夜中に台所の音がすると、安心と心配が同時に押し寄せる
家族が自室から出てくるのは、家の中が静かになった深夜です。
冷蔵庫を開ける音がして、「今日は何か食べている」と少し安心する。その一方で、昼間はほとんど顔を合わせず、何を考えているのか分からない日が続いています。
仕事や学校から離れて、数年。長い場合は十年、二十年と時間が過ぎているかもしれません。
本人へ将来の話をすると、黙って部屋へ戻る。「働く気はあるの」「これからどうするの」と聞けば、声を荒らげることもある。
話さなければ関係は穏やかです。けれど、何も変わらないまま、親だけが年を取っていきます。
「私たちが病気になったら、この子は食事をどうするのだろう」
「家や貯金を残しても、自分で手続きできるのだろうか」
「きょうだいに全部背負わせることになるのではないか」
「本人が動くまで待っていたら、間に合わなくなるのではないか」
親として心配する一方で、疲れや怒りが湧く日もあります。
「こちらも何十年支えればよいのか」
「本人の人生なのに、どうして私だけが調べ続けているのか」
そう思ったあと、自分を冷たい親だと責める方もいます。
家族の将来を心配することと、現在の生活に疲れることは両立します。どちらかを隠して、優しい家族を演じ続ける必要はありません。
「将来が不安」の中には、別々の問題が重なっています
将来への不安を一つの大きな塊として考えると、どこから手をつければよいか分からなくなります。
まず、心配を次のように分けます。
| 心配していること | 具体的な場面 | 先に考えること |
|---|---|---|
| 本人の健康 | 昼夜逆転、食事の偏り、通院拒否、長期間健診を受けていない | 今すぐ医療が必要な状態か、家族から健康相談を始めるか |
| 毎日の暮らし | 食事、洗濯、掃除、買い物、公共料金の支払いを親が担っている | 本人が一人でできることと、現在家族が代わっていることを分ける |
| 収入と支出 | 本人の収入がなく、親の年金や給与で生活している | 世帯の月収、生活費、滞納、借入、本人名義の制度利用を整理する |
| 住まい | 親名義の持ち家、賃貸住宅、住宅ローン、修繕が必要な家 | 親がいなくなった後も住めるのか、維持費を払えるのかを見る |
| 家族関係 | 会話がない、将来の話で怒る、きょうだい間で考えが違う | 本人を説得する前に、家族側の対応をそろえる |
| 親の高齢化 | 親の介護や入院が近づき、本人を支える余力が減っている | 親の介護支援と本人のひきこもり支援を別々の窓口へつなぐ |
今すぐ六つすべてを解決する必要はありません。
健康上の危険があるのか、生活費があと何年もつのか、親が入院したら食事をどうするのか。期限が近いものから一つずつ扱います。
最初の目標を「就職」にすると、相談の入口が狭くなります
家族が支援先を探すとき、「働いてほしい」という願いが最初に浮かぶのは自然です。
しかし、長く人との接触を避けている本人に、いきなり求人、職業訓練、面接の話を持ち出しても、動けないことがあります。
外へ出る以前に、生活リズムが崩れている。人と話すだけで強く疲れる。失敗や批判への怖さがある。体調が悪くても医療へつながっていない。家族との会話自体が負担になっている。
このような状態で「まず働くこと」を求められると、本人には、自分の現在を否定されたように聞こえることがあります。
ひきこもり支援には、就労だけでなく、家族への相談支援、本人が安心して過ごせる居場所、家庭への訪問、社会参加へ向けた段階的な支援などがあります。最初から就職を約束して窓口へ行く必要はありません。
| 最初の目標にしやすいこと | 具体的な変化 |
|---|---|
| 家族が孤立しない | 月1回、状況を話せる支援者ができる |
| 家庭内の衝突を減らす | 将来の話をする時間と、言わない言葉を決める |
| 生活の状態を知る | 食事、睡眠、金銭、健康について分かる範囲が増える |
| 本人との細い関係を残す | 返事を迫らない伝言や短い会話ができる |
| 支援の選択肢を知る | 本人が動きたくなったときに紹介できる場所が分かる |
本人を今すぐ変えるのではなく、家族だけで抱え込む状態を変えることから始めます。
本人が拒んでいても、家族だけで相談を始められます
「本人が行かないと言っているので、相談しても無駄ではないか」と考える家族は少なくありません。
けれど、ひきこもり地域支援センターでは、本人だけでなく、親、きょうだいなど家族からの相談も受け付けています。家族だけの相談から始まり、その後、本人を含む支援へつながる例もあると案内されています。
家族相談でできるのは、本人を連れ出す方法を教えてもらうことだけではありません。
- 家庭で起きていることを第三者と整理する
- 本人へどのように声をかけるか考える
- 家族が避けた方がよい対応を知る
- 健康、生活、金銭の問題に合う窓口を分ける
- 訪問や居場所など、地域にある支援を知る
- 親の高齢化を含む中長期的な支援方針を考える
- 家族自身の疲れや怒りについて話す
相談したことを、すぐ本人へ報告する必要もありません。
ただし、本人に関する情報をほかの機関と共有する場合の扱いは、窓口や支援内容によって異なります。ひきこもり地域支援センターでは、プライバシーへ配慮し、関係機関への情報提供が必要な場合は説明や了承を得ながら取り扱うことが示されています。相談時に「本人へどこまで伝わるのか」と尋ねて構いません。
どこへ電話するかは、本人の年齢より「今困っていること」で選びます
| 今の困り事 | 主な相談先 | 伝える内容 |
|---|---|---|
| ひきこもり全般、本人との接し方 | ひきこもり地域支援センター、市区町村のひきこもり相談窓口 | 期間、現在の生活、家族関係、将来への心配 |
| 心身の不調や医療が必要か分からない | 保健所、保健センター、精神保健福祉センター | 睡眠、食事、言動、過去の受診、家族が心配する変化 |
| 収入、家賃、借金、公共料金が心配 | 生活困窮者自立相談支援機関 | 世帯収入、本人の収入、滞納、住まい、今後の生活費 |
| 高齢の親の介護と本人の問題が重なっている | 地域包括支援センターとひきこもり相談窓口 | 親の健康・介護状況と、同居する本人の生活 |
| 18歳未満または学校在籍中 | 学校、教育センター、児童相談関係の窓口 | 不登校、家庭での様子、学習や進路、本人の心身 |
| 本人が働きたいが、一歩目が分からない | ひきこもり支援窓口、自立相談支援機関、対象年齢に合う就労支援 | 本人が望む働き方、対人不安、生活リズム、職歴 |
| 高額な民間支援を勧められている | 公的なひきこもり相談窓口、消費生活センター | 契約内容、料金、解約条件、本人への対応方法 |
ひきこもり地域支援センターは、専門の支援コーディネーターが中心となり、福祉、保健、医療、居場所、就労などの関係機関と連携する公的な相談窓口です。全都道府県・指定都市に設置され、市町村でも相談窓口や支援事業の整備が進められています。
心の病気かどうか判断できない場合は、家族だけで病名を決めず、保健所や精神保健福祉センターへ相談できます。これらの窓口では、心の健康や医療に関する相談を受け、必要に応じて医療機関などにつなぐ役割があります。
生活費や住まいが心配なら、自立相談支援機関へ「まだ滞納はないが、親の収入がなくなった後に生活できない」と伝えて構いません。生活困窮者自立支援制度では、仕事、住まい、家計など複数の困り事を状況に応じて扱っています。
相談窓口へ話すのは、立派な経緯ではなく今の事実です
初めて電話をするとき、「何から説明すればよいか分からない」と不安になることがあります。
生まれてから現在までの出来事を、すべて整理しておく必要はありません。
次の項目で、分かるところだけを書きます。
| 項目 | メモする内容 |
|---|---|
| 本人の基本情報 | 年齢、同居・別居、ひきこもり状態が続いているおおよその期間 |
| 現在の一日 | 起きる時間、食事、入浴、外出、インターネット利用など |
| 家族との接点 | 会話、メール、置き手紙、食事を一緒に取るか |
| 健康面 | 睡眠、体重変化、持病、服薬、過去の受診、飲酒など |
| お金 | 本人の収入、親が渡している金額、借入や滞納の有無 |
| 生活能力 | 調理、洗濯、買い物、支払い、手続きで本人ができること |
| 家族の状態 | 親の年齢、病気、介護、きょうだいの状況、家族の疲れ |
| 現在の危険 | 暴力、自傷をほのめかす言動、火の不始末、極端な衰弱など |
| 相談したいこと | 本人への接し方、将来のお金、訪問の可能性など |
事実と家族の解釈は分けて話すと、状況が伝わりやすくなります。
| 解釈を含む言い方 | 事実に置き換えた言い方 |
|---|---|
| 働く気がまったくありません | 仕事の話をすると返事をせず、自室へ戻ります |
| 一日中何もしていません | 昼頃に起き、主に自室で過ごし、深夜に食事をしています |
| わがままで病院へ行きません | 体調について聞くと「大丈夫」と言い、受診の提案を断ります |
| 家族を嫌っています | 対面の会話はありませんが、必要な物はメモで伝えます |
診断名が分からなくても相談できます。「ひきこもりに当てはまるか確信がない」と、そのまま伝えて構いません。
最初の電話では、家族が望む変化を一つだけ伝えます
支援者へ期待することが大きすぎると、相談後に「何も変わらなかった」と落胆しやすくなります。
最初の電話では、一つの困り事へ絞ります。
たとえば、次のように伝えられます。
「成人した家族が十年ほど家からほとんど出ず、本人は相談を拒んでいます。親が高齢になり、私たちが入院した場合の食事と生活費が心配です。家族だけで始められる準備を相談したいです」
「就職をさせたいというより、本人と話をするとけんかになるため、接し方を変えたいです」
「本人には収入がなく、親の年金で生活しています。将来利用できる制度を今からどう整理すればよいか知りたいです」
電話を受けた窓口が担当外でも、現在の困り事を具体的に伝えれば、別の機関を案内してもらえる場合があります。
本人へは「相談へ行きなさい」ではなく、家族が相談した事実を短く伝えます
家族が窓口へ相談したことを本人へ伝えるかどうかは、関係や安全面によって変わります。
伝える場合は、本人を動かすために相談したという言い方を避けます。
| 避けたい伝え方 | 関係を壊しにくい伝え方 |
|---|---|
| 「あなたを何とかしてもらうために相談した」 | 「私たちが今後どう接すればよいか分からず、家族として相談してきた」 |
| 「支援員が会いたいと言っている」 | 「今すぐ会う必要はないそうだよ。こういう窓口があることだけ伝えておくね」 |
| 「このままだと家を追い出されるよ」 | 「私たちも年を取るので、家と生活費について少しずつ考えたい」 |
| 「いつ相談に行くか決めて」 | 「電話、メール、家族だけの相談など方法がある。必要になったら選べるよ」 |
| 「働くための支援だから」 | 「仕事だけではなく、生活や家族とのことも話せる場所だそうだよ」 |
返事を求めず、「今日は伝えるだけ」と終える方法もあります。
パンフレットを部屋の前に置く場合も、「明日までに読んで」と期限をつけず、本人が選べる状態にします。
拒まれたときは、説得の回数を増やすより家族の対応をそろえます
本人が「余計なことをするな」「自分のことを話すな」と怒る場合があります。
家族が怖くなり、相談そのものをやめてしまうこともあるでしょう。
本人が直接支援を受けるには、本人の意思や関係づくりが欠かせません。一方、家族が自分の接し方や生活の備えについて相談することまで、本人の許可がなければできないわけではありません。
拒否されたときは、次のことを家族側で決めます。
- 仕事の話を毎日繰り返さない
- 怒鳴り合いになったら、その日の話を終える
- 食事や生活費を急に止めて動かそうとしない
- 家族の誰か一人が、定期的に支援者と連絡を取る
- 本人の変化や家庭内の出来事を短く記録する
- 健康や安全に変化があった場合の連絡先を決める
「本人が相談しない限り何もできない」と、家族だけで耐え続ける必要はありません。
親が支えているお金を、責めずに一か月分だけ出します
将来への不安が大きくても、本人の生涯分の生活費を一度に計算することはできません。
まず、現在の一か月を見ます。
| 確認するもの | 月額 |
|---|---|
| 世帯へ入る給与・年金など | 円 |
| 住居費・固定資産税の月割り | 円 |
| 食費・光熱費・通信費 | 円 |
| 本人へ渡している現金 | 円 |
| 本人名義の契約・保険料・借入 | 円 |
| 親の医療・介護に必要な支出 | 円 |
| 毎月残る金額または不足額 | 円 |
この表は、本人へ「これだけお金がかかっている」と突きつけるためではありません。
親の収入が減った場合に、どの支払いから続かなくなるかを知るためのものです。
本人の収入、住まい、借金、滞納など、生活上の課題がある場合、自立相談支援機関では家計の把握、住まい、就労を含む支援を状況に合わせて検討します。まだ親の収入で暮らせている段階でも、将来の生活が不安であることを伝えられます。
年金、生活保護、障害に関する給付などは、健康状態、加入記録、世帯収入・資産などにより要件が異なります。本人がひきこもり状態にあるという理由だけで自動的に利用できるものではないため、支援者と状況を分けて確認してください。
「親が亡くなった後」を、相続の話だけにしない
将来の準備というと、家を残す、貯金を残す、遺言を書くといった財産の話へ進みがちです。
けれど、本人が一人で生活するためには、お金以外の情報も必要です。
| 残しておきたい情報 | 内容 |
|---|---|
| 日常生活 | 食事、洗濯、買い物、薬、ゴミ出しを現在誰が担っているか |
| 住まい | 持ち家・賃貸の名義、家賃、税金、修繕、更新時期 |
| お金 | 本人の収入、口座、毎月の支払い、借入や滞納 |
| 健康 | 通院先、服薬、保険証の場所、過去の病気 |
| 連絡先 | 相談窓口、親族、近隣で連絡できる人 |
| 本人との関わり方 | 連絡しやすい方法、苦手な話題、落ち着きやすい対応 |
家や多額の現金を残せば安心とは限りません。
固定資産税や修繕費を払えない。公共料金の手続きができない。相続や契約の書類を開けられない。こうした生活上の部分まで支援先と共有できる状態を作る方が、将来の備えになります。
財産、相続、不動産管理、成年後見など法的な準備が必要な場合は、本人の判断能力や家族関係によって適切な方法が変わります。家族だけで名義を移したり、本人のお金を管理し始めたりせず、支援窓口から法律・福祉の専門窓口へつないでもらってください。
親の介護が始まったら、二人分の問題を一つの窓口だけで抱えない
親が80代、本人が50代前後になる家庭では、親の介護と本人の生活が同時に問題になることがあります。
親が入院したことで、本人の食事が途切れる。親の介護サービスを入れたいが、本人が支援者の訪問を嫌がる。親の年金が介護費へ回り、本人の生活費が不足する。
この場合、本人のひきこもりだけを扱う窓口では、親の介護全体を支えきれないことがあります。
親の介護や高齢者としての生活は地域包括支援センターへ、本人の生活や社会的孤立はひきこもり地域支援センターや自立相談支援機関へ伝えます。
地域包括支援センターは、高齢者の総合相談、権利擁護、介護予防、地域の支援体制づくりなどを担う市町村の機関です。ひきこもり地域支援センターも、連携先の一つとして地域包括支援センターを挙げています。
最初に電話した窓口へ、次のように伝えます。
「高齢の親の介護と、同居する成人の子のひきこもりが重なっています。親だけ、本人だけではなく、世帯全体としてどの窓口と連携できるか相談したいです」
きょうだいへは「将来頼むね」ではなく、現在の情報を共有します
親が高齢になると、別居するきょうだいへ「私たちが死んだらお願い」と言いたくなることがあります。
しかし、具体的な情報がないまま頼まれた側には、同居、生活費、通院、財産管理をすべて引き受ける話に聞こえます。
きょうだいへ共有するのは、役割を押しつけるためではなく、誰も状況を知らないままにしないためです。
- 本人の現在の生活
- 親が支えている家事と金額
- 相談している窓口
- 親の健康・介護の見通し
- 緊急時に連絡してほしい人
- 今後、本人と家族で考える必要がある課題
きょうだいから「私は支えられない」と言われることもあります。
その返事を責めるより、家族だけで担えない部分が明確になったと考え、公的支援へ伝える材料にします。
電話連絡だけならできる人、手続きの同行ならできる人、金銭支援はできない人など、可能な範囲はそれぞれ違います。
危険が迫っているときは、通常の相談予約を待たない
ひきこもり状態であること自体を、暴力や犯罪と結びつける必要はありません。
ただし、本人または家族の安全を保てない状況がある場合は、将来の相談とは分けて対応します。
- 自分や家族を傷つけると具体的に話している
- 刃物や火などを使う危険がある
- 暴力が続き、家族が同じ家にいられない
- 何日もほとんど食べたり飲んだりしていない
- 意識や言動が明らかに普段と違う
- 重いけがや急な体調悪化がある
このような場合は、本人を説得して通常の予約相談へ連れていくことだけにこだわらず、地域の救急・警察など安全を確保できる機関へ状況を伝えてください。
直ちに危険というほどではないものの、心身の状態や受診の必要性が分からない場合は、保健所、保健センター、精神保健福祉センターへ家族から相談できます。
家族が暴力を受けている場合、「本人を刺激した自分が悪い」と考えて耐え続けないでください。本人への支援と、家族の安全を守ることは分けて考えます。
高額な民間支援を、家族の焦りだけで契約しない
将来への不安が強いと、「必ず外へ出します」「短期間で自立させます」といった言葉に希望を感じることがあります。
民間の支援すべてに問題があるわけではありませんが、契約前に内容を具体的に確かめてください。
- 本人の同意がない場合、どのように関わるのか
- 自宅への訪問や施設への移動を強制しないか
- 担当者はどのような資格や経験を持つか
- 料金総額と追加費用はいくらか
- 途中解約と返金の条件
- 家族への報告方法
- 医療や公的機関と連携するか
- 契約書を持ち帰って検討できるか
消費者庁と厚生労働省は、ひきこもり支援を掲げる民間事業について、説明と異なる対応、解約できない、高額な費用、強制的な利用や不適切な対応などの相談例があるとして注意を促しています。
その日のうちに契約せず、まず公的なひきこもり相談窓口へ、検討している支援内容を伝える方法があります。
家族自身が眠れない、仕事へ行けない状態も相談してよい
本人のことを話す窓口だからと、家族自身の苦しさを後回しにする必要はありません。
夜中の物音が気になって眠れない。本人を一人にできず外出できない。配偶者と対応をめぐってけんかになる。仕事中も「今、家で何か起きていないか」と考えてしまう。
家族が疲れ切ると、本人へ強い言葉をぶつけたり、反対に何も言えなくなったりします。
相談時には、次のように伝えて構いません。
「本人のことだけでなく、私自身が眠れず、限界を感じています」
「夫婦で対応が違い、家庭内の雰囲気が悪くなっています」
「本人の将来を考えると怖くなり、毎日同じ話をしてしまいます」
ひきこもり支援には、家族の孤立や不安を減らす家族支援、家族会なども含まれています。本人の変化だけを相談の成果にせず、家族が生活を取り戻すことも支援の一部です。
今日することは、本人を窓口へ連れていくことではありません
長年状況が変わらないと、最初の一歩にも大きな成果を求めてしまいます。
けれど、今日のうちに本人を説得し、予約を取り、外出させる必要はありません。
紙やスマートフォンへ、次の四行を書いてください。
- 本人の年齢と、家中心の生活が続いている期間:
- 現在、家族が一番困っている生活場面:
- 親が支えられなくなったとき最初に止まりそうなこと:
- 本人が来なくても、家族だけで相談したいこと:
たとえば、この程度で十分です。
「本人は48歳。十五年ほど仕事をしていない。親が食事と生活費を支えている。父が入院したら食事と公共料金の支払いが止まりそう。本人への声のかけ方と、生活費の備えを家族だけで相談したい」
そのメモを持って、地域のひきこもり相談窓口へ連絡します。
窓口名が分からなければ、市区町村へ「ひきこもりについて、家族だけで相談できる場所を知りたい」と尋ねても構いません。厚生労働省の「ひきこもりVOICE STATION」でも、地域ごとの相談窓口を探せます。
今日の電話だけで、本人の生活が変わるとは限りません。
それでも、家族の中だけにあった事情を、継続して話せる相手が一人知ることになります。
ひきこもりが長く続いた年月を、一度の説得で取り戻す必要はありません。
まず、家族が孤立した状態を終わらせる。次に、健康、暮らし、お金、住まいを一つずつ分ける。そして本人が動ける時期に備え、切れない支援先を残す。
「本人が動かないから何も始められない」わけではありません。家族だけの一本の電話からでも、将来へ向けた準備は始められます。
出典・確認先メモ
- 厚生労働省「ひきこもり支援に関する取組」:ひきこもり地域支援センター、市町村の相談支援、居場所づくり、家族支援などの確認先。
- 厚生労働省「ひきこもりVOICE STATION 全国の相談窓口」:家族だけの相談、プライバシーの扱い、地域の支援機関を探す際の確認先。
- 厚生労働省「こころの相談窓口」:保健所、保健センター、精神保健福祉センターなど、心身の状態について家族が相談する際の確認先。
- 厚生労働省「生活困窮者自立支援制度」:収入、住まい、家計、就労などの生活上の問題を相談する際の確認先。
- 厚生労働省「地域包括ケアシステム」:高齢の親の介護や生活に関する地域包括支援センターの確認先。
- 消費者庁「ひきこもり支援を目的として掲げる民間事業の利用をめぐる消費者トラブル」:民間支援の料金、対応、解約条件を確認する際の注意情報。














