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認知症の検査を嫌がる親への伝え方|「認知症」と言わずに受診につなげる工夫

2026.07.02 更新 なやみ晴れ編集部
#介護・見守り#認知症#認知症相談
この記事の結論

認知症の検査を親が嫌がるときは、「認知症の検査だよ」と正面から言わず、「健康診断のついでに脳も診てもらおう」「私が安心したいから」と、責めずに誘うのがコツです。いちばん効きやすいのは、信頼するかかりつけ医から勧めてもらうこと。事前に医師へ様子をメモで伝えておくと配慮してもらえます。まずは地域包括支援センターかかかりつけ医に、家族だけで先に相談するところから。無理強いは逆効果です。

「病院に行こう」と言った瞬間、親の顔つきが変わったあの感じ

同じ話を何度も繰り返す。鍋を焦がすことが増えた。通帳や鍵を探して家中を歩き回る。今日が何日か、あやふやになっている。そんな変化に気づいて、勇気を出して「一度、病院で診てもらわない?」と言ってみたら、親の顔がさっと険しくなった。

「俺はボケてない」「馬鹿にするな」「病院なんか行かん」。

それきり、話は進まないまま。そんな経験をした人が、この記事を開いていると思います。

口には出せない気持ちが、いくつも重なっているのではないでしょうか。

「もし認知症だったら、と思うと、確かめるのが怖い」

「でも、確かめないまま放っておくのも怖い」

「親のプライドを傷つけたくない。でも、このままではいけない」

先に伝えておきます。親が受診を嫌がるのは、頑固だからでも、あなたを困らせたいからでもありません。そこには、本人なりの切実な理由があります。そして、伝え方には工夫の余地があり、あなたの味方になってくれる人もいます。

この記事では、「認知症」という言葉を正面からぶつけずに、受診へつなげていく方法を、一緒に考えていきます。

この記事は、認知症が疑われる親御さんが検査・受診を嫌がるときの、一般的な対応の考え方をまとめたものです。もの忘れの原因や診断は医師が行うもので、効く伝え方は人によって大きく異なります。実際の受診先や進め方は、かかりつけ医や地域包括支援センターと相談しながら決めてください。

嫌がるのは頑固だからではない。断る側の気持ちを先に知る

受診を拒む背景には、たいてい次のような気持ちがあります。ここを理解しておくと、こちらの声のかけ方が自然と変わります。

だから、「認知症の検査に行こう」とストレートに言うほど、本人は身構えて守りに入ります。これは自分を守るための自然な反応で、わざと困らせているわけではありません。責める前に、この一点を思い出してください。

「認知症」と言わずに誘う。声かけの言い換え例

同じ「受診してほしい」でも、言葉を変えるだけで受け取り方が大きく変わります。

身構えさせやすい言い方 受け入れやすい言い方
認知症じゃないの?検査に行こう 健康診断のついでに、脳の健康チェックも受けてみない?
最近ボケてきたよ、心配だよ もの忘れ、歳のせいかもね。一緒に診てもらって安心しようよ
お母さんのために言ってるの 私が安心したいの。私のために、一度だけ診てもらって

コツは三つあります。「認知症」という言葉を使わず、一般的な健康チェックとして誘うこと。「一緒に受けよう」と、本人を一人にしないこと。そして、目的を「あなたのため」より「家族の私が安心したいから」に置きかえることです。認知症のある人にも、家族を気づかう気持ちはしっかり残っています。「あなたに何かあったら私が困る」という素直な言葉は、思いのほか届きます。

いちばん効きやすいのは、かかりつけ医からの一言

家族がいくら言っても動かないのに、信頼している医師の一言なら、すんなり受け入れる。これは、とてもよくあることです。だから、かかりつけ医を味方にするのが近道です。

段取りはこうです。定期受診などの機会の前に、家族から先に医師へ、気になっている様子を伝えておきます。そのうえで、「本人は認知症の検査と言うと強く抵抗するので、健康診断という形で切り出してほしい」と頼んでおくと、医師も配慮しやすくなります。診察のなかで医師から「ついでに脳も診ておきましょうか」と言ってもらえれば、本人の抵抗はぐっと下がります。かかりつけ医が専門でなくても、もの忘れ外来などの専門医へ紹介状を書いてもらえます。

医師に事前に渡すメモの型

「いつ頃から」「どんな様子か(例:同じ話を繰り返す、日付が曖昧、探し物が増えた)」「生活で困っていること」「家族が心配していること」を、A4一枚程度にまとめて受付に預けておくと、医師が状況をつかみやすくなります。

どこで検査を受けられるのかを、先に知っておく

受診先が分からないと、それだけで足が止まります。おおまかに知っておきましょう。

受診先 特徴 こんなときに
かかりつけ医 行き慣れていて本人が安心。専門医への紹介の起点になる まずはここから。信頼関係を使える
もの忘れ外来 認知症を専門に診る外来(精神科・脳神経内科など) 専門的に詳しく調べたいとき
認知症疾患医療センター 都道府県などが指定した専門医療機関。相談・鑑別診断を行う 紹介状を持って、専門的な診断を受けたいとき
地域包括支援センター 受診先の紹介や、家族の困りごと相談ができる窓口 かかりつけ医がいない、どこに行くか迷うとき

「どこがいいか分からない」なら、かかりつけ医か地域包括支援センターに、家族だけで先に電話して聞いてしまって大丈夫です。順番に案内してくれます。

「もの忘れ=認知症」とは限らない、を味方につける

受診をためらう気持ちの奥には、「認知症だと決まってしまうのが怖い」があります。だからこそ、逆の事実を伝えると、本人も受け入れやすくなります。

もの忘れの原因は、認知症だけではありません。なかには、治療で改善する可能性のあるものもあります。たとえば、甲状腺の働きの低下、脳に水がたまるタイプの病気、頭を打ったあとの出血、うつ、薬の影響、脱水など。こうした「治るもの忘れ」を見逃さないためにも、一度診てもらう意味があります。

また、仮に認知症だったとしても、早い段階で分かれば、進行を遅らせる薬や、これからの暮らしの準備、本人の希望の確認ができます。「白黒つけて突きつけるため」ではなく、「治せるものを見逃さないため」「早めに手を打つため」。この角度で伝えると、受診が前向きなことに感じられます。ただし、原因や診断は医師が判断するものなので、断定はせず「診てもらってから」と構えてください。

やってはいけないのは、「嘘で連れ出す」と「問い詰め」です

よかれと思ってやりがちですが、逆効果になる対応があります。

まったくの嘘(別の用事だと偽るなど)で騙して病院へ連れて行くのは、避けたほうが無難です。その場は乗り切れても、後で「だまされた」と分かったとき、信頼関係が崩れ、次からの通院がもっと難しくなります。「健康診断として誘う」という言いかえと、「嘘でだます」は別ものと考えてください。前者は本人の尊厳を守る工夫、後者は信頼を削る行為です。

また、「ボケたんじゃないの」と決めつけたり、「どうして行かないの!」と問い詰めたりするのも、守りを固くさせるだけです。接するときは、しゃがんで目線を合わせ、穏やかな声で。強い口調は、たいてい拒否を強くします。

それでも、どうしても受診してくれないとき

工夫を重ねても動いてくれないことはあります。そんなときの受け皿も、知っておいてください。

一度で決めようとせず、何度かに分けて、タイミングを変えて誘ってみてください。渋々でも受診につながるケースは少なくありません。家族だけで抱え込まず、まず専門職に相談することが、遠回りに見えて近道です。

立場によって、まず動きやすいことは違います

あなたがどの立場かで、最初の一歩は変わります。

あなたの立場 まず動きやすいこと
同居している子ども世代 症状を日付でメモし、かかりつけ医に事前相談。健康チェックとして誘う
離れて暮らす子ども世代 親の住所地の地域包括支援センターに相談。帰省に合わせて受診を段取り
配偶者(自分も高齢) 一人で説得せず、子ども世代やかかりつけ医を巻き込む。「一緒に受けよう」と誘う
本人がこの記事を読んでいる場合 「治るもの忘れ」の確認として、健康チェックの気持ちで一度受診してみる

今日は、受診させなくて大丈夫です

ここまで読んで、「結局どう切り出せば」とまだ迷っているかもしれません。それでいいです。今日、親を病院に連れて行く必要はありません。

今日できるのは、もっと小さなことです。

親が受診を嫌がるのは、あなたの伝え方が下手だからではありません。本人も、心のどこかで不安を抱えているからです。「認知症」と決めつけずに、健康を気づかう入り口をそっと用意すること。それが、いちばん本人を傷つけない進め方です。

焦らなくて大丈夫です。今日の一歩は、責めるのをやめて、味方(かかりつけ医や地域包括)に先に相談すること。それだけで、十分に前へ進んでいます。

出典・確認先メモ

よくある質問

Q. 認知症の検査を嫌がる親を、どう病院に連れて行けばいいですか?

「認知症の検査」と正面から言わず、「健康診断のついでに脳も診てもらおう」と一般的な健康チェックとして誘うのがコツです。信頼するかかりつけ医から勧めてもらうと、本人も受け入れやすくなります。事前に医師へ様子を伝え、健康診断の形で対応してもらうと配慮してもらえます。

Q. 親が「自分はボケていない」と言い張ります。どう伝えればいいですか?

本人には自覚しにくいことがあり、否定されると守りに入りやすいので、責めたり問い詰めたりしないことが大切です。「私が安心したいから」と家族の気持ちとして伝えたり、「治るもの忘れもあるから」と前向きな理由を添えると届きやすくなります。無理強いは避けてください。

Q. 認知症の検査は、どこで受けられますか?

まずは行き慣れたかかりつけ医が相談しやすく、必要に応じて「もの忘れ外来」や認知症疾患医療センターなどの専門医を紹介してもらえます。どこに行くか迷うときや、かかりつけ医がいないときは、地域包括支援センターに相談すると受診先を案内してもらえます。

Q. 嘘をついてでも、病院に連れて行ったほうがいいですか?

まったくの嘘でだますのは避けたほうが無難です。後で気づいたときに信頼関係が崩れ、その後の通院が難しくなることがあります。「認知症」と言わずに健康チェックとして誘う工夫は問題ありませんが、本心から心配していることを伝える姿勢を大切にしてください。

Q. どうしても受診してくれません。ほかに方法はありますか?

医療と介護の専門職が自宅を訪問して受診につなぐ「認知症初期集中支援チーム」があり、地域包括支援センターが窓口です。訪問診療や、同年代の知人からの声かけが有効なこともあります。一度で決めず、家族だけで抱えずに専門職へ相談してみてください。

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