電話を切るたび、「また言えなかった」と疲れてしまう
親の介護が始まり、担当のケアマネジャーが決まりました。
最初は頼れる人ができたと安心したものの、話しているうちに小さな違和感が重なっていきます。
親が転びやすくなったと伝えても、「今のサービスで様子を見ましょう」と話が終わる。
デイサービスを嫌がっている理由を説明しても、空きがある事業所を勧められるだけ。電話をしても折り返しが数日後になり、家族の仕事や睡眠が限界だと話しても、深刻さが伝わっていない気がします。
それでも、家族は簡単に「担当を変えたい」と言えません。
「忙しい人に細かいことを求めすぎているのでは」
「変更したら、今のデイサービスまで使えなくならないか」
「親が気に入っているなら、家族が我慢すべきなのか」
「わがままな家族と思われて、今後の対応が悪くならないか」
ケアマネジャーへの不満は、介護サービスへの苦情より口にしづらいことがあります。
介護全体を調整している人だからこそ、関係を悪くした後のことが怖いのです。
けれど、ケアマネジャーとのやり取りで必要な情報を伝えられず、本人の生活や家族の介護が立ち行かなくなっているなら、その状態を放置する必要はありません。
「相性が悪い」を、起きた場面へ言い換えます
相性が合わないという言葉だけでは、何を変えてほしいのか相手へ伝わりません。
まず、違和感を具体的な場面へ分けてください。
| 感じていること | 具体的に起きていること | 希望する対応 |
|---|---|---|
| 話を聞いてくれない | 家族が話している途中で結論を出される | 困りごとを最後まで聞いてから選択肢を示してほしい |
| 連絡が遅い | 折り返しまで数日かかり、予定を決められない | 返答できない場合も、受け取ったことだけ知らせてほしい |
| 説明が分かりにくい | サービス名や制度の言葉だけで話が進む | 費用、回数、本人の生活がどう変わるかを説明してほしい |
| 同じサービスばかり勧められる | 希望していない事業所の話だけが続く | 複数の選択肢と、それぞれの違いを知りたい |
| 家族の負担を見てもらえない | 夜間対応や仕事への影響を伝えても計画が変わらない | 家族が続けられる範囲を含めてケアプランを見直したい |
| 本人への接し方が合わない | 本人へ子どもに話すような口調で接する | 本人へ直接説明し、意思を尋ねてほしい |
「感じが悪い」ではなく、「いつ、何を伝え、どのような返答だったか」まで書くと、改善できる問題か、担当変更が必要な問題かを考えやすくなります。
担当変更の前に、ケアマネジャーへ一度だけ具体的に伝える
明らかな不適切対応や安全上の問題がなければ、まず一度、希望する対応を具体的に伝える方法があります。
忙しい訪問の終わり際ではなく、「相談したいことがあるので時間を取りたい」と先に連絡してください。
伝える内容は、次の三つで十分です。
- 困った具体的な場面
- 本人や家族の生活へ出ている影響
- これからどのように対応してほしいか
たとえば、次のように話せます。
「父が夜中にトイレで二度転びました。先週お伝えしましたが、その後の対応が分からず、家族が交代で起きています。手すりや福祉用具、夜間の介護サービスを含め、今週中に検討する時間を取りたいです」
連絡について困っているなら、
「すぐに答えが出ないことは分かっています。ただ、連絡が届いているのか分からないと予定を決められません。翌営業日までに、確認中という返信だけでもいただけると助かります」
と、求める返答の形まで伝えます。
連絡の速さだけで判断せず、緊急時のルールを決めます
ケアマネジャーは、常に電話へ出られる役割ではありません。
訪問中、会議中、休日など、すぐに応答できない時間があります。
一方で、家族が緊急だと思って連絡したのに、誰へ電話すればよいか分からない状態も困ります。
| 状況 | 主な連絡先の例 |
|---|---|
| ケアプランやサービス回数を変えたい | 担当ケアマネジャー、居宅介護支援事業所 |
| 訪問介護やデイサービスの当日の遅刻・欠席 | 利用しているサービス事業所 |
| 急な発熱や体調悪化 | かかりつけ医、訪問看護、救急相談など |
| 意識障害、強い胸痛、呼吸困難など | 救急要請 |
| 家族だけでは安全を保てない | 状況に応じて救急、警察、地域の緊急窓口 |
担当者へ、
- 通常の連絡方法
- 折り返しの目安
- 不在時の事業所の連絡先
- 夜間や休日に体調が変わった場合の連絡順
- ケアマネジャーへ翌営業日に報告する内容
を尋ね、家族で共有してください。
連絡ルールが決まるだけで、相性の問題と思っていた負担が軽くなる場合もあります。
家族の希望と本人の希望が違うときは、ケアマネジャーの態度だけを責めない
家族は、親の安全を考えてデイサービスを増やしたい。
しかし本人は、知らない人の中へ行きたくないと言っている。
その間でケアマネジャーが本人の希望を優先すると、家族は「こちらの話を聞いてくれない」と感じることがあります。
ケアプランは、本人の心身の状態だけでなく、本人の意思や生活の希望を踏まえて作られます。
ただし、本人の希望を尊重することは、家族の限界を無視してよいという意味ではありません。
| 本人の希望 | 家族の事情 | 話し合う論点 |
|---|---|---|
| デイサービスへ行きたくない | 日中、一人で安全に過ごせない | 短時間利用、別の事業所、訪問サービスなどを検討する |
| 家族に毎日来てほしい | 仕事と子育てがあり、週一回しか行けない | 訪問できない日の支援を組み立てる |
| 入浴を手伝われたくない | 一人での入浴に転倒の危険がある | 見守り、福祉用具、通所での入浴などを比べる |
| 施設へ入りたくない | 夜間介護で家族が眠れない | 在宅で必要な支援量と家族が担える範囲を数字にする |
ケアマネジャーへは、
「母が自宅で暮らしたい気持ちは尊重したいです。ただ、家族が毎晩泊まる方法は来月から続けられません。本人の希望を守るために、家族以外の支援をどう増やせるか考えたいです」
と伝えます。
家族の話だけでなく、本人がどう感じているかを確かめます
家族はケアマネジャーと合わないと感じていても、介護を受ける本人は話しやすいと思っている場合があります。
反対に、本人が担当者を怖がっているのに、家族が手続きのしやすさだけで関係を続けていることもあります。
本人へは、誘導しない形で聞いてください。
- 困っていることを話しやすいか
- 説明を理解できているか
- 自分の希望を聞いてもらえていると感じるか
- 訪問されることへ負担を感じていないか
- 別の人にも会ってみたいと思うか
認知症などで本人が言葉にしにくい場合は、面談中の表情、訪問前後の落ち着き、話を遮られていないかなども見ます。
家族だけで担当変更を決めず、可能な範囲で本人の意向も含めて進めます。
次の状態なら、「相性」の問題として我慢し続けない
話し方の好みや連絡方法は、相談で改善できることがあります。
一方で、本人の安全や権利に関わる問題は、本人同士の相性だけで片づけない方がよいでしょう。
- 本人や家族の話を繰り返し無視し、ケアプランを十分に説明しない
- 本人の同意を確かめず、サービス利用を進めようとする
- 特定の事業者しか選べないような説明をする
- 費用や契約内容を尋ねても答えがない
- 本人を侮辱する、威圧する、子どものように扱う
- 個人情報を必要のない相手へ話す
- 事故や状態悪化を伝えても、必要な連携が行われない
- 実際と違う訪問・面談記録が残されている
- 苦情を伝えたことで不利益な対応を受けたと感じる
こうした場合は、担当者本人へ何度も説得を続けず、居宅介護支援事業所の管理者、市区町村の介護保険窓口、地域包括支援センターなどへ事実を伝えます。
契約書や重要事項説明書には、事業所の苦情窓口が記載されていることがあります。
変更したいときは、同じ事業所内で担当を替えられるか尋ねます
ケアマネジャー個人とのやり取りだけが難しく、事業所の対応や利用中のサービスには不満がない場合は、同じ居宅介護支援事業所内での担当変更を相談できます。
事業所の管理者へ、次のように伝えます。
「担当の方へ二度ほど連絡方法と説明について希望を伝えましたが、改善が難しいと感じています。介護を続けるため、同じ事業所の別のケアマネジャーへ変更できないか相談したいです」
担当者を責める内容を並べるより、
- どのような連絡方法が合うか
- 本人が話しやすい人はどのような人か
- 医療、認知症、看取りなど重視したい経験
- 家族が連絡できる曜日や時間
を伝えると、次の担当者を選びやすくなります。
小規模な事業所では、別の担当者がいないこともあります。その場合は、別の居宅介護支援事業所を探します。
別の事業所へ移る場合は、現在の契約を先に終わらせない
担当への不満が強いと、すぐ契約を解除したくなるかもしれません。
しかし、次の事業所が決まる前に現在の居宅介護支援を終了すると、ケアプランやサービス調整が途切れるおそれがあります。
次の順番で進めると安心です。
- 変更を希望する理由と、次の担当者へ求めることをまとめる
- 地域包括支援センターや市区町村の窓口から事業所一覧を入手する
- 候補の居宅介護支援事業所へ受け入れ可能か問い合わせる
- 本人と候補のケアマネジャーが話せる機会を作る
- 変更日と引き継ぎ方法を両事業所で調整する
- 市区町村へ必要な変更届を提出する
- 現在の事業所との契約終了日を確定する
自治体によって、居宅サービス計画作成依頼の変更届などが必要になる場合があります。
提出方法や必要書類は地域により異なるため、新しい事業所か市区町村の介護保険窓口へ尋ねてください。
変更しても、利用中のデイサービスまで必ず変わるわけではありません
ケアマネジャーを替えると、現在利用している訪問介護、デイサービス、福祉用具などもすべて変更になると思う方がいます。
居宅介護支援事業所と、それぞれの介護サービス事業所は別の契約であることが一般的です。
新しいケアマネジャーが現在のサービス内容を確認し、本人・家族が継続を希望し、事業所側も対応できれば、同じサービスを続けられる場合があります。
ただし、ケアプランの作成や情報共有が必要になるため、次の担当者へ事前に伝えてください。
| 現在使っているもの | 変更前に伝えること |
|---|---|
| 訪問介護 | 曜日、時間、主な支援内容、困っていること |
| デイサービス | 利用日、送迎、入浴、本人が気に入っている点 |
| 訪問看護 | 医師の指示、医療処置、緊急時の連絡方法 |
| 福祉用具 | 借りている物、事業者名、点検予定 |
| ショートステイ | 予約済みの日、本人の注意事項、キャンセル条件 |
「今のサービスは残したい」と最初に伝えれば、変更の範囲をケアマネジャーだけに限定できるか検討しやすくなります。
引き継ぎで渡したいのは、書類より「今止まっていること」です
ケアプランや認定情報などの書類は事業所間で共有されますが、家族からも、現在進行中の課題を一枚にまとめて渡すと行き違いを減らせます。
| 引き継ぐ内容 | 具体例 |
|---|---|
| 本人が望む生活 | できる限り自宅で暮らし、週一回は買い物へ行きたい |
| 現在のサービス | 月・木にデイサービス、火曜に訪問介護 |
| 最近の変化 | 夜間の転倒が二回、食事量が減っている |
| 未解決の課題 | 手すりの検討、ショートステイの候補探し |
| 本人が嫌がること | 急に予定を変えること、大人数での面談 |
| 家族が担える範囲 | 訪問は週一回、平日昼間の電話対応は難しい |
| 緊急時の連絡順 | 長女、長男、かかりつけ医の順 |
| 今後の予定 | 認定更新、病院受診、サービス担当者会議 |
前の担当者への不満だけを詳しく書くより、新しい担当者に何を引き継いでほしいかを中心にします。
新しい担当者は、「優しそう」だけで決めない
最初の面談で感じがよくても、実際の連絡方法や得意分野が家族に合うとは限りません。
契約前に、次の内容を尋ねてください。
- 通常の連絡手段と折り返しの目安
- 不在時に事業所内で引き継ぐ仕組みがあるか
- 本人と家族の希望が違うとき、どのように話を進めるか
- サービス事業所を紹介するとき、どのような選択肢を出すか
- 医療機関や訪問看護との連携経験
- 認知症、看取り、仕事と介護の両立など、今回重視する分野の経験
- 急な状態変化があったときの連絡方法
| 見たい点 | 面談で見る場面 |
|---|---|
| 本人への接し方 | 家族だけでなく本人へ直接質問しているか |
| 説明の仕方 | 制度名だけでなく、生活の変化や費用を説明するか |
| 提案の幅 | 一つの事業所だけでなく、複数の方法を示すか |
| 家族への理解 | 家族ができないこともケアプランへ反映しようとするか |
| 事業所の体制 | 休みや退職時に、ほかの職員が情報を引き継げるか |
候補となる事業所は、介護サービス情報公表システムや、市区町村・地域包括支援センターで案内される一覧から探せます。
地域によってはケアマネジャーの受け入れ枠が少なく、希望する担当者がすぐ見つからないこともあります。変更を急ぐ場合も、現在の支援を止めずに候補を探してください。
別居家族は、連絡役を一人にして記録を共有します
兄弟がそれぞれケアマネジャーへ連絡すると、伝える内容が食い違うことがあります。
一人はデイサービスを増やしてほしいと言い、別の人は親が嫌がるから減らしてほしいと言えば、担当者もどの希望を基準にすべきか迷います。
家族内で次の役割を決めてください。
- 主な連絡役
- 医療について情報をまとめる人
- お金や契約を確認する人
- 緊急時に最初に動く人
- 連絡内容を共有する方法
ケアマネジャーへ送った内容と返答は、家族の共有ノートやメッセージへ残します。
意見が分かれている場合は、家族内で無理に結論を出してからではなく、
「兄は施設を検討したい、私は在宅サービスを増やしたいと考えており、家族内で意見が違います。本人の希望を含めて話す場を設けたいです」
と、その違い自体を担当者へ伝えてください。
要支援の場合は、地域包括支援センターが窓口になっていることがあります
要支援1・2や、介護予防・日常生活支援総合事業を利用している人では、地域包括支援センターがケアプランの作成や管理に関わっている場合があります。
実際の担当者が居宅介護支援事業所の職員でも、契約や変更の流れが要介護の人と異なることがあります。
担当者を替えたいときは、現在の契約書を見たうえで、地域包括支援センターへ、
「現在の担当者との連絡がうまくいかず、変更を含めて相談したいです」
と伝えてください。
必要な届出や新しい担当者の探し方は、本人の認定区分と地域の運用によって異なります。
話し合いで解決しない苦情は、事業所の外へ出してよい
担当者本人や事業所の管理者へ伝えても改善しない場合は、外部の窓口へ相談できます。
| 相談したい内容 | 主な窓口 |
|---|---|
| 担当変更や事業所探し | 地域包括支援センター、市区町村の介護保険窓口 |
| 事業所の説明や対応への苦情 | 居宅介護支援事業所の管理者、市区町村 |
| 介護保険サービスに関する苦情 | 都道府県の国民健康保険団体連合会 |
| 虐待や本人の安全に関する心配 | 市区町村、地域包括支援センター |
| 契約や金銭をめぐる問題 | 市区町村、消費生活相談、内容に応じた法律相談 |
相談前に、次の資料をそろえます。
- 契約書と重要事項説明書
- 現在のケアプラン
- 困った出来事の日付と内容
- 担当者へ改善を求めた記録
- 本人や家族の生活へ出ている影響
- 今後希望する対応
「相性が悪いので何とかしてください」ではなく、
「転倒を二度報告しましたが、ケアプランの見直しや関係者への連絡がない状態です。担当変更を含め、本人の安全を守る方法を相談したいです」
と伝えると、窓口も状況を把握しやすくなります。
変更を伝えるときは、相手の評価より今後の介護を理由にします
現在の担当者へ変更を伝える場面では、これまでの不満をすべて言わなければならないわけではありません。
簡潔に、今後必要な支援との違いを伝えます。
「これまで対応していただきありがとうございました。今後は夜間の介護と医療機関との連携が増えるため、家族で検討し、別の居宅介護支援事業所へ変更することにしました。○月○日からの引き継ぎについて相談させてください」
同じ事業所内で担当を替える場合は、
「連絡方法や話の進め方について、別の担当者の方が家族に合うのではないかと考えています。今後の介護を続けるため、担当変更をお願いしたいです」
と伝えられます。
変更は、担当者の人格を否定する手続きではありません。
本人と家族が必要な情報を伝え、支援を続けられる組み合わせへ変えるためのものです。
今日することは、すぐ契約を断ることではありません
今日は紙へ、最近困った場面を三つだけ書いてください。
- いつ起きたか
- 何を伝えたか
- どのような返答や対応だったか
- 本人や家族へどのような影響が出たか
- 本当はどのように対応してほしかったか
たとえば、
- 7月10日:夜間の転倒を電話で報告した
- 返答:次回訪問まで様子を見ると言われた
- 影響:家族が毎晩交代で起きている
- 希望:福祉用具や夜間支援を早めに検討したい
という形です。
書いた内容を見て、話し合いで変えられそうなら、担当者へ面談を申し込みます。
すでに何度も伝えている、安全に関わる、担当者と話すこと自体がつらい場合は、事業所の管理者か地域包括支援センターへ連絡してください。
「もっと我慢できるか」ではなく、「この関係で本人と家族の生活を支え続けられるか」を基準にします。
合わないと感じた自分を責める必要はありません。
困った場面を言葉にする。改善を一度求める。難しければ、次の担当者を決めてから引き継ぐ。
その順番で進めれば、今使っているサービスを守りながら、本人も家族も話しやすい支援体制へ変えていけます。
出典・確認先メモ
- 厚生労働省「介護サービス情報公表システム・居宅介護支援」
- 厚生労働省「介護サービス情報公表制度とは」
- 厚生労働省「介護保険制度について」
- 盛岡市「ケアマネジャーを変更することは可能ですか」
- 荒川区「ケアプラン作成依頼(変更・終了)届出書」
- 厚生労働省「福祉サービスに関する苦情解決事業について」















