断ったはずなのに、翌日には別の商品を勧める電話がかかってきます
実家へ行くと、玄関に見覚えのない段ボール箱が置かれている。
母へ聞いても、「頼んでいない」「電話で話しただけ」「無料で送ると言われた」と、答えがそのたびに変わります。
電話の横には、健康食品、海産物、通信サービス、不要品買い取りなど、複数の会社名が書かれたメモがあります。
家族が一度断っても、数日後にはまた電話が鳴る。
親は相手の話を長く聞き、最後には「それならお願いします」と答えてしまいます。
家族としては、強い言葉も出そうになります。
「知らない電話には出ないでと言ったでしょう」
「どうして住所まで教えたの」
「また契約したの?」
「もう電話を取り上げるしかない」
しかし、親自身は契約したつもりがなかったり、電話を受けたこと自体を忘れていたりします。
相手から親切に話しかけられ、断るきっかけを失っている場合もあります。
認知症や物忘れがある人への電話勧誘は、本人の注意力だけで防ごうとしても繰り返しやすい問題です。
「次は気をつけて」と約束させるより、電話へ出る前、契約した直後、家族がいない時間の三か所に対策を置きます。
電話がかかっている最中なら、相手の正体を確かめる前に切って構いません
親が電話で長く話しているところへ家族が居合わせたら、商品説明を最後まで聞く必要はありません。
親へ受話器を置いてもらい、相手との会話を終えます。
親が言いやすい短い断り方
「私一人では決めません。家族に聞くので電話を切ります」
「契約しません。もう電話をかけないでください」
「住所や口座は答えません。失礼します」
長く理由を説明すると、相手から別の提案をされることがあります。
「忙しい」「今は要らない」ではなく、「契約しません」「電話をかけないでください」と短く伝えます。
商品やサービスの電話勧誘販売では、消費者が契約しない意思を示した後に勧誘を続けたり、改めて電話をかけて勧誘したりする行為が禁止されています。すでに断っているのに同じ事業者から電話が続く場合は、日時と番号を記録して消費生活センターへ伝えてください。
電話を切った後は、親を問い詰める前に五つだけ聞きます
家族が驚いて質問を重ねると、親は責められていると感じ、「何も頼んでいない」と話を終わらせることがあります。
まず、契約や支払いが発生しているかを確かめます。
- 何の会社から電話が来たか
- 何を送る、または何を契約すると言われたか
- 名前、住所、生年月日、口座などを伝えたか
- 「お願いします」「はい」と答えたか
- 商品、契約書、請求書が届くと言われたか
責めずに聞く会話例
「怒るために聞くのではないよ。荷物や請求が来るかもしれないから、一緒に確かめたい」
「電話を取ったことより、相手が何を送ると言ったかを知りたいんだ」
「覚えているところだけでいいよ。電話番号は履歴から私が見るね」
親が思い出せなくても、無理に答えを出させる必要はありません。
電話機の着信履歴、机のメモ、郵便物、通帳やカードの明細から事実を集めます。
「契約したか分からない」ときほど、記録を消さないようにします
| 残すもの | 記録する内容 |
|---|---|
| 電話機の着信履歴 | 電話番号、日時、同じ番号からの回数 |
| 親のメモ | 会社名、担当者名、商品名、金額らしい数字 |
| 録音 | 防犯電話や留守番電話に残った相手の説明 |
| 届いた封筒 | 契約書、申込書、請求書、クーリングオフの記載 |
| 段ボール箱 | 送り主、伝票番号、到着日 |
| 支払いの記録 | カード明細、通帳、代引きの領収書 |
| 家族の対応 | 事業者へ連絡した日時、話した相手、返答 |
商品が届いても、すぐに箱や契約書を捨てないでください。
健康食品や化粧品などは、開封・使用の状況が解約時の扱いに影響する場合があります。契約した覚えが曖昧なときは、使う前に188へ状況を伝えます。
今の状態ごとに、最初の行動を変えます
| 現在の状態 | 最初にすること |
|---|---|
| 電話で話したが、契約したか分からない | 着信履歴とメモを残し、商品や書面の到着を確かめる |
| 契約書が届いた | 受け取った日を封筒へ書き、188へ連絡する |
| 商品が届いた | 使用せず、箱・送り状・同封書類を保管する |
| 代金引換で商品が届いた | 事情が分からないまま支払わず、送り主を記録する |
| カードや口座から引き落とされた | 金額と事業者名を保存し、事業者・決済会社・188へ連絡する |
| ATMへ行くよう言われた | 操作を止め、家族と警察へ連絡する |
| 同じ会社から何度も電話が来る | 「契約しない、今後電話不要」と伝え、履歴を残す |
| 複数の会社から電話が続く | 電話機の設定を変え、地域の見守りにもつなぐ |
電話勧誘の契約は、書面を受け取った日が重要になります
電話勧誘販売に当たる契約では、法律で定められた書面を受け取った日から数えて8日以内であれば、原則として書面または電子的な方法でクーリングオフできる制度があります。
事業者が事実と異なる説明や威圧的な言動によってクーリングオフを妨げた場合には、8日を過ぎていても手続きできる可能性があります。契約の種類や経緯によって扱いが異なるため、家族だけで可否を決めず、書類を手元に置いて188へ伝えてください。
契約書が届いた日にすること
- 封筒を含めて写真を撮る
- 受け取った日をメモする
- 会社名、商品名、金額、支払方法を見る
- クーリングオフについて書かれた欄を探す
- 親へ追加の電話が来ても、その場で話を進めない
- 188へ連絡し、手続き方法を聞く
電話で「解約します」と伝えただけでは、後から連絡の有無が争いになる場合があります。
クーリングオフを行う際は、送った書面のコピーやメール、専用フォームの画面など、手続きを行った記録を残すことが勧められています。
「本人は覚えていない」だけで、契約が自動的になくなるとは限りません
認知症と診断されている、会話の内容を忘れている、家族から見ると理解できていない。
そのような事情があっても、契約が有効かどうかは、契約時の本人の状態、勧誘の内容、商品や金額などを踏まえて個別に扱われます。
家族から事業者へ「認知症だから無効です」と伝えるだけでは、話が進まないこともあります。
次の情報をそろえて、消費生活センターへ具体的に伝えます。
- 認知症や物忘れの状態
- 契約したとされる日
- 商品やサービスの内容
- 金額と支払方法
- 同じ商品を何度も購入していないか
- 親が勧誘内容をどの程度覚えているか
- 事業者が親の状態へ気づく会話があったか
- 家族が過去に勧誘を断っていたか
消費者ホットライン188は、最寄りの消費生活相談窓口を案内する全国共通の番号です。家族や支援者から、本人の契約について相談することもできます。相談は無料ですが、窓口へつながった後は通話料金がかかります。
同じ電話番号を着信拒否するだけでは、別の番号からかかることがあります
一つの番号を拒否しても、別の番号や非通知で勧誘が続く場合があります。
電話番号ごとの拒否に加え、親が相手と話し始める前に止める仕組みを作ります。
| 電話の対策 | 向いている家庭 |
|---|---|
| 常に留守番電話へする | 親が着信音を聞くと反射的に出てしまう |
| 番号表示を利用する | 家族や病院など登録番号だけを選びたい |
| 非通知着信を拒否する | 非通知の不審電話が多い |
| 未登録番号へ注意音声を流す | 親が画面の番号を判断しにくい |
| 通話前の録音警告を流す | 勧誘や詐欺電話を入り口で減らしたい |
| 通話を自動録音する | 親が後から内容を忘れる、家族が事実を確かめたい |
| 登録番号だけ着信音を鳴らす | 家族や医療機関との連絡は残したい |
警察庁は、特殊詐欺への対策として、知らない番号からの電話へ出ないこと、番号表示、非通知拒否、自動録音や事前警告機能のある電話機などを案内しています。
2026年7月時点では、NTT東日本・NTT西日本の対象回線で、70歳以上の契約者または70歳以上の人と同居する契約者を対象に、番号表示と非通知拒否サービスの工事費・月額利用料を無料とする取り組みがあります。申し込みや対応機器などの条件があるため、利用中の電話会社へ現在の対象条件を聞いてください。
電話の横には、長い注意書きではなく三行だけ置きます
細かな詐欺の手口を何種類も書いても、電話中に読むことは難しいものです。
大きな文字で、次の三行だけを書きます。
知らない番号には出ない
お金・住所・口座を答えない
「家族に聞きます」と言って切る
その下に、家族一人の名前と電話番号を書きます。
複数の家族の番号を並べると、親が誰へ電話するか迷うことがあります。
最初の連絡先を一人に決め、その人がきょうだいや支援者へ共有します。
電話を取り上げる前に、親が必要としている連絡を残します
勧誘を止めたい一心で固定電話を外したり、携帯電話を預かったりしたくなることがあります。
しかし、親にとって電話は、友人、病院、介護事業所、遠方の家族とつながる手段でもあります。
すべての電話を使えなくすると、孤立が強まり、親子関係が悪くなることもあります。
電話を残しながら安全を高める方法
- 家族や医療機関の番号を電話帳へ登録する
- 登録した番号だけ着信音が鳴る設定にする
- 留守番電話の確認を家族の日課にする
- 家族から決まった時間に電話する
- 友人へ、非通知ではなく番号を表示してかけてもらう
- 親が折り返さなくてよい運用に変える
親への伝え方
「電話を使わせないためではないよ。知っている人とは今までどおり話せるようにして、知らない人だけ留守番電話にしたいんだ」
「お母さんがだまされやすいからではなく、知らない人と話さなくて済む電話に変えたい」
親の能力を責める説明ではなく、家族全員の防犯として話します。
届いた荷物は、受け取り方を家族内で決めておきます
電話での会話を覚えていなくても、数日後に商品が届くことがあります。
| 荷物の状態 | 家族の対応 |
|---|---|
| 親が注文したと認めている | 契約書、金額、支払方法、書面受領日を確かめる |
| 親が注文を否定している | 開封・使用を避け、送り主と伝票を記録する |
| 契約したか覚えていない | 家族だけで返送せず、188へ返送方法を聞く |
| 代金引換になっている | 事情が不明なら、その場での支払いを避ける |
| 同じ商品が複数届いている | 過去の請求、定期購入、別名義の契約も調べる |
宅配業者は契約の詳しい経緯を判断する立場ではありません。
受け取らなかった、返送したという事実だけで契約が解決するとは限らないため、送り主への連絡と消費生活相談を並行して進めます。
親の家に、契約の痕跡がないか月に一度見ます
認知症の親が「何も買っていない」と話していても、本人の説明だけでは契約状況が分からないことがあります。
家族が見ておきたい変化
- 未開封の段ボール箱が増えている
- 同じ健康食品や化粧品が何個もある
- 請求書や振込用紙が机にたまっている
- 知らない会社名の封筒が増えた
- 通帳から同じ金額が定期的に引かれている
- カード明細に見覚えのない事業者名がある
- 宅配便や電話を家族へ隠そうとする
- 「誰にも話すな」と言われたと話している
消費者庁は、認知症などにより判断力が不十分な高齢者の被害を防ぐには、本人だけでなく家族、地域、福祉関係者などによる気づきと見守りが重要だとしています。
支払いの見守りは、親のお金を取り上げることとは違います
電話勧誘が繰り返されている場合は、電話だけでなく支払いも見えるようにします。
- 請求書や郵便物を入れる箱を一つ作る
- 通帳記帳やカード明細を見る日を決める
- 親の生活費と、勧誘商品の支払いを分ける
- 代引き商品は家族へ連絡してから受け取る
- 高額な振込や出金が必要な場合は一人で行かない
- 家族が立て替えた場合も金額と用途を残す
親の財産を家族名義の口座へ移すなど、大きな変更を家族だけの判断で進めるのではなく、本人の意思や判断能力に応じて、銀行、地域包括支援センター、権利擁護の窓口へ方法を聞きます。
電話勧誘が繰り返されるなら、地域包括支援センターにも状況を伝えます
勧誘を一件解約しても、電話へ出ること、契約内容を忘れること、支払いを家族へ隠すことが続けば、別の被害が起きる可能性があります。
地域包括支援センターは、高齢者の総合相談、権利擁護、介護や医療に関する支援を行う市区町村の窓口です。認知症に関する相談では、必要に応じて認知症疾患医療センターや認知症初期集中支援チームなどと連携しています。
地域包括支援センターへ伝える例
「認知症の母が電話勧誘を断れず、同じ商品を何度も契約しています。一件の解約だけでなく、電話、郵便物、お金の管理を含めた見守りを考えたいです」
「私は遠方に住んでおり、毎日は確認できません。地域で利用できる見守りや、ケアマネジャーとの連携について聞きたいです」
「本人は電話を取り上げられると思って支援を嫌がります。本人の生活を保ちながら被害を減らす方法を一緒に考えてほしいです」
家族だけで毎日監視するのではなく、気づく人を増やします
| 関わる人 | 気づけること |
|---|---|
| 家族 | 電話履歴、契約書、カードや通帳の変化 |
| ケアマネジャー・ヘルパー | 届いた荷物、親の会話、生活用品の増加 |
| 民生委員・地域の見守り | 見知らぬ訪問者や暮らしの変化 |
| 宅配を受け取る家族 | 同じ会社からの反復した配送 |
| 消費生活センター | 契約の解約、事業者との交渉、今後の防止策 |
| 地域包括支援センター | 認知症、権利擁護、介護サービスを含む生活全体 |
消費者被害への見守りは、「気づく」「本人へ声をかける」「消費生活センターや地域包括支援センターへつなぐ」という流れで行うことが案内されています。
詐欺が疑われる電話は、勧誘の断り方だけで対応しません
次のような電話では、その場で相手の説明を確かめようとせず、電話を切ります。
- 警察や検察を名乗り、「あなたの口座が犯罪に使われている」と言う
- 役所を名乗り、「還付金があるのでATMへ」と言う
- 銀行を名乗り、暗証番号やカードの交換を求める
- 家族を名乗り、「今日中に現金が必要」と言う
- 未納料金を理由に、電子マネーの番号を求める
- 電話を切らずにATMやコンビニへ行くよう指示する
- 誰にも話さないよう口止めする
警察庁は、特殊詐欺対策では犯人と話さないことが効果的だとして、知らない番号へ出ない設定や防犯機能付き電話を案内しています。不審な電話については警察相談専用電話「#9110」、契約や商品に関する問題は消費者ホットライン「188」が相談先です。
本人がまた契約しても、「約束を破った」と責めないようにします
対策をした後に再び商品が届くと、家族は落胆します。
しかし、本人が電話へ出たことや、以前注意されたことを覚えていない場合、家族との約束だけでは被害を防げません。
避けたい言葉
「何回言えば分かるの」
「あなたが電話に出るから悪い」
「もう何も自分で決めないで」
代わりに伝えたい言葉
「また電話が来たんだね。責める前に、荷物や請求があるか一緒に見よう」
「次に気をつけるのではなく、知らない電話が鳴らないように変えよう」
「全部を私が決めるのではなく、電話での契約だけ家族へ回す形にしよう」
本人の尊厳を守ることと、被害を放置することは同じではありません。
自分でできる買い物や友人との連絡は残し、電話勧誘による契約だけを止める仕組みを作ります。
今の状態に合わせて、今日することを一つへ絞ります
| 現在の状態 | 今日すること |
|---|---|
| 勧誘電話が毎日のように来る | 留守番電話を常時設定し、非通知と未登録番号の扱いを変える |
| 電話で承諾した可能性がある | 着信番号と会話内容をメモし、書面や商品の到着を確かめる |
| 商品が届いている | 使わずに送り状と書類を保存し、188へ連絡する |
| 契約書が届いて8日以内 | 受取日を記録し、クーリングオフの方法を188へ聞く |
| 同じ会社へ断っても電話が続く | 日時と番号を記録し、再勧誘として消費生活センターへ伝える |
| 複数社と契約している | 会社名・商品・金額・支払方法を一枚にする |
| 家族が遠方で毎日見られない | 地域包括支援センターへ見守り体制を相談する |
| 送金やカードの受け渡しを求められた | 電話を切り、銀行や警察へすぐ連絡する |
今日の目標は、親を納得させることではなく電話に一つ壁を作ることです
認知症の親へ何度説明しても、翌日には同じ電話へ出てしまうことがあります。
そこで家族が説明不足だったと自分を責めたり、親を強く叱ったりしても、次の電話そのものは止まりません。
今日は、次の三つから一つだけ行ってください。
- 電話を常時留守番電話へ変える
- 電話の横へ三行の断り方を置く
- 届いた商品と契約書を持って188へ電話する
すでに何度も契約しているなら、会社名、商品名、金額を一枚へ書きます。
全部の契約を今日解決できなくても構いません。
最も新しい契約、支払額の大きい契約、これから継続請求される契約のどれか一つから扱います。
そして、地域包括支援センターへこう伝えてください。
「電話勧誘の契約を繰り返しており、家族の注意だけでは防げません。本人の生活を保ちながら、電話とお金を見守る方法を考えたいです」
親を電話から遠ざけることだけが目的ではありません。
友人や家族とのつながりを残しながら、知らない相手と長く話さなくて済む暮らしへ変えることが目的です。
「もう電話へ出ないで」と何度も言う代わりに、知らない電話が親まで届かない仕組みを一つ作る。
それが、繰り返す勧誘を親の責任にせず、家族だけでも抱え込まないための最初の一歩になります。
出典・確認先メモ
- 消費者庁「特定商取引法ガイド・電話勧誘販売」:再勧誘の禁止、契約書面、クーリングオフの期間や方法を確かめる際の資料。
- 国民生活センター「しつこい勧誘電話」:断っても勧誘を続けられる場合の対応と、消費者ホットライン188の確認先。
- 消費者庁「身近な人の被害に気が付いたら」:高齢者の消費者被害を、気づき・声かけ・相談へつなぐ流れの確認資料。
- 警察庁「固定電話の番号表示・非通知拒否サービス」「防犯機能付き電話」:知らない番号へ出ない設定、録音警告、番号表示などの確認先。
- 厚生労働省「認知症に関する相談先」「地域包括支援センター」:認知症、権利擁護、介護や地域の見守りを相談する際の確認先。















