予約画面まで進んでも、「この程度で行ってよいのか」と閉じてしまう
別居中の配偶者から、離婚条件を書いたメッセージが届いた。
兄弟から遺産分割の書類へ早く署名するよう言われている。近所との境界や騒音の話がこじれ、相手から強い言葉を受けた。解約したつもりの契約について、支払いを求める通知が届いた。
自分だけでは判断できないものの、弁護士へ相談するほど大きな問題なのか分かりません。
「うまく説明できず、時間を無駄にしそう」
「無料で相談したら、依頼を断れなくなるのではないか」
「自分にも悪いところがあると責められそう」
「もっと深刻な人が使う場所ではないのか」
そう考えているうちに、書類の返答期限や相手との約束の日が近づいてきます。
法律相談は、相手を訴えると決めた後だけに利用するものではありません。
今の問題に法律が関係するのか、自分で対応できるのか、してはいけないことは何か。その境目を知るためにも使えます。
「解決してもらう」前に、「今してよいこと」を聞けます
| 今困っていること | 法律相談で聞けること |
|---|---|
| 相手から書面やメッセージが届いた | 返事が必要か、どの部分に注意するか |
| 契約書や合意書への署名を求められている | 署名した場合に何が決まるのか |
| お金を請求されている | 支払う義務があるか、金額や根拠をどう見るか |
| 家族との話し合いが進まない | 法律で決まる部分と、話し合いで決める部分 |
| 相手へ自分で連絡してよいか迷う | 伝えてよい内容、記録を残す方法、控えたい行動 |
| 弁護士へ依頼するほどか分からない | 相談だけで進められるか、代理を頼む利点があるか |
無料相談を受けたからといって、裁判や交渉を始めなければならないわけではありません。
相談した弁護士へ必ず依頼する必要もなく、依頼を希望しても、その弁護士が必ず引き受けるとは限りません。相談と正式な依頼は別の段階です。
次の書類や期限があるなら、「まだ相談するほどではない」と待たない
法律上の手続きには、期限を過ぎると対応が難しくなるものがあります。
制度ごとの期限を自分で判断する必要はありません。ただし、次に当てはまる場合は、予約時に日付を伝えてください。
- 裁判所から訴状、支払督促、調停などの書類が届いた
- 役所や公的機関から不服申立てなどの期限が書かれた通知が届いた
- 相手の弁護士から回答期限を指定されている
- 契約書、示談書、離婚協議書などへの署名を急かされている
- 住まいからの退去や解雇について日付を示されている
- 相続、事故、損害賠償などで時間がたっている
- 相手から証拠やメッセージを消すよう求められている
書類に「二週間以内」「○月○日まで」と書かれている場合は、予約の電話で最初に伝えます。
「相談日は一か月後でよい」と自己判断せず、期限までに何をすべきかを先に聞いてください。
暴力、脅迫、住居への押しかけなど、目の前の安全に関わる状態では、通常の法律相談の予約を待つのではなく、警察や避難先など安全を確保する行動が先です。
どこへ相談するかは、「無料」の文字より目的で選びます
| 窓口 | 向いている場面 | 予約前に聞くこと |
|---|---|---|
| 自治体の無料法律相談 | まず法的な問題か知りたい、地域で利用できる窓口がよい | 対象者、相談分野、時間、同じ問題を何回相談できるか |
| 法テラスの無料法律相談 | 収入や預貯金に余裕がなく、民事の問題を相談したい | 利用条件、必要書類、相談場所、予約方法 |
| 弁護士会の法律相談 | 相談分野に合う窓口を探したい | 料金、相談時間、担当分野、予約の空き |
| 法律事務所の初回無料相談 | 依頼も視野に入れ、継続して担当できる弁護士と話したい | 無料になる分野と時間、相談後の料金、依頼を断れるか |
| 法テラスの情報提供 | 法律問題か分からず、どこへ電話すべきか迷う | 自分の悩みに合う制度と窓口 |
法テラスのサポートダイヤルでは、法制度や適切な相談窓口の情報を案内しています。この情報提供は、個別の法的判断を行う弁護士との法律相談とは別のサービスで、本人以外の家族も窓口案内を尋ねられます。
どこを選べばよいか分からないときは、「相続の無料相談を探しています」ではなく、現在起きていることを一文で伝えます。
「亡くなった父の預金について兄から書類への署名を求められています。財産の全体は知らされておらず、署名してよいかを聞きたいです」
この程度まで具体的に言えれば、相談分野に合う窓口へ案内されやすくなります。
法テラスの「無料」と、弁護士へ依頼する費用は分けて考えます
法テラスの民事法律扶助による無料法律相談は、収入や現金・預貯金が一定基準以下などの条件を満たす人が対象です。民事の問題について、同じ問題なら原則3回まで、1回30分の無料相談を利用できます。
ここでいう無料は、弁護士や司法書士へ相談する時間についてのものです。
相談後に相手との交渉、裁判手続き、書類作成などを依頼する場合は別に費用がかかります。経済的な条件などを満たす場合には、法テラスがその費用を立て替え、原則として利用者が後から分割で返す制度があります。相談が無料だから、依頼後もすべて無料になるわけではありません。
| 段階 | 行われること | 費用の考え方 |
|---|---|---|
| 窓口案内 | 制度や相談先を教えてもらう | 案内自体は無料でも、通話料などがかかる場合がある |
| 無料法律相談 | 弁護士・司法書士から法的な助言を受ける | 利用条件、時間、回数、対象分野がある |
| 正式依頼 | 相手との交渉や裁判対応などを任せる | 着手金、報酬、実費などを事前に聞く |
| 費用立替制度 | 法テラスが弁護士・司法書士費用を立て替える | 審査があり、立替金は原則として返済する |
無料相談へ行く前に、問題を一文にします
相談時間が限られていると聞くと、完璧な説明を準備しなければと思うかもしれません。
必要なのは、法律用語ではなく、今困っていることが伝わる一文です。
| 相談の種類 | 最初の一文の例 |
|---|---|
| 離婚 | 「別居中の配偶者から離婚条件を示され、財産分与と生活費について返事を求められています」 |
| 相続 | 「兄から遺産分割の書類へ署名を求められていますが、財産の内容を知らされていません」 |
| 借金 | 「複数社への返済が月の収入を超え、生活費を借りて補っています」 |
| 契約 | 「解約したと思っていたサービスから、半年分の料金を請求されています」 |
| 近隣問題 | 「隣家との境界をめぐり、塀を撤去するよう書面で求められています」 |
| 仕事 | 「会社から退職届を今日中に書くよう言われましたが、自分から辞める意思はありません」 |
この一文の後に、「今日は何を知りたいか」を続けます。
「今日知りたいのは、書類へ署名してよいか、返事の前に集める資料は何か、弁護士へ依頼する必要があるかの三点です」
出来事は、気持ちではなく日付の順に並べます
つらかったことを詳しく話すのは悪いことではありません。
ただ、30分の相談では、出来事の順番が分かると弁護士が状況をつかみやすくなります。
| 日付 | 起きたこと | 残っている資料 |
|---|---|---|
| 4月10日 | 契約の勧誘電話を受けた | 通話履歴 |
| 4月12日 | 申込書へ署名した | 申込書の控え |
| 4月15日 | 解約したいと電話で伝えた | 担当者名のメモ |
| 7月20日 | 未払い料金の請求書が届いた | 請求書と封筒 |
| 8月5日 | 回答期限 | 請求書に記載 |
正確な日が分からないところは、「4月上旬」「昨年の秋頃」でも構いません。
分からないことを推測で埋めず、「不明」と書きます。
持っていく書類は、量より「相手が何を根拠にしているか」で選びます
| 相談内容 | 持参したいもの |
|---|---|
| 契約・請求 | 契約書、申込画面、請求書、解約時の記録、広告 |
| 離婚・夫婦問題 | 相手からの提案書、収入資料、財産のメモ、問題となるメッセージ |
| 相続 | 遺言書、遺産分割協議書、戸籍や相続人のメモ、財産資料 |
| 借金 | 借入先一覧、残高、毎月の返済額、督促状、収入と生活費 |
| 仕事 | 雇用契約書、就業規則、給与明細、会社からの通知、やり取り |
| 近隣・不動産 | 契約書、登記事項、図面、写真、相手との書面、日時の記録 |
| 事故・損害 | 事故状況、写真、診断書、修理見積書、保険会社とのやり取り |
大量のメッセージをすべて印刷するより、問題となる部分へ印を付け、前後の流れが分かる形にします。
原本しかない重要書類は、渡したままにせず、相談時の扱いを聞いてください。スマートフォンだけに保存されている資料は、当日すぐ表示できるよう整理します。
30分の相談は、前半で説明しすぎないよう配分します
| 目安 | すること |
|---|---|
| 最初の3分 | 問題を一文で伝え、今日聞きたいことを示す |
| 次の7分 | 日付順のメモと重要書類で事実を説明する |
| 次の10分 | 法的な見方、選択肢、急ぐ手続きを聞く |
| 次の5分 | 自分で進められるか、依頼した方がよいかを聞く |
| 最後の5分 | 次の行動、期限、費用、相談先を確認する |
実際の進み方は相談内容によって変わりますが、少なくとも最後の数分を、次にすることの確認へ残します。
話が途中でも、次のように区切れます。
「残り時間で、今日から相手へ返事をするまでに、私がすることを三つ教えてください」
最初に聞く質問は、三つまでに絞ります
質問が十個あると、どれも途中で終わることがあります。
まず、次の三つを優先します。
- 今日からしてはいけないことはありますか
- いつまでに何をする必要がありますか
- 自分で進められる範囲と、依頼を考える境目はどこですか
その後、相談内容に合わせて質問を足します。
相手から書類が届いている場合
- 返事をする必要がありますか
- 署名すると、どこまで合意したことになりますか
- 書面のどの部分に問題がありますか
お金を請求されている場合
- 請求の根拠を確かめるには、何を求めればよいですか
- 一部を支払うことで不利になることはありますか
- 支払えない場合、どのような対応がありますか
家族や相手との交渉が必要な場合
- 自分で連絡を続けてもよいですか
- どのような記録を残せばよいですか
- 弁護士へ任せると、何を代わりにしてもらえますか
うまく話せないときは、メモをそのまま読んで構いません
緊張して涙が出たり、何から話せばよいか分からなくなったりすることがあります。
その場合は、最初に伝えてください。
「緊張すると話が飛んでしまうので、作ってきたメモを読ませてください」
相手への怒りや家族への罪悪感まで、きれいに整理してから行く必要はありません。
ただし、事実と自分の希望は分けます。
| 分けること | 例 |
|---|---|
| 起きた事実 | 相手から100万円を支払うよう書面が届いた |
| 自分の推測 | 相手は私を困らせるために請求していると思う |
| 自分の希望 | 支払義務を確かめ、不必要な支払いは避けたい |
「相手を懲らしめたい」だけでは、具体的な助言が難しい場合があります。
「請求を止めたい」「適正な金額を知りたい」「直接連絡を受けないようにしたい」など、生活上どうなれば困り事が減るかを伝えます。
依頼を考えるときは、勝てるかだけでなく費用と役割を聞きます
弁護士から「依頼した方がよい」と言われても、その場で契約書へ署名する必要はありません。
依頼を検討するときは、次の内容を聞きます。
| 聞くこと | 理由 |
|---|---|
| 何を依頼できるか | 交渉、書面作成、裁判対応など範囲を知るため |
| 自分がすることは何か | 資料集めや出席など、依頼後の負担を知るため |
| 着手時に必要な金額 | 依頼を始めるための費用を知るため |
| 結果に応じて発生する費用 | 報酬金などを含む総額を考えるため |
| 実費や日当 | 郵送、交通、裁判所費用などを把握するため |
| 途中でやめた場合の扱い | 返金や追加費用の条件を知るため |
| 連絡方法と頻度 | 依頼後に誰へ、どう連絡するか知るため |
費用は口頭だけでなく、見積書や委任契約書で見ます。
「今日は持ち帰って考えます。依頼する場合はこちらから連絡します」と伝えて構いません。
法テラスの立替制度を希望する場合も審査があり、収入や資産のほか、事件の内容などの要件が見られます。開始が決まる前に、立替額や返済方法を含めて説明を受けてください。
相談だけで終えてよい場合と、依頼を考えたい場合を分けます
| 相談だけで進められる可能性がある状態 | 依頼を考えたい状態 |
|---|---|
| 必要な手続きと書き方が分かれば自分で動ける | 相手との連絡だけで心身が強く消耗する |
| 争いがなく、書類の意味だけ知りたい | 相手が弁護士を付けている |
| 窓口や制度が分かれば解決へ進められる | 裁判所の手続きが始まっている |
| 請求額が小さく、費用との釣り合いを考えたい | 住まい、仕事、子ども、まとまった財産が関係する |
| 相手と冷静に話し合える | 暴言、脅迫、支配があり直接交渉しにくい |
| 期限まで十分な時間がある | 期限が迫り、自分だけでは対応できない |
弁護士へ依頼しないことが、必ずしも間違いではありません。
反対に、書類を自分で書けるからといって、相手との交渉まで一人で抱える必要もありません。
相談の最後に、「この問題を自分で進める場合に一番大きな危険は何ですか」と聞くと、依頼するかを考える材料になります。
一度の相談で納得できなくても、自分を責めない
30分では事情をすべて話し切れなかったり、回答が難しく感じられたりすることがあります。
法テラスの無料法律相談は、利用条件を満たす場合、同じ問題について原則3回まで利用できます。ただし、3回分を一度にまとめて長時間相談することはできません。
次の相談では、同じ説明を最初から繰り返すのではなく、前回分かったことを一枚にまとめます。
- 前回の助言
- その後に起きたこと
- 新しく届いた書類
- まだ分からないこと
- 今回は何を決めたいか
弁護士によって説明の仕方や問題の見方が異なることもあります。
重大な決断をする前に別の意見を聞きたい場合は、同じ問題について利用できる相談回数や、別の有料相談が必要かを窓口へ確かめてください。
親や配偶者の代わりに調べている場合は、本人の希望を持っていきます
高齢の親へ請求書が届いたものの、本人が相談へ行くことを嫌がる。配偶者が体調を崩し、書類を読めない。
家族だけが先に情報を集めたい場合もあります。
まず窓口案内であれば、家族が「どこに相談できるか」を尋ねられる場合があります。
法テラスの無料法律相談を本人に代わって受ける場合は、原則として本人の意思確認が必要です。状況によっては委任状などで代理相談が認められる場合がありますが、代理人による電話相談には制限があるため、予約時に事情を伝えてください。
家族が用意するメモには、本人の希望を書きます。
- 本人は何に困っているか
- 本人はどうしたいか
- 本人がしてほしくないこと
- 本人が理解できている範囲
- 家族が代わりに尋ねたいこと
家族が「訴えたい」と思っていても、本人は「相手と距離を置ければよい」と考えているかもしれません。
安全に関わる事情がない限り、家族の希望だけで進めないようにします。
相談が終わったら、法律用語より次の行動を書き残します
相談中は分かったつもりでも、帰宅すると何から始めればよいか分からなくなることがあります。
終了前に、次の五つを自分の言葉で確かめます。
- 最初にすること:
- 期限:
- 集める書類:
- 相手へ伝えてよいこと:
- もう一度相談する目安:
たとえば、次のようになります。
「8月5日までに請求へ回答する必要がある。今日は署名しない。契約書と解約時の通話履歴を集める。相手には『専門家へ確認中なので回答を待ってほしい』とだけ伝える。新しい書面が届いたら再相談する」
法律相談へ行ったことだけで、問題が自動的に解決するわけではありません。
それでも、次にしてよいことと、してはいけないことが分かれば、相手の連絡へ慌てて反応する状態から抜け出せます。
今日するのは、弁護士へ依頼する決心ではありません
今日は、届いている封筒やメッセージを一つだけ開き、次の五行を書いてください。
- 起きていること:
- 相手は誰か:
- 届いている書類:
- 書かれている期限:
- 相談で一番聞きたいこと:
たとえば、次のようになります。
「兄から父の遺産分割協議書へ署名を求められている。預金額は知らない。書類は手元にある。今週末までに返送するよう言われた。財産の内容を知らないまま署名してよいか聞きたい」
ここまで書けたら、自治体、法テラス、弁護士会、法律事務所のいずれかへ予約条件を聞きます。
話がまとまっていなくても構いません。
無料法律相談を使う基準は、「裁判になるほど深刻か」ではなく、「自分だけで返事や署名を決めてよいか分からないか」です。
今すぐ依頼する必要はありません。まず、何が法律で決まり、何を自分で選べるのかを知る。そのための30分として使ってください。
出典・確認先メモ
- 法テラス「無料法律相談・弁護士等費用の立替」
- 法テラス「無料法律相談に関するよくあるご質問」
- 法テラス「相談窓口・法制度」
- 法テラス「民事法律扶助業務」














