家賃の引き落とし日を見て、急に息苦しくなる夜があります
退職して数日は、会社とのやり取りや片付けに追われていた。少し落ち着いて通帳を開いたとき、初めて「この残高で、次の仕事が決まるまで暮らせるのだろうか」と現実味が増してくることがあります。
家賃、食費、電気代、健康保険、住民税。請求は仕事を失った事情に合わせて止まってはくれません。
求人を探さなければと思う一方で、集中できない。家族には心配をかけたくなくて、「退職金があるから大丈夫」「すぐ決まると思う」と答えてしまう。本当は、あと何か月もつのか自分でも分からない。
そんな状態で必要なのは、将来の家計を完璧に立て直すことではありません。まず、次の給付や収入が入るまで、住まいと日々の生活をどうつなぐかを考えます。
公的支援には、それぞれ役割があります。失業した人全員に同じお金が自動で支払われるわけではないため、自分が今困っている支払いから窓口を選ぶ方が動きやすくなります。
| いま差し迫っていること | 最初に連絡する場所 | 尋ねたい内容 |
|---|---|---|
| 失業給付を申請していない | 住所地を管轄するハローワーク | 基本手当の対象になるか、手続きに必要なもの |
| 離職票が届かず手続きできない | 退職した会社とハローワーク | 離職票の発行状況、仮の受給資格決定手続きが可能か |
| 次の家賃を払えそうにない | 自治体の自立相談支援機関 | 住居確保給付金の対象になるか |
| 健康保険料や年金が重い | 市区町村の担当窓口・年金事務所 | 保険料の軽減、免除、納付猶予、分割が可能か |
| 失業給付を受けられない、または終了した | ハローワーク | 求職者支援制度や職業訓練を利用できるか |
| 食費や医療費も残っていない | 自立相談支援機関・福祉事務所 | 当面の生活を含めて利用できる支援があるか |
最初の30分は、節約ではなく「あと何日もつか」を書き出す
収入が途切れると、電気をこまめに消す、食事を減らすといった節約に目が向きます。もちろん支出を抑えることは必要ですが、細かな節約だけでは、家賃や保険料などの大きな支払いには追いつかないことがあります。
先に、現在地を一枚の紙へ書きます。家計簿をきれいに作る必要はありません。
紙に書くのは、この六つだけです
- 財布と口座にある、すぐ使えるお金
- 退職金、最後の給与、失業給付など、今後入る可能性があるお金
- 次の7日間に必要な食費、薬代、交通費
- 次の家賃と支払日
- 今後30日以内に期限が来る公共料金、保険料、税金、返済
- すでに遅れている支払い
入る予定のお金は、金額と日付が確定しているもの、まだ申請していないもの、対象か分からないものを分けて書きます。「失業給付が入るはず」と一つにまとめると、実際の支給日までの空白を見落としやすくなるためです。
生活防衛メモの例
手元資金:8万4,000円
最後の給与:8月10日に約6万円の予定
家賃:7月31日に6万2,000円
電気・ガス:8月5日までに1万1,000円
離職票:まだ届いていない
失業給付:未申請
この例では、食費を数千円減らすだけでは家賃後の生活が厳しくなります。最初の行動は、極端に食事を減らすことではなく、離職票の状況を確かめ、家賃について自立相談支援機関へ連絡することです。
すべての請求を平等に払おうとしない
請求書が何枚も届くと、少しずつ全員に払いたくなります。しかし、手元のお金が限られているときは、生活を続けるための優先順位が必要です。
先に残したいお金
- 最低限の食費と水分
- 通院や服薬を続けるためのお金
- 求職活動や手続きに必要な交通費
- 連絡手段を保つための通信費
- 住まいを失わないために必要な費用
税金、健康保険料、年金、公共料金、借入金などは、何も言わずに滞納するのではなく、払えないと分かった段階で窓口や契約先へ連絡します。事情によって、分割、猶予、減免などを案内される場合がありますが、利用条件は制度や自治体、契約先によって異なります。
一方、支払いのためにすぐ高金利の借入れを重ねると、再就職後も返済だけが残ることがあります。支援金が間に合わない場合でも、借りる前に公的な生活相談窓口へ現在の残高と期限を伝えてください。
雇用保険は、離職票が届くまで何もできないとは限りません
雇用保険の基本手当は、働く意思と能力があり、求職活動をしているものの就職できない人の生活と求職活動を支える制度です。受給の可否、日数、金額などは、離職理由、雇用保険の加入期間、年齢などによって異なります。
退職しただけで自動的に振り込まれるわけではありません。住所地を管轄するハローワークで求職の申込みと受給資格の手続きを行います。
離職票が手元にある場合
離職票、本人確認に使う書類、振込先が分かるものなどを用意し、ハローワークへ行きます。必要書類や受付方法は状況によって異なるため、行く前に管轄のハローワークへ確かめると行き直しを減らせます。
離職票が届かない場合
まず会社へ、離職票を希望していることと発送予定日を尋ねます。それでも届かない場合は、ハローワークにも連絡してください。
労働局の案内では、退職日の翌日から12日目以降も離職票が届かない場合、退職の事実が分かる書類などを使い、受給資格の仮決定手続きができる場合があります。実際の対応や持ち物は管轄のハローワークで確かめてください。
離職理由に納得できない場合
離職票に書かれた退職理由が、自分の認識と違うこともあります。自己都合か会社都合かによって扱いが変わる可能性があるため、そのまま諦めず、ハローワークの窓口で経緯を伝えます。
会社と争うための完璧な説明を用意する必要はありません。退職勧奨を受けたメール、契約終了の通知、勤務状況が分かる資料など、残っているものを持参します。最終的な離職理由は、提出資料や双方の主張などを踏まえてハローワークが判断します。
次の家賃が危ないなら、滞納する前に住まいの窓口へつなぐ
家賃を払えないかもしれないと分かっても、「一度くらい遅れても何とかなる」「次の仕事が決まってから考えよう」と先送りしたくなるものです。
ただ、住まいを失う心配があると、求人選びや面接にも落ち着いて向き合えません。次の支払日までに用意できる見込みがないなら、滞納前でも自立相談支援機関へ話してください。
生活困窮者自立支援制度では、仕事、住まい、家計などの困りごとを受け付け、状況に応じた支援プランを一緒に作ります。離職などで住居を失った、または失うおそれが高い人には、収入・資産や求職活動などの条件を満たす場合、住居確保給付金として一定期間の家賃相当額が支給されます。
住居確保給付金は、原則として自治体から大家や不動産事業者などへ支払われます。支給額の上限や収入・資産の基準は、地域や世帯人数によって変わります。
相談時にあると話が進みやすいもの
- 本人確認に使える書類
- 賃貸借契約書や家賃額が分かる書類
- 世帯の収入が分かるもの
- 世帯の預貯金残高が分かる通帳など
- 離職票、退職証明書など離職を確認できるもの
- 家賃の支払日と、すでに滞納している金額のメモ
必要書類がすべてそろっていなくても、まず電話で「失業して、次の家賃が払えない可能性があります」と伝えて構いません。申請に必要な書類は、本人や世帯の状況によって追加されることがあります。
すでに家賃が遅れている場合は、相談窓口だけでなく、大家や管理会社にも連絡します。「払えません」とだけ伝えるのではなく、現在支援制度を相談していること、いつまでに今後の見通しを連絡できるかを話します。
健康保険は、退職後の三つの選択肢を金額で比べる
会社の健康保険を抜けた後は、一般に、以前の健康保険を任意継続する、国民健康保険へ加入する、家族の健康保険の被扶養者になるという選択肢があります。加入条件と保険料が異なるため、「前の保険を続けるのが一番安い」「国民健康保険しかない」と決めつけずに比較します。
| 選択肢 | 確かめる場所 | 主に比べたいこと |
|---|---|---|
| 任意継続 | 退職前に加入していた健康保険 | 申請期限、月額保険料、加入できる期間 |
| 国民健康保険 | 市区町村の国民健康保険窓口 | 世帯全体の保険料、失業による軽減の対象になるか |
| 家族の被扶養者 | 家族の勤務先・健康保険 | 収入などの扶養要件を満たすか |
倒産や解雇、雇い止めなど一定の理由で離職した人が国民健康保険へ加入する場合、保険料の計算上、前年の給与所得を低く見なす軽減制度の対象になることがあります。すべての失業者に自動適用される制度ではないため、雇用保険受給資格者証などに記載される離職理由と、自治体の案内を確かめてください。
保険料が高くても、何も手続きせず無保険のままにするのは避けたいところです。どれを選ぶか決められないときは、それぞれの窓口で月額の見込みと期限を聞き、紙に並べて比べます。
国民年金は「払えないから放置」ではなく、免除や猶予を申請する
退職後に国民年金へ切り替えたものの、保険料まで払う余裕がない人もいます。
収入の減少や失業などで保険料の納付が難しい場合には、国民年金保険料の免除制度や納付猶予制度があります。失業した人について、前年所得を一定の方法で審査する特例が利用できる場合もあります。
免除や猶予は、未納のまま放置することとは扱いが異なります。将来の年金額への影響などもあるため、市区町村の国民年金窓口または年金事務所で、対象期間と必要書類を聞いて申請を検討します。
住民税の請求が高く感じるのは、前年の所得をもとにしているためです
退職後に収入がなくなっても、住民税は前年の所得を基に計算されるため、まとまった請求が来ることがあります。
減免、徴収猶予、分割納付などの扱いは自治体や事情によって異なります。期限を過ぎるまで封筒を閉じたままにせず、市区町村の納税担当窓口へ「失業して一括では払えない」と伝え、利用できる方法を尋ねてください。
失業給付を受けられない人にも、仕事と生活をつなぐ制度があります
雇用保険に入っていなかった、加入期間などの条件を満たさない、失業給付を受け終えたという場合でも、支援がなくなるとは限りません。
再就職に必要な技能を身につけたい場合
求職者支援制度は、雇用保険の基本手当を受けられない人などが、無料の職業訓練を受けながら再就職を目指す制度です。収入、世帯収入、資産、出席などの要件を満たす場合は、職業訓練受講手当として月10万円と通所手当などを受けられます。給付金の要件を満たさなくても、無料の訓練を受けられる場合があります。
ただし、すぐに生活費が振り込まれる緊急給付ではありません。募集時期、訓練開始日、審査などがあるため、今週の食費や家賃がない場合は、自立相談支援機関にも同時に状況を伝えます。
一時的に生活資金が必要な場合
生活福祉資金貸付制度には、低所得世帯などを対象とする総合支援資金や緊急小口資金などがあります。窓口は地域の社会福祉協議会ですが、これは原則として返済が必要な貸付制度であり、審査では対象要件や返済の見込みなども考慮されます。
「借りられるなら借りる」ではなく、再就職後に返せる見込みがあるかを含めて考えます。返済が難しいほど生活が切迫している場合は、貸付だけでつなごうとせず、福祉事務所を含めて相談してください。
食べるものも今夜の寝場所もないなら、制度を順番待ちしない
失業給付の支給を待てばよい状態と、今日明日の生活ができない状態では、必要な対応が違います。
- 食べるものを買うお金がほとんどない
- 必要な薬を受け取れない
- 電気やガスが止まりそう、またはすでに止まった
- 退去を求められ、泊まる場所がない
- 同居人から暴力を受けるなど、自宅にいることが危険
- 収入も頼れる人もなく、今後の生活の見通しが立たない
このような場合は、すべての書類をそろえてからではなく、自治体の自立相談支援機関や福祉事務所へ、緊急性をそのまま伝えます。
生活保護は、収入や資産などを活用しても最低限度の生活を維持できない場合に、必要な保護を行う制度です。相談先は現在住んでいる地域を所管する福祉事務所です。特別な事情で申請書を作成できない場合には、申請書がなくても申請できることが厚生労働省から案内されています。
「自分より困っている人がいる」「失業したのは自分の責任だから」と、生活が崩れるまで我慢する必要はありません。対象になるかを自分だけで決めず、現在の収入、預貯金、住まい、家族の状況を窓口へ伝えます。
窓口でうまく説明できなくても、この一言から始められます
失業したことへの恥ずかしさや焦りがあると、窓口で何から話せばよいか分からなくなります。制度名を正しく言う必要はありません。
「先月失業し、現在使えるお金は約8万円です。次の家賃が6万円で、離職票はまだ届いていません。失業給付を含め、生活が途切れないために利用できる制度を教えてください」
手元のお金、最も近い支払日、未申請の制度。この三つが伝われば、窓口側も緊急度を把握しやすくなります。
ハローワークで伝える一言
「○月○日に退職しました。失業給付を申請したいのですが、離職票がまだ届いていません。今できる手続きがあるか教えてください」
自立相談支援機関で伝える一言
「失業して、次の家賃とその後の生活費が足りない見込みです。住居確保給付金を含め、今の状況で使える支援を一緒に見てもらえますか」
自治体の保険料・税金窓口で伝える一言
「失業して現在の収入がありません。届いた金額を期限どおりに払うのが難しいため、軽減、免除、猶予、分割の対象になるか知りたいです」
電話口で緊張するなら、この文章を紙に書き、そのまま読んでもかまいません。
家族が調べているときは、求人を勧める前に請求書を一緒に並べる
配偶者や親、成人した子どもが失業すると、家族は「早く次を探した方がいい」「選ばなければ仕事はある」と言いたくなることがあります。
しかし本人は、再就職への不安に加え、家族に迷惑をかける罪悪感を抱えているかもしれません。責められたと感じると、離職票や請求書を隠し、状況が見えにくくなることがあります。
最初は、次のように声をかけます。
家族:「仕事のことを急かしたいわけじゃないよ。次の家賃と、手元にいくら残るかだけ一緒に見てもいい?」
本人:「まだ大丈夫。失業給付も出ると思うから」
家族:「入る日が分かるまでの分だけ見たいんだ。電話がつらければ、横でメモを取るよ」
生活困窮者自立支援制度の相談窓口では、本人だけでなく、家族や周囲の人からの相談も受け付けると案内されています。実際の申請では本人確認や本人の意思が必要になる場合がありますが、家族が先に窓口を尋ねることはできます。
家族がお金を貸す場合も、毎月いくら補うかを曖昧にしたまま続けるのではなく、まず公的支援の申請状況と不足する期間を確かめます。家族だけで長期間支え切ろうとすると、本人と家族の双方が疲れてしまいます。
今日は、三つ全部ではなく一つの電話までで構いません
生活費が不安なとき、失業給付、家賃、保険、年金、税金、再就職を一日ですべて片づけようとすると、どれにも手を付けられなくなります。
今日は、次の順番で十分です。
- 手元にあるお金と、次の家賃の支払日を書く
- 離職票があるか、失業給付を申請したかを見る
- 最も期限が近い問題に対応する窓口へ一本連絡する
家賃が先なら自立相談支援機関、失業給付が未申請ならハローワーク、食費も残っていないなら福祉事務所を含む生活相談窓口です。
再就職を急ぐ気持ちは自然ですが、明日の食費や来週の家賃を心配し続けながらでは、落ち着いて求人を選ぶことも難しくなります。
支援を利用することは、働くことを諦めることではありません。次の仕事を探せる生活を残すための手続きです。まず封筒を一通開き、日付を一つ書き、一本だけ電話をする。そこまで進めば、頭の中だけで膨らんでいた不安は、対応できる問題へ少しずつ変わっていきます。
出典・確認先メモ
- 厚生労働省「基本手当について」「雇用保険に関するQ&A」
- 厚生労働省「生活困窮者自立支援制度」「住居確保給付金」
- 厚生労働省「求職者支援制度のご案内」
- 日本年金機構「国民年金保険料の免除制度・納付猶予制度」
- 全国健康保険協会「退職後の健康保険・任意継続」
- 厚生労働省「生活福祉資金貸付制度」「生活保護制度」














