届いた通知は「要支援2」。毎晩の介助は、どこへ消えたのだろう
市役所から届いた封筒を開くと、認定結果は「要支援2」でした。
けれど、親御さんは一人で入浴できません。夜中に何度も起き、薬も家族が声をかけなければ飲み忘れます。先月は二度転び、通院にも付き添いが欠かせません。
認定調査の日だけは、親御さんが調査員の前で背筋を伸ばし、「自分でできます」「子どもの世話にはなっていません」と答えていました。
その横で、家族は話を遮ってよいのか迷ったまま、ほとんど説明できなかった。
結果を見て、「毎日の介護を分かってもらえなかった」と感じるのは無理もありません。
ただし、納得できないという理由だけで、同じ手続きをもう一度出せばよいわけではありません。
要介護認定には、結果の説明を受ける、認定資料を見る、区分変更を申請する、審査請求をするという異なる道があります。
まず、どの道が今の状況に合うかを分けます。
通知書を受け取ったら、結果より先に日付を見ます
要介護認定の結果通知書には、認定区分、有効期間、処分日、不服申立てに関する案内などが記載されています。
最初に確かめるのは、次の三点です。
- 認定された区分は何か
- 認定の有効期間はいつからいつまでか
- 審査請求の方法と期限がどう書かれているか
要介護認定に関する審査請求は、原則として、処分があったことを知った日の翌日から数えて3か月以内です。
家族で話し合っているうちに期限を過ぎることがあるため、通知書と届いた封筒は一緒に保管してください。
ただし、期限があるからといって、事情を調べず直ちに審査請求書を書く必要はありません。
まず市区町村の介護保険担当窓口へ、なぜこの結果になったのかを尋ねます。
結果への疑問を、三つの状態に分けます
| 現在の状況 | 主に検討する動き |
|---|---|
| 認定調査時と現在で、心身の状態が明らかに変わった | 区分変更申請を検討する |
| 認定調査時から介護が必要だったのに、実態が調査や判定へ反映されていないと思う | 認定理由や資料を確かめ、審査請求を検討する |
| 認定区分は変わっていないが、現在のサービスでは生活を維持できない | ケアプランとサービスの組み合わせを先に見直す |
| 非該当だが、その後に状態が悪化した | 市区町村へ新たな申請方法を尋ねる |
区分変更と審査請求は、似ているようで目的が違います。
区分変更は、認定後に心身の状態や介護の必要度が変化したときの手続きです。
審査請求は、認定時点の行政処分に違法または不当な点があるとして、その取消しを求める手続きです。
「結果が低かったので区分変更を出す」と単純に決めず、いつから状態が変わったのかを見てください。
認定調査の日にはすでに介護が必要だったのか、結果通知後に状態が悪くなったのか。この日付の違いが、審査請求と区分変更を選ぶ手がかりになります。
要介護度は、病名や家族の疲労だけで決まるものではありません
「認知症なのに要支援だった」
「家族が毎日介助しているのに、要介護1にしかならなかった」
このような疑問が出ることがあります。
要介護認定では、市区町村などの調査員による認定調査と、主治医が作成する意見書が使われます。その情報をもとに一次判定が行われ、介護認定審査会の二次判定を経て、市区町村が認定します。
病名が同じでも、自分でできる動作、見守りや介助が必要な頻度、認知機能の状態などによって結果は変わります。
家族が疲れている事実は軽く扱ってよいものではありません。ただ、家族の疲労だけで要介護度が一段上がる仕組みではないため、本人にどのような介助が何回必要なのかまで伝える必要があります。
実態より軽く見えた理由を、一つずつ探します
認定結果の食い違いには、いくつかの理由が考えられます。
調査の日だけ普段より動けた
高齢の方が来客の前で張り切り、普段は難しい動作をその日だけ行うことがあります。
「一度立ち上がれた」ことと、「毎日、安全に一人で立てる」ことは同じではありません。
親御さんが家族の介助を伝えなかった
できないと思われたくない、家族に迷惑をかけていると認めたくないという気持ちから、「全部自分でしている」と答える方もいます。
本人が嘘をついていると責めるより、本人の答えと日常の実態を分けて補う必要があります。
家族が調査へ同席できなかった
夜間の徘徊、排泄後の片づけ、服薬の声かけなど、短時間の調査では見えない介護があります。
本人だけの聞き取りでは、日常の困りごとが十分に伝わらない場合があります。
主治医が生活上の変化を知らなかった
診察室では歩けていても、自宅では転倒が続いているかもしれません。
受診時間が短く、家族が日常生活の変化を伝えていなければ、主治医意見書へ十分に反映されない可能性があります。
調査から結果通知までの間に悪化した
転倒、入院、認知機能の低下などにより、認定調査時より現在の介護量が増えている場合です。
この場合は、元の認定が誤っていたとは限らず、区分変更の方が状況に合うことがあります。
市区町村へ「理由と資料を見たい」と伝えます
市区町村の介護保険担当窓口では、審査請求をしなくても、認定結果の理由について説明を受けられる場合があります。
電話では、次のように伝えてください。
「母の要介護認定が要支援2でしたが、入浴、服薬、夜間の見守りが毎日必要な実態と合わないと感じています。どのような情報をもとに判定されたのか、説明を受けたいです」
あわせて、次の資料について閲覧や写しの交付を受けられるか尋ねます。
- 認定調査票
- 認定調査の特記事項
- 一次判定に関する資料
- 主治医意見書
- 介護認定審査会の判定に関する資料
情報提供や開示の方法、本人同意の要否、家族が申請できる範囲、主治医意見書の取扱いは自治体によって異なります。
「家族なので全部見せてください」ではなく、
「本人の同意書や委任状は必要ですか。家族が結果の説明を受けるために提出する書類を教えてください」
と聞くと手続きが分かります。
資料を見るときは、介護度の数字ではなく日常との違いを探します
資料を受け取っても、専門用語が多く、どこを見ればよいか分からないことがあります。
最初から判定方法をすべて理解しようとせず、家族が知っている生活との違いを探してください。
- 一人でできるとされているが、実際は毎回介助している動作
- 頻度が少なく記録されている夜間対応や排泄介助
- 転倒、徘徊、服薬忘れなど、特記事項に書かれていない出来事
- 調査時にはなかった入院や心身状態の悪化
- 主治医へ伝えていた症状が意見書に反映されているか
記載が家族の認識と違っても、すぐ「調査員が間違えた」と決めつけません。
本人の回答、調査時の動作、家族から提供された情報のどこで食い違ったのかを市区町村へ尋ねます。
区分変更申請は「結果が気に入らないときの再試験」ではありません
現在の認定有効期間中に、心身の状態や介護の必要度が変わった場合は、区分変更申請を検討できます。
例えば、次のような変化です。
- 転倒後、一人で歩けなくなった
- 退院後に食事、排泄、着替えの介助が増えた
- 認知症の症状が進み、常時見守りが必要になった
- 服薬や金銭管理を本人だけでは続けられなくなった
- 夜間の介助が大きく増えた
ケアマネジャーには、
「前回の調査時はトイレまで一人で歩けましたが、転倒後は毎回支えが必要です。区分変更に当たる状態か、現在のサービスと併せて検討したいです」
と伝えます。
区分変更を申請すれば、必ず希望する要介護度になるわけではありません。改めて調査と審査が行われ、元の区分と同じになる場合や、希望した方向と異なる判定になる可能性もあります。
申請の前に、変化が起きた日、以前できていたこと、現在必要な介助をまとめてください。
認定時点の判断そのものに異議があるなら、審査請求を検討します
認定調査時から現在と同じ介護が必要だったのに、その事実が反映されていない。市区町村から説明を受けても、認定時点の処分に納得できない。
その場合は、都道府県に設置された介護保険審査会へ審査請求をする方法があります。
審査請求は、介護保険審査会が直接「要介護3へ変更する」と決める手続きではありません。
市区町村の処分に違法または不当な点がないかを審理し、請求が認められた場合は処分を取り消し、市区町村が改めて処分を行います。
原則として請求できるのは処分を受けた本人です。家族が代理で行う場合は、委任状などが必要になることがあります。
提出方法や必要部数は都道府県によって案内が異なるため、結果通知書に書かれた窓口か、都道府県の介護保険審査会へ尋ねてください。
最初の電話では、
「要介護認定の結果通知を〇月〇日に受け取りました。市へ認定理由を聞きましたが、認定時点の実態が反映されていないと考えています。審査請求の期限、必要書類、家族が代理する場合の委任状について教えてください」
と伝えます。
審査請求を待つ間も、現在の介護を止めないことです
審査請求は、翌日から要介護度を上げてもらうための緊急手続きではありません。
結論が出るまで、現在の認定結果に基づいて介護生活を支える必要があります。
担当のケアマネジャーや地域包括支援センターへ、次の二つを同時に伝えてください。
- 認定結果について、市区町村への説明要求や審査請求を検討していること
- 現在のサービスでは、どの介護が足りないのか
要介護度が希望より軽くても、現在の区分の範囲でサービスの曜日や種類を組み替えられる場合があります。
介護保険外の支援、市区町村の地域支援事業、家族の分担などを含めて、一時的な方法を考えることもできます。
「認定が変わるまで家族が耐える」という計画にはしないでください。
次の認定調査では「できた一回」ではなく普段の状態を伝えます
区分変更や更新認定で再び調査を受ける場合は、親御さんを重く見せるために誇張する必要はありません。
反対に、調査の日だけ無理をしてできた動作を、普段も一人でできることとして終わらせないことです。
家族は、次のように補足します。
「今は立てましたが、普段はテーブルにつかまり、家族が後ろから支えています」
「本人は薬を自分で飲むと言っていますが、家族が毎回準備し、声をかけないと飲み忘れます」
「トイレへは行けますが、衣服を戻せず、床や便器の清掃が一日二回ほど必要です」
困りごとを「大変です」で終わらせず、誰が、何を、どのくらいの頻度で手伝っているかまで伝えます。
夜間や認知症による行動など、その場で再現できないことは、直近一、二週間の記録を用意すると説明しやすくなります。
親御さんが「介護は要らない」と言うときも、陰で行う支援を隠しません
親御さんは、要介護度が重くなることを「自分が何もできない人と認められること」のように感じる場合があります。
家族が調査員へ話そうとすると、「余計なことを言うな」と怒ることもあります。
その場で本人の自尊心を傷つけないため、事前に市区町村へ、家族だけで状況を伝える方法があるか尋ねてください。
親御さんへは、
「できないことを並べたいのではなく、今している手伝いを正しく伝えて、使える支援を考えたい」
と話します。
本人の前で言いにくい排泄、徘徊、金銭管理などは、調査前に文書で渡せるかを確かめる方法もあります。
本人の意思を尊重することと、実際には家族が担っている介助を隠すことは同じではありません。
認定の見直しを待てない状態なら、安全確保を先にします
要介護度への異議は、数日から数か月かけて手続きを進める問題です。
一方、次の状態では、結果の見直しより、今日の介護体制を変えることが先です。
- 食事や水分を取れず、ぐったりしている
- 転倒が続き、一人で残せない
- 火の不始末や行方不明のおそれがある
- 介護者が眠れず、仕事や運転に支障が出ている
- 本人や家族が手を出しそうな状態になっている
- 退院日が迫っているが、自宅で介護できない
急な意識障害、呼吸困難、大きなけがなどがあれば119番を優先します。
日常生活を家族だけで維持できない場合は、ケアマネジャー、地域包括支援センター、市区町村へ、できなくなったことを具体的に伝えてください。
今日は通知書の期限を見て、市区町村へ一つだけ質問します
認定結果を見て腹が立っているときに、すべての制度を理解する必要はありません。
まず結果通知書を手元に置き、市区町村の介護保険担当窓口へ次の一文を伝えてください。
「認定結果が実際の介護状況と合わないと感じています。結果の理由について説明を受け、認定調査票や主治医意見書など、確認できる資料と手続きを教えてください」
その電話で、区分変更か審査請求かを即決しなくても構いません。
認定調査時から食い違っていたのか、その後に状態が変わったのか。
そこが分かれば、次に出す申請は選びやすくなります。
通知書を閉じて我慢を続けるのではなく、まず「なぜこの結果になったのか」を聞く。それが、親御さんの状態と制度の判定をつなぎ直す最初の手続きです。















