裁判所から届いた封筒を、机の端へ置いたままにしている。
貸したお金が返ってこない。配偶者から離婚を求められた。親御さんが亡くなり、借金があるかもしれない。会社から突然、来月で契約を終えると言われた。
困ってはいるものの、「これは本当に弁護士へ話すことなのか」が分かりません。
法テラスという名前は聞いたことがある。でも、役所なのか、法律事務所なのか、電話したらそのまま依頼や裁判になるのかも分からない。
法律の問題は、相談する前から専門用語が多く、自分の悩みが小さく見えてしまうことがあります。
けれど法テラスは、法律問題だと自分で判定できた人だけが使う場所ではありません。どこへ聞けばよいか分からない段階から利用できる、法的トラブルの総合案内所です。
法テラスには、役割の違う三つの入口があります
「法テラスへ相談する」といっても、すべて同じサービスではありません。
| 利用するサービス | 受けられること | 費用・主な条件 |
|---|---|---|
| 法制度・相談窓口の案内 | 使える可能性がある法制度や、適切な相談窓口を案内してもらう | 誰でも利用可能。案内は無料で、電話の場合は通話料がかかる |
| 弁護士・司法書士の無料法律相談 | 個別の事情を伝え、法律上の見通しや対応方法を聞く | 収入・資産などの利用条件がある |
| 弁護士・司法書士費用の立替え | 交渉、調停、裁判、書類作成などを依頼する費用を法テラスが立て替える | 審査があり、原則として立替金を分割で返済する |
最初から弁護士へ依頼する必要はありません。
まず電話で「この問題は法律相談の対象になるか」「どこへ聞けばよいか」を尋ね、その後に無料法律相談を予約する流れもあります。
法テラスへ問い合わせたからといって、弁護士への依頼、裁判、費用の支払いが自動的に始まるわけではありません。最初は相談先を確かめるだけでも利用できます。
借金・離婚・相続など、暮らしの法的な問題を相談できます
法テラスの無料法律相談では、主に民事、家事、行政に関係する問題を扱います。
借金・返済の問題
- カードローンや消費者金融の返済ができない
- 複数の借入先があり、毎月の返済額を減らしたい
- 自己破産、個人再生、任意整理の違いを知りたい
- 保証人になった借金を請求されている
- 身に覚えのない請求や督促が届いた
借金の相談では、返済できない自分を責める説明より、借入先、残高、毎月の返済額、滞納状況を伝える方が役立ちます。
「五社から合計約280万円を借り、二社を三か月滞納しています。今の収入では返済できないため、手続きの選択肢を聞きたいです」
離婚・夫婦・子どもの問題
- 離婚を求められた、または離婚を考えている
- 別居中の生活費を請求したい
- 養育費、親権、面会交流について知りたい
- 財産分与や慰謝料の見通しを聞きたい
- 配偶者の借金や不貞が関係している
「離婚した方がよいか」という人生上の決断を代わりにしてもらう場所ではありません。
離婚する場合としない場合に、法律上どのような選択肢や負担があるのかを聞く場所です。
相続・遺言・成年後見の問題
- 親御さんの遺産を誰が相続するのか分からない
- 借金があるため相続放棄を考えている
- 遺言書の内容や効力を確かめたい
- きょうだい同士で遺産分割がまとまらない
- 認知症の親御さんの財産管理に困っている
相続放棄など、期間制限が関係する手続きもあります。
亡くなった方の借金が疑われる場合は、遺産を処分する前に相談してください。
仕事・労働の問題
- 突然解雇された
- 給料、残業代、退職金が支払われない
- 雇止めや退職勧奨に納得できない
- 職場でハラスメントを受けている
- 会社から損害賠償を求められた
雇用契約書、給与明細、会社からの通知、メールやチャットの記録が判断材料になります。
住まい・近隣関係の問題
- 家賃滞納を理由に退去を求められた
- 敷金が返還されない
- 賃貸物件の修繕費を高額請求された
- 隣家との騒音、境界、通行の問題がある
- 住宅ローンや共有名義の不動産で困っている
消費者被害・金銭・交通事故など
- 高額な商品やサービスを契約してしまった
- 貸したお金が返ってこない
- ネット上の詐欺や不当請求に遭った
- 交通事故の損害賠償や示談条件を知りたい
- SNS上の誹謗中傷や個人情報の公開で困っている
同じ出来事でも、消費生活センター、労働基準監督署、警察など、法テラス以外の窓口が適している場合があります。その振り分けを聞くことも、法テラスの役割です。
サポートダイヤルでは、弁護士が個別の法律判断をするわけではありません
法テラス・サポートダイヤルでは、オペレーターが困りごとを聞き、関係する法制度や相談窓口を案内します。
法律問題かどうか自分で分からない場合も利用できます。
法テラス・サポートダイヤル:0570-078374
受付時間:平日9時から21時、土曜日9時から17時
祝日・年末年始は除かれます。IP電話やプリペイド携帯電話などからつながらない場合は、公式サイトに案内されている別番号を使用します。
サポートダイヤルで対応するのは、原則として弁護士や司法書士ではありません。
そのため、次のような聞き方が合っています。
「裁判所から支払督促という書類が届きました。どこへ相談すべきか、無料法律相談を利用できるか知りたいです」
「親の相続放棄を考えています。期限があるようですが、どの窓口へ予約すればよいですか」
一方、「裁判で勝てますか」「慰謝料はいくら取れますか」といった個別判断は、弁護士・司法書士との法律相談で聞きます。
無料法律相談では、個別の事情を法律に当てはめて聞けます
収入と資産が一定の基準以下などの条件を満たす場合、法テラスと契約している弁護士・司法書士による無料法律相談を利用できます。
相談時間は一回30分で、同じ問題について原則3回までです。
三回分をまとめて、一度に90分相談することはできません。必要であれば、一回目とは別の弁護士や司法書士へ二回目の相談をすることもできます。
相談できるかの審査では、予約時などに次の内容を聞かれます。
- 手取りの平均月収
- 賞与を含む収入
- 現金や預貯金などの資産
- 家族の人数
- 配偶者の収入・資産
- 家賃や住宅ローン、医療費などの負担
基準額は、家族人数や居住地域によって異なります。
基準を少し超えていると思っても、家賃、住宅ローン、医療費、教育費などの事情が考慮される場合があります。自分で対象外と決めず、実際の数字を伝えてください。
離婚など、配偶者が事件の相手方になる問題では、収入・資産の見方が通常と異なる場合もあります。
無料法律相談で扱えないこともあります
法テラスへ電話すれば、あらゆる悩みを弁護士へ無料で相談できるわけではありません。
民事法律扶助による無料法律相談は、借金、離婚、相続、労働など、民事・家事・行政上の問題が中心です。
刑事事件で、被疑者・被告人として弁護を依頼したい場合は、通常の民事法律扶助による無料相談の対象外です。地域の弁護士会や、刑事事件に対応する別制度を案内されることがあります。
一方、犯罪の被害を受けた方には、犯罪被害者支援の制度があります。DV、ストーカー、児童虐待を受けている、または受けるおそれがある方を対象とした法律相談援助も設けられています。
また、次の内容は法テラスだけで手続きが完了するものではありません。
- 生活保護、年金、介護などの給付申請
- 税金の申告書や決算書の作成
- 病気や障害の診断
- 就職先や住居の紹介
- 夫婦や親族の気持ちを仲直りさせること
ただし、それらの問題に法的な争いや権利関係が含まれる場合は、対応する制度や別の窓口を案内してもらえる可能性があります。
裁判所から書類が届いた場合は、相談内容より期限を先に伝えます
次のような書類が届いている場合は、封筒を閉じたままにせず、最初のページに書かれた期日や提出期限を見てください。
- 訴状
- 支払督促
- 調停期日通知書
- 呼出状
- 答弁書の提出を求める書類
- 差押えや強制執行に関する通知
- 賃貸住宅の明渡しや契約解除に関する書類
内容に納得できないからと放置しても、手続きは止まらないことがあります。
電話では、事情を最初からすべて話すより、書類名と期限を先に伝えます。
「地方裁判所から訴状が届き、答弁書の提出期限が8月10日です。まだ弁護士へ相談していません」
「簡易裁判所から支払督促が届きました。受け取ったのは昨日です」
書類に書かれた電話番号が本物か心配な場合は、裁判所の公式サイトなどで代表番号を調べ、書類の存在を確かめます。
暴力やストーカーがある場合は、通常の予約より安全を先にします
配偶者や交際相手から暴力を受けている、待ち伏せや監視が続いている場合は、相手と二人で話し合ってから法テラスへ行く必要はありません。
今まさに危害を受けるおそれがある場合は、110番を優先してください。
法テラスには犯罪被害者支援ダイヤルがあります。
犯罪被害者支援ダイヤル:0120-079714
受付時間:平日9時から21時、土曜日9時から17時
DV、ストーカー、児童虐待に関する法律相談では、被害者支援の経験や理解がある弁護士を紹介する制度もあります。
相手にスマートフォンを見られている、居場所を知られたくないといった事情も、最初に伝えてください。
30分の相談では、これまでの人生より「今決めたいこと」を先に話します
法律問題には長い経緯があります。
夫婦の問題なら、十年以上前の出来事から話したくなるでしょう。借金なら、なぜ借りたかを説明しなければ理解してもらえないと感じるかもしれません。
しかし相談時間は限られています。
最初の二、三分で、次の四つを伝えます。
- 誰との問題か
- 何が起きたか
- 期限があるか
- 今日、何を知りたいか
たとえば離婚問題なら、次のように始めます。
「夫から先週、離婚を求められました。高校生の子どもが一人おり、私はパート勤務です。別居後の生活費と、離婚届へ署名する前に確かめることを聞きたいです」
借金なら、こう伝えます。
「借金は四社、合計約180万円です。今月から返済できず、督促が始まりました。任意整理と自己破産のどちらを考える状態か聞きたいです」
「自分が悪いか」「相手がひどいか」という評価より、法律上の選択肢を聞ける形へ変えます。
持参するのは、きれいな資料ではなく事実が分かる資料です
資料を完璧にまとめられないため、予約を先延ばしにする必要はありません。
手元にあるものだけでも持参してください。
- 裁判所や相手方から届いた書類と封筒
- 契約書、請求書、督促状
- メール、手紙、SNSのやり取り
- 給与明細、通帳、借入明細
- 不動産の資料や遺言書
- 事故証明書、診断書、修理見積書
- 出来事の日付を並べた簡単なメモ
- 聞きたいことを三つに絞ったメモ
借金の場合は、借入先、借りた時期、現在の残高を一覧にすると話が早く進みます。
書類の意味が分からなくても、自分の判断で捨てたり、重要そうな部分だけ切り取ったりせず、そのまま持参します。
相談した弁護士へ、その場で依頼しなくても構いません
無料法律相談を受けると、「断りづらくなるのでは」と心配する方もいます。
相談した弁護士や司法書士へ、必ず依頼しなければならないわけではありません。
一回目の相談で聞くことは、次のような内容です。
- 今の問題に使える手続き
- 自分で対応できる範囲
- 弁護士や司法書士へ依頼する必要性
- 期限と今すぐ避けるべき行動
- 予想される期間と費用
- 相手へ連絡する前に残すべき記録
依頼を勧められても、次のように伝えられます。
「今日は見通しを聞くところまでにして、依頼するかは持ち帰って考えます」
また、相談を担当した弁護士や司法書士が、必ず事件を引き受けるとは限りません。利益相反や専門分野、業務状況などにより受任できないこともあります。
費用立替は「弁護士費用が無料になる制度」ではありません
法律相談だけでは解決せず、弁護士や司法書士へ交渉、調停、裁判、書類作成などを依頼する場合、費用の立替制度を利用できることがあります。
主な条件は、次の三つです。
- 収入・資産が一定基準以下であること
- 勝訴や和解、免責など、解決の見込みがないとはいえないこと
- 報復目的などではなく、制度の趣旨に合うこと
審査で利用が認められると、法テラスが弁護士・司法書士費用を立て替えます。
立替金は原則として、利用者が法テラスへ分割で返済します。利息はありませんが、費用そのものが消える制度ではありません。
生活保護を受給している方などは、返済の猶予や免除を受けられる場合があります。ただし、自動的に免除されるとは限らず、事件終了後の申請や審査が必要になることがあります。
依頼前には、次を聞いてください。
「立替総額の目安と、毎月の返済額はいくらですか」
「事件が終わった後、追加の報酬や実費が発生する可能性はありますか」
家族は窓口を調べられますが、本人の相談をすべて代行できるとは限りません
親御さんや配偶者の問題を、家族が代わりに調べることはできます。
サポートダイヤルでは、本人以外の方にも法制度や相談窓口の案内が行われています。
一方、弁護士・司法書士との無料法律相談を本人に代わって受ける場合は、原則として本人の意思確認が必要です。
口頭での確認が難しい場合、委任状などを用意することで代理相談が認められる場合があります。ただし、代理人を通した電話相談は原則として利用できないと案内されています。
認知症、入院、障害などで本人が来所しにくい場合は、予約時に事情を伝えてください。地域や条件によって、家族や支援者の同席、電話・オンライン相談、出張相談が可能な場合があります。
家族からは、次のように問い合わせられます。
「母本人の相続問題ですが、入院中で外出できません。本人は相談を希望しています。家族の同席や出張相談を利用できるか確認したいです」
今日は、届いた書類の一枚目だけを開きます
法テラスへ話す内容を、最初からきれいにまとめる必要はありません。
裁判所、会社、貸金業者、配偶者の代理人などから書類が届いているなら、最初の一枚を開き、次の三点だけ見てください。
- 誰から届いた書類か
- 書類の名前は何か
- 期日や提出期限がいつか
その三点を手元に置き、サポートダイヤルへ次のように伝えます。
「法律問題か分からないのですが、〇〇から△△という書類が届き、期限は〇月〇日です。どこへ相談すべきか教えてください」
電話をしただけで、裁判や契約が始まることはありません。
それでも、封筒を一人で見続ける状態から、「期限と、次に聞く場所が分かっている状態」へ進むことはできます。














