L
送信できないメッセージを、何度も書き直してしまう
家賃の引き落とし日が近いのに、口座の残高が足りない。
電気代や病院の支払いも残っています。給料や年金が入る日まで待っても、すべては払えそうにありません。
家族の顔が浮かび、スマートフォンへ「少し相談がある」と入力する。それでも、送信する直前に消してしまいます。
「お金にだらしないと思われたくない」
「以前助けてもらったのに、また頼むのは申し訳ない」
「断られたら、家族から見放されたように感じそう」
「一度頼ったら、これからも自分で生活できなくなるのではないか」
援助を頼むつらさには、お金が足りない焦りだけでなく、家族との関係を失う怖さがあります。
けれど、支払日を過ぎるまで黙っていると、必要額が増えたり、家族が短時間で判断しなければならなくなったりします。
まず「頼むべきか」を考える前に、何が、いつまでに、いくら足りないのかを出してみます。
最初に書くのは、借りたい金額ではなく支払いの中身です
「生活費が足りない」とだけ考えていると、必要以上の金額を頼んだり、反対に少なすぎて翌週また頼んだりすることがあります。
| 支払い | 必要額 | 期限 | 払えない場合に起きること |
|---|---|---|---|
| 家賃 | 円 | 月 日 | 管理会社などから連絡を受ける可能性 |
| 電気・ガス・水道 | 円 | 月 日 | 督促や供給停止の可能性 |
| 医療費・薬代 | 円 | 月 日 | 受診や服薬に影響する可能性 |
| 税・社会保険料 | 円 | 月 日 | 督促や延滞金などの可能性 |
| カード・ローン | 円 | 月 日 | 遅延扱いになる可能性 |
| 食費・交通費 | 円 | 次の入金日まで | 日常生活や通勤に支障が出る |
支払いを並べたら、現在の残高と、期限までに入る収入を引きます。
たとえば、支払いが合計8万円、口座残高が2万円、給料日前に入るお金が1万円なら、不足額は5万円です。
「できれば10万円」ではなく、「今月25日までに5万円不足している」と分かれば、家族も判断しやすくなります。
家族に頼めることは、現金を渡してもらうことだけではありません
| 頼み方 | 内容 | 向いている状況 |
|---|---|---|
| 返済不要の援助 | 生活費として一定額を受け取る | 返済の見込みが立たず、相手が援助に同意している |
| 一時的な貸付 | 返済時期を決めて借りる | 給料や給付など、返済に充てる収入が見込める |
| 支払先へ直接払ってもらう | 家賃や医療費などを家族が直接支払う | 使途を明確にし、必要な支払いだけ助けてほしい |
| 現物で助けてもらう | 食料、日用品、交通券などを受け取る | 現金を借りる額を小さくしたい |
| 手続きを手伝ってもらう | 役所、勤務先、債権者などへの連絡に同行してもらう | 制度や支払い猶予を自分一人で調べにくい |
「5万円を貸してほしい」と考えていても、食料を一週間分用意してもらい、役所への連絡を手伝ってもらえれば、借りる額を3万円まで減らせることがあります。
家族にしか頼めないことと、家族でなくても解決できることを分けてください。
一度だけの不足か、来月も続く赤字かで話し方を変えます
急な入院や給料日のずれで、今月だけ足りない場合と、収入より支出が多い状態が毎月続いている場合では、必要な対策が違います。
| 不足の状態 | 家族へ伝えること | 援助と一緒に進めたいこと |
|---|---|---|
| 一度限りの支出 | 理由、必要額、返済日 | 給料や給付の入金日を確かめる |
| 数か月だけ収入が減る | 必要な期間、月ごとの不足額 | 失業給付、傷病手当金、勤務先の制度などを調べる |
| 毎月の生活費が不足する | 収入と支出、家族援助なしでは不足する額 | 住居費や固定費、公的支援、働き方を見直す |
| 借金返済で生活費がない | 借入先、残高、毎月の返済額 | 新たに借りる前に債務相談を利用する |
| すでに滞納がある | 支払先、金額、督促の状況 | 支払先と公的窓口へ早めに連絡する |
毎月5万円不足している状態で、今月分だけ5万円借りても、来月には同じ問題が戻ります。
その場合は、「今月を助けてほしい」という話と、「来月以降の家計を変える」という話を一緒にしなければなりません。
頼む相手は、断れない人ではなく、話を隠さずできる人にします
家族の中で、一番優しい人や断りにくい人へ頼みたくなることがあります。
けれど、相手が住宅ローンや教育費を抱えていれば、助けたい気持ちだけで無理をするかもしれません。
頼む前に、次の点を考えてください。
- お金の話を落ち着いてできる関係か
- 相手にも生活費や借入があるか
- 断られた場合に関係を責めずにいられるか
- ほかの家族へ伝える必要があるか
- 過去の貸し借りが未解決になっていないか
一人へ全額を頼むのではなく、現金はきょうだいへ、役所への同行は子どもへというように、負担を分ける方法もあります。
ただし、複数の家族へ別々の説明をして借りると、後から金額や返済条件が食い違うおそれがあります。誰からいくら受けたかは、自分で一覧に残してください。
最初の連絡では、金額より「何の話か」を先に伝えます
突然「お金を貸して」とメッセージを送ると、相手も身構えます。
まず、落ち着いて話せる時間を取ってもらいます。
「生活費のことで相談したいことがあります。今月の支払いが一部足りず、家族に頼む前に金額と返済の見込みをまとめました。今日か明日、15分ほど話せる時間はありますか」
話すときは、次の順番にします。
- 不足が起きた理由
- 必要な金額と期限
- 自分で用意できる金額
- 援助か貸付か
- 返済する場合の時期と方法
- 相手が断ってもよいこと
たとえば、次のように伝えられます。
「今月、仕事を休んだため収入が減り、25日までに家賃が4万円足りません。手元の貯金2万円は生活費に使います。来月15日に給料が入るので、4万円を借り、2万円ずつ2回で返したいです。難しければ、無理に用意しないでください。その場合は管理会社と市役所にも相談します」
自分で動く予定まで伝えると、家族へ問題のすべてを渡す話になりにくくなります。
通帳をすべて見せなくても、判断に必要な数字は出します
家族にお金を頼むなら、何も説明せず信じてもらうことは難しいでしょう。
一方で、すべての買い物や口座を細かく見せ、家計を家族へ管理してもらう必要もありません。
| 伝える数字 | 内容 |
|---|---|
| 現在の収入 | 給料、年金、給付などの手取り額 |
| 最低限の生活費 | 住居、食費、光熱費、医療、交通など |
| 今回の不足額 | 期限までに足りない金額 |
| 借金と滞納 | 残高、返済額、支払いが遅れているもの |
| 自分で行った対応 | 支払先への連絡、固定費削減、制度の確認 |
| 次に見直す日 | 次の給料日、給付決定日、家計を再計算する日 |
援助を頼む理由と無関係な個人情報まで渡す必要はありません。
ただし、別の借入や滞納を隠したまま返済可能だと説明すると、後で信頼を損ねます。返済に影響する情報は隠さず伝えてください。
「借りる」のか「もらう」のかを曖昧にしない
家族間では、「返せるときでいいよ」「余裕ができたら少しずつ」という言葉でお金が渡されることがあります。
受け取る側は借りたつもりでも、渡した側は援助したつもりかもしれません。
| 決めること | 記録する内容 |
|---|---|
| お金の性質 | 返済不要の援助か、返済する貸付か |
| 金額 | 受け取った合計額 |
| 受取日 | 振込日・現金を受け取った日 |
| 返済方法 | 毎月の金額、振込先、返済開始日 |
| 返済が難しくなった場合 | いつまでに連絡し、条件を話し直すか |
親子など親族間の貸し借りでも、返済能力や実際の返済状況から本当の貸付と認められることが必要です。「ある時払い」「出世払い」のように返済条件が実質的にない場合は、借入金そのものが贈与として扱われる可能性があります。
高額な貸し借りでは、借用書や振込記録を残し、決めたとおり返済します。
無理な返済日を設定し、別の会社から借りて家族へ返す形にはしないでください。返済が難しいと分かった時点で、家族と条件を話し直します。
生活費としてもらう場合も、税金の扱いを一律に決めない
配偶者、親子、兄弟姉妹などの扶養義務者から、通常必要と認められる生活費を必要な都度受け取り、その生活費へ直接使う場合は、贈与税がかからない扱いがあります。
ただし、生活費の名目で数年分をまとめて受け取り、使わずに預金した場合などは、同じ扱いにならない可能性があります。必要と認められる範囲も、受け取る人の生活状況や、渡す人の資力などを踏まえて判断されます。
家族から高額なお金を受け取る場合や、住宅費、借金返済、事業資金などに使う場合は、「家族だから税金は関係ない」と決めず、税務署などで個別に確かめてください。
断られても、「家族として見捨てられた」と結びつけない
家族が援助を断る理由は、あなたを嫌っているからとは限りません。
相手にも住宅費、教育費、病気、自分の老後などがあります。過去の貸し借りが返されておらず、現金を渡すことに不安を持っている場合もあります。
断られたときは、説得を続ける前に、別の助けを頼めないか聞きます。
- 役所や社会福祉協議会へ一緒に連絡してもらう
- 家計表を見てもらう
- 食料や日用品を一時的に助けてもらう
- 支払先へ連絡するときに同席してもらう
- 働き口や住まいの情報を探してもらう
「お金を出せないなら何もしてくれない」と責めるのではなく、相手ができる範囲を聞いてください。
頼まれた家族も、その場で返事を出さなくて構いません
家族から「今日中に必要」と言われると、助けなければ取り返しがつかないように感じます。
それでも、自分の生活費を削ったり、カードローンで借りて渡したりする前に、次を聞いてください。
- 何の支払いに必要なのか
- 正確な必要額はいくらか
- いつまでに必要か
- 一度限りか、来月も続くか
- ほかの借入や滞納はあるか
- 本人が支払先や公的窓口へ連絡したか
- 貸付なら何を原資に返すのか
現金を渡すことに不安があるなら、家賃や医療費を支払先へ直接払う方法もあります。
断る場合は、人格を責める必要はありません。
「10万円を渡すことはできない。ただ、今日一緒に市役所へ連絡することと、今週分の食料を用意することはできる」
助ける側にも、できることとできないことを決める権利があります。
家族へ頼む前でも後でも、公的な窓口を使えます
家族がいるから、公的な窓口へ行ってはいけないわけではありません。
生活困窮者自立支援制度では、仕事、住まい、家計などの困り事を受け付け、状況に応じた支援計画を作ります。家計改善支援では、収支の見える化、滞納や債務を含む課題の把握、関係機関へのつなぎなどを行います。一定の要件を満たす場合には、住居確保給付金などの住まいの支援につながる可能性もあります。
低所得世帯、障害者世帯、高齢者世帯などを対象とする生活福祉資金貸付制度もあります。資金の目的ごとに対象や条件があり、申請すれば必ず利用できる制度ではなく、返済可能性を含む審査があります。実施窓口は地域の社会福祉協議会です。
| 困っていること | 連絡を考える先 |
|---|---|
| 収入減少で生活全体が回らない | 自治体の自立相談支援機関 |
| 家賃を払えず住まいを失いそう | 自立相談支援機関、家主・管理会社 |
| 税・保険料を払えない | 市区町村の担当窓口 |
| 医療費の支払いが難しい | 医療機関の会計・医療相談窓口 |
| 複数の借入返済で生活費がない | 多重債務相談窓口、法的な相談窓口 |
| 収入・資産だけでは最低限の生活を保てない | 居住地を所管する福祉事務所 |
生活保護の相談・申請窓口は、現在住んでいる地域を所管する福祉事務所です。必要書類をすぐ用意できない特別な事情がある場合も申請できると案内されています。
借金を別の借金で埋めているなら、家族へのお願いだけで終わらせない
カードの返済をするために別のカードから借りる。家族から借りて消費者金融を返し、翌月また借りる。
この状態では、家族が一度払っても、原因となる返済負担が残ります。
金融庁は、全国の財務局にある多重債務相談窓口のほか、法テラス、弁護士会、司法書士会などの相談先を案内しています。返済のための新たな借入を増やす前に、借入先、残高、金利、毎月の返済額をまとめて相談してください。
家族へは、単に返済資金を頼むのではなく、相談窓口へ行くことも伝えます。
「今月分だけ借りても同じことが続くので、借入一覧を作り、多重債務の窓口へ相談する。その間、食費の一部だけ助けてもらえないだろうか」
支払日が迫っているときは、家族の返事を待つだけにしない
家族へ頼んだあとも、支払先への連絡を止めないでください。
| 支払い | 伝えること |
|---|---|
| 家賃 | 支払える日と金額を家主・管理会社へ伝える |
| 公共料金 | 期限や支払い方法について事業者へ聞く |
| 税・保険料 | 収入減少と現在の支払い能力を自治体へ伝える |
| 医療費 | 分割や利用できる制度がないか医療機関へ聞く |
| ローン・カード | 返済日より前に窓口へ連絡し、同時に債務相談を検討する |
連絡したから支払いが必ず延期されるとは限りません。
それでも、何も言わず期限を過ぎるより、現在払える金額と見込みを伝えることで、次の手続きが分かる場合があります。
今日するのは、家族へ長い謝罪文を送ることではありません
お金を頼むことがつらいと、「申し訳ない」「自分が情けない」という言葉ばかりが増えてしまいます。
今日は、次の五行だけを書いてください。
- 不足している支払い:
- 必要な金額と期限:
- 自分で用意できる金額:
- 援助か貸付か:
- 来月以降の対策:
たとえば、次のようになります。
「家賃が3万円不足。期限は今月25日。手元から2万円は出せる。3万円を借り、来月と再来月に1万5,000円ずつ返したい。明日、市役所の家計相談にも連絡する」
書けたら、家族へ次の一文を送ります。
「生活費のことで相談があります。必要額と今後の対応をまとめたので、今日か明日、15分ほど話せますか。難しい場合は断っても大丈夫です」
家族にお金を頼むことは、平気にならなくて構いません。
つらさがあるからこそ、曖昧なお願いにせず、金額と期限を言葉にする。相手が断れる余地を残し、自分も家族以外の窓口へ動く。
そうすれば、援助を頼む時間は、ただ頭を下げる時間ではなく、今の生活を立て直すための話し合いになります。
出典・確認先メモ
- 厚生労働省「生活困窮者自立支援制度」
- 厚生労働省「生活福祉資金貸付制度」
- 厚生労働省「生活保護制度・生活保護を申請したい方へ」
- 国税庁「贈与税がかからない場合」
- 国税庁「親から金銭を借りた場合」
- 金融庁「多重債務についての相談窓口」


















