する |
| 大規模修繕が必要で、費用を用意できない | 現状売却や土地としての売却も比較する |
| 相続人が多く、長期の共同経営が難しい | 売却して分ける方法を含めて話す |
| 賃貸需要があり、少ない修繕で貸せる | 年間手残りと管理者を確かめて賃貸を検討する |
| 数年後に家族が使う予定が具体的にある | 空き家管理と定期借家を含めて比較する |
| 親が戻る可能性を医療・介護面で検討中 | 期限を決めて保留し、空き家管理を続ける |
| 名義や遺産分割が決まっていない | 売却・賃貸の契約を急がず、権利関係を先に整える |
この表は結論を自動的に出すものではありません。
家の条件だけでなく、家族が大家の仕事を五年、十年と続けられるかまで含めて判断するためのものです。
査定を頼むときは、売却と賃貸で同じ条件を渡します
売却査定は売買を扱う会社、賃料査定は賃貸管理を扱う会社から、それぞれ複数の意見を聞く方法があります。
高い数字を提示した会社を選ぶのではなく、数字の根拠を見ます。
| 売却で聞くこと | 賃貸で聞くこと |
|---|---|
| 査定額ではなく成約を見込む範囲 | 募集賃料と成約を見込む賃料 |
| 売れるまでのおおよその期間 | 入居者が決まるまでの想定期間 |
| 現状・修繕・解体後の違い | 募集前に必要な修繕と金額 |
| 仲介、測量、片付け等の費用 | 管理委託、募集、保険等の費用 |
| 売却後の手残り概算 | 空室を含めた年間手残り概算 |
| 査定の根拠となる取引事例 | 近隣の戸建て賃貸の成約状況 |
国土交通省の不動産情報ライブラリでは、地域の実際の不動産取引価格などを調べられます。ただし、同じ地域でも土地の形、道路、建物状態などで価格は変わるため、公表価格だけで実家の売却額を決めることはできません。
迷っている間も、空き家の管理費は止まりません
結論を急がなくても構いませんが、何もしないまま家を閉め切ることは避けたいところです。
- 郵便物と外から見える異変を確かめる
- 室内の換気と漏水を点検する
- 雨漏り、外壁、屋根、窓の破損を見る
- 庭木や雑草が道路・隣家へ出ていないかを見る
- 排水口のにおいや害虫を確かめる
- 火災保険などが空き家の状態でも適切かを聞く
- 冬季の凍結や台風前後の点検を行う
空き家は、放置すると建物の劣化、外壁等の落下、害虫、不法侵入、庭木の越境などにつながることがあります。また、管理不全空家等として勧告を受けると、土地の固定資産税に関する住宅用地特例を受けられなくなる場合があります。
遠方で自分たちだけでは管理できない場合は、近隣の親族へ無期限に頼らず、空き家管理の委託費も「残す場合の費用」へ入れてください。国土交通省も、遠隔地などで管理が難しい場合には、管理業者や修繕業者の利用を検討するよう案内しています。
「一年だけ保留」するなら、何をもって再検討するかを決めます
家族の気持ちが追いつかないとき、すぐ売却や賃貸へ進まない選択もあります。
ただし、期限のない保留は、固定資産税と管理を誰か一人へ残しやすくなります。
| 保留中に調べること | 見直す条件 |
|---|---|
| 親が戻る可能性 | 退院・退所や在宅生活の見通しが出たとき |
| 建物の劣化 | 修繕見積もりが一定額を超えたとき |
| 家族の利用予定 | 半年後までに具体的な時期が決まらないとき |
| 年間維持費 | 家族が決めた予算を超えたとき |
| 賃貸・売却市場 | 査定を取り直す日を決める |
「二〇二七年三月に再度集まる」「修繕が百万円を超えたら売却を中心に考える」など、日付や金額を残します。
家族会議では、思い出と負担を同じ言葉で争わないようにします
| ぶつかりやすい言い方 | 話を進めやすい言い方 |
|---|---|
| 「売るなんて親不孝だ」 | 「家を残したい理由と、残すために担える役割を聞きたい」 |
| 「貸せばもうかるでしょう」 | 「修繕と空室を引いた年間手残りを出してから比べたい」 |
| 「近くに住むあなたが管理して」 | 「現地対応、費用、連絡を誰がどこまで担えるか分けよう」 |
| 「誰も住まないのだから売るしかない」 | 「住む予定がないことと、気持ちの整理がつかないことを分けよう」 |
| 「親が分からないうちに進めよう」 | 「本人の意思と、契約を進められる法的な権限を確かめよう」 |
家を残したい人には、「では全部任せる」と迫るのではなく、毎年いくら負担できるか、年に何回現地へ行けるかを聞きます。
売りたい人にも、親の物をいつまでにどう分けるか、思い出をどのように残すかを考えてもらいます。
今日するのは、売却依頼でも賃貸契約でもありません
紙を一枚出し、次の六行を書いてください。
- 現在の登記名義人:
- 三年以内に住む可能性がある人と時期:
- 昨年一年間に家へかかった金額:
- すぐ修理が必要と思われる場所:
- 現地で管理を担える人:
- 家族が次に集まる日:
名義が分からなければ、登記事項証明書を取るところから始めます。
維持費が分からなければ、固定資産税、保険、電気・水道、庭の手入れの領収書を一つの封筒へ集めます。
貸したい人がいるなら、「毎月いくら入るか」ではなく、「修繕費を誰が出し、空室中に誰が管理するか」を答えてもらいます。
売りたい人がいるなら、「早く処分しよう」ではなく、現状で売る場合の手残りと、親や家族が残したい物を一緒に出してもらいます。
実家を売ることは、家族の時間を捨てることではありません。
貸すことも、家をそのまま残しておくことではなく、大家として次の暮らしを支える選択です。
どちらを選んでも、家族の誰か一人だけが管理や判断を背負う形では続きません。
今日は結論を出すのではなく、「この家を五年持ち続けるなら、誰が何をするのか」を一度書いてみてください。
その答えが現実的なら、貸す選択を詳しく調べる。答えが出ないなら、売却を含めて手放す準備を始める。
気持ちを急いで切り替えなくても、判断に必要な数字と役割を一つずつ集めることはできます。
出典・確認先メモ
- 法務省「相続登記の申請義務化について」:相続で不動産を取得したことを知った日から原則三年以内の相続登記。
- 裁判所・法務省「成年後見制度」「居住用不動産の処分許可」:判断能力が不十分な本人の財産管理と、成年後見人等が居住用不動産を処分する場合の手続き。
- 国税庁「被相続人の居住用財産を売ったときの特例」:売却期限、建築時期、賃貸利用の有無などの適用要件。
- 国税庁「不動産収入を受け取ったとき」:家賃収入と、固定資産税・保険料・修繕費などを含む不動産所得の計算。
- 国土交通省「定期建物賃貸借」「賃貸住宅標準契約書」:普通借家と定期借家の違い、貸主の修繕、契約上の留意点。
- 国土交通省「空き家対策特設サイト」:空き家を放置するリスク、管理不全空家等と住宅用地特例、管理方法。
- 税の特例、登記、共有者の同意、後見手続き、賃貸契約の種類は、名義、相続時期、本人の状態、建物、自治体、契約内容によって異なります。契約や工事の前に、関係する公的窓口や専門職へ個別にご確認ください。


















