給料は止まったのに、保険料の封筒が続けて届く
仕事を失った直後は、離職票、健康保険の資格喪失証明書、雇用保険の書類など、見慣れない紙が次々と届きます。
市役所で手続きをすると、今度は国民健康保険料の通知と国民年金の納付書が届く。
まだ次の仕事は決まっていないのに、家賃や光熱費に加えて、毎月の支払いが増えたように感じます。
「収入がないのに、なぜこんなに高いのだろう」
「健康保険だけは必要だから、年金を後回しにしてよいだろうか」
「払えないと役所に言ったら、貯金や家族の収入まで責められそう」
「手続きを放置して、仕事が決まってから払えばよいのではないか」
失業後の保険料は、何もしなくても収入に合わせて自動的に安くなるとは限りません。
一方で、届いた金額をそのまま全額払う前に、別の健康保険を選べないか、軽減や免除の対象にならないかを確かめられます。
健康保険と年金は、別々の手続きです
会社員の間は、健康保険料と厚生年金保険料が一緒に給与から引かれていました。
そのため、退職後も一つの手続きをすれば両方が切り替わると思いがちです。
| 手続き | 主な選択肢 | 問い合わせ先 |
|---|---|---|
| 健康保険 | 国民健康保険、任意継続、家族の健康保険の扶養 | 市区町村、以前の健康保険、家族の勤務先 |
| 年金 | 国民年金第1号、配偶者の扶養に入る場合は第3号 | 市区町村、年金事務所、配偶者の勤務先 |
20歳以上60歳未満で、退職後すぐに厚生年金へ加入する仕事に就かない方は、原則として国民年金の切替手続きが必要です。
国民健康保険へ加入したからといって、国民年金への切替まで自動的に終わるわけではありません。
退職後の健康保険は、三つの金額を比べます
| 選択肢 | 特徴 | 先に聞くこと |
|---|---|---|
| 国民健康保険 | 住んでいる市区町村で加入する | 月額、失業による軽減、減免・分割納付 |
| 勤務先の健康保険を任意継続 | 退職前の健康保険を一定期間続ける | 月額、家族の扶養、申請期限 |
| 家族の健康保険の被扶養者 | 条件を満たせば、自分で健康保険料を負担しない | 収入要件、失業給付の扱い、必要書類 |
協会けんぽの任意継続では、退職前までに原則として継続2か月以上の被保険者期間があり、資格喪失日から20日以内に申請する必要があります。
退職後の健康保険には、任意継続、国民健康保険、家族の健康保険の扶養という選択肢があるため、最初から国保だけに決めず、実際の保険料を聞いて比べてください。
家族の扶養に入れるかどうかは、家族が加入する健康保険の基準で判断されます。失業給付などを収入として扱うかも含め、家族の勤務先か健康保険へ直接聞きます。
「20日以内」と「14日以内」を先に予定表へ入れます
| 退職後の時期 | すること |
|---|---|
| 退職前から退職直後 | 資格喪失証明書、離職票、退職証明書の発行時期を聞く |
| 資格喪失日から20日以内 | 任意継続を選ぶ可能性があるなら申請期限を確かめる |
| 退職日の翌日から14日以内 | 国保を選ぶ場合の加入手続きと、国民年金の切替を行う |
| 雇用保険の手続き後 | 国保の非自発的失業者軽減に該当するかを見る |
| 納付書が届く前後 | 年金免除、国保の減免・分割納付を申請する |
国民健康保険へ加入する場合は、原則として資格を得た日から14日以内に市区町村へ届け出ます。国民年金第1号への切替も、退職日の翌日から14日以内が提出期限です。
必要書類がまだ届いていない場合は、何もせず待つのではなく、市区町村へ現在ある書類で手続きを始められるかを聞いてください。
国保が高く感じるのは、失業前の所得で計算されるからです
現在の収入がゼロでも、国民健康保険料は原則として前年の所得や加入人数などをもとに計算されます。
そのため、前年まで会社員として働いていた方は、退職直後の収入に比べて負担が重く見えることがあります。
国保の具体的な計算方法、納期、自治体独自の減免条件は市区町村によって異なります。
通知が届いたら、年額だけでなく次の点を見ます。
- 何月分から国保へ加入しているか
- 世帯のうち誰が国保の対象になっているか
- 前年所得が正しく反映されているか
- 失業による軽減が反映されているか
- 一回の納付額と年間総額
金額が予想より高い場合は、「高すぎる」とだけ伝えるより、算定に使われた所得と、利用できる軽減制度を窓口で説明してもらいます。
倒産・解雇・雇い止めなどでは、国保が軽くなる場合があります
離職時に65歳未満で、ハローワークから特定受給資格者または特定理由離職者と認められた方は、国民健康保険料の軽減対象になる場合があります。
対象となる場合は、前年の給与所得を本来の金額の30%として、国保料の算定などを行います。軽減期間は、原則として離職日の翌日の属する月から、その年度の翌年度末までです。
対象かどうかは、「会社都合と言われたか」という記憶だけではなく、雇用保険受給資格者証または受給資格通知に記載された離職理由で判断されます。
軽減を受けるには市区町村への届出が必要です。ハローワークで雇用保険の手続きを終えたら、次の書類を持って国保窓口へ聞いてください。
- 雇用保険受給資格者証または受給資格通知
- 国保の資格情報が分かるもの
- 本人確認書類
- 自治体から届いた保険料通知
「非自発的失業者の軽減に該当する離職理由でしょうか。該当する場合、手続き後の保険料はいくらになりますか」と尋ねます。
自己都合退職でも、国保の納付相談を諦めない
非自発的失業者の軽減に該当しなくても、保険料を必ず一括で払わなければならないとは限りません。
国民健康保険には、災害その他の特別な事情で納付が難しい場合に、自治体の条例に基づく減免や納付猶予を受けられる場合があります。失業や収入の急減を対象にした独自制度を設けている自治体もあります。
制度や審査基準は地域によって異なるため、次のように具体的に伝えます。
「失業し、現在の月収はありません。国保料は月○円ですが、家賃と生活費を払うと全額を納期限までに用意できません。失業による減免、納付猶予、分割納付の対象になるか教えてください」
窓口へ持っていくとよいものは次のとおりです。
- 国保料の通知書・納付書
- 離職票や退職証明書
- 雇用保険の書類
- 現在の預貯金と毎月の生活費が分かるメモ
- 家賃、ローン、医療費などの支払いが分かるもの
国民年金は、払えないままにせず免除を申請します
20歳以上60歳未満で厚生年金を外れ、配偶者の扶養にも入らない方は、原則として国民年金第1号被保険者になります。
失業や収入減少により保険料の納付が難しい場合には、申請して承認されると、全額免除または一部免除を受けられる可能性があります。
納付猶予は20歳以上50歳未満が対象です。50歳以上の方も、納付猶予の年齢対象外だから何も使えないのではなく、全額・一部免除の対象にならないかを確かめられます。
| 制度 | 保険料の扱い | 注意点 |
|---|---|---|
| 全額免除 | 承認された期間の全額が免除される | 将来の年金額には一定割合が反映される |
| 一部免除 | 4分の3、半額、4分の1の免除 | 残りの保険料を払わないと未納扱いになる |
| 納付猶予 | 保険料の支払いを後へ延ばす | 原則50歳未満などの要件がある |
| 未納のまま | 免除や猶予として扱われない | 将来の年金や障害・遺族年金へ影響する可能性がある |
一部免除が承認された場合は、減額後の保険料を納めなければ、その期間が未納となります。通知を見て「免除された」と思い込み、残額を払い忘れないでください。
失業の特例免除は、前年の給与が高くても申請できます
国民年金の免除審査では、通常、本人、配偶者、世帯主の所得などが見られます。
失業した本人については、失業等による特例を利用し、前年所得が多かった場合でも、失業したことを踏まえた審査を受けられる可能性があります。
ただし、配偶者や世帯主がいる場合は、その人の所得要件も審査されます。失業したら必ず全額免除になるわけではありません。
申請には、離職票や雇用保険受給資格者証など、失業を確認できる書類が必要になる場合があります。
窓口では、次のように伝えます。
「退職して国民年金へ切り替えましたが、現在は無収入です。失業による特例免除を申請したいので、必要書類と対象期間を教えてください」
年金の納付書を放置すると、免除を受けたことにはなりません
納付書が届いても払えないため、封筒ごとしまってしまう方がいます。
しかし、「収入がないから払っていない」という状態と、申請して免除・猶予が承認された状態は異なります。
免除等は、申請時点から原則2年1か月前までさかのぼって申請できます。ただし、申請が遅れている間に病気や事故で障害が残ったり、死亡したりした場合、障害年金や遺族年金の要件に影響するおそれがあります。
過去分を申請できる可能性があっても、「後でまとめて行けばよい」と考えず、現在払えないことが分かった時点で申請します。
配偶者の扶養に入れるなら、健康保険と年金の両方を聞きます
配偶者が会社の健康保険と厚生年金へ加入している場合、条件を満たせば健康保険の被扶養者となり、20歳以上60歳未満の配偶者は国民年金第3号被保険者になれる場合があります。
第3号被保険者は、自分で国民年金保険料を納める必要がありません。手続きは、原則として配偶者の勤務先を通じて行います。
ただし、健康保険の扶養と年金の第3号は、本人が何もしなくても自動で始まるとは考えない方が安全です。
配偶者の勤務先には、次のように聞きます。
「退職して現在は無職です。健康保険の扶養と国民年金第3号の手続きをしたいのですが、失業給付を受ける予定があります。加入できる時期と必要書類を教えてください」
住民税の通知も来るため、保険料だけで家計を作らない
失業後には、国保と年金以外に、前年の所得をもとにした住民税の支払いが残ることがあります。
また、退職時期によっては、最後の給与からまとめて差し引かれる場合と、後から納付書が届く場合があります。
今後三か月の支払いを、次の表へ並べてください。
| 支払い | 月額・納付額 | 期限 | 軽減・相談先 |
|---|---|---|---|
| 国民健康保険 | 円 | 月 日 | 市区町村の国保窓口 |
| 国民年金 | 円 | 月 日 | 市区町村・年金事務所 |
| 住民税 | 円 | 月 日 | 市区町村の税担当 |
| 家賃・住宅ローン | 円 | 月 日 | 家主・管理会社・金融機関 |
| 生活費 | 円 | 次の収入まで | 家計全体の相談窓口 |
国保だけを無理に全額払い、家賃や食費が足りなくなるなら、支払い全体を同時に扱う必要があります。
現在の状況によって、最初に行く窓口を変えます
| 現在の状況 | 最初にすること |
|---|---|
| 退職したばかりで、健康保険を決めていない | 任意継続・国保・家族の扶養の月額を比較する |
| 会社都合や雇い止めで離職した | ハローワークの離職理由を見て、国保の軽減を届け出る |
| 自己都合退職で国保が払えない | 市区町村へ減免、猶予、分割納付を聞く |
| 国民年金の納付書が届いた | 失業による免除申請の対象になるか聞く |
| すでに納期限を過ぎている | 放置せず、通知書を持って国保・年金の各窓口へ連絡する |
| 家賃や食費も足りない | 自立相談支援機関へ家計全体を伝える |
家族が手伝うなら、支払う前に書類を一緒に並べます
失業した本人が落ち込んでいると、配偶者や成人した子どもは、代わりに保険料を払おうとすることがあります。
けれど、軽減や免除を使える可能性があるうちに、家族の貯金から全額を出す必要はないかもしれません。
| 家族ができること | 具体的な手伝い |
|---|---|
| 期限を並べる | 退職日、任意継続の期限、納期限を予定表へ書く |
| 書類を分ける | 健康保険、年金、雇用保険、税金の封筒を分ける |
| 窓口へ同行する | 聞くことをメモし、回答を書き留める |
| 家計を出す | 今後三か月の収入と支払いを一緒に計算する |
| 一時的に援助する | 制度利用後も不足する額と期間を決める |
「早く払わないと大変」と責めるより、次のように声をかけます。
「国保と年金は使える制度が違うみたいだから、まず封筒を分けよう。すぐ払う前に、軽減や免除を一緒に聞いてみよう」
家賃や食費まで足りないなら、保険料だけの問題にしない
失業後の収入がなく、国保や年金を払うと家賃、食費、医療費が残らない場合は、家計全体の支援が必要です。
生活困窮者自立支援制度では、仕事、住まい、家計などの困り事について、地域の窓口で相談を受け付けています。状況に応じて、家計改善支援や就労支援、一定の要件を満たす場合の住居確保給付金などにつながる可能性があります。
相談時には、次の内容を持っていきます。
- 退職日と離職理由
- 現在の預貯金
- 失業給付の申請状況
- 国保・年金・住民税の通知
- 家賃と毎月の生活費
- 借入や滞納の有無
「国保が払えない」とだけ伝えるのではなく、「失業して収入がなく、国保と年金を払うと家賃が不足する」と生活全体を話してください。
今日するのは、届いた納付書を無理に払うことではありません
今日は、手元の封筒を開き、次の五行を書いてください。
- 退職日:
- 現在選んでいる健康保険:
- 国保の月額・年額:
- 国民年金の免除申請状況:
- 次の収入が入る予定日:
たとえば、次のようになります。
「退職日は7月15日。まだ健康保険を選んでいない。国保は試算前。年金免除は未申請。失業給付の初回入金日は不明」
この場合、最初にするのは保険料の支払いではありません。
任意継続の期限を確かめ、国保と扶養の金額を聞き、健康保険を決める。その後、国民年金の切替と失業特例の免除を申請します。
すでに通知が届いているなら、納期限前に国保窓口と年金窓口へ一本ずつ電話をします。
失業後に保険料を払えないことは、怠けている証拠ではありません。
前年の収入で計算される国保と、定額で請求される国民年金が、収入の止まった時期に重なっている状態です。
放置はせず、かといって生活費をすべて削って急いで払うのでもなく、健康保険の選び直し、国保の軽減、年金免除を一つずつ使ってください。
出典・確認先メモ
- 厚生労働省「国民健康保険の加入・脱退について」
- 厚生労働省「国民健康保険料・保険税について」
- 全国健康保険協会「退職後の健康保険・任意継続」
- 厚生労働省「雇用保険Q&A・国民健康保険料の軽減措置」
- 日本年金機構「会社を退職したときの国民年金の手続き」
- 日本年金機構「国民年金保険料の免除・納付猶予制度」
- 厚生労働省「生活困窮者自立支援制度」














