買い物かごから、卵や果物をそっと戻す日が増えていきます
いつもと同じスーパーで、いつもと同じ物を買っているつもりなのに、会計は以前より高くなる。
肉を一つ減らし、牛乳を安い商品へ変え、お菓子も買わなかった。それでも予算を超えています。
レジへ並ぶ前に、かごの中をもう一度見ます。
「今週は魚をやめよう」
「自分の昼食なら、パン一つでいい」
「子どもには食べさせたいから、私は少なくしよう」
家に帰ると、冷蔵庫には調味料と少しの野菜しかありません。給料日や年金支給日までは、まだ一週間あります。
それでも、「買い方が悪いのでは」「もっと節約できる人もいる」と思い、家族へ言えない方もいます。
物価の変化は、総務省が毎月、消費者物価指数として調査しています。食費の負担が増えたことを、すべて自分の家計管理の失敗だと考える必要はありません。
ただし、食費の不足をそのままにすると、カード払いや後払いで翌月へ回し、さらに家計が苦しくなることがあります。
「何を我慢するか」ではなく、今起きている不足が一時的なのか、毎月続くものなのかを分けるところから始めます。
食費不足は、「今週」「毎月」「家計全体」の三段階に分けます
| 今の状態 | 起きていること | 先にすること |
|---|---|---|
| 次の収入日まで食料が足りない | 手元の現金と食べられる物が少ない | 残り日数の食料を確保し、地域の緊急支援も聞く |
| 月末になると毎回足りない | 買い物の配分や支払日が合っていない | 食費を7日単位に分け、隠れた食費を見つける |
| 食費を減らしても生活費が足りない | 収入に対して家賃や固定費、返済が大きい | 食費だけで解決せず、家計全体の相談へ進む |
この三つを混ぜると、「献立を工夫すれば何とかなる」と考え続け、収入不足や高い固定費を見落とします。
今夜の食事がない人と、月の食費を5,000円減らしたい人では、必要な対応が違います。
最初に、次の収入日まで使える食費を出します
一か月分の理想予算を作る前に、今日から次の収入日までを計算します。
| 書く項目 | 記入例 |
|---|---|
| 手元の現金・預金 | 32,000円 |
| 次の収入日 | 10日後 |
| それまでに必要な食費以外の支出 | 薬代3,000円、交通費2,000円、電気代8,000円 |
| 食費へ使える残額 | 32,000円-13,000円=19,000円 |
| 一日当たりの世帯予算 | 19,000円÷10日=1,900円 |
一日1,900円という数字を、家族の人数で機械的に割る必要はありません。
家に残っている米、麺、冷凍食品、調味料などを先に数え、買い足す物へ使える金額として考えます。
計算した時点で、必要な食料を買うと家賃や薬代が払えないなら、買い物の工夫だけで解決する段階ではありません。
冷蔵庫にある物を、「食材名」ではなく食べられる回数へ変えます
冷蔵庫に卵が4個、豆腐が1丁、冷凍ご飯が3食分あると分かっても、あと何日暮らせるかは見えにくいものです。
次のように、食事へ置き換えます。
| 家にある物 | 使える食事の目安 | 不足する物 |
|---|---|---|
| 冷凍ご飯3食分 | 主食3回 | 残りの日数分の主食 |
| 卵4個・豆腐1丁 | 主菜3〜4回 | ほかの日のたんぱく源 |
| キャベツ半玉・冷凍野菜 | 副菜4〜5回 | 後半に使う野菜 |
| みそ・しょうゆ・油 | 追加購入不要 | なし |
在庫を数える目的は、「これだけしかない」と落ち込むことではありません。
すでにある物を使える食事と、買わなければならない食事を分けることです。
削る順番は、食事の回数ではなく「食費に混ざった物」からです
スーパーやドラッグストアの支払いをすべて食費としていると、実際に食べるためのお金がいくらか分かりません。
| 明細の中身 | 分ける項目 |
|---|---|
| 米、肉、野菜、卵、調味料 | 家庭で食べる食材 |
| 弁当、惣菜、外食、配達 | 調理済みの食事 |
| 菓子、酒、ジュース、コーヒー | 嗜好品・飲料 |
| 洗剤、紙類、化粧品 | 日用品 |
| 子どもの学校帰りの買い物 | 小遣い・個人支出 |
| 来客用・贈答用の食品 | 交際費 |
日用品や交際費まで「食費が高い」と考えると、本来必要な食事を削ってしまいます。
まず直近3回分のレシートへ線を引き、家庭で食べる食材以外の金額を別にしてください。
月の予算ではなく、7日分ずつ袋分けします
月初にまとめ買いをすると、冷蔵庫が豊富なため、最初の一週間で多く使いやすくなります。
残り20日で食費に使えるお金が24,000円なら、次のように分けられます。
| 期間 | 予算例 |
|---|---|
| 最初の7日 | 8,000円 |
| 次の7日 | 8,000円 |
| 残り6日 | 7,000円 |
| 予備 | 1,000円 |
現金の封筒でも、家計簿アプリのメモでも構いません。
今週分を使い切ったら翌週分へ手を付けるのではなく、冷蔵庫の在庫を使う日を一日作ります。
食費が週ごとに大きく違う場合は、買い物日、家族の予定、外食、まとめ買いの量を振り返ります。
安い商品より、「一食として使い切れる商品」を選びます
大容量の方が100グラム当たりは安くても、食べ切れず捨てれば節約にはなりません。
| 比べるもの | 見るポイント |
|---|---|
| 大容量と少量 | 期限内に使い切れるか、冷凍できるか |
| 生鮮品と冷凍品 | 価格だけでなく、廃棄せず使える量 |
| 安い遠方の店と近所の店 | 交通費、移動時間、余計な買い足し |
| 材料から作る料理と惣菜 | 材料費、光熱費、調理時間、食べ残し |
| 特売品と通常品 | 予定にない商品を買っていないか |
一人暮らしや少人数世帯では、少量パックや冷凍食品の方が、結果として捨てる量を減らせる場合があります。
反対に、家族が多く確実に使い切れる物は、大容量を小分けしてもよいでしょう。
主食・主菜・副菜を、特定の商品へ固定しないようにします
「節約には必ずこの食品がよい」と決めると、その食品が値上がりしたときに家計が苦しくなります。
| 食事の役割 | 選び方 |
|---|---|
| 主食 | 米、パン、麺などから、家にある物と地域で買いやすい物を使う |
| 主菜 | 肉・魚だけでなく、卵、豆腐、納豆、豆類なども比べる |
| 副菜 | 季節の野菜、冷凍野菜、乾物など、使い切れる形を選ぶ |
| 汁物・補助 | 残った野菜や少量の食材をまとめて使う |
価格は地域や時期で変わります。
「鶏肉が一番安い」「冷凍野菜なら必ず得」と思い込まず、その週に買える価格と、家族が実際に食べる量で決めてください。
献立を一週間分決めるより、「使う順番」を決めます
毎日の献立を細かく決めると、予定が変わった日に食材が余ることがあります。
買った物を、傷みやすい順に並べてください。
- 前半:葉物、生魚、消費期限の短い惣菜
- 中盤:豆腐、肉、開封した食品
- 後半:根菜、卵、冷凍品、乾麺、缶詰
- 最終日:残り物を使う丼、麺、汁物など
消費者庁は、家庭の食品ロスを減らす基本として、必要な分だけ買い、食べ切れる量を作り、おいしく食べ切ることを挙げています。
買い物前に冷蔵庫を見て、足りない物だけをメモします。
特売の予定に献立を合わせるより、家にある物へ買い足す方が、重複と廃棄を減らしやすくなります。
惣菜や冷凍食品を、すべて無駄遣いにはしません
疲れて料理ができず、買った野菜を腐らせるなら、食べ切れる惣菜の方が家計に合うことがあります。
仕事、介護、育児、体調不良で調理する時間が限られている方は、材料費だけで比べないでください。
| 負担を減らす方法 | 使い方の例 |
|---|---|
| 惣菜を一品だけ利用 | 主菜だけ購入し、ご飯や汁物は家で用意する |
| 冷凍野菜を使う | 必要量だけ出し、生野菜の廃棄を減らす |
| 下処理済み食材を使う | 切る時間を減らし、外食や配達への移行を防ぐ |
| 同じ材料を二回使う | 一日目は焼く、二日目は丼や汁物にする |
毎日すべて手作りすることが、必ずしも一番安いとは限りません。
無理なく食べ切れる形を選びます。
飲み物と「少しだけの買い物」は、一週間合計で見ます
一回200円や300円の支出は小さく見えます。
けれども、毎日の飲み物、仕事帰りの軽食、コンビニへの立寄りが重なると、一週間分の食材費に近づくことがあります。
| 買う場面 | 一回の金額例 | 週5回の金額 |
|---|---|---|
| ペットボトル飲料 | 160円 | 800円 |
| 菓子・軽食 | 300円 | 1,500円 |
| 昼食の追加購入 | 500円 | 2,500円 |
すべて禁止する必要はありません。
「週に2回まで」「飲み物は持参し、金曜日だけ買う」など、楽しみを残したまま回数を決めます。
食費を削っても足りないなら、固定費を一つ動かします
食材を10円ずつ安く買う努力を続けても、毎月の赤字が2万円なら追いつきません。
次の中から、一つだけ見直せるものを選びます。
- 使っていない定額サービス
- スマートフォンや通信の契約
- ほとんど利用しない会員費
- 保障内容が重複した保険
- 車の維持費と利用頻度
- 家族それぞれが契約しているサービス
必要な保険や通信まで、内容を見ずに解約しないでください。
毎月1,000円の固定費を減らせれば、食事の量を毎日少しずつ削らずに済みます。
家族の食費は、一人だけが我慢して合わせないようにします
家計を管理している人だけが昼食を抜き、家族には以前と同じ食事を出していることがあります。
その状態を続けると、体調だけでなく、「どうして自分だけ」という気持ちも残ります。
家族へは、使いすぎを責める形ではなく、残り日数と金額を見せます。
「次の給料日まで10日で、食費に使えるのは1万5,000円です。食事を減らすのではなく、飲み物、外で買う昼食、お菓子をどこまで家から持って行けるか、一緒に考えてほしい」
| 立場 | 話したいこと |
|---|---|
| 配偶者 | 個人で買っている飲食物と家計から出す範囲 |
| 成人した子ども | 家に入れる生活費、外食、自分の嗜好品 |
| 成長期の子ども | 食事量を一方的に減らさず、買い食いや飲料の回数を調整する |
| 高齢の親 | 食べやすさ、治療食、買い物や調理を手伝う範囲 |
家計の数字を共有することは、子どもへ生活の責任を背負わせることではありません。
食事を守るために、家族全体の買い方を少し変える話です。
一人暮らしは、大量購入より「腐らせない量」を優先します
一人暮らしでは、家族向けの節約方法が合わないことがあります。
- 野菜を一種類ずつ大量に買わない
- 肉や魚は購入日に一食分ずつ分ける
- 一度作った料理を、冷蔵・冷凍できる量にする
- 同じ料理を何日も食べる前提にしない
- 買い物へ行けない日に備え、乾麺や缶詰等を少量残す
大容量を安く買っても、食べ切れず捨てる、飽きて外食するという流れになれば、かえって負担が増えます。
クレジットカードで食料品をつなぎ始めたら、翌月分まで見ます
今月の現金が足りなくても、カードなら食料を買えます。
しかし、来月の収入が増えなければ、通常の生活費に今月分の請求が加わります。
| カード利用の状態 | 見直すこと |
|---|---|
| 給料日が数日ずれただけ | 支払日までに請求額を用意できるか |
| 毎月、食料品をカードで補う | 家計が継続的に赤字になっている |
| リボ払いへ回している | 食費に手数料が加わり、残高が増えていないか |
| 複数のカードを使う | 翌月以降の請求総額を一覧にする |
毎月の食費を後払いへ回しているなら、「食費を使いすぎた」だけではなく、収入と固定支出の差が問題になっています。
新しい借入れで補う前に、家計全体を見てもらう段階です。
今週食べる物が足りないときは、家計簿が完成するまで待ちません
今日や明日の食事がない、子どもへ出す物がないという場合は、長期的な家計改善より、当面の食料確保を先にします。
お住まいの自治体にある生活困窮者自立相談支援窓口へ、次の内容を伝えてください。
- 世帯人数
- 現在ある食料と現金
- 次の収入日
- 食事が足りない日数
- 家賃、税、公共料金等の滞納
- 子ども、高齢者、病気の家族がいるか
「次の収入日まで○日ありますが、使える現金は○円で、家にある食料もあと○日分です。利用できる緊急の食料支援、フードバンク等との連携、家計相談があるか教えてください」
生活困窮者自立支援制度では、地域の相談窓口が生活状況を聞き、家計の見える化、就労・住まいの支援、関係機関への接続などを行います。相談は無料で、本人だけでなく家族や周囲の人からの相談も受け付けています。
地域によっては、フードバンクやフードパントリー、社会福祉協議会、民間団体などへつないでもらえる場合があります。フードバンクは、企業や農家等から提供された未利用食品を、福祉施設や生活に困っている人へ届ける活動です。
支援の有無、利用条件、受取方法は地域や団体によって異なるため、いきなり団体へ出向く前に、自治体の相談窓口へ利用できる場所を聞くと動きやすくなります。
食費だけでなく家賃や光熱費も払えないなら、生活全体を伝えます
食費が足りない背景に、離職、病気、介護、家賃滞納、借金などが重なっている場合があります。
生活困窮者自立支援制度の家計改善支援では、家計表を使った収支の見える化、支援計画の作成、税や公共料金等の滞納解消に向けた支援、関係機関への接続などが行われます。
| 起きていること | 窓口へ伝える内容 |
|---|---|
| 離職・減収 | 退職日、現在の収入、求職状況 |
| 家賃の滞納 | 滞納月数、退去に関する通知の有無 |
| 税・保険料の滞納 | 届いている通知と納期限 |
| カード・ローン返済 | 会社名、残高、毎月の返済額 |
| 病気・介護 | 働けない理由と継続して必要な費用 |
「食べ物だけをもらえれば何とかなる」と話を小さくせず、家計全体を伝えてください。
食料支援を受けても、家賃や返済で翌月も食費が消える状態なら、同じ不足が繰り返されるためです。
収入や資産を使っても生活を維持できないときは、福祉事務所にも相談できます
収入がほとんどなく、食費だけでなく住まいや医療も維持できない場合は、生活保護の相談をためらわなくて構いません。
生活保護は、生活に困っている人に必要な保護を行い、最低限度の生活を保障しながら自立を支える制度です。相談・申請窓口は、現在住んでいる地域を担当する福祉事務所です。
利用できるかは世帯の収入、資産、家族状況などを基に判断されます。
自分は対象外だと決めて食事を抜き続ける前に、現在の収入、預貯金、家賃、家族構成を伝えてください。
家族が親の食事不足に気づいたら、節約方法を教える前に冷蔵庫を見ます
離れて暮らす親から「食べているから大丈夫」と言われても、冷蔵庫がほとんど空だったり、同じ保存食だけが残っていたりすることがあります。
| 気づいたこと | 一緒に見ること |
|---|---|
| 食事の回数が減った | お金が足りないのか、調理が難しいのか |
| 安いパンや麺ばかり食べている | 買い物へ行けるか、食材を使い切れるか |
| 食品を大量に余らせる | 量の判断、記憶、保管方法に困っていないか |
| 公共料金や税の通知がたまっている | 食費だけでなく家計全体が不足していないか |
「もっと安い店へ行けばいい」「自炊すれば安い」と決めつけず、体力、交通手段、調理の負担も聞いてください。
本人が希望する場合は、自治体の生活相談窓口への電話へ同席したり、冷蔵庫の在庫表を一緒に作ったりできます。
状況ごとに、次の一手を変えます
| 現在の状況 | 次にすること |
|---|---|
| 月初に使いすぎて月末に足りない | 食費を7日単位に分け、週ごとの上限を決める |
| 食品を捨てることが多い | 買い物前の在庫確認と、使う順番を決める |
| 惣菜・外食が増えている | 疲労や時間不足の原因を見て、一部だけ調理する方法へ変える |
| 食費を削っても赤字 | 固定費、返済、税・保険を含む家計全体を見る |
| カードで食費をつないでいる | 翌月請求を出し、新規利用を止める |
| 今週の食料がない | 自治体の自立相談支援窓口へ緊急の食料支援を聞く |
| 収入がなく生活全体を維持できない | 自立相談支援窓口と福祉事務所へ状況を伝える |
今日することは、次の収入日までの五つを書くことです
食費の悩みを一日で解決する必要はありません。
まず、次の五つを紙へ書いてください。
- 次の収入日までの日数:
- 現在使える現金:
- それまでに払う食費以外の必要額:
- 家にある食料で作れる食事の回数:
- 買い足しへ使える金額:
買い足しへ使える金額が出たら、7日分ずつに分けます。
足りる見込みがあるなら、今週は在庫を使う順番と買い物メモを作ります。
数字を出しても、子どもや家族の食事を確保できないなら、今日のうちに自治体の生活相談窓口へ電話してください。
「節約方法を教えてほしい」だけでなく、「次の収入日まで○日あり、食料は○日分しかありません」と伝えると、緊急度が伝わりやすくなります。
食費が足りないことは、ぜいたくをした証拠とは限りません。
買い方の偏りで足りないこともあれば、物価や収入、家賃、介護、病気が重なり、食費では吸収できなくなっていることもあります。
食事を減らして数字だけを合わせるのではなく、今の家計で守るべき食事を先に残してください。
そのうえで、買い方で直せる部分と、一人では直せない収入不足を分けることが、生活を落ち着かせる最初の一歩です。
出典・確認先メモ
- 総務省統計局「消費者物価指数」:家計が購入する財・サービスの価格変動を毎月確認するための公的統計。
- 消費者庁「家庭での食品ロスを減らそう」:必要な量だけ買う、食べ切れる量を作る、食べ切るための確認先。
- 政府広報オンライン「生活困窮者自立支援制度」:家計、仕事、住まい等の無料相談と、家族からの相談に関する確認先。
- 農林水産省「生活困窮者等への食品アクセスの確保」:フードバンクの役割と生活困窮者への食品提供に関する確認先。
- 厚生労働省「生活保護制度」:最低限度の生活を維持できない場合の制度と福祉事務所の相談窓口に関する確認先。


















